「館長さんの言葉に甘えてもう少しみてましょうか。」
「うん、そうだな。」
美術館にて絵を見ているジルとマルク。
「さすがだ。すごいと思うだろ、お前らも?」
ジルたちにまた一人声をかけてきた。
「(またかよ。)」
ジルは少しうんざりしていた。
「はい。ってこの声、どこかで聞いたような。」
と言ってマルクが声の主の方を見ると、
そこには盗賊団シャドウラビッツのリーダー、
ジャック=クローバーの姿があった。
「あっ!盗賊のジャッ...。」
マルクが大声で叫びそうになったところをジャックが
口を塞いだ。
「シッ。ここは美術館だぞ。静かにしてろよ。」
「いったいここに何しにきたんだよ。はっ。まさかこの絵
を盗みに来たのか?」
ジルが周りを少し気にして小声でジャックに尋ねた。
「ははは、まさか。仲間が描いた絵を見に来ただけさ。」
ジャックはジルの問いかけを笑い飛ばした。
「仲間?」
今度はマルクが聞いた。
「そう。シャリルって女さ。別のところには名前が載ってる
絵もあるんだぜ。タイトルは確か『森』だったな。」
「え、ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」
マルクは驚きの声を上げた。大きな声に周囲の人はビクッとなった。
「あ、すいません。すいません。」
マルクは周囲の人に気づくと顔を赤くして誤り倒した。
他の人を気遣って3人は絵から少し遠ざかった。
「シャリルさんて、すごくよく喋る人ですか?」
「そうだな、喋りだしたら半日はとまらないなんてよくあるな。」
「う、うそだ。今の絵とさっき見た『森』の絵は全然描き方が違ってるぞ。」
ジルが反論した。
「こっちの絵は俺たちの仕事用のものでな、たまたま流出しちまったもんだ。
『森』の方はあいつの趣味だな。あいつが想ったものを好きなように描いて
いる。あいつにとっちゃ趣味の方が大事みたいだ。ま、盗みも芸術の一つ
だからな、同じって言えば同じだがな。」
「いいえ、盗みは芸術とは違います。芸術はすばらしいものですが、
盗みはよくないことです。」
マルクは少しむきになった。
「分かってないな、盗みのすばらしさを。厳重に守られたところから
頭脳や力を駆使し計算しつくし計画通り事を運びさっと華麗に貴重な宝を
自分の物とする瞬間というものは、何事にも変えがたい喜びを与えて
くれるものだ。入手難度が高ければ高いほど手にしたときの満足感は
増していく。」
「しかし、それを大事だと思うほど盗られた人は悲しむはずです。」
マルクはまだ言い下がる。
「悲しむ?そんなことは知ったことじゃねえな。人はそれぞれ物を欲しい
気持ちを持っている。その気持ちが他の人と重なることはよくあることだ。
お前の言葉を借りて言えば、それを大事だと思うほど人から奪ってでも
手に入れたいってことだ。ま、こんなとこで論議するのもばからしいから
この辺でやめとこうか。美術館は静かに展示物を見て楽しむところだからな。
じゃ、俺はそろそろいくか。また機会があったら会うかもしれないな。」
そういい残してジャックはジルたちの前から立ち去った。
「さて俺らもそろそろ出ようか。」
「そうですね。」
ジルとマルクは美術館から出た。
「マルクの先生に会えるまでまだ2ヶ月弱あるんだな。
それまでどうしようか?」
「そうですね、もうゆっくりすごしてていいと思いますが。
ずっとというのは退屈ですよね。町をじっくり見て回るの
はどうですか?」
「いいね、それ。とりあえず今日はゆっくり休んで明日から
ぶらぶらしてみようか。」
2人は宿屋へ行き、眠りについた。
次の朝。
「じゃ、行くか。」
「はい。」
ジルとマルクは宿を出て町を歩き出した。
「こうして見ると、やっぱりいろんな店があるよな。」
「よく考えたら今までこんな風にゆっくり見ることなかった
ですよね。」
2人はしみじみ言った。
「ほら、あそこに露店がありますよ。」
マルクが指差す先では、
「いらっしゃい、いらっしゃい。よってらっしゃい、みてらっしゃい。
ここにあるのは世にも珍しい一品ばかり。ここを素通りするのは損だよー。」
少年が商品を並べ、売っていた。
「あ、あいつは。」
ジルは少年を見て思い出し、近づいていった。
「よっ、そこのきれいなお嬢さん。この聖なる首飾りはどう?
これさえ身につけていれば、邪悪なモンスターはおろか悪い男も
近づいてくることはなくなるよ。」
ドカッ!
少年が女性に首飾りを勧めていたとき横から衝撃が走った。
「痛ってー、なにすんだー!!」
怒って少年が振り返った先にはジルが少年に足をかけて立っていた。
「てめえ、ダニエルだろ。こんなとこで何してんだ?」
「む、お前はいつかの強盗ではないか。またこの聖剣エクスカリバー
を狙ってきたのか?」
そう言ってダニエルは背中に手をやり警戒した。
「ちゃんと俺の質問にこ・た・え・ろ。」
ジルはダニエルのこめかみをコブシでぐりぐり力を入れた。
「痛ってー、ここで商売してるだけだろ。」
「最初から素直にそう言え。」
ジルはダニエルを放した。
「それから言っとくが俺は強盗じゃないぞ。剣士ジルだ。覚えときな。」
「くそジル...。」
ダニエルはボソッと言った。
「おい、年上への言葉使いには気をつけよ・う・な!」
ジルは再びダニエルにぐりぐりをした。
「いったー!ジル様、ごめんなさい。私はあなたの僕です。
なんなりとお申し付けください。」
ダニエルは痛みをこらえながら叫んだ。