dark legend   作:mathto

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「ううぅうぅぅ....」

ハーツ船長は砂浜で倒れていた。

「ここは...、天国か、それとも地獄か?」

ハーツ船長は意識を取り戻すと体を起こして周りを見回した。

濃い霧がかかっていて周りはよく見えなかった。

ハーツ船長はゆっくりと立ち上がってふらふらと歩きながら叫んだ。

「おーい、誰かいないのかーー!」

「あ、これはハーツ船長の声。ここっす、ここにいるっすよ。」

ハーツ船長の呼びかけにあちこちから海賊たちの返事が聞こえた。

やがて、霧が薄くなり見えてきた人影に皆が集まってきた。

「なんだ、なんだ。全員揃ってるじゃねえか。お前らも俺と同じで

悪運が強いな。」

ハーツ船長は内心ほっとして笑顔をこぼしながら言った。

「へへへ。」

「簡単には死ねませんて。」

海賊たちも生きていることを笑いあった。

「ところでここはどこっすかね。」

海賊の1人がハーツ船長に尋ねた。

「俺たちはデビルレーンの中へと入ってここに辿りついたんだ。

ということは...。」

「ここはキャプテンホークの財宝が眠る場所!」

海賊たちが口を揃えて言った。

「まず間違いないだろうな。情報がデマでさえ無ければだが。」

「でも仮に財宝を見つけたとしてどうするんすか?俺たちはなんとか

生きてるけど船は完璧に沈んだんすよ。帰ることが出来ないっす。」

「ここは島だろ。なら木とか生えてんじゃねぇの。それを材料にいかだ

とか小さな船を作るとかしたら脱出出来るだろー。」

「おいおい、そんなもんでまたデビルレーンを越えようってのか?

竜巻どころか荒波だけでも砕けちまうぜ。」

その後もあれやこれやと意見が出たが結局納得できるものは一つもなかった。

「ええい、とにかくここに食料があるかどうかを探すのが先だ。

お前ら、行けー!」

ハーツ船長は怒鳴ると海賊たちは慌てて探しに行った。

 

 

 

「船長ーーー!」

食べるものを探しに行った海賊が大声でハーツ船長を呼んだ。

「どうした?なんかうまそうなものでも落ちてたか?」

ハーツ船長はゆっくりと歩いて呼ばれたところへと向かった。

「あれ、あれ、あれ...。」

ハーツ船長がやってくると海賊は驚きながら何かを指差していた。

「一体どうしたっていうんだ。」

ハーツ船長はやれやれといった感じで指差していた方を見ると

顔が一変した。

「これは...。」

ハーツ船長の目の前にあったのは巨大な船だった。

「何でこんなとこに船があるんすかね?」

「これはおそらくキャプテンホークの船『ブラックシャーク号』だろう。」

「ブラックシャーク号ぉ!ていうかキャプテンホークってかなり昔の人っしょ。

なんでそんな人の船が今もこんなきれいな状態で残ってるんすか。」

「それを言うならあのデビルレーンを越えて無事な船があるっていう方が

不思議じゃねえか。」

「そう言われてみればそうっすね。」

「何か秘密があるかもしれん。」

ハーツ船長は食料を探している他の海賊たちを一旦集めた。

「どうしたんすか?」

「なんすか?」

「あっ、これはすごい立派な船じゃないっすか。」

集まった海賊たちは船を見るなり騒ぎ出した。

「静かにしろ。みんなでこいつを調べるぞ。」

ハーツ船長と共に海賊たちはこの得体の知れない船に乗り込んだ。

「船長、何か変な感じがするっす。」

「ああ、俺もさっきから何かを感じる。」

「まさか幽霊?」

「違う。そんなもんじゃない。この感じは魔力だな。この船には何かの魔法が

かかっているということか。それならあのデビルレーンを越えて無傷なのも、

古くてもきれいなままということも納得がいくな。」

「へ~、そうなんすか。ということはやっぱりこの船がキャプテンシホークの財宝

ってことっすか?」

「そうだな。」

「でもこれで生きて帰れるってことっすよね。やったー。」

「待て。まだここから出れると決まったわけじゃない。まずはこの船が動くかを

確かめてからだ。」

「分っかりましたー。」

海賊たちは喜びながら配置についていった。

「船長、動きます。」

船はその海賊の言葉と共にゆっくりと動き出した。

「よし、そのまま進めー。」

船が進んでいくと霧がかかった景色から暗く荒々しい海へと変わっていった。

そしてまたいくつもの竜巻が勢いを発していた。

「ここを越えれるかどうかで俺たちの運命が決まるんすよね?」

「ああ、そうだ。だがお前らの予想は決まってるんだろう?」

ハーツ船長はにやっと笑って聞き返した。

「もちろんすよ。俺たちは今、伝説の船に乗ってるんすよ。」

「今の俺たちに不可能はないっす。」

「はっはっは。お前ら、行くぞー。」

船はハーツ船長の掛け声で竜巻の群れの中へと入っていった。

「す、すごいっすよ。竜巻がこの船を避けるかのように遠ざかっていくっす。」

「これがこの船の力か。よしこのままデビルレーンを突破するぞ。」

ハーツ船長と海賊たちを乗せた船はデビルレーンをそのまま難無く乗り越えた。

「やったー。」

海賊たちは互いに手をたたいて大喜びをした。


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