混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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原作主人公はきちんと活躍しました。

本作主人公ももちろん活躍させますとも!!


9話

 

 一方その頃、井草は血を吐いて膝をついていた。

 

 コブラの意匠を持つ怪人と化したカラワーナの攻撃を受けて、いきなり動きがマヒした。

 

 コブラの合成音声が鳴り響いた怪人だ。おそらく毒を持っていた可能性がある。

 

 それでも翼を広げて何とか距離を取ろうとするが、その瞬間に蛇の尾を思わせる鞭が叩き付けられた。

 

「ッ!?」

 

「ふん。イーツの前には上級堕天使もこの程度か」

 

 カラワーナは平然と、そして高揚感を感じさせる声でそう言い切る。

 

 そして、リアスと朱乃も苦戦していた。

 

「しつけえっすよ、このポニテ!」

 

「これは……堕天使風情が……っ!」

 

 蝙蝠の怪人と化したミットルテの超音波攻撃を受け、朱乃の巫女服はボロボロになる。

 

 それでも広範囲の雷を放ってまともに戦えているが、しかしこちらも苦戦している。

 

「ふん! 我が糸を消滅させるのは、滅殺姫といえど難しいようだな」

 

「何なの、この糸は!」

 

 リアスもまた、蜘蛛の怪人と化したドーナシークに苦戦していた。

 

 あらゆるものを消滅させる、母方の血から受け継いだ消滅の魔力ですら、ドーナシークの生み出す糸を消滅させるのは困難だった。

 

 完全に苦戦を強いられている。上級クラス三人がだ。

 

 しかも、イーツといえば―

 

「アザゼル総督が警戒してた、最近噂の謎の怪人! まさか、堕天使が変身する存在だったとはね」

 

「それは少し違うな」

 

 カラワーナは井草の言葉を否定する。

 

 そこには、どこか屈辱的なものもあった。

 

「イーツはエボリューションエキスに適性があれば誰でも至れる。我々にこれを紹介したフリードは人間だし、悪魔やこの国の妖怪にも適性がある者がいるそうだ」

 

「……まさか、それほどまで種族に行き渡っているというの!?」

 

 ドーナシークが放つ糸をかき消しながら、リアスが瞠目する。

 

 当然だ。堕天使側はともかく、勢力によっては人間の問題とだけで片付けられている事も十分あり得る。

 

 それが、異形達にも行き渡っているなど狼狽ものだろう。しかも下級堕天使が上級クラスと互角に渡り合えるレベルに迄強化されている。

 

 これは、自分達が思っているよりも遥かに非常事態だ。

 

 おそらくイッセー達の側にもイーツと化した者達がいるのだろう。それも、おそらくは複数が。

 

 なんとしてもここを突破して、イッセー達を助けに行かないといけない。

 

 だが、それを行う余裕がない。

 

 毒の影響で体の自由がきかない。しかも、謎の感覚は強くなる一方だ。

 

 このままだと、動けなくなる方が遥かに速い。

 

「まあいい。ここで仕留めればそれも終わりだ。……死ね」

 

 カラワーナが、右腕の牙上の武器を使って井草に迫る。

 

 このままでは回避できない。

 

 このままだと致命傷だ。

 

 このままだと全滅もありうる。

 

 ……それは、認められない。

 

 自分が死ぬのは良い。因果応報という言葉はあるし、まあ堕天使が悪魔の領内にいるのだから、殺されても文句はない。

 

 だが、ここで死んだらリアス達もジリ貧だ。イッセー達もやられるだろう。アーシア・アルジェントは確実に死ぬ。

 

 それはダメだ。

 

―俺なんかの所為で、死人が出るのは認められない。

 

 その極めて後ろ向きな決意が、最後のスイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ドーナシークは吹き飛ばされるカラワーナを見た。

 

 カラワーナは完全な偶然でミットルテとぶつかり、そして状況をひっくり返す。

 

「なんだと!?」

 

 カラワーナが一番有利な状況だった。

 

 なにせ相手は毒を受けて動きが鈍っているのだ。糸を消滅させてくるリアスと相対している自分はもちろん、広範囲攻撃という意味では同じ土俵で勝負ができる相手の女王と戦っているミットルテも手こずるタイプだ。

 

 一番楽な相手に逆襲された? 今の堕天使を超えた自分達が?

 

 あり得ないと思い、そして視線を向け―

 

「……なんだと!?」

 

 そこには、自分達とは異なるイーツがいた。

 

 よりスマートで人型に近い外見。何かを受け止めるような円錐状の物体を両肩に装着した、そのイーツがカラワーナを弾き飛ばしたのだ。

 

 そして、其れがイーツであることをドーナシークは直感で理解した。

 

「どういう事だ!? 基本的に、イーツは我々賛同者とデモンストレーション用のEEレベル1以下のものしか使用されてないはず―」

 

「―遅い」

 

 その瞬間、拳がめり込んだ。

 

 ろっ骨が折れるのが分かる。肺もひしゃげた。

 

 ドーナシークは、狼狽しながらもそれを納得してしまった。

 

 なにせ井草は、ハーフとは言え上級堕天使だ。下級である自分とは戦闘能力の桁が違う。

 

 それが、同じイーツとなればどうなるかなど、言うまでもない。

 

「……吹き飛べ」

 

 そして、ゼロ距離からの攻撃を受け、一気に吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアスはもんどりうって倒れたカラワーナとミットルテに全力の消滅の魔力をとっさに叩き込んでから、そしてすぐに唖然となった。

 

 いきなり下級堕天使三人が怪物になって自分達を追い込んだかと思ったら、今度は井草が怪物になって怪物の1人を一蹴した。

 

 とっさに隙を見せた堕天使二人を滅したが、然しこれは明らかにおかしい。

 

 何がどうなって、井草が化け物に変貌したというのか。

 

 いな、そもそも今の井草は味方と判断していいものか―

 

「……ん? どうしたんだ、リアスちゃん」

 

 ―味方でよさそうだ。

 

 そもそも状況を正しい意味で理解していない。自分がどういう事になっているのかすら、よく分かってない節があった。

 

「……朱乃、鏡を持ってきて頂戴」

 

「あらあら。堕天使は抜けている人が多いようですわね」

 

 呆れ顔の朱乃が出した手鏡で自分の姿を確認した井草は、固まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに五分後、変身が解けて冷静になれた。

 




本作主人公、覚醒の第一歩を遂げる。

まあ、今回はちょっぴりなのですが。下級堕天使と上級堕天使がイーツを使ったもの同士なら、たいていの場合はこうなります。

井草のイーツとしての名前や、その能力についてはまた後程。この段階ではちょっと言いたくても言えないんですよねぇ。ネタバレ的にも都合的にも。

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