dark legend   作:mathto

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「ディリウス、これは貴様がやったことか。」

カフィールが笑っているディリウスに問い詰める。

「それは君がよくわかっているんだろう?彼の正体を。」

「彼の...正体...?」

マルクにはディリウスの言葉がさっぱり理解できなかった。

「ああ。だがここまで目覚めるのは不自然だ。」

「ははは、よくお分かりで。確かに私が手助けをしたことは確かだね。

で、カフィール君はジルを殺すと。」

「当然だ。」

「なら私はそれを邪魔させてもらうだけ。2対1で勝てると思うのかい?」

「フ...。」

カフィールは口元に笑みを少し浮かべると、ジルに向けて指を十字に切り呪文を唱えた。

「邪悪なるものの動きを封じる。『セイントチェーン』」

するとジルの体に光の鎖が巻きつき動けなくしていた。

「グ、グウウ。」

ジルはもがくが動けない。

「へぇ~、そんなことができるんだ。私も魔法を使えばそれを

解くのは簡単なんだけど、今は使いたくないんだな。今使うといろいろと

ややこしくなるから。まだこっちでのんびりしたいんでね。」

「魔法を使わないでどうする気だ。」

「ま、なんとかなるでしょ。」

ディリウスは相変わらず余裕の表情を浮かべていた。

「なら見せてもらおうか。いくぞっ。」

カフィールは剣を抜きディリウスに斬りかかった。

「よっと。」

ディリウスは剣先を見切って寸でのところでさっとかわした。

しかしカフィールは気にせず攻撃を続ける。

そのうちにカフィールは逆にディリウスの動きを読み、

軽やかにかわしていたディリウスに余裕がなくなっていった。

「(2人が戦っている今のうちにジルをなんとかしなければ。)」

マルクはカフィールとディリウスの動きに気をつけながらジルの元へ走った。

 

 

 

シュッ。

カフィールの剣がディリウスの腹をかすめた。

ディリウスの服の斬られたところがじわっと緑色に染まった。

「おやおや、こっちの生活が長いから体がなまってるのかな。

しょうがない、これを使うか。」

そう言ってディリウスが取り出したのはごく普通のくだものナイフだった。

「そんなものでどうしようというんだ。」

「さあてね。」

カフィールが再び攻撃をしかけるとディリウスはよけようとはせずに

手にしたナイフを剣に合わせて攻撃の向きを変えさせた。

「これは...。」

「今の状態なら、君の攻撃を避けるよりは逸らしたほうがよっぽど

簡単ってことだよ。」

「く。」

カフィールはやみくもに攻撃を続けるがディリウスはすっかり

落ち着きを取り戻し余裕で軽く受け流していった。

 

マルクはカフィールの魔法によって動きを封じられたジルの傍へきた。

「グウウ。」

ジルは正気を失ったままもがいていた。

「ジル!しっかりしてください。今のあなたは本当の姿じゃないはずです。」

マルクが必死に呼びかけるもジルに変化は無かった。

「こうなったら魔法を使うしか...。しかし私に今のジルを治せるほどの

力があるだろうか......、でもやるしかない。」

マルクは目を閉じて深呼吸をし気持ちを落ち着けると目を開けた。

「風が見える。風の流れ、匂い、温もり、全てが手に取るように分るようだ。

いけそうな気がする。『イエローフローラル』。」

マルクが呪文を唱えるとジルを黄色いそよ風が包み込む。

するとジルから発せられていた黒いオーラはみるみる消えていき、

カフィールの光の鎖も同時に解き放たれた。ジルは体の力が一気に抜け落ちた

ように気を失いガクッとその場に倒れた。

「ん、何だ?」

カフィールとディリウスがマルクのことに気づいた。

「おや、ジルを元に戻すとはなかなかやるね。そろそろ私も姿を

消してもいいころかな。封印はすでに解けたことだしね。」

ディリウスはカフィールから少し離れた。

「待て、貴様は逃がさん。」

カフィールがディリウスに近づこうとしたとき、

「世の中には便利な物があるね。これ『ロックチョウの羽』っていうんだ。

これをこう上に放り投げると...。」

そう言ってディリウスが取り出した羽を上空に投げると、羽がぱっと光って

ディリウスと共にビュンと光の弧を描いて遠くへと消えていった。


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