dark legend   作:mathto

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マルクの前に現れた悪魔を倒してくれたリットン。

「あなたは魔法使いですね。」

「はい、そうですが何か?」

「魔力を持つものは悪魔などを引き寄せやすいという一面もあるのですよ。」

「へぇ~、そうなんですか。リットンさん、さっきの本は魔法でしたよね?」

「そうですよ。この図書館を管理するのに必要なものなんです。」

「本を媒体としてるってけっこう珍しいですよね。」

「そうかもしれませんね。あなたはどうな魔法を?」

「私は風の魔法です。あの、もしよろしければ私にもその魔法を教えてもらえませんか?

今は修行中なんです。少しでも何か自分にプラスになるものを得たいんです。」

マルクは少しためらいながらもリットンに頼み込んだ。

「それは無理です。」

リットンは即答で断った。

「私の魔法とあなたの魔法では種類が全然違います。そもそも私の魔法は

誰もが覚えられるというものではありません。小さいころから魔法の本も

含めてたくさんの本を親しみ読んで勉強していくうちにいつの間にか今の形の

魔法が使えるようになったわけです。ですから人に教えられるというものでは

ないんですね。」

「そうですか、無理言ってすいませんでした。」

マルクは落ち込んだ。

「私と同じ魔法を教えるということは出来ませんが、あなたの修行の

手伝いになるようなことは出来ると思いますよ。」

「どういうことですか?」

マルクは不思議そうにリットンに尋ねた。

「あなたが風の魔法を使うというのなら風の魔法に関する本を紹介しましょう。

それを読めばあなたの修行に何らかのプラスになる可能性が高いはずですよ。」

「ああ、そういうことでしたか。よろしくお願いします。」

「少し待っててくださいね。探しますから。」

リットンは本棚に向かって本を探し始めた。

「ちゃんと分類してますからすぐに見つかりますよ。ここは魔法のコーナーでして、

風の魔法だから自然魔法のところを見ればと...。これだな、きっと。」

リットンは一冊の本を抜いてマルクに渡した。

 

 

 

マルクはリットンに手渡された本を見た。

「『風の記録』。リットンさん、中を見てもいいですか?」

「どうぞ。」

マルクは『風の記録』最初の1ページ目をめくって読んでみた。

「『一月一日、晴れ。今日の風は北東からゆるやかに吹いた。』

『一月二日、曇り。今日の風は東から湿った感じで吹いた。』

『一月三日、......。』...。これは...。」

マルクは本の内容に戸惑いを感じた。

「(は、しまった。関係の無い本が混ざっていました。

どうしましょう。本当のことを言って素直に謝りましょうか。しかしそれだと

私のこの図書館の館長としての威厳に関わってこないでしょうか。いっそこのまま

風の魔法の本だとマルクさんに信じ込ませてしまいましょうか。いや、いけませんね。

それではマルクさんの修行のためにならないじゃないですか。やっぱり本当の事を

言いましょう。)あの、マルクさん。」

リットンがマルクに話しかけようとしたとき、同時にマルクも喋りだした。

「リットンさん。この本はとても奥が深そうですね。じっくり読んで

考えてみたいと思います。」

「え、そうですか。それはそれは、がんばって下さい。」

リットンは嫌な汗をかきながらマルクを励ました。

「ありがとうございます。」

マルクはリットンにお礼を言うと受付にて本を借りる手続きをした。

「さて、後は宿を探すだけですね。いいところが見つかるといいですが。」

「それなら私の家に泊まるといいですよ。」

リットンが後ろからいきなり声をかけた。

「わっ!びっくりした。」

「ごめんなさい、驚かすつもりはなかったんです。でも何かマルクさんの

助けになれることはないかと考えていただけだったんですよ。(もし、あの

本を読んでいくうちにつまらないなんて言われたら私の立場がありませんからね。

なんとかして言わせないように誘導していかなければ。)」

「リットンさんは本当にいい人ですね。今日初めて会った私のためにそこまで

してくれるなんて、普通じゃ考えられないですよ。」

「いやぁ、そんな当たり前のことですよ。」

リットンは素直に喜んでくれるマルクの姿を見て心が痛くなった。


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