dark legend   作:mathto

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ディリウスによって催眠術をかけられたジル。

そのジルに異変が起き始めた。

体から黒いオーラが噴き出し全身を覆った。

ガタッ。

ジルは白目をむいて目をあけると椅子を後ろに倒して立ち上がった。

「グ、グオォォォォォォォォォ!!!!!」

ジルは獣のように大声で吼えた。それと同時に黒いオーラが上へ伸び

天井を一気に突き破って空へと昇った。

ディリウスは口元に笑みを浮かべながらジルの様子を黙って見ていた。

ジルは尚も叫びながら今いる2階の部屋の壁に体当たりするとボコッという

大きな音を出して砕けた。そしてそのまま外へ出て下へと落ちていった。

ダンッッッ!!!!!

衝撃音と共に現れたジルに周囲にいた歩行者たちは驚き注目した。

「きゃー。」

「どこから現れたんだ?」

「あ、あそこよ。あんな高いところから。」

「どうしてあんなとこから?」

「何者なんだ?」

周りがざわざわとしだしていた。

ジルは顔を天に向け再び吼えると周囲を少し見回した。

そして正気を失ったままの状態でニヤリと笑った。

次の瞬間、平然とした町並みが一変し地獄となる。

無残に体のあちこちの肉をもぎ取られた男性の姿があった。

その男性の全身から血が四方に噴き出しその場に倒れた。

ジルの手は真っ赤に染まりポタポタと赤い滴を垂らしていた。

ジルは今までに無いくらいの恐ろしい速さでさらに人々を襲いだした。

腹の中に手をグチャリと突っ込み臓器を抜き出したり、手足を骨ごと

バラバラにしたり、頭を一撃でつぶしたりした。

恐怖の叫びが響く中、次々に広がる血塗られた道。

離れたところから見ていた人々は大慌てで逃げようとするも今のジルから

逃げ切ることは出来ず殺されていった。

もう路上にジル以外の生存者はいなくなり、あるのはまだ生暖かい死体

とそこから漂う血の臭いだけだった。

 

 

 

黒いオーラを発するジルはたくさんの死体に囲まれ満足そうな顔をしていた。

そこへマルクが再会しようとやってきたが、死体があちこちに散らばっていて

その中心にジルが立っている異様な様子に声が出ないほど驚いた。

「これがジル?まさかジルがこんなひどいことをするなんて信じられない。」

マルクは、正気を失い黒いオーラを発しているジルを見て自分の目を疑った。

そして少し落ち着くとジルの様子をじっと観察した。

「今、ジルから黒い煙、霧、いやなにかこうオーラっていうようなものが出ている。

黒。は、もしかして...。」

マルクは思い出した。ジルが心を映し出すミラージュナイフを持ったときナイフは

黒く変化したことを、ポートルの占い師に見てもらったとき水晶玉に黒い悪魔が

映し出されたと言われたことを、そしてワーグバーグによって瀕死に陥ったときジルが

今のような状態になっていたのがかすかに見えたことを。

「ジルは恐ろしい悪魔に取り付かれているのでしょうか。

私はどうすれば...。」

「殺すしかないな。」

「え。」

声がどこからか聞こえた。

「この声は聞いたことがある。」

マルクの横に現れたのはカフィールだった。

「こいつは人を殺しすぎた。いかなる理由があろうともこのまま放って

見逃すわけにはいかない。」

カフィールは剣を手にジルに近づこうと歩き出した。

「そんな。」

マルクは落ち込んでいたがどうにかしたかった。

そんな中、

「彼を殺してもらっては困るよ。」

ジルが壊した建物2階の壁からずっと座ってみていたディリウスが

ストッと飛んで降りてきた。

「これはこれはカフィール君、久しぶりだね。」

ディリウスは笑ってカフィールに挨拶した。

「貴様は魔界のプリンス、ディリウス。」

カフィールはディリウスを見ると険しい表情になった。

「覚えてくれていたとは光栄だ。」

「え、え、魔界のプリンス?だってエルフって。」

マルクは驚いていた。

「ははは、本当に信じてたのかい?おもしろいな君は。」

ディリウスは腹を抱えて笑っていた。


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