dark legend   作:mathto

87 / 279
173,174

ジルとマルクがそれぞれの勉強をしているとき、

海では。

 

「ハーツ船長。ここまでは順調っすねぇ。」

「そうだな。」

ハーツ船長はそっけなく答えた。

「あ、今日はやけにあっさりしてるっすね。」

「見ろ。」

ハーツ船長は前方を指差した。

「な、なんすかあれ!!」

海賊が驚く先には空は暗く、雷が鳴り、波は荒れ狂い、

さらに海上に浮かぶ無数の巨大な竜巻の姿があった。

ブオオオォォン!ブオオオォォン!

竜巻の凄まじい勢いはその音だけでなく威圧的な雰囲気を発していた。

「これが魔の海域デビルレーンってことか。ここから先は未知の領域だな。」

ハーツ船長の落ち着きはすでに覚悟をしているところからきていた。

「マジでこんなとこを進むんすか?間違いなく自殺行為っすよ。」

海賊たちは皆デビルレーンに圧倒されていた。

「なら、ここから引き返して、何も得ないまま尻尾をまいて帰るか?」

ハーツ船長は皮肉っぽく言った。

「い、いくっすよ。もうここまで来て帰るなんて馬鹿じゃないすか。

なあ、みんな。」

「おう!」

「こうなったら死んでも突破してやろうぜ。」

「死んだら意味無いっつうの。」

「はっはっはっは。」

海賊たちは大声で笑って騒ぎ出した。

「まったくお前らは本物の海賊だよ。こんな危険な状況が目の前にあるって

いうのに笑いやがって。もうお前らに言うことは何も無いな。」

ハーツ船長はそう言うと神妙な顔から笑顔へと変わった。

「さあ、お前らいくぞぉぉ!」

「おーー!!」

海賊たちはコブシを上げて大声を張り出した。

 

 

 

ハーツ船長たちが乗る船はデビルレーンへと入った。

近づいて見る竜巻の群れは一層迫力を増していた。

「正面から来てるぞ!右へ避けろぉ!」

「面舵いっぱーい。」

正面から迫ってくる竜巻を右へと船を旋回させて避けた。

「ふぅー、何とかこらえたか。」

ハーツ船長と海賊たちはほっとした。

「船長、大変っす。囲まれてるっす!」

気が付けばハーツ船長らの乗る船は大きな3っつの竜巻に囲まれていた。

「ええい、竜巻の間を抜いていけぇー!」

つかの間の安堵も消え去り皆に緊張が走る。船は何とか竜巻の間を

進もうとするが、竜巻はその抜け道を塞ぐように動いていった。

「無理っす。狭くなって抜けれません。」

「無理でもいくしかないだろー。」

諦めかけている海賊たちにハーツ船長は檄を飛ばした。

それでもなお竜巻は船に迫っていた。

バリバリバリッ。

強風によって船の帆が折れた。

「まだだ。まだいける。」

ハーツ船長の声と共に海賊たちも必死でこらえようとした。

ガンッ、バリバリバリバリバリッ!

遂に船体に竜巻が直接当たり砕け始めた。

「船長、もうもちません。」

「最後まであきらめるな。」

しかし必死に粘ろうとする海賊たちとは裏腹に確実に船は砕けていった。

船体の中央に亀裂が入った。

バキッ!

亀裂は一気に広がり船は2つに分かれた。

そしてそのまま海の中へと沈んでいった。

「うわぁぁぁぁぁ!」

海賊たちは叫びながら船と共に海の中へと落ちていった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。