「...というわけでして、今はリットンさんのところに厄介になって
いるんですよ。」
「へ~、マルクはまたいい人に出会えたんだな。」
ジルとマルクは酒場で2週間ぶりに会い話していた。
「それでそのリットンさんに勧めてもらった本がこれです。」
そう言ってジルにその本を渡す。
「へ~、『風の記録』ねぇ。俺あんまり本とか興味ないんだけど、
どれ...。」
ジルは本をパラパラとめくってみる。
「(こ、これは...。しょうもな過ぎる。もしかしてマルクは
リットンって奴に騙されているんじゃ...。)」
ジルは本の内容を見て黙りこんだ。
「どうしました?」
マルクはジルの顔をを心配そうに覗き込んだ。
「いや、俺はちょっと分からないな。」
そう言って思ったことをマルクに言えないまま本を返した。
「私も実はあまり理解してないんですよ。でもきっと奥深いものが
書かれていると考えています。」
「そうだといいな。」
「ジルの方はどうですか?」
「俺か?俺は楽しくやってるよ。ディリウス先生はおもしろい話とか
いっぱいしてくれるんだよ。」
「へぇ~。例えばどんな話ですか?」
マルクは興味津々で聞いた。
「そうだな。たとえば、この国には女の人が服を脱ぎながら踊りを
見せてくれるって店があるらしいとかかな。今度、連れてってもらう
約束をしてるんだ。」
「やめてください!それって風俗店じゃないですか。いかがわしい。
ディリウスって人に一体何を教えてもらっているんですか。」
マルクは顔を赤くして怒りながらジルに言った。
「そんな怒らなくても。他にもいっぱい教えてもらってるんだぜ。」
「(ああ、心配だなぁ。このままジルをディリウスにまかせていいんだろうか。
すごい悪影響な気がしてきました。ああ、どうしよう、どうしよう。)」
マルクは顔を下に向けてものすごく不安になってきた。
「あ、その顔はろくなこと教えてもらってないって顔してるな。
世界のこととかも教えてもらったんだぜ。」
ジルは自信を持って言った。
「え?」
マルクは下に向けていた顔を上げてジルを見た。
「この世界は『テラ』と呼ばれ、今いる大陸が『パネテグラ大陸』で
この大陸が世界の半分以上を占めている。あとは『コルナッカ大陸』と
『ロドニエル大陸』、その他たくさんの島々で『テラ』は出来ている。」
「へ~。」
マルクは感心して聞いている。
「『コルナッカ大陸』は俺が住んでた村、マルクと出会ったランターナ、
そしてクラレッツ、ランドール、エトールの3国があった大陸だ。
『バネテグラ大陸』で最大の勢力を誇るのがご存知ここ
サンアルテリア王国を中心としたアルテリア連合。そして今最も勢い
が強く急速に領土を拡大してるのが『ヴェロニス帝国』。先代の初代皇帝
が建国したときには田舎の小国だったらしいが息子の『キルヒハイス=ヴェロニス』
が跡を継いでから急に変わったって話だ。まあそんなところかな。」
ジルの話が終わった後、マルクはぽかーんとしていた。
「ん?どうした、マルク。」
ジルが不思議そうに聞いた。
「い、いえ、私もあまり知らないことだったので少し驚いたんです。」
「俺もこれ覚えんのすごい苦労したんだぜ。ディリウス先生がさ、
これは大事なことだからって何度も繰り返して言ってくるんだよ。
耳にたこができるかと思ったぜ。恋愛には関係ないと思うんだけどな。」
「(短期間にこれだけのことをジルに教えるなんて、やはりディリウスって人は
ただものじゃありませんね。)」
「で。ものは相談なんだけどさ、マルク。」
「何でしょう?」
「俺たち、しばらく会わない方がお互いのためにいいんじゃないかと思ってさ。」
「いいですよ。」
マルクは素の顔で即答した。
「いいのか?ほんとに?理由とか聞かないのか?」
ジルはマルクの反応が意外で驚いた。