dark legend   作:mathto

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「くそ。」

カフィールはディリウスを逃がした自分に怒りを感じていた。

「いかんな。あまり冷静さを失っては。とにかく今出来ることを

しなくては。さて。」

カフィールはジルのところによってきた。

そして、まだ気を失ったままのジルに剣を突き刺そうとした。

間へマルクが割ってはいる。手を広げてジルを守るように立ちふさがった。

「ジルを殺すなら私も殺してください。ジルは私の大切な仲間です。

ジルのしたことはとても許されることではないかもしれません。

それでも私はジルをかばいたいんです。」

カフィールはマルクの言葉を聞くと剣を収めた。

「ちっ。おい、マルクと言ったか。そっちのジルに言っておけ。

『しばらく時間をやる。ここで死んだ人々を生き返らせる方法を

見つけろ。そうすれば命だけは助けてやる』とな。」

カフィールはそう言ってマルクに背中を向けた。

「え、でも生き返らせることは...。」

マルクがカフィールに聞こうとしたとき、カフィールは振り向き、

「あ、そうそう、死体は俺が冷凍して保存しておくから方法が

見つかったら俺のところへ来ればいい。」

と一方的に言い残し去っていった。

まもなくたくさんの馬車がやってきてあたふたするマルクをよそに

淡々と死体を積み込みどこかへと持ち去っていった。

 

「もっと力が必要だ。ディリウスごときに負けないくらいの。

そして、自分の正義を貫くために。」

マルクとジルの元を去ったカフィールは強い思いを抱いていた。

 

「ふああぁぁあ。」

ジルは寝ていたベッドから手を上に上げあくびをしながら目覚めた。

そばにはマルクが座っていた。

「よかった、目を覚まして。体は大丈夫ですか?」

マルクはうれしそうにジルに聞いた。

「う、うん。まあ。あれ俺何してたんだっけ。」

ジルは自分の記憶を探った。

「ん?ちょっと待てよ。こんなことが前にもあったような...。」

マルクはドキッとした。

「マルク、その顔は何か知ってるな。教えろよ。」

「え、いえ、べ、別に何も、あ、ありませんよ。」

マルクはしどろもどろに答えた。

「嘘つくな。いいから言えよ。」

もう誤魔化せないと感じたマルクは全てを包み隠さずジルに話した。

 

 

 

「なんてこった。占いのときやミラージュナイフの

ことはこのことを表していたのか。俺は一体なんなんだ。」

ジルはマルクから話を聞いてショックを隠せなかった。

「俺はこれからどうすればいいんだ...。」

ジルは頭を抱えて苦悩に満ちた表情になった。

「...でも、それはジルではなく取り付いている悪魔が

したことなのでは?」

マルクはなんとかジルの気持ちを楽にしたかった。

「だからって俺に責任がないってことはないだろ。

俺の中の悪魔を抑え切れなかったんだから。」

「ならどうするんですか!死んでお詫びするとでも言うんですか!!」

マルクはいつまでもうじうじしているジルに切れ気味で言った。

「いや、その...。」

ジルはマルクの迫力に言葉が詰まった。

「え、どうなんですか!」

マルクはさらに迫る。

「マルク、悪かったよ。とにかく俺に出来ることを考えるよ。確か

カフィールは俺が殺した人を生き返らせろって言ったんだよな?

ならそれをやるのが先だな。殺してしまった人のために。」

ジルはマルクの言葉に立ち直った。

「その生き返らせるってことなんですが、私が知る限り方法は

ありません。」

「え、だってカフィールは言ったんだろ?」

「私にもカフィールさんがどういう考えでそう言ったかは分りません。

死者蘇生の魔法があるという噂は聞いたことがあります。しかし、

それを実際に使える人はメンデル先生を含めた魔道連盟の最高峰

5大司祭にもいないということです。もしかしたら世界にその魔法を

使える魔法使い、もしくはその類のアイテムが存在していて私たちは

まだそれを知らないだけかもしれません。まぁ、簡単に人を生き返らせることが

出来たら命の輝き、大切さも感じられなくなりますからね。」

「確かにマルクの言うとおりだ。とりあえずこの問題は置いておくか。

今いくら考えたって答えが出ないことは目に見えているしな。

でもそうすると次にすることがなあ、マルクの先生が帰ってくるのって

まだもう少し先だろ。」

「私、ちょっと行ってみたいところがあるんですけどいいですか?」

「行ってみたいところ?うん、いいけど。」

ジルはマルクについていった。


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