「何だよ。せっかくきれいなお姉さんが勧めてくれたのに。」
ジルはきれいな女性店員から無理やり引き離されて少し機嫌が悪かった。
「何だよじゃありませんよ。もう5回目ですよ。同じように
声かけられてすぐ買おうとして。あの人たちはジルに商品を売って
お金が欲しいだけなんですよ。そのためにジルを喜ばすような事を
ウソでも平気で言うんですよ。そんな言葉巧みなセールストークに
騙されないで本当に必要な物だけ買いましょうよ。」
マルクはジルの目を覚まさせようと必死に説得した。
「ほう、俺がかっこいいとかはウソだと。」
ジルの顔の表情が怖くなった。
「い、いや、その帽子がすごく似合うとかどうとかってところが
ウソなわけで、かっこいいとかはってジルは自分で自分のことを
かっこいいと思ってるんですか?ああ、もう私も何を言ってるんだろう。」
「自分がかっこいいと思ってるかって?もちろん。」
ジルは自信を持って言った。
「ダメですよ。そういうのは人から言われるものであって自分から
言うっていうのは3枚目の人がすることですよ。」
「そうか。う~ん...。分かったよ。俺は2枚目だからな。」
「(全然分かってない。)」
マルクは半ばあきらめ気分でまたジルと歩き出した。
「どうぞ。」
ジルとマルクは明るいチラシ配りの少年から一枚のチラシを受け取った。
その内容は、
『恋愛教室、受講生募集!これであなたも彼氏、彼女が必ず出来る。
恋愛の達人、人生の大先輩であるエルフの貴公子ディリウスが
親切、丁寧、狂気をモットーに指導します。詳しくは看板のお店まで。』
「(これはまずいことになりそう。)」
マルクは大きな不安がこみ上げてきた。
「これだ!これしかない。」
ジルは声を張り上げた。
「(やっぱり。)」
ジルの反応にマルクはため息をつくしかなかった
「よし、マルク行くぞ。」
ジルは恋愛教室のチラシを見てやる気満々だった。
「絶対おかしいですよ。ほらよーく見てくださいよ。
親切、丁寧の後に狂気って書いてますよ。怪しすぎますよ。
それにエルフっていうのは確かに人間に比べてずっと長生き
しますけど普通は山奥なんかの田舎でひっそりと暮らしている
ものでこんな教室を開いたりしないと思いますよ。ね、
やめときましょうよ。」
マルクはダメもとでジルを説得しようとした。
「狂気って言うのはほんの冗談だよ、きっと。そんなこと本気で
書いてる奴の教室なんて誰も行かないに決まってるだろ。それにエルフが
全て純朴な奴とは限らないさ。中には人間の華やかな世界に興味を
持ってものすごく詳しくなっていることだって十分考えられるだろ。」
ジルはマルクにやさしく反論した。
「確かにそうですけど。でもなんか会ったこともない人を
いいように取りすぎてませんか?」
「そんじゃさ、実際に会ってみて嫌な奴だったらさっさと
出ていくってことにしといたらいいんじゃねえ?」
「それならいいですけど。」
マルクはまだ納得いかない様子だったが渋々了解した。
「さてと、看板の店はと。」
ジルが辺りを少し見回した。
「お、あった、あった。この階段を上ったところにあるんだな。」
2人はゆっくりと階段を上りその先にある扉を開いた。
「やー、ようこそ恋愛教室へ。私が講師を務めますディリウスです。
堅い話は抜きにしてさあ入って入って。」
中で待っていたのは妙にテンションの高い尖った耳をした男だった。
人間で言えばジルとマルクより5つくらいは年上のような身なりだった。
ジルとマルクは言われるがままに部屋の中へ入った。部屋の中はいかにも
教室といった雰囲気で木の机と椅子、そしてその前の壁には黒板が
備え付けられていた。