混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

110 / 157
では、D×Dで結構な頻度で行われる修行タイムです!!


3話

 

「でぃやぁああああああ!!」

 

「はぁあああああああっ!!」

 

 ぶつかり合う、聖なる大剣と神なる大剣。

 

 正教会の錬金術によって、エクスカリバーを鞘として纏う事で制御力の向上が図られたデュランダル。エクス・デュランダル。

 

 悪神ロキが開発したミョルニルレプリカであるムジョルニアを剣に打ち直した新たなるトールハンマー。トールセイバー。

 

 それぞれゼノヴィアと井草の新兵器であり、その能力をより引き出す為、いつもの訓練の過程で模擬戦を行なうのは当然の帰結だった。

 

 オカルト研究部は、もはや三大勢力の特殊部隊一歩手前だ。

 

 英雄派曰く「既に現役の上級悪魔眷属と大差ない」と称される実力は、本格的に現役になっていない若手悪魔としては異例の実力である。

 

 更には戦闘経験の豊富さも若手としては異例だろう。

 

 ただ数の多さで競うのならば大抵の現役上級悪魔の方が多いが、質においては大半の上級悪魔の追随を許さない。こと堕天使筆頭格の一人であるコカビエルと、旧魔王末裔三人との戦いなど、かつての戦争の時期から生き残っている悪魔でもそうはない。それを全員が生き残ってともなれば、もはや絶滅危惧種と言っても過言ではない希少さだろう。

 

 それらの経験が完全に合致すれば、その能力は更に大幅に高まるだろう。いずれは最上級悪魔の眷属にも引けを取らない精鋭になる事は確定ともいえる。

 

 だが、そこに胡坐をかくような精神性を彼らは持ち合わせていない。

 

 元々の資質もあるが、それ以上にその戦闘経験の質が要因だろう。

 

 何せ、それだけの実力と経験を持っていながらも、全員生存が奇跡に近い強敵達の戦いを経験してきたのだ。怠慢は死に繋がると誰もが本能で察している。元から努力してきたからこその生存であることも、身にしみて分かっている。

 

 だからこそ、オカルト研究部は皆が毎日のトレーニングを欠かさない。それも、常に前日より高水準になるような勤勉かつ貪欲なトレーニングをだ。

 

 その一環としてこそ、新兵器の習熟と洗練を兼ねた二人の特訓は真剣だ。

 

 そしてその特訓も終え、二人は水分を補給しながら感想を言い合う。

 

「レプリカとはいえミョルニルというだけある破壊力だ。とはいえ、ロキが使っていた時よりは出力が低下しているようだけどね」

 

「腐っても神なだけはあるね。まあ、まだまだ伸びしろがあると前向きに捉える事にするよ」

 

 ゼノヴィアの感想に、井草もまた前向きに受け取りながら同意する。

 

 トールセイバーの出力は絶大で、既に魔王クラスに匹敵するだろう。

 

 だが、ロキがトールイーツの力で使用したときは文字通りの神クラス、それも上位のものだった。

 

 それに比べればまだまだ使いこなせてない。裏を返せば、使いこなせれば確実に上位の神にも通用するということだ。

 

 未熟ではあるが、ゆえにこそ伸びしろがある。そういう捉え方をして、より成長に貪欲になる方向性を井草は選んでいた。

 

 そして、未熟を指摘するのは井草もだ。

 

「でもゼノヴィアちゃんの場合、流石に破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)だけ活かすってのももったいなくない?」

 

「ふむ、私はやはり破壊力こそが持ち味な気がするんだけどね」

 

 実際問題、エクス・デュランダルは多機能性と大火力を併せ持った聖剣だ。

 

 ゼノヴィアは元から攻撃力特化の思考と適正を持っているが、そういう意味では気質に合ってないない。

 

 とはいえそれは井草も同じ。レセプターイーツは取り込んだ他のイーツの特性を使う事ができる、拡張性の高さこそが持ち味だ。攻撃力編重は方向性としてはまっすぐゆえに逆に捻った方向性だろう。

 

 だが、井草はそれもまた一つの方向性だと理解している。

 

 魔王クラス神クラスの領域に到達している幹部クラスのアウターイーツを相手にするには、突き抜けた武器というものも必要だろう。

 

 その絶大な威力をトールセイバーに頼り、そこに至るまでの道筋をレセプターイーツの拡張性に求める。

 

 そういう意味でなら、ゼノヴィアは逆の方向性を選んだ方がいいだろう。

 

 彼女の火力はグレモリー眷属でも飛び抜けている。単純近接攻撃力なら、裏エースの祐斗を圧倒し、表エースのイッセーすら僅かに凌ぐだろう。

 

 だが、絶大極まりない禍の団の幹部格を相手にするには、それだけでは捌かれる恐れがある。

 

 それに対抗する為には、エクス・デュランダルの多機能性が必要ではないだろうか?

 

「ふむ、私としてはグレモリー眷属のテクニック担当は木場で十分だと思うのだが」

 

「祐斗君泣くよ? いや、何も色んな能力を多角的に運用しろって言ってるんじゃないんだよ」

 

 ゼノヴィアの開き直り発言に苦笑しながらも、井草は決して祐斗になれなどとは言わない。

 

 人には向き不向きがあり、気質がある。それを無視した多様性重視の思考は、机上の空論であり人を見ていないだろう。

 

 ゼノヴィアはエクスカリバー使いとして、破壊力一点特化の典型的パワータイプ向きである破壊の聖剣を宛がわれたものだ。その気質は攻撃力にこそ発揮される。下手な小細工は持ち味を殺すだろう。

 

 とはいえ、それだけではあまりに愚直。一手間加えるだけで大きくその攻撃力を更に活かせるだろう。

 

「例えば、透明の聖剣を全身に使えるようになって不意打ちを仕掛けるとか、天閃の聖剣で速度を上げるだけでも躱しづらくなるよ?」

 

「ふむ、確かに、動きが速くなれば相手が反応するより早く絶大なパワーを叩き込めるな」

 

 井草の意見にゼノヴィアも一瞬思案する。

 

 それを微笑ましく見ながら、井草はやんわりとゼノヴィアの背中を押す。

 

「ちょっと一工夫加えるだけでも大違いだよ。ゼノヴィアちゃんは凄くパワーに長けてるんだから、複雑な手順を踏む必要はない。料理で例えるなら一つまみの隠し味だね」

 

 そう、それは井草も同じ事だ。

 

 井草・ダウンフォールは決して火力編重方ではない。むしろバランス型と言ってもいい。そして、最大の力であるレセプターイーツもまた、拡張性特化型のイーツだ。

 

 なら、その拡張性をたった一つに割り振るのは悪手だろう。

 

 井草の火力は当面トールセイバーに集中する。ゼノヴィアも持ち札を増やすのは組み合わせではなく一つ追加する程度にする。

 

 二兎追うものは一兎も得ず。船頭多くして船山に上る。欲張りすぎてリソースが分散化すれば、それこそ敵には届かない。

 

 そこまで分かっているからこその、ゼノヴィアに対するアドバイスだった。

 

「じゃあ、そういう事でまずはシンプルな天閃から行ってみようか」

 

「了解だ。速度で木場に追いつけるほどにまで高めれば、あとは寄って切るだけな分私向きだしな」

 

 そう判断して二人で新たに特訓を開始しようとして―

 

「ハイそこまで。今日はそろそろ休んでもらわないとこっちが困るわ」

 

 -リアスがそこで待ったをかける。

 

 そう言われて、井草はふと思い出した。

 

 明日は特に用事はないが、それは井草だけの事。リアス達グレモリー眷属は、ちょっと大事な予定が入っていた。

 

「ああ、そういえばレーティングゲーム前のインタビューが入ってるんだっけ?」

 

 そう、今回のレーティングゲームは特別なイベントごとになっていた。

 

 なにせ大魔王派の暴挙によって、悪魔は二分されたといってもいい。その影響で悪魔全体のダウナー状態だ。

 

 それに対する一種のハレのイベントとして、若手悪魔のエースであり、悪神ロキすら退けた立役者達のレーティングゲームに白羽の矢が立った。

 

 すなわち、バアル義勇軍の中核であるサイラオーグ・バアル眷属と、それ以外にも数多くの三大勢力絡みに近年の戦いで成果を上げたリアス・グレモリー眷属である。

 

 その為下手なプロのレーティングゲームよりも注目が集まっており、一種の合同インタビューが行われるのである。

 

「お疲れ様。人気者はつらいね」

 

「ええ。でも、これが冥界の為になるのならやって見せてこそのグレモリー次期当主だわ」

 

 そういうリアスは、しかし一瞬だけ暗い顔をする。

 

 その視線が一瞬だけ向いた先では、イッセーと祐斗が今後の強化の方針について、レイヴェルとともに話を弾ませていた。

 

「………?」

 

 何か嫌な予感を感じながらも、井草はそれがどういう事なのかが少しだけ分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてインタビュー会はあくまで悪魔のイベントなので、井草は再び居残っていた。

 

 だが……。

 

「寂しい」

 

 インタビューは生中継なので見ようとしている井草だが、一人では少し寂しかった。

 

 少し前なら気にする事もなかった事だが、これを弱くなったと取るか人として成長したと取るべきかは、文字通り人それぞれだろう。

 

 とはいえ、最近両サイドを固めるリムとニングがいない事は、とても寂しい。

 

 最近二人は色々と忙しいようだ。まず間違いなくルシファー末裔として名乗りを上げる準備だと思われる。

 

 それの必要性も価値も理解しているので文句は言わないし言えない。

 

 ただ、とても寂しい。

 

「……あ~寂しい」

 

 一言でいうのなら、こういう事だろう。

 

 人恋しい。

 

 欠けていた物を取り戻していたというべきか、それとも荷物が増えたというべきか。何事も良い事と悪い事があるという事だろう。

 

 仕方なくやけ酒としてビールを飲みながら、インタビューに集中しようとして―

 

『それで、今度もおっぱいをつつくのでしょうか?』

 

 -記者の一人の質問に、井草は勢いよくビールを拭いた。

 

 炭酸が鼻の穴に入って悶絶する。

 

 何とか平静を取り戻してテレビに意識を向けてみれば―

 

『ぶちゅぅ!? 今度は吸うんですか!?』

 

 -更なる発言に井草は脱力して顔面を強打した。

 

 何がどうしてこうなった。あとたぶん、それは部長と言おうとして噛んだんだと思う。

 

 そんな事思いながら、そして冥界の報道業界について不安を覚えながら、井草はどうやって収集を付けるのか心配になった。

 

 明らかにどいつもこいつも数という誤解に意識が集中している。普通なら炎上したり罵倒が飛びそうなのだが、むしろ期待に満ちている辺り、人間とは文化が違う気がする。

 

『サイラオーグ選手はどうお考えですか!?』

 

 そっちに振るな。おそらくイッセーと井草の心の中が一致した瞬間である。

 

 これは返答に困るというか、むしろ怒るのではないだろうかなどと思ったのだが―

 

『ふむ、兵藤一誠がリアス・グレモリーの乳を吸ったら、それは恐ろしい力を発揮しそうだな』

 

 まさか乗っかるとは思わず、井草はもう一度脱力して顔面を強打した。

 

 そういえば、サイラオーグ・バアルはあのサーゼクス・ルシファーの親族だった。

 

 井草はそれを思い知り、軽く頭痛を感じて頭に手をやる。

 

 もはや、この会見はおっぱいで埋め尽くされていた。

 

 間違いなく明日のニュースは「おっぱいドラゴン、次は吸う!?」とかになるに違いない。

 

 リアスに心から同乗して、井草は何かやけ食い用のお菓子でも買ってきてあげようとコンビニに向かう事を決定した。

 




 トールセイバーは基本バスターソードという設定なので、必然的に同系統の武器を使うゼノヴィアとの模擬戦は重要だと判断しました。

 以前ケイオスワールドでは「エクス・デュランダルをもつゼノヴィアをテクニックタイプに移行」すら考えている節のあった木場に対して「政治的観点も込みでエクスカリバーを返却してパワータイプ一本化にする」ことすら主人公の視野に入れさせましたが、今回井草には、「ゼノヴィアの良さが重要だけど、あるんだからちょっとしたサポートぐらいは使わせよう」といった感じでのアプローチになりますね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。