混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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2話

 

 井草・ダウンフォールは何だかんだで色々と出来る人物だ。

 

 半分一人暮らしみたいな状況が長かったし、授業は家庭科であろうと真面目に受けるので、家事は一通りこなせる。

 

 神の子を見張る者としての報告業務などをこなしているので、事務作業や書類仕事も普通の会社員程度には出来る。

 

 そして、いわゆるDIY(日曜大工)もそこそここなせる。自分なんかが金を使って家具を何度も購入するわけにはいかないという後ろ向き自虐思考によったものではあるが。

 

 なので、オカルト研究部の学園祭準備において結構活躍していた。

 

「イッセー、次の板持ってきて。祐斗くんは釘が少なくなってきたから新しいのをお願い」

 

「「はい」」

 

 素早く手際よく作業を終わらせ、しかし一人で全部やるのではなくイッセーや祐斗も有効活用する適格ぶりを発揮して、作業を急速に終わらせる。

 

 しかしこれでも忙しい。何故なら、今回のオカルト研究部は手広くやっているからだ。

 

 内容は「オカルトの館」。喫茶店からお化け屋敷、展示発表と色々やる出し物だ。

 

 旧校舎を丸ごと使用できる利点を最大限に生かしたが、15名程度の文科系としては比較的多いほう程度の部活動では少々難易度が高い部類だった。

 

 この辺、二足三足の草鞋を履く事が珍しくない上級悪魔業界の悪癖が出てないだろうかと井草は思う。

 

 まあ、井草も学生とエージェントの二足の草鞋は履いているので人のことは言えないのだが。

 

 不幸中の幸いは、新しい部員が一人入った事で多少は労働力が増えている事だ。

 

 レイヴェル・フェニックス。フェニックス家の長女であり、かつては兄であるライザー・フェニックスの僧侶を務めていた少女。

 

 なんでもライザーがイッセーに負けて引き籠っている間に空いている母親の駒とトレードして、現在はフリーになっているらしい。

 

 とはいえよく知らない人物だ。それなりに知識を入れてから失礼の内容に対応するべきだろうとは思う。

 

「そういえばレイヴェルちゃんって娘、どんな感じ?」

 

「ああ~。それが結構苦労してるみたいなんですよ」

 

 と、イッセーは苦笑しながらそう答える。

 

 詳しく聞くと、なんでも学生生活に戸惑っているところもあるらしい。

 

 更にどうも小猫と仲が悪いようだ。一戦交えた事があるからかもしれないが、なんというか毒舌が普段より切れ味が増しているらしい。

 

「ふ~ん。でも、フェニックス家ってリアスちゃんの婚約関係で揉めたんだよね? ライザーって人を叩き潰したイッセーのことに敵意向けてるの?」

 

 なら小猫の態度も少しは理解できる。

 

 だが、それならそもそもリアスが駒王学園に転校する事を許さないだろう。

 

 首を傾げていると、イッセーも首を傾げる。

 

「そういや変なんだよなぁ。レーティングゲームであった時にはこっちのこと馬鹿にした感じだったのに、次に会った時に名前でいいって言ったら様付けで呼ばれるようになった……っていうかそこに拘ってたし。それからもケーキ作ってくれるって言ったり、本当に作ってくれたりするし……」

 

 その言葉に、井草は何かに気づいた。

 

 そして、ハンドサインで祐斗を呼び出すと、適当な言い訳を作って一旦離れる。

 

「……フォーリンラブ?」

 

「みたいですね」

 

 どうやら、同年代の泥棒猫ならぬ泥棒鳥に嫉妬しているのも原因の一つらしい。

 

 主やら先輩やらで強気に出れないところがある分、同年代には過激になるようだ。

 

「……あ、木場に井草さん、ちょっといいですか?」

 

 と、そこでイッセーが顔を覗かせる。

 

 振り返るとイッセーは困り顔になっていた。

 

「なんか、バアル家の人に呼び出されたんですけどどうしましょう?」

 

 意味不明だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よく分からないが、どうもバアルはバアルで色々とあるらしい。

 

 そんなある日、井草は珍しく外食をする事にした。

 

 ピスと二人暮らしの時は、ピスが不在の時もあるので外食の経験もないではない。なんというか久しぶりにラーメンが食べたくなったので、数日前から許可を取って、一人外食をしに来たのだ。

 

 ついでにビールと餃子も頼もうと思いながら店に入る。

 

 と、そこで以外……でもない人物と顔を合わせた。

 

「お、井草じゃねえか?」

 

「アザゼル先生」

 

 どうやらアザゼルもラーメンを食べに来たらしい。意外なタイミングである。

 

 組織のトップであり学校の教師にして、部活の顧問。三つの意味で上役である。

 

 既にビールをジョッキ何杯も飲んでいるらしく、顔が少し赤くなっている。どうやら帰りに寄ってそのまま飲んでいるらしい。

 

「よっしゃ! 奢ってやるからこっちに座れ! 店員さーん! こいつ俺の連れだから領収書一緒でなー!」

 

 なんかいきなり奢られる流れになった。普通に給料をもらっているから問題ないのだが、まあいいだろう。

 

 なにせ相手は国家元首クラスの人物である。研究者としても様々な技術を開発しており、異形社会で特許を取ってもいる。金はあるのだから、少し位奢ってもらっても罰は当たらないだろう。

 

 まあ、勝手に組織の金を横領して自分の趣味の研究をする人だが。

 

 ……まあいいだろう。井草はそう言い聞かせる。

 

 深入りするのは頭痛の素だと判断して、井草は席に座る。

 

「そういやこういった奢りをした事って……ピスと一緒の時ぐらいか」

 

「あ~、そういえばそうですねぇ」

 

 井草はそういえばそうだと思い出す。

 

 何故かちょくちょく顔を出すアザゼルは、ピスと井草を連れて何度も奢ってくれていた。

 

 井草が伊予と五十鈴の件で大きな失敗をした時も、よく面倒を見てくれた。

 

 今なら分かる。死にたがりだった自分を生かす為に、どれだけ心を砕いてくれたかを。

 

 ……だからこそ、それが気になった。

 

 とりあえずは取り留めのない会話をしながら酒飲みをしていたが、しかしいい機会だし聞いてみるのもいいかもしれない。

 

「……先生、ちょっと聞きたいんですけど」

 

「なんだ? 言っとくが機密事項は言えないわけで―」

 

「なんで、俺のことそんなに気にかけてくれるんですか?」

 

 その言葉に、アザゼルは一瞬硬直する。

 

 井草はそこで何かあると確信しながらも、あえて踏み込んだ。

 

「俺の親についてはもうどうでもいいんですけど、総督がそこまで気にかけてくれる理由が分からないんです。堕天使のハーフなんて結構多いし、新規だってぶっちゃけ比較的ありふれてるし……」

 

「……そうだな。いい加減、話した方がいいのかもしれねえな」

 

 アザゼルはそう言うと、少しだけ考えて首を振った。

 

「いや、酔ってる時に話す事じゃねえし、俺もちょっと心の準備がいる」

 

 その言葉に、井草は思った以上に深い話な気がして、息をのむ。

 

 そして、ふと嫌な予感を覚えた。

 

「まさか、酔った勢いでスワッピングプレ〇した時にできた子供で、それが父さんと母さんが色々あった原因……?」

 

「違うわ! 天然でなんツーこと言ってんだ、お前!!」

 

 真面目に考えたらツッコミが入った。

 

 それは良かった。そんな理由で両親が問題を抱えていたら流石にアザゼルを殴りたくなる。というより醜聞以外の何物でもない、堕天使全体の格が下がる。

 

 だが、だとするのならどういう事なのだろうか。井草にはそれが分からない。

 

 しかし、どうもアザゼルは今この段階で言うつもりはなさそうだった。

 

「あ~……ったく。よし、じゃあこうするか」

 

 髪をぼりぼりかきながらアザゼルは唸ると、意を決したかのように頷いた。

 

 そして、井草に指を突きつけると宣言する。

 

「枢五十鈴と行人伊予としっかりケリをつけてこい。そしたら教えてやる!!」

 

 凄まじい事を言ってきた。

 

 ……だが、望むところである。

 

「了解です。しっかりきっかり決着をつけて見せますよ」

 

 どちらにしてもつけなくてはならない決着だ。きっかけにするには十分だろう。

 

 なら、それでいい。

 

 どうせ気になっていると言ってもそこまで深く考えているわけではないのだ。なら、それぐらいのご褒美でちょうどいい。

 

 そう判断して、井草はちょっと本格的に飲む事にする。

 

 こういう時は気分転換で飲みまくるのが一番だ。

 

「お姉さん! 瓶ビール三本追加で!!」

 

「お前、二十歳と言っても学生だろうが! 飲みすぎじゃね?」

 

 アザゼルから普段の生活関係でのツッコミを入れられるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………そして、盛大に飲みすぎて盛大に二日酔いになったのは余談である。

 

 ちなみにアザゼルと一緒に飲んだ事もばれて、アザゼルが監督責任と問われるたものの、井草は二十歳なので自己責任とアザゼルは徹底抗戦の構えを見せている。まあ、それも余談である。

 


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