響だよ(中身別人)、その戦いぶり(近接が主)から不死鳥(捨てられた小鳥レベル)の通り名もあるよ   作:ヴェルヌイ

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今回主人公は一度も出ません。そのくせして今までより1番長いという。


幕間:鎮守府にて

「………………ご苦労だった。さぞ大変だっただろう。今回は完全に私の敵の戦力を読み違えたミスだ。すまない。」

 

そう言って男、この鎮守府の提督は私達に頭を下げた。別に今回は司令官が悪いわけじゃない。どんな人間でも流石にあんな強さの姫級がいるとは思わないだろう。

そして今回の失敗は最後までノーダメージで敵を殲滅していたことによる私達の慢心によって生まれたものでもある。

 

「そう簡単に頭を下げないでくれ司令官。今回は司令官に完全に非があった訳でもなかろう。大事なのはこの失敗をどう活かして奴、欧州棲姫を倒すかが重要じゃないか?」

 

「長月…………そうだな、ありがとう。次こそは奴を倒してみせよう。編成を見直すとする。それより…………」

 

「あぁ、分かっている。私達をギリギリのところで助けてくれた謎の艦娘の事だろう?」

 

「そうだ、その事だ。」

 

やはり最初期からこの鎮守府にいると司令官の考えが嫌でも分かる。いや、別に嫌というわけではないが…………

 

「それにしても彼女は何者なのだろう?体躯からして駆逐艦というのは分かるんだが…………」

 

「他に特徴は無かったのか?」

 

「特徴…………暗くてよく見えなかったが、艤装と言える艤装は持っていなかったように見えたな。」

 

「つまり、彼女は艤装がなくとも欧州棲姫と渡り合えるほどの実力者だと?」

 

「いや、それは流石にありえない。戦艦2人を含んだ艦隊でさえも手も足も出なかったのだ。彼女がいくら強かろうと駆逐艦では欧州棲姫に勝つことはできない。」

 

「ならば逃げおおせたか?」

 

「いや…………できればそう信じたいが、私は逃げるときに見たんだ。」

 

そう、あの悪夢のような光景。

 

「欧州棲姫に奮闘する彼女を」

 

欧州棲姫がどれだけ私達に本気を出していなかったのかを。

 

「取り囲む無数の深海棲艦を、な。」

 

「……………つまり彼女は沈んでいる可能性が高いと?」

 

「あぁ………残念ながらな………」

 

「っ……………ではな、司令官。」

 

「うむ、また会おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………一体彼女は何者なのだ?」

 

「それは私達に分かることじゃないぴょん。」

 

執務室から出た瞬間目の前から声をかけられる。この独特の語尾は絶対に、

 

「なんだ、卯月姉さん。」

 

私の姉で、睦月型4番艦の卯月姉さんしかいない。卯月姉さんは一見いつもふざけているように見えるが、心の奥ではいろいろ真面目に考えている。

別の鎮守府から異動してきて、その時からこんな性格だった。多分前の鎮守府で何かがあったのだろう。そう聞いても卯月姉さんにははぐらかされるばかりだった。

 

「いやぁ、我が妹が悩んでいるっぽいから、ぴょん。食堂で話さないかぴょん?」

 

卯月姉さんはウインクしながら手を差し出してくる。咄嗟にその手を掴むとOKと受け取ったのかそのまま食堂へと走り出した。

 

2分後、息も絶え絶えになった私と一切息を切らせてない卯月姉さんは食堂に到着した。

なぜ汗も息も出てないかと聞くと、

 

「妹の前で無様なカッコは見せられないぴょん。」

 

と返された。不覚にも格好いいと思ってしまった。

 

この時間の食堂は人で溢れかえり、席は後5、6席ほどしか空いていなかった。2人で空いている席に座ると、卯月姉さんはさっきの話の続きをし始めた。

 

「それで、何の事で悩んでるぴょん?と言ってもそれは一つだけか。」

 

やはり最初からわかっていたようだ。多分司令官との会話が筒抜けだったのだろう。

 

「あの娘の事、ぴょん?」

 

「………………あぁそうだ。彼女は私達を庇って欧州棲姫と戦った。そして私達が安全な所まで逃げた頃に見えたんだ。」

 

「大量の深海棲艦ね。正直どこかの駆逐艦が無謀にも突っ込んで行ったんじゃって思ってたけど、よくよく考えたら並みの駆逐艦じゃあ数十秒で沈められるぴょん。」

 

「…………彼女は本当に沈んでしまったのだろうか?あのまま私達が礼を言う暇も与えずに【海色に融けて】しまったのだろうか?」

 

「ほう?長月は彼女が沈んだと思っているんだな?」

 

背後から声が聞こえる。この声は聞き慣れている。我が第1艦隊の旗艦でこの鎮守府の主力の1人、長門さんだ。

 

「そんな訳……ない。私だって彼女が生きていると信じたい。だが……………」

 

「…………言っておくが私はもちろん、あの時戦っていなかったり現場にいなかった艦娘でさえも彼女の生存を信じているぞ。」

 

「!? …………あぁ、そうだな。私達6人でも一方的やられた欧州棲姫をたった1人で、さらに大量の深海棲艦相手に我々が逃げるのに要した10分間も抑えたのだ。そう簡単に沈むわけがないと信じている。」

 

「そうだな。彼女はそう簡単に沈むタマではないと思っている。だからもし………沈まずに苦しんでいるのなら、と空母、軽空母、水上機母艦や偵察機を出せる艦娘総出で彼女を探しているそうだ。提督にも許可を取った。」

 

「……なんと…………。」

 

まさかみんなもそこまで本気だったとは…………思わぬ展開に胸が高鳴る。昂揚感で涙が出そうだった。

そしてここで驚きの一言を聞いた。

 

「!? 蒼龍です!妖精さんから電報『とうなんとうのはるかむこう、きずついたかんむすがルきゅうにせきとタきゅういっせきとこうせんちゅう』との事です!」

 

思わず高揚感が高鳴りすぎて体が勝手に動き出していた。

 

そして食堂を飛び出してから長門さんの声が聞こえる。

 

『聞いたか!!出撃できる艦娘12隻で出撃だ!!急げ!彼女は今も!戦っている!!』

 

もう涙を我慢できなかった。どうやらこの長月、この一瞬で泣き虫になってしまったようだ。




長月メインでした。かあいい
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