混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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そんなこんなでパンデモニウム編もラストです!!

さて、井草たちの修学旅行の最後は……。


14話

 

「に、逃げられたぁあああああああああああ!?」

 

 本来の京都の二条城に戻ってきた時、その衝撃の事実に井草は唖然となった。

 

 明らかに愕然となり衝撃を受けているその姿に、流石の闘戦勝仏も気まずいのか、サングラス越しに視線を少し逸らしている。

 

 だが、残酷だが事実だ。

 

「すまんかったの。あのバイアクヘーイーツ……とか言うの、倒したらでかい爆発が起きるようになっとったみたいでのぉ。被害が出んよう抑え込んどるうちに二人ともいなくなっとったわ」

 

 どうやら、緊急用の情報秘匿装置の類が設置されていたらしい。

 

 もしくはナイアルの部下達には強制的に付けられていた可能性もある。それぐらいには品がなく、問題児確定だった。

 

 そして、その隙をついて伊予と五十鈴は逃走。行方をくらましていたという事だ。

 

 おそらく伊予はゲオルクの霧で回収されているだろう。五十鈴は速度が速いので、まだ戦闘が終了していない状況で見切りを付けられたのなら、即座に離脱されているはずだ。

 

 つまり、伊予と五十鈴に関してはまだ決着を付けられそうにないという事だ。

 

 井草はそれを感じ取り、がっくりと肩を落として落ち込んだ。

 

「まあまあ。今夜はゆっくり慰めてあげやすから、元気出しなせぇ」

 

 ぽんぽんとリムがそう言って背中を叩いて慰めてくれるが、しかしショックではある。

 

 あと、それをすると今度はロスヴァイセに朝まで説教コースがありそうである。

 

「すまんかったのぉ。儂のところの連中も、ナタクまで出張ったのにナイアルを取り逃がしちまったからな」

 

「まあ、サーゼクス様とアザゼル先生が手段を択ばず挑んでなお逃げられる相手なのですよ。神クラス三柱でも厳しいと思うのです」

 

 ナイアルの脅威をより分かりやすい形で知った闘戦勝仏に、ニングはうんうんと頷いた。

 

 龍王の力を装備として身に纏った堕天使総督と、最強の魔王。双方ともに下手な神なら返り討ちに合うだけの戦闘能力があるだろう。ナイアルはそんな強敵と戦って生き残っているのである。

 

 あのまま戦いを続けていたら、下手をすれば死人が出ていただろう。いや、出ていなかったことが奇跡といってもいい。

 

「聖槍の坊主たちは基本的に「人間」に拘っとるところがあるからの。イーツになりたがるのは少数派じゃったのが功を奏した。全員イーツだったなら、一人ぐらい死んでたわい。運が良いぞ、おぬしら」

 

「全くなのです。あのカオスエッジがイーツになってたのは大変だったのですよ」

 

 ジーク一人でああなのだ。もし英雄派の幹部全員がイーツになっていたらと思い、ニングはゾッとする。

 

 ジーク一人でオカルト研究部二年生組は全滅の可能性もあった。一人も死者が出ていないのは、ジークが遊びで挑んできたからだといってもいい。

 

 赤龍帝の力を強化したうえで丸乗せされた井草ですら、それなりにてこずったのだ。それだけの力を持っている者が大量に出れば、全滅してない方がどうかしているだろう。

 

 同年代にすら格上がごろごろいる状況に、イッセー達のやる気というか精神が心配である。

 

「まあ、今回はこっちの勝ちじゃしの。素直に喜んでおればええわい」

 

 だが、闘戦勝仏の言う通り勝利を掴んだのは井草達だ。

 

 英雄派のメンツは何人もボコボコにされた。ついでに言えば、本来の目的であるグレートレッド召喚は失敗している。

 

 そのうえで、少なくともオカルト研究部と生徒会は死者はゼロ。そこだけ見ればどちらかといえば勝ちではある。

 

 それに―

 

「母上ぇえええええええ!!!」

 

「まったく。九重は泣き虫じゃのぅ」

 

 -歓喜の涙を垂れ流しながら、回復した八坂姫に抱き着く九重の姿を見れば、達成感の一つぐらいは湧いて出るものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが乳語翻訳(パイリンガル)のたまものだってのが酷い話なんだけどね」

 

「それは言わねえお約束ってやつですぜ、井草」

 

 複雑な事を言ってのけた井草に、リムのツッコミが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『と、そんな事があったのですよ』

 

「あのねぇ。できればもっと早くに伝えてほしかったわ。……色々な意味で」

 

 ニングからの電話連絡を受けて、リアスは軽く頭を抱える。

 

 冥界でトラブルが起きて鎮圧する為に出動。そして一仕事終えた感覚でシャワーを浴びようとしたら、いきなり京都に転移された。

 

 そしてスイッチ(ちくび)をつつかれたと思ったら力が流れ込み、気づいたら元の場所に戻っていた。

 

 はっきり言って訳が分からなさすぎる。正直、電話連絡を受けるまで普通に混乱していたし、一緒に服を脱いでいた朱乃と小猫も唖然となっていた。

 

 そしてニングから連絡がきたと思ったら、「京都で英雄派と一戦交えた」である。

 

 正直怒鳴りたい。

 

「教えてくれてもいいじゃない。私達は仲間でしょうに」

 

『アザゼル先生に口止めされていたのです。流石に英雄派が接触してきてからは連絡する事になったのですが、その頃にはほら、そちらの方が……』

 

 実にタイミングが悪い展開だったという事だろう。

 

 こと冥界でのデモやクーデターは頻発している。

 

 純血下級悪魔が、大魔王派につつかれて暴発するといった形でのトラブルは数多い。

 

 転生悪魔制度の導入で冥界は力を取り戻してきていたが、このような形で弊害が出るとは想定外だった。

 

 良くも悪くも悪魔を特別視しない、サーゼクス達現魔王の善良さでは読み切れなかった事態だろう。そういう意味では、一般市民の悪意を増幅したビルデは優秀だ。

 

 これはそろそろ本気で事態の解決に動くべきである。

 

 しかし、それは大変だろう。

 

 悪魔も人間と同じく、善も悪もある一つの種族だとするサーゼクス。悪魔も人間と同じく、自分の我欲の為に他者を利用する邪悪だとするビルデ。

 

 その在り方は正反対であり、そして同時に明確な側面である。

 

 相容れる事はない。ゆえに、争うほかない。

 

 故にこそ、今冥界には新しい風が必要なのだ。

 

 そして、その方法の一つは明確にこちらにある。

 

 だが、それを行う事に躊躇を感じ―

 

『リアス部長。お話があるのです』

 

 -ニング、プルガトリオは聡かった。

 

 それだけで、リアスは彼女の意図を知る。

 

「……本当にいいの?」

 

 今明確に対策になるのは、一つだ。

 

 ルシファーの血を継ぐ者だとほかならぬ大魔王派が認めているニング・プルガトリオ。彼女を正当たる魔王の末裔として現政権が迎え入れる事だ。

 

 大魔王派であるビルデも、旧魔王血族のうち三人を引き入れている。正統な魔王の末裔が認めている事が大義名分の一つなのだ。なら、こちらも同じ事をすれば心理的な駆け引きを行なう事もできるだろう。

 

 だが、それはニングに重いものを背負わせる事に繋がるのだ。

 

 リアスはよく知っている。特別な家系の出であるという事は、誇らしくもあり煩わしくもあるのだ。

 

 一信徒として生きてきたニングには、重荷になるのではないのだろうか。

 

『心遣いはありがたいのですが、大丈夫なのです』

 

 だが、どうも見透かされていたらしい。

 

 電話越しの声には覚悟があり、しかしどこか軽い雰囲気があった。

 

『サーゼクス様達も普段は軽いですし、プライベートがきちんとあるのなら、息抜きぐらいはできるのです。なら、きっとやれると思うのですよ』

 

「それはそうだけど……」

 

 だが、まだニングは17である。

 

 できればもう少し子供でいさせてあげたいという意見も、特にサーゼクス達と思想が近しいものからは出てきているのだが―

 

『それに、お願いしたい事もあるのです』

 

 その言葉に、リアスは何事かと思いながら聞いてみて―

 

「………もう。あなたは本当にいい子なんだから」

 

 -その本命の目的を聞いて、苦笑するしかなかったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそー! うちの連中が結構やられちまったぜ!! あの妖怪三羽ガラスめ、覚えてやがれ」

 

「ナイアル殿。奴らの中には一人とて鳥類はいないのだが」

 

「例えだっての。天然ボケはしなくていいからな?」

 

「ふむ。それはともかく、ホテップ殿に頼んでいた件は大丈夫だろうか?」

 

「ああ? サイラオーグ・バアルとリアス・グレモリーをできる限り目立つ形で潰すってやつか?」

 

「むろん。我々大魔王派幹部最大の欠点は、若手で構成されている事だからな。時には成果を出さねばなるまいて」

 

「スリエールの奴が表に出てくりゃそれで済むんだろうが、奴さんが出てくるとヴァーリがうるせえからな。追放するにしても、オーフィスが気に入ってるからしづれぇしな」

 

龍喰者(ドラゴン・イーター)を使う相手は、グレートレッドではなくなりそうだな」

 

「ま、その辺に関しちゃ安心しろ。スパイがおもしれえ情報を掴んできやがった」

 

「というと?」

 

「グレモリーとバアルのレーティングゲームはするそうだ。それも、若手の注目株同士の試合って事で各神話体系からも観戦者がごろごろ出てくる。……ホテップが直々に姿を現すらしいぜ?」

 

「ほぉ。先遣艦隊最高のEEレベル保有者にして、本艦隊を含めても頂点を争う彼女が」

 

「そういうわけだ。俺も出張る事が確定してな。いやぁ、忙しくて涙が出るぜ!!」

 

「いいだろう。では我々も人員を派遣しよう。(キング)の駒の使用者も選定を終え、母体(リリス)の駒と貴族(ノウブル)の駒の質も、必要レベルには到達したのでな」

 

「おっほー! つーことは? 結構な人数がごろごろ出てくるのかよ!! ドンぐらいだ?」

 

「上級クラス五百人、中級クラス一万人、最上級クラスも……五十人ほど投入するつもりだ。それぐらいあれば、お披露目には十分だろうて」

 

「ハッハー! こりゃ神クラスとか殺しまくれるんじゃねえか? 楽しみだな、オイ!!」

 

「ああ、我らが勝ち組になるのも……もうすぐだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな悪党どもの会話もつゆ知らず、井草達はついに帰る日になった。

 

 最初から最後までトラブル続きだったが、それはあくまで偉業側の話。

 

 表の学生達はトラブルに巻き込まれる事もほぼなく、楽しい思い出を作りながら戻る事になっていた。

 

 そして井草達は……。

 

「痛い。痛いから! 悪かったから!!」

 

「ふぁふぁふぁふぁふぁ!!!」

 

 ……訂正。井草は九重に噛み付かれていた。

 

「井草さん。流石にあれは井草さんが悪いって」

 

 イッセーも止めずに、むしろ当然と言わんばかりの表情を浮かべている。

 

 それもそうだ。原因は昨夜の戦いにある。

 

 絶霧(ディメンション・ロスト)による転移で置いてけぼりにされた井草だが、その後即座に二条城に急行した。

 

 ……その際、井草は意図してなかったが結果的に九重をぶん投げる形になったのである。

 

 思いっきり壁に頭をぶつけたらしい。全てが終わった後に、気づいたアーシアに治してもらうまで、タンコブが誰が見ても分かるぐらい大きくできていたとか。

 

 なので井草も怒るに怒れないというか怒る資格がないので、こうして噛み付かれているのである。

 

「……ぷはっ! よし、これで勘弁してやる。二度とするでないぞ?」

 

「はい。流石にあれは俺が悪かったです」

 

 九重に怒る時はしっかりと怒った井草なので、怒られる時はしっかりと怒られ、そして謝らなければ筋が通らない。

 

 以後気を付けようと覚悟し、しっかりと頭を下げる。

 

「……まあ、色々あったけど修学旅行も終わりかぁ」

 

「ほんと、忙しかったですよね」

 

 井草とイッセーは顔を見合わせて苦笑する。

 

 英雄派にムートロンまで出てくる大騒ぎだったが、結果的には何とか潜り抜ける事ができた。

 

 更にはイッセーの力が覚醒したのも朗報だろう。全員無事に生き残る事もできたので、リアス達にはいい報告ができるとは思う。

 

「まあ、イッセーはリアスちゃんに謝った方がいいと思うけどね」

 

「ンな事言ったって仕方ないじゃないですか!! 俺だってあんな事になるだなんて思ってませんよ!!」

 

 軽く茶化してはいるが、そこに関しては井草も同意である。

 

 どこをどうすれば痴漢を大量に増やして、つつく為の乳を召喚するという強化手段が発生するのだろうか。転移術式なんて普通に存在する異形社会、どう考えてもコストパフォーマンスが悪すぎる。

 

 このままだと、最終的に母乳を静脈注射して覚醒などという異常事態が勃発しそうで怖い。井草は割と本気で心配している。

 

「イッセー! 井草さん、そろそろ出発するぞ!」

 

「早くしないと乗り遅れちゃうわよ~!」

 

 と、ゼノヴィアとイリナの声が届く。

 

 どうやらもう出発時刻のようだ。時間が経つのは早い時はどこまでも早いものである。

 

「よし! んじゃ、また会おうな、九重」

 

「うむ! 今度来た時も京都を案内してやるぞ!」

 

「楽しみに待ってるぜ!」

 

 別れの挨拶を交わすイッセーと九重を微笑まし気に見ながら、井草は八坂に一礼を返す。

 

「和平に対する助力、感謝いたします。これからも堕天使と京の妖怪が連携を取り、共に発展できる事を祈っています」

 

「うむ。おぬし達には世話になったからな。この礼はいつか返させてもらう」

 

 若干事務的だが、しかし本心からの言葉を交わし、井草もまた新幹線に乗り込む。

 

 そして、視線を席の方へと向ける。

 

「いや~。京都限定のお菓子とかたっぷり買っちまいましたぜ」

 

「無駄遣いはいけないのですよ。これからは気を付けるのです」

 

 などと言葉を交わしているリムとニング。そして、クラスメイト達が集まって会話を始めていく。

 

 その楽し気な光景を見て、井草は心から二人が駒王学園に来た事は良い事だと確信し―

 

『あ、井草君勝手に私のお菓子食べないでよ~!』

 

『あ、間違えた。お、俺のお菓子食べるか!?』

 

『何やってんだか。あんた達、もうちょっと中学生だからってTPOをわきまえなふぁい……もぐもぐ』

 

『『ちゃっかり自分も食べてる!?』』

 

 ……昔、中学生の時の修学旅行を思い出し、井草は肩を震わせる。

 

 そして動き出した新幹線の中で、井草は静かに目を伏せる。

 

 タガを外し、変わり果てた伊予。

 

 道を踏み外し、戻ろうとしない五十鈴。

 

 止めねばならないし、殺し合いになるかもしれない。

 

 だけど、それでも……。

 

「あの頃は、確かにあったんだよなぁ」

 

 笑うべきか泣くべきか。

 

 どっちにすればいいか分からない複雑な感情を抱えながら、井草・ダウンフォールは、京都から駒王町へと戻る新幹線に揺られるのであった。

 




そんなこんなでパンデモニウム編も完結。

次からはライオンハート編です。

とにかく激戦となります。ちょっとフライング戦闘したラウバレル以外の魔王血族二名もバトル開始で、彼らのイーツも出てきます。

そして、ナイアルとホテップの本格的バトル描写も出す予定です。主神クラスの化け物二人の暴れっぷりを楽しみに待っていてください。

















……そして井草の一つの物語である、五十鈴との物語も大きく一区切りがつくことになります。

それが悲劇で終わるか感激で終わるかは、どうか手に汗を握ってお待ちください。

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