混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
さあ、最大の衝撃が井草を襲います。読者の皆さん、覚悟はいいか!!
フェロモン。
その言葉に、ナイアルは嗤いをより深くする。
そして、その言葉に井草は何か寒気すら感じる。
「……シアリーさん? それって、どういう?」
井草の言葉に、シアリーは一瞬だけ目を伏せながら、しかしはっきりと告げる。
「蟻の中には女王蟻のフェロモンを利用してコロニーを形成する種別があります。デフォルトイーツが人間体のままでも能力を発揮できるのなら、人間にも効果があるフェロモンを保有している可能性はあるかと」
その言葉に、井草は凍り付く。
井草だけではない。リアス達もまた、その言葉に伊予へと視線を向ける。
「あぁ……あ……あぁあああああ……」
今でも震えながらうつむきかが見込んでいる伊予をいて、正気でないというものもいるだろう。
だが、それを返せばそもそもあの彼女もまた正気とは言い難い。
井草・ダウンフォールから伝え聞く彼女と、リアス達が知る彼女との間には大きな変化がある。
そして、そこから急激に発生したこの変化。
いくらデュリオの虹色の希望で大切なものを思い出したにしろ、ここまでの変化は大きすぎるのではないか。そも、あそこまで変わり果てていて大切なものを思い出しても、その大切なもの自体が変化している方が当然ではないか。
だが―
「因みに蟻のフェロモンは唾液に含まれている事があります。……確か、枢五十鈴嬢はナイアルに迫った時に即座にキスされていたとか」
そうだ。伊予もまた言っていた。
キスをした時に、井草と五十鈴のことを忘れたと。
井草は震えながら、ナイアルに目を向ける。
今ばかりはナイアルに心から願いたいことがあった。
否定してほしい。見当違いだとシアリーを嘲笑ってほしい。馬鹿にしてほしい。
そんな懇願すら視線に込めてしまうほどに動揺した井草の前で、ナイアルはポリポリと頭を掻き―
「まあ、90点ぐらいかねぇ」
その瞬間、井草は再びキレた。
「ナイアルぅぁあああああああああ!!!」
全身全霊のトールセイバーをたたきつける。
それを、ナイアルは即座に拳をもって迎撃する。
神格クラスの雷撃を纏った斬撃を、側面を殴るだけでいなすナイアルは、しかし肩をすくめながら首を振る。
「勘違いすんなよ? 蟻と人間じゃぁいろいろ性能が違う。俺のフェロモンは酒に酔わすよりは効果覿面だが、麻薬みたいに人格を崩壊させるには一歩足りねえ」
そして、飽きたのか井草を殴り飛ばすと、即座にムートウェポンによる攻撃を放つ。
それを光の槍で迎撃する井草に、今度はナイアルが接近戦を仕掛ける。
「だから、突き落とせる相手を見つけることが必要なんだよ。……具体的には、現状に不満を持っていて、そいつの現状の反対側に俺らがいるやつとかがいい」
そしてボディブローを叩き込み、井草を壁にたたきつけると、その顔面にケリを叩き込む。
「そういう意味じゃあ、むしろ素面になれた伊予と五十鈴はすげえわなぁ。普通はここまで堕ちたら最後まで落ちっぱなしだぜ?」
「ふざ……けるなぁあああああ!!!」
心からの関心が込められたナイアルのセリフに、井草は激情とともに魔力を全方位に放つ。
取り込んだデビルイーツの力を使い、井草はナイアルを強引に引きはがすと、そのままトールセイバーを振り下ろす。
躱される。薙ぎ払う。
避けられる。振り回す。
当たらない。それでも切りかかる。
「お前が! お前が!! お前がぁ!!」
「いいねぇ! そういう奴とかに突っかからせるのも面白い。たまにやる分には結構楽しいんだよなぁ」
そして大降りになった隙をつき、ナイアルは井草を殴り飛ばす。
追撃しようとした瞬間、莫大な雷光がほとばしり、ナイアルはそれを迎撃する。
そして同時に、多様な種類の攻撃がナイアルに向かって放たれる。
「この外道……っ!! 許しませんわ!!」
憤怒の感情にかられるグレモリー眷属。イッセーのカバーに入っている以外のメンバー全員が、朱乃を筆頭に全力の攻撃を叩き込む。
ロイガンの眷属がビルデの眷属をけん制しているからこそできる真似だが、しかしナイアルは動揺しない。
冷静にシールドユニットを展開すると、防御フィールドを展開して受け流す。
「いや、マジで結構面白くてついついやりすぎちまうんだよ。ロキの時もアスクってやつの女寝とったときに井草と同じまねしててな?」
アスク。その言葉にバアル眷属もグレモリー眷属も思い出す。
たしか、ロキと共に襲撃を仕掛けてきたイーツ使いの1人だ。
ロキがどうやって詳細なエボリューションエキスの技術を入手したのかは疑問だった。思わぬところからその答えが出てきてしまったものだ。
そして、それだけにさらに怒りに燃え上がる。
それに気づいたのか、ナイアルは少しだけ驚いた表情を見せる。
「敵の強化しちまったのは悪かったな。ま、迎撃戦力は俺が送り込んだからそこは許してくれや」
そうにっかり笑って片手を上げて謝るナイアルの左右を、祐斗とゼノヴィアが挟み込む。
「そういう……問題だと―」
「―思っているところが!!」
聖魔剣とエクス・デュランダルの一撃を、ナイアルは左右同時に放ったジャブで弾き飛ばす。
そこに大量の聖剣の龍騎士が多しかかるが、その瞬間ナイアルの周囲に蟻を模した怪人が同数現れ、それを一瞬で粉砕する。
「クイーンアントイーツのもう一つの能力だ。一部のイーツにゃぁレベル2っていう次があるんだよ。俺とかそちらの助っ人三人が、それな?」
そう茶化して言うナイアルに、二人はさらに切りかかる。
「罪もない少女を、それも思い人のいる少女を!!」
「外道が!! 井草さんのためにも、お前はここで切り殺す!!」
怒りに燃える祐斗とゼノヴィアの剣がオーラを放つ。
だが、それはまったく同質のオーラが横から飛んできたことで相殺された。
「ふむ、まあ趣味がいいとはいいがたいがな」
そのオーラを放ったのは、コピーイーツと化したビルデ。
その両手には、消えていく聖魔剣とエクス・デュランダルの姿があった。
あまりの事態に目を見開く二人に、ビルデはさほど得意げにもならない。
「……コピーイーツは本来こう使うのだ。まあ、材料と現物無しでは陽炎しか作れんのだがな」
そう告げるナイアルに意識を取られた瞬間、ナイアルが拳をふるう。
そして、それによって生まれた衝撃波が二人のあばらを砕き、弾き飛ばした。
「こんなもんか。じゃ、そろそろ終わらせるかねぇ?」
そして、起き上がろうとする井草に向けてムートライフルを構え―
「じゃ、五十鈴の後を追いかけな!!」
-躊躇なく、引き金を引いた。
起き上がろうとする。間に合わない。
相打ちを狙おうとする。そんな余裕はない。
つまりは、詰んだ。
井草は冷静にそれを認識する。
もはや心の中には絶望しかない。
目の前の男が許せない。殺せるものなら殺してやりたい。その為なら命ぐらい捧げてもいいとすら思う。
だが、それができない事もかろうじて自覚している。
そうだ。それではニングとリムが悲しんでしまう。
だから、ここで死ぬわけにはいかない。なんとしても、生きなければならない。
だが、それも届かない。
激情にかられすぎた。その所為で痛烈な一撃をもらった。
主神クラスに匹敵するナイアルの拳は、最上級クラスに届く井草にとっても致命傷寸前だ。ダメージが大きすぎて動く事ができない。此処から一撃もらえば確実に死ぬ。
それだけの威力の攻撃で、しかし躱す余裕がない。防ぐ事もできない。
詰みだ。井草・ダウンフォールは、既に詰んでいる。
許せない男が目の前にいる。その男の所為で大切な過去が傷つけられた。そして、その男に殺される事で大事な人達が曇ってしまう。
分かっているのに。しかし届かない。
「………ちく、しょう」
最後の最後で、八つ当たり気味にそれだけ振り絞る。
そして、せめてこの男の心まで屈してなるものかと、最後の意地で井草はナイアルを睨みつける。
放たれる砲撃越しにその殺意の籠った視線を向け―
「そこは「ゴメン」とかの方が嬉しかったのですよ」
「まったくですねぇ。井草は空気を読んでくれねえですぜ」
―振るわれた斬撃が、その砲撃を十字で切り裂き、
「まあまあ。その辺にしておいてあげなさい」
「その通りだ。井草がそう言いたくなるぐらいには、この男はあまりに外道だからな」
大量の光が、ナイアルを叩きのめした。
その光景に、井草は目をぽかんとするほかなかった。
声の主は分かる。ニングとリムだ。ついでといわんばかりにナイアルを吹き飛ばしたのは、バラキエルとミカエルである。
だが、問題はその姿だ。
バラキエルとミカエルは問題ない。問題なのはニングとリムである。
なんというか、強化外骨格とでもいうべき鎧に包まれていて、二人の顔が見えない。
近未来的なパワードスーツと言った方がいいのだろうか? とにかく、なんかファンタジーバトル作品的な今の現状と合致していない。
なので、井草は一応聞いてみた。
「えっと……リムにニング?」
「はいなのです」
「持ちですぜ♪」
そう言いながら、二人は頭部のアーマーを解除する。
確かにそうだ。よく見覚えのある二人の顔だ。
だが、だからこそ聞きたい。
「……何それ?」
その言葉に答えるのは、バラキエルだった。
「新兵器だ。枢五十鈴のおかげで間に合った、我々の切り札さ」
その言葉に真っ先に反応したのは、ナイアルだ。
ナイアルは目を見開くと、起き上がるのも一瞬忘れて冷や汗を流す。
五十鈴が何かしらの横流しをしていたのは気づいていた。おそらくエボリューションエキスだとも思っていた。
だが、まさか―
「疑似的なイーツなのか、それは!?」
「その通りです。人工神器技術と併用して、完成に漕ぎ付けました」
そう告げるミカエルは、光の剣を具現化しながらにっこりとナイアルにほほ笑んだ。
味方によっては慈愛の微笑みだが、誰がどう見ても皮肉でしかなかった。
実際そうだろう。相当の激情に駆られていたのか、一瞬だけ翼が黒くなりかけていた。
「人工神器技術を併用して開発した、イミテーションイーツ「ジエーム」だ」
バラキエルはそう告げると、殺意を込めた視線を叩き付ける。
「外道が。朱乃の目の前で井草を使って最低最悪の余興をした報いを受けてもらうぞ」
「同感です。我らが主は裁きも担当します。今日は私が代行いたしましょう」
相当の怒りを覚えているのか、絶対零度の視線をバラキエルとミカエルはナイアルに向ける。
そして、そこにロイガンもまた並び立った。
「じゃあ手伝わせてもらうわ。……ゲームをこんな外道に悪辣な穢され方をされたら、私も黙っていられないもの」
魔王クラス三人による、怒りによる同盟成立。
和平を結んだ三大勢力という、ムートロン最大級の敵の代名詞レベルに、流石のナイアルも頬を引くつかせた。
「待ってください! そいつは、俺が―」
井草はそういって割って入ろうとするが、しかしバラキエルは手で制する。
「……今の君では勝てん。此処は私たちに任せたまえ」
「だけど! あいつは五十鈴を死に追いやって、伊予も!!」
当然井草は食い下がる。当たり前だ。
大事なものを汚され、そして目の前の男のせいで死んでしまった。
それ相応の報いを与えなければ、我慢できない。
勝てないのは分かっている。だが、それとこれとは別なのだ。
そんな井草の渾身の言葉に、バラキエルはしかし首を振る。
「井草。お前は一つ勘違いしている」
「役に立たないのは分かっています!! だけど、だけどここで動かなかったら、俺は俺を一生許せない!!」
井草はふらつきながらも、それでも食い下がる。
「あの……井草」
「五十鈴の想いに気づかず、五十鈴を追い詰めて、そして結局彼女を救えなかった!!」
「そ、その……ね?」
「お願いします!! もう肉の盾でも何でもいいから貢献させてください!! 絶対死にませんから、ニングとリムが悲しむし!!」
「井草? その決意は……いいんだけど……」
「お願いです!! 俺に、俺に五十鈴の仇を討たせてください!!」
後ろで何か聞こえるが、しかし耳に入らない。
なんとしても食い下がろうとする井草は、目の前でナイアルが目を見開いていることにも気づかない。
というか、もう空気がそんな状態でないことに、井草だけが気づいてない。
「一発入れさせろとは言わない。一発入れるまでのファクターに入れてくれるだけでいい!! だから、俺に、五十鈴の、仇を!!」
「井草ぁ、ちょっと?」
「あの、井草さん?」
「お~い、井草~?」
「ピス姉さんもニングもリムも!! お願いだからせめて貢献をさせてくれ!!」
愛すべき三人に声をかけられるし、彼女たちを悲しませたくない者事実だ。
だがしかし、それでもせめてひとかけらでも刻み込みたいことがある。
「五十鈴の仇討ちも何もできなかったら、伊予を汚したアイツに何かしなけりゃ、俺は俺が幸せになることを認められない!! 五十鈴に何か貢献させてくれ!!」
「あの、井草さん! ちょっと大きな問題が!!」
「井草さん。それ以上言うと後で自分が恥ずかしくなるぞ!!」
「井草先輩! あの、周りを見てくださいぃ!」
「……現在進行形で大恥です」
なぜか焦っている悠斗を筆頭に、ゼノヴィアもギャスパーの小猫も井草を止める。
「気持ちはわかるけど、それ以上は言わない方がいいですわ!!」
「井草さん! ちょっとその、周りを見てください!!」
朱乃とアーシアも焦る。
一体何がどうしたのかわからないが、しかし井草はそれどころではない。
「俺は、五十鈴の仇を討ちたいんです!! この我儘を、かなえさせ―」
『『『『『『『『『『おーい! 後ろー!!』』』』』』』』』』
しまいにはスタジアム中の観客たちから一斉にツッコミが入った。
何だというのだ一体。
人が真剣な状態に、ここまでギャグな展開をされると、別の意味で腹が立ってくる。
しかしなぜか敵も含めて全員井草の後ろに視線を向けている。おっぱいドラゴン席のイリナにいたってはなぜかジェスチャーまでしてる。ナイアルは目を見開いて絶句している。
「いや、井草君? ちょっと、深呼吸して、真後ろ見て?」
デュリオまでそう言ってきたので、井草は仕方なく振り返った。
「いや、その……すっごくありがたいんだけどね?」
そこには一人の二十歳の女性が、顔を赤くして立っていた。
もはや表情は泣き笑いというか、すごく複雑である。
嬉しいのだが恥ずかしい。そもそも凄くいたたまれない。なんていうか謝りたくて堪らない。
そんな表情で
「……死にぞこないました。…………ごめんなさい」
―枢五十鈴が井草に謝った。
確かに大恥である。
生きている五十鈴の仇を討ちたいなどと、もはや泣きわめく一歩手前のレベルで言っていたのだ。
それも、五十鈴の目の前で。
もはやコントである。新喜劇である
「………ちょっと待って? ねえ、ちょっと待って?」
そりゃそうだろう。
この流れはおかしい。
「あの、ナイアル? 過剰服用で死ぬとか言ってなかった?」
思わずナイアルに真剣に訪ねてしまった。もはや別の意味で冷静さを失っている。
そしてナイアルもぶんぶんと首を横に振った。あり得ないと言いたげな表情に、此方も想定外であるという事がよく分かる。
「いや死ぬぞ!? 間違いなく死ぬぞ!? それぐらい強化されてたぞ!?」
ナイアルも想定外らしい。かなり驚いている。
「ど、どどどどういう事ですかこれぇ!?」
もはや誰に言うべきか分からず、井草は絶叫するしかなかった。
「ふむ、最初から説明しよう」
と、バラキエルがコホンと咳払いしてから告げる。
「簡単に言えばこういう事だ。……アザゼルはこれを予期していた」
と、真っ先に告げる。
「捕捉しましょう。アザゼル総督はナイアルのクイーンアントイーツの能力と、枢五十鈴と行仁伊予の極度の寿命の削減を推測していました。その為、推測時点で対抗策の研究をしていたのです」
シアリーがそう補足して、そしてタブレットを取り出すとそこに映像を浮かべる。
そこには
「アザゼル総督は悪魔の駒による人間の寿命の拡大に目を付け、駒をそれに特化して再調整する事を提案。二人の体細胞を入手して、駒を専用調整しました」
そして、五十鈴の肩に手を置く。
「変異の駒の機能を二つ組み合わせてですが、これにより寿命の拡大を強制させました。……なにぶん初のケースですので今後の検査などは必須ですが、当面は大丈夫です」
そして、はっきり井草に告げた。
「当面寿命では死にません。これに関しては確約いたします」
井草は脱力して崩れ落ちた。
もはや笑う気にもなれない。
なんというか、凄く精神的に疲れている。一瞬本気で帰って寝たくなった。
「まあ、現存の悪魔の駒の流用によるテスト段階ですので色々ロスは多いですが。変異の駒化させたうえで二駒使用して漸く足りるというのも問題ですね」
シアリーがそう言いながら肩をすくめると、ニングもまた苦笑する。
「騎士の駒を二駒使ったのです。変異の駒化させて調整してこれなのは大変だったのですよ」
「いや~。それだけの価値があってほしいですなぁ、こりゃぁ」
と、リムが笑いながらばんばんと五十鈴の背中を叩く。
それを甘んじて受けながらも、五十鈴は井草に申し訳ないやら同情するやらの視線を向けるだけで、何も言えない。
というより、事実上、こっちも恥ずかしさのあまり死にそうなのだろう。
完全に死んだつもりだったら、気が付いたら井草が激昂してナイアルに殴られているところを目の当たりにした。
で、井草は井草で五十鈴に対する胸の内を告白しながら、仇討ちをしたいと吠えている。
これは色々な意味で恥ずかしい。
「で、でもなんで……既存の駒で?」
井草はそこが気になった。
態々既存の駒を改良する方針で行かなくても、新しく設計した方が安上がりかつ効率もいいと思える。
その答えを告げたのはニングだ。
「それは私の眷属にするからなのです。既存の駒をベースにしないと、レーティングゲームに参加させれないのですよ?」
きょとんとそう告げるニングだが、そこにツッコミが重なった。
「「いやなんで?」」
井草と五十鈴の同時ツッコミである。
ニングがルシファーを受け入れる事は知っている。そうなれば、15個の悪魔の駒を手にする事も想定できる。これはいい。
だが、態々五十鈴を眷属悪魔にする意味が分からない。
井草の為なのは分かる。だが、彼女を眷属悪魔にする事はデメリットが大きいだろう。
ムートロンの精鋭戦力であった過去は大きい。それまでに、理由はともかく自分の意志でテロをしていた罪も重い。そんな彼女を眷属悪魔にすれば、ニングの将来に負担があるのは明白だ。
だから、それが分からない。
しかし、ニングは微笑むと静かに首を振る。
「当然なのです。しっかり働いてしっかり出世してしっかりお金を稼がなければ、賠償金が払えないのですよ」
そう告げるニングは、一枚の紙を見せつけた。
そこには、日本円換算でも一千万に届く桁の金額が書かれていた。ちなみに$にになっており、百倍ぐらいになるはずだ。
「賠償金はいったん
「要領が良い事は窺っております。研修期間は一か月で、魔王末裔直属のメイド部隊という事で、月給はこれぐらいになります」
と、シアリーが示した額を見て、五十鈴は眼を見開いた。
「……日給二万円相当!? 高くない!?」
「真なるルシファーの末裔にお仕えするメイドとしてはむしろ安いでしょう。ちなみに給金の九割は賠償金の返済に充てる契約ですので、一日に使えるお金は二千円相当ですが、そこはご容赦ください」
度肝を抜かれる五十鈴に、シアリーはそうさらりと告げる。
つまりお小遣い有りである。逆にドン引きするレベルだ。
「因みにこれは最低賃金です。今後の仕事の成果や悪魔としての昇格などで更に給金は増える事を約束しますが、元テロリストという立場なので昇格難易度は大きい事を理解しなさい」
それでも十分すぎるとしか言いようがない。
10億円以上の賠償金を請求されているが、一日に18000円近い金額を悪魔が弁償するのなら、十分返せる宛てはある。
だいたい152年もあれば返済可能だ。悪魔の寿命なら十分余裕の年数である。
流石に電卓がない状況下でそこまで計算はできていないが、それでも生きている間に返せる可能性がある事には五十鈴も気づいた。
その視線が向けられたニングは、にっこりとほほ笑む。
「ボーナスは全額返済に充てますが、生活費は事実上の寮暮らしなのでサービスなのです」
「ちなみに、井草達がおたくに何か買ってやる分には何も言いませんぜ? あ、なんならたまに奢ってやってもいいですぜ、後輩転生悪魔の枢五十鈴さん?」
そういって、リムは悪魔の翼を生やしてにやにや笑う。
どうやら既に転生していたらしい。
そして、それらについて理解が追い付くにつれて、五十鈴は戸惑う。
「な、なんで、そこまでして……」
「別に、貴方だけが特別というわけではないのです」
そう告げると、ニングは周りを見渡して宣言する。
「お初にお目にかかるのです。私はニング・プルガトリオ・ルシファー。正当たるルシファーの血を継ぐ者なのですよ」
その宣言に、観客の悪魔達が目を見張る。
ルシファーと人間の混血たる末裔が見つかった事は、既に知っている者も多かった。
だが、それがこんなところに出てくる事など予想外だろう。
そしてビルデもナイアルも、状況が読めないのか様子見に徹している。
それを好都合とニングは判断。そして一歩前に出ると胸に手を当てて言葉を紡ぐ。
「私は象徴としてルシファーになる立場ですが、しかし現状の窮地には心を痛めているのです。特に、ムートロンを筆頭とする禍の団との闘いで、冥界の民が傷つく事は魔王の血統として看過して良い事ではないのです」
そう目を伏せて告げたニングは、静かに首を垂れると、そのままさらに言葉を放つ。
「ゆえに、ルシファーの血を引く者として、対抗策として一つの政策を魔王様に要求し、それは受理されたのです。これはその前座ともいえるのですよ」
そう告げるニングの声に反応するかのように、シアリーが一枚の大きな羊皮紙を取り出す。
それをシアリーが掲げると同時、リムが魔道具を取り出し、それを神器で強化して、映像として映し出す。
そこに書かれた文字が、大きく浮かび上がった。
懲罰部隊、
厳選たる審査を潜り抜けた罪人を構成員とする、三大勢力の特殊部隊。
危険任務を引き受けることから、給料は日給二万円から。ただしその九割を損害賠償として費やすことになっている部隊。また、戦闘任務がない状況下では奉仕活動と訓練を日課としてすごす。
そして主な任務はムー同盟と国連所属国家の国境線上の警備や、テロが発生した際の対応などといった危険な任務。
むろん懲罰部隊であるがゆえに脱走防止の為に多数の術式をかける事は前提。任務も危険なものであり、事実上正規軍の弾除けや露払いになるだろう。
だが、所属に関しては辞退の権利を認めている。上記の通り給金はいい。加えて所属と引き換えに罪状は賠償金の支払いになり、所属中は給金から引かれる為自動的にどんどん減っていく。
ついでに言うと当然の如く一日三食。定期的な健康診断はできるし、金さえ払えるのならゲームを買って遊んでもいいと書かれている。寮の写真も写っているが、プライベートもある程度配慮できる個室が一人一人に与えられている。
ちなみに審査基準も一部示されているが、戦闘能力は低くても中級の上が前提。バアル義勇軍より平均的な実力では上のレベルが最低条件となっている。これならそう簡単には死なないだろう。
井草は心から思った。罪人の待遇じゃない。
「……待遇良すぎない?」
「スウェーデンの刑務所よりは悪いのです。それに事実上の従軍任務なのですよ?」
ニングは井草にそう返すが、それは比較対象が悪いのではないだろうか?
とにかく、そんな懲罰部隊を新たに結成したニングは、ちょっと胸を張る。
その文字を背にしながら、ニングは告げる。
「魔王末裔である私の許可を得た者に限るのですが、実力がある罪人を戦力として運用し、各種敵勢力を倒すための矛にして、民を守る盾として運用する懲罰部隊、
そう告げるニングは、しかしすぐに照れ臭そうに微笑する。
「……まぁ、井草さんの心の傷を癒すのもついでにするのは、ルシファーとしての特権として許してもらいたいのですよ」
その言葉に、井草は全てを理解する。
三大勢力の事を考えてはいる。この政策もその一環でもある。
だが、それだけではない。
井草が五十鈴と伊予のことを心から悔やんでいる事を理解していて、その為にもやったのだ。
いや、それだけではないだろう。
冥界の古い悪魔の都合によって苦しんでいる転生悪魔などに対する配慮もあるのだろう。
……本当に、彼女は優しすぎる。
「ニング、君は、本当に優しすぎるよ」
「これでも厳しくしたつもりなのです。なにせ、死地に罪人を送り込むのですから」
ニングは井草にそう反論し、そして五十鈴に向き直る。
「五十鈴さん。理由はどうあれ、自分の意志でテロをしたあなたは罪を償うべきなのです」
「ええ、でもこれは……」
まだ戸惑う五十鈴だが、ニングは真っ直ぐ鋭い視線を向けると、五十鈴の手を取る。
「私達がしたのは死刑にせず、払う当てを作る事だけ。きちんと働いて賠償金を払い、償うのです」
そう言い切ったニングは、しかしゆっくりと微笑んだ。
「そして何より、井草さんに償う為にも、生きるのですよ?」
「あ………っ」
その言葉に五十鈴は震え、井草に視線を向ける。
それが何となくおかしくなって、井草は微笑んだ。
「まあ、テロっつってもテロリスト同士の潰し合いが殆どでしたからねぇ。出なけりゃ桁が一つぐらい上がってましたぜぇ?」
「サーゼクス様達は、事情がある方々には温情をくださるのです。そこに感謝なさるように」
リムとシアリーがそう告げる中、五十鈴は肩を震わせる。
そして、ニングはしっかりと背を伸ばして五十鈴につけた。
「あなたの命は私がもらうのです。井草・ダウンフォールの為生き、このニング・プルガトリオ・ルシファーの為に戦いなさい。それがあなたの贖罪なのです」
それは、とてもつらくて優しい罰。
それを理解して、五十鈴は涙をこぼしながら跪いて首を垂れる。
「……かしこまりました、お嬢様。この命、井草とあなたの為に捧げます」
その言葉を聞いて、ニングは満面の笑みを浮かべて微笑んだ。
その視線を井草に向け、ちょっと胸を張ってみたりする。
「本妻の面目躍如なのです」
それに、井草は苦笑するほかない。
心からの感謝と安堵、そして一抹の呆れを込めて、井草は微笑んだ。
「参りました、こりゃ尻に敷かれるなぁ」
井草はそういうほか無かったりする。
その弛緩した空気を引き締めるように、拍手の音が響く。
パチ、パチ、パチ。
パチパチパチパチ。
その二種類の拍手を鳴らすのは、ビルデとナイアルだった。
「感動的……と言っておこう。それに敵に対抗する為の罪人の有効利用、術式による犯行防止ができる我々異形ならではの方法だ」
心からそれだけだと思っているビルデは、そう関心の表情を向ける。
ニングはそれを見て不快気な表情を浮かべると、エクストラカリバーの切っ先を向ける。
「他に何か言う事はないのですか? 甘い、とか」
「特にはないな。罪人を利用して民衆や兵士の損耗率を下げる。十分あり得るとも。我々も捕縛した敵を
ビルデは素直にそう言う。
そこに疑問も皮肉も何もない、心から真実だけを言っている。
そう、気づいていないのだ。
ニングが記述していないとはいえ、
それは、現冥界の不都合によって発生した被害者の救済の一環と言ってもいい。
五十鈴のように悪意に翻弄されて罪を重ねた者。旧家の悪魔達によって虐げられ、我慢できず罪を犯してしまった者。そういった、罪を犯してはいるが、同情の余地がある存在。
そういった者達の力を利用する代わりに、少しでもマシな生活を提供する。そういった目論見があるのだろう。
そんな事、五十鈴を考慮すれば分かる事だ。ただの弾除けでいいのなら、戦闘能力に基準値を設けたりなどしない。弾除けは多い方がいいのだから、雑魚でも何でも用意すればいい。
そこにビルデは気づかない。
そこに、彼の人間性の欠落が確かにあった。
「私はあなたが嫌いなのです。初代バアルの方ですら皮肉ぐらいは言ったのですよ?」
「そこまで言う事でもないだろうに。この状況下で貴重な貴族を守る肉盾を欲するのは、旧家なら当然ではないか」
ビルデは旧家の頑迷さを皮肉るように笑うが、ニングからすれば彼らはまだまともだ。
正直うっとおしいであろう転生悪魔の、それも主に牙をむく類に温情を与えるなど、本意ではないだろう。
それをニングの機嫌取りと現状の対応策として認可する。あれだけの老獪がいるのなら、サーゼクス達の改革が進まないのも当然だ。
そして、その老害ですら皮肉を返せる程度には即座に気づく事が出来た事に気づかない。
目の前の男は、ある意味で老害以上に冥界の害になりかねない。
「ルシファーの末裔として、貴方を放置する事はできない。……そう確信したのです」
「望むところ。こちらも敵対勢力に旧魔王血統がいる事実は看過しづらい」
その言葉と共に、ビルデは立ち上がる。
そして、爪を構え戦闘態勢をとる。
一触即発の状況化に、井草と五十鈴は即座にイーツになりながら庇おうとし―
「そこ、違うのです」
「全くでさぁ。此処は私らにまかせなせぇ」
-それを追い越して、ニングとリムは前に出ると、ジエームシリーズの装甲を頭部に展開する。
「ニングもリムも! そいつ、いくら何でもヤバイ!!」
「そうよお嬢様! ここは私達に―」
井草も五十鈴も即座に止めようとするが、しかしニングは首を振ると、エクストラカリバーの切っ先をあらぬ方に向ける。
そして、はっきりと言い放った。
「二人はやる事があるのです。大事なことを忘れてはいけないのですよ?」
その言葉に、井草も五十鈴も我に返る。
そうだ。なんで忘れている。
あまりに事態が急転化しすぎて忘れていた。それがあまりにも罪深くて、二人は眉すらしかめる。
そう、奇跡が起きた事で忘れていた。五十鈴が救われた事で気を取られていた。
……救わなければならないのは、もう一人いる。
「行きやがりなさい。目の前の男は、当分こっちで抑えときますぜ」
そのリムの言葉に背を押され、二人は前に出る。
そして、いまだうつむいている行仁伊予の前に立った。
「「……伊予」」
少し戸惑い、躊躇しながら、二人は同時に伊予の名前を呼ぶ。
その声に、厳密には五十鈴の声に伊予は反応した。
伊予もまた、半狂乱になったことで五十鈴が蘇生したことに気づいていなかった。それに気づく余裕がないほどに、伊予は心から追い詰められていた。
「……五十鈴、ちゃん?」
そして挙げられた顔を見て、井草も五十鈴も肩を震わせる。
その顔は、まるで幽鬼のようだった。
精神的に一気に追い詰められ、強い罪悪感にさいなまれ、そして大切な幼馴染が死に、今まで苦しめてきた事実を思い知って苦しんだ。
それほどまでに、五十鈴はようやく罪悪感という感情を取り戻したのだ。
失っていた理由はわかる。シアリーの言っていたナイアルのフェロモンだろう。
五十鈴も伊予もナイアルのフェロモンを受けていた。そして、それが明確に精神に影響を与えていた。
五十鈴の場合はタガを外すことだろう。理性のタガを緩め、ナイアルが方向を調整する。それによって五十鈴は悪い方向に加速し、その結果があの悲劇だ。
だが、五十鈴はそれでストレスの類を発散してしまったのだろう。だから、殺戮による別方向のストレスで正気に戻った。
伊予の場合は違う。彼女の場合は罪悪感の解放という形で背中を押されたのだろう。
それによって非日常を求める感情が止められなくなり、そしてことを起こしても罪悪感によるストレスがたまらない。そのため、五十鈴と違って殺戮のストレスがたまらず、死の恐怖すら非日常のスパイスとして受け止め、そして行き着いてしまった。
その果てに、大切なものを見失っていた。目の前の非日常に気を取られ、本当の意味で認識できなかった。
だから、デュリオの虹色の希望を受けて正気に戻ったのだ。
だから苦しい。彼女自身の優しさが取り戻されたから。
だから辛い。彼女は罪悪感を取り戻してしまったから。
そして、だから救える。彼女はまだ、本当の意味ですべてを捨て去ったわけではないのだから。
「五十鈴ちゃん……ごめ―」
「私に謝らないで」
五十鈴は、謝ろうとする伊予にピシャリと断った。
伊予が謝ろうとすることは予想できた。だから、先に先手を打つ。
そこで謝ってしまえば、彼女は自家中毒でまた心を引きこもらせてしまう。
何より、伊予に謝られる資格を五十鈴は持ってない。
「謝らないで。少なくても、四年前の一件においてあなたは純然たる被害者よ」
そう、ナイアルは「復讐すればいい」と背中を押した共犯者でしかない。計画を立て、井草をそそのかし、そして実行に移した計画反にして主犯格は五十鈴なのだ。
五十鈴ははっきりとそういうと、頭を下げる。
「私が勝手に嫉妬して、勝手に逆恨みしたのが悪いの」
「そう、そして俺も悪い」
そして、井草もまた頭を下げる。
「恋愛と性欲の区別もつかず、一時の情欲に任せて君を犯した。俺に、君に謝られる資格はない」
二人は心から頭を下げる。
四年前、三人の関係が崩れるきっかけになったあの一件。行仁伊予だけは、純然たる被害者だった。
ナイアルにかどわかされ、惑わされた伊予は、あの一件において純然たる被害者だ。ナイアルにタガを外され背中を押されたとはいえ、一から十まで計画を練った五十鈴と、その手で転がされたとはいえ、正真正銘伊予をおかした井草に、伊予に謝られる資格はない。
「許してくれなんて言えないのは分かってる」
井草はそれを理解している。
「一生恨まれたって文句は言わない」
五十鈴はそれを痛感している。
だけど、それでも―
「「でも、もし許してくれるなら―」」
二人は、その手を伊予に差し出し、ぎこちなく微笑む。
「「また、三人で一緒に笑おう?」」
「……駄目だよ、それは、駄目だよ」
伊予は震えながら、首を振る。
「何人も殺しちゃった。何人も傷つけちゃった。それも、楽しんで楽しんで楽しんで―」
「それはナイアルのせいでしょ? 少なくても
「まあ、冥界的にはさすがに罰を受ける必要はあるけどさ? そこはほら、ニングやアザゼル先生がいろいろ手をつくしてくれたし……ねぇ?」
そういって五十鈴も井草も顔を見合わせて苦笑すると、かがみこ見込んで、照れ臭そうに笑う。
「俺の好きな人が俺のために頑張ってくれたから、俺に悪いと思ってるなら、この手を取ってくれると嬉しい」
「私に悪いと思ってるならなおさらよ。だって、伊予がひどい目に合うなら私はもっとひどい罰を受けないといけないもの。伊予には私より軽い罰を受けてもらわなくちゃ困るわ」
その言葉に、伊代は肩を震わせて涙を流す。
二人は決して無罪放免を言い渡しに来たわけではない。
罪業はある。それを償うときは必要だ。そして、それはきっとかなり長くなるだろう。
だが、償う方法は提示された。
そのニング・プルガトリオ・ルシファーの手を取ってくれないと、大事な井草と五十鈴が困ってしまう。
だから、手を握ってほしいといってきた。
ずるい話だ、とてもずるい。
なぜなら、そんなこと言われてしまったら断れない。
二人が大事だと今更ながらに本心から思い出した伊予は、二人が傷つくことを望めない。自分のせいでさらに傷つくなんて、もう最悪だ。絶対に認められないことをしない限り、この手を取らないことはできないのだから。
「……もぅ。ずるいよ二人とも」
だから、伊予はその手を伸ばし―
「ところがどっこい。そうはいかねえ」
悪鬼はそう簡単に救済を許さない。
「――――――あっ?」
伸ばした手が、ビクンと震える。
行人伊予は震えだし、そしてエボリューションエキスが起動する。
それを見て、ナイアルと包囲していたバラキエルが何かに気づく。
「―貴様! まさか読んでいたのか!?」
「いや? ホテップから二度目を出さねえように指示されただけだよ」
放たれる雷光を全力の拳で弾き飛ばしながら、ナイアルはそう嘯く。
そう、簡単な事だ。
一度失態で情婦の1人に様々なものを持ち逃げされたナイアルは、
万一二度目が発生した時の為に、緊急用のシステムを情婦に仕込む。その命令に素直に従っただけだ。
「薬の過剰投入と、精神干渉による狂戦士化。まあ、技量は低下するが、元々伊予はぶっぱ専門だから強くなるぜ? それも、目に映る連中をぶっ殺すだけの戦闘マシーンだ」
その言葉と共に、伊予の変化が完了する。
そこにいるのは、文字通りの灼熱の獣だ。
四肢も胴体も頭部もまさしく獣のそれ。唯一、コアとなっているのか伊予の体が獣の額に磔のように浮き出ている。
それを見て、ナイアルは愉快そうに嗤う。
感動のタイミングを一気に絶望に突き落とす。これは実にする側としては面白い。
「じゃあ、そのまま伊予に殺されとけよ!! 周りの連中は俺が止めるしよぉ!!」
『クトゥルフ』
その瞬間、クトゥルフイーツの力を具現化したナイアルは砲撃でバラキエル達を足止めする。
その砲撃は全てが足止めを狙いとした拡散砲撃。そしてそれゆえにバラキエル達は足止めされる。
「……外道め。ここで私達を足止めする気ですか!!」
「まずいわね。これだと彼らのところに向かえない……!」
ミカエルとロイガンが歯噛みするのも当然だ。
ビィディゼ達の妨害で、リアス達は動けない。
イッセーもサイラオーグもヴァーリも倒れ伏している。
暴走状態になった伊予は、おそらく五十鈴が過剰投与したのと同様に7,0のEEレベルだろう。その戦闘能力は神クラスだ。
技量が足りてない暴走状態とはいえど、今の彼女を殺さずに取り押さえられるのは魔王クラスですら難しい。できれば二人ほしいところだ。
それがナイアルによってできない。これは窮地であり―
「………井草、聞こえるか?」
バラキエルは、何時の間にか冷静さを取り戻していた。
それは、井草の目を一瞬見る事ができたからだ。
「………うん、まあこうなるよね」
「……まあ、そりゃ二度目はないわよね」
井草も五十鈴も、特に動揺はしていなかった。
それどころか、心から納得すらしていた。
「……おい。普通そこは動揺するだろうが?」
思わずナイアルがツッコミを入れるが、しかし井草も五十鈴も肩をすくめた。
「コラ、そこの外道。俺達がお前が外道なのにも気づていないと思ってたの?」
「そんな事だろうと思ってたのよ。仕込みは想定範囲内」
そう告げると、二人は笑みすら浮かべて一歩前に出る。
『レセプター』
『ハストゥール』
そしてイーツに変じると共に、むしろ笑みすら浮かべて見せた。
「シンプルイズベストだよ。とりあえず戦闘不能してから処置をする。そこまでの腹はくくってるさ」
「覚悟はあるわ。蘇生するとはいえ、伊予を一度殺す覚悟は」
そして、胸を張って吠えた。
天に届けよこの想い。今度こそ自分達は間違えない。
「「ナイアル! 伊予は殺してでも取り戻す!!」」
その宣言と共に、二人は突撃を敢行する。
「私達が、今度こそ幼馴染でいる為に!!」
「この戦い、意地でも俺達が勝たせてもらう!!」
その宣言を受け、誰もが一瞬あっけにとられ―
「……行ってこい、井草!! こいつは私達で足止めする!! ……お前の四年間を、無駄にするな!!」
「はい!! 最高の結末を届けて見せます!!」
バラキエルの激励を受け、井草・ダウンフォールと枢五十鈴は突撃する。
Q:最大の衝撃って?
A:五十鈴復活(笑
もうこれが最大の衝撃ですマジで。当人としてはシリアス極まりない悲劇的な展開な流れなのに、真後ろで蘇生した五十鈴ですからね。周りからすればシュール極まりなく、ビルデやナイアルすら唖然としました。五十鈴としてもすごく生き恥です。
大まかな流れはこの作品ができた時点で確定していましたので、ヘイトが上がりまくったときはどうしたもんかと頭を抱えましたよ。なんとかラグナロク編で同情票を獲得できたのでほっとしています。
まあそれはそれとして外道っぷり満タンなエロゲみたいな能力持ってるナイアル。しかもアントイーツなので馬力もシャレにならず、戦闘技術もあるからこれだけで最上級悪魔クラスなら舐めプで殺せるあたりがシャレにならない。
とはいえ実際問題、元ネタにしたアラクニ〇とは違い反則じみた支配能力はないです。此処まで作用できたのは、ナイアルはなんだかんだで相手を厳選しているから。五十鈴や伊予の精神面での隙を見事についたからこそ、二人はあそこまで行きついてしまったわけです。
そしてようやく登場したニング&リム。新兵器であるジエームを纏って参戦です。それもバラキエルとミカエルという三大勢力最大級の戦力を連れて駆け付けました。ちなみにジエームは「GM」のアナグラムです。仮面ライダーでいうなら怪人に対抗するライダーで、まあジオン公国のMSに対抗するジムみたいなものだと考えていただければいいかと。
彼女がルシファーを受け入れたのは作中で書いた通り。教会含めた三大勢力の安定と、不遇な人々に再起する機会を与えるためと、そして井草のために五十鈴と伊予を救うことが目的です。リムと一緒に井草と添い遂げるのも理由ですけどね。
そしてギャグで終わるのもアレだったので、さらに続きます。
ニングの発案した新組織、
さすがに伊予と五十鈴は結構暴れているので、そのあたりのヘイトを下げることも目的の一つ。他にもいろいろとニングは考えていますが、事実上のニングの紙幣手段ですね。
やむを得ない事情などで犯罪を起こした実力者による私兵集団といっても過言ではありません。ゼクラム・バアルなども、この情勢下で戦力を遊ばせておくのもあれなので皮肉込みで認めました。
そしてそれに気づかないビルデ。かれは傑物ではありますがD×Dの敵役なので、人格面で問題がある感じですね。E×Eの大ボス枠の一人として、サイラオーグ辺りと壮絶な決着をつける予定です。
そして勢いよく付けた伊予の説得タイム……かーらーの、悪党タイム。さすがに一回思いっきりやられているので、ホテップは保険をナイアルに銘じていました。
ライオンハート編のボスはビルデとクトゥグアイーツの同時進行となります。ナイアル? この状況下で奴は蛇足なので番外進行で足止めされます。ロイガンとバラキエルとミカエルはある意味そのために出しました。三大勢力ドリームチームにやられます。
井草も五十鈴もこの流れは想定できていたので、腹もくくっています。文字通り殺してでも助け出しますよ、ここまで来たら。
そしてビルデの担当はだれかって?
………自分は原作陣営も活躍させる主義です。それで答えになるかと。