響だよ(中身別人)、その戦いぶり(近接が主)から不死鳥(捨てられた小鳥レベル)の通り名もあるよ 作:ヴェルヌイ
「んむぅ......げほっがほっ!」
顔面に覆い被さる海水で目覚める。
どうやら寝ていたときは干潮で、だんだん日が昇るに連れて満潮になってきたようだ。幸い倒れたときの体勢ののお陰で顔と頭しか濡れていないようだ。
うおっ!?響の髪がピキピキになってるじゃないか!?欧州棲姫と戦っていたのが暁や長月だったときと同じぐらい驚いている。は、早いとこ手入れしないと........
そう思い立ち上がろうとしたその時、俺の視界は厄介なものを捉えた。
「全く、今はそれどころじゃないというのに.......」
俺は腰に括りつけておいた錨2つを手に持ち、こちらへと砲を向け始めたル級&タ級へと突撃する。
重低音を上げて砲撃してくるが欧州棲姫に比べれば鈍い鈍い。まるで小学生が投げたボールのようだ。
余裕で回避してル級の懐に潜り込む。そしてイ級アンカーを横凪ぎに振り回して体勢を崩す。そのまま黒石アンカーを喉に突き刺す。
引き抜くとル級は絶命しており、首と言う急所を突かれたことにより一撃死のようだった。
次はもう一体のル級、と思い奴等の方を向くと仲間の死体があるのにも関わらずに砲撃してきやがった。
「さすがにまだ避けられる。私を甘く見ないでほしい。」
またまた余裕でかわすと、ル級の頭に黒石アンカーを振り下ろす。さすがに見切られてしまい艤装で受け止められるが、これは予測済み。
艤装に錨を引っ掛け、ターザンのようにル級の顔を蹴り飛ばす。小柄な響だからこそできた芸当だ。
ル級は顔を蹴られたことにより大きく仰け反る。駆逐艦の蹴りとはいえ船と船の衝突は相手が戦艦と言えど被害は大きい。
だがこちらは体勢を崩すどころか既にル級の喉めがけてイ級アンカーを横に振った。
血が吹き出し体中にかかるが気にせずタ級へと向かう。
やはり近接戦闘をする艦娘は初めて見たと言えど、流石に奴も学習しているようで砲は無効と考えたのか最終的にはあちらも近接での攻撃を仕掛けてきた。
しかしこれで同じ土俵に立ってしまった。
同じ近接戦闘をするのなら後は素の能力が勝負を分ける。相手は一撃一撃が必殺の戦艦級、その華奢なのに途轍もないパワーを秘めた腕には一度触れたらアウトである。
対するこちらは武器によって多少攻撃力が上がった駆逐艦、どれだけ強い武器を持とうとやっぱり駆逐艦なのだ。
…………………ダメだ、相手はこちらの近接戦闘を注意を払っている。俺の勝ち方は相手の『砲雷撃戦』という常識の不意を突いて倒すのがやり方だ。なのでこちらが最初から近接戦闘をすると相手に知られている場合は完全に不利になる。
ヤバい、どう考えても勝てるビジョンが見えない。
それでもタ級は待ってくれない。その華奢な拳が眼前に迫る。それを横に飛ぶ事で回避する。
今ので分かったのは相手は格闘なんてした事がないのだろう。いくらなんでも動きが単調すぎる。きっと殴って頭を吹き飛ばせば勝てると思っているのだろう。
そこを突けばなんとか倒せない事もないが……………いけるか?
「シズメェェェ!」
欧州棲姫より言葉になっていない咆哮に今から攻撃してくるという事が良く分かる。
よし、覚悟は決めた。成功するかどうかは分からないし、一度やれば対策もされるほど分かりやすい初見殺しだ。さらにこれ以上戦闘を長引かせたくない。もうヘトヘトなのだ。
タ級が突進してくる。深く深呼吸をしてタイミングを見計らう。少しだけスピードを出しながらこちらからも前進する。
やがて残り数mという間合いになった。
「今だ!」
俺は跳ねた。文字通り跳ねた。俺の作戦はこうだ。まぁものすごく単純だが。
タ級が向かってくるのに合わせて跳躍し、タ級のスピードと自身のスピードを利用して錨でタ級の喉を掻っ攫う魂胆だった。
さぞ、タ級の表情は驚愕に……あれ?
タ級が…………笑ってやがる?
そんな事を考えているうちに視界が爆炎に包まれる。
何が?何があった?
吹き飛ばされながらタ級を見ると…………
「オロカナ…………シズメ!」
その煙を吐く立派な砲塔をこちらに向けて殺意をぶつけてくるタ級の姿だった。