混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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バトルは終了しましたが、しかしナイアルはまだ残っている現状ではある今現在。




……さて、どうお流れになるかといいますと―


19話

 

 爆発を突き破り、井草と五十鈴がニングの下へと滑り込むように飛び込む。

 

 勢い余って地面に叩き付けられながら、二人は命の灯を消した直後の伊予を庇い、そして辿り着いた。

 

「ニング! 頼む!!」

 

「任せるのです!!」

 

 井草の頼みに即座に頷き、ニングが悪魔の駒を取り出す。

 

 取り出したのは僧侶の駒二つ。五十鈴を騎士の駒で蘇生させた時のように、変異の駒かさせたうえで寿命回復特化に調整した特性品だ。

 

 そしてそれをもってして蘇生が行われる中、井草はふらつきながらもトールセイバーを持って、立ち上がる。

 

「井草?」

 

「五十鈴、ニングと伊予を頼む」

 

 五十鈴にそう言うと、井草は一歩前に出る。

 

 そして、その隣にリムとピスが並び立った。

 

 三人ともに満身創痍。だが、ここで戦いを中断するわけにもいかない。

 

 何故ならば、敵はまだ一人として倒れていない。

 

「……こりゃちょっと失態が酷過ぎるかねぇ」

 

「……とんだ茶番劇だ。我々の猛威が前座になってしまったではないか」

 

 魔王クラス三人の攻撃を相殺したナイアルと、土煙の中から歩き出てきたビルデがそう不機嫌としか形容できない声を出す。

 

 バラキエル、ミカエル、そしてロイガンの三人を相手にしてなお生存しているナイアル。

 

 イッセー、ヴァーリ、サイラオーグの渾身の力で一矢報いられながらも、いまだ健在のビルデ。

 

 この二人がいる限り、状況の危険性は変わらない。

 

 ならば戦うしかない。行仁伊予と枢五十鈴を救うには、彼らを退ける他ないのだから。

 

「リム、ピス姉さん、みんな。……力を、貸してくれ」

 

 巻き込んでしまって申し訳ないとは思うが、しかし井草は頼むしかない。

 

 もう二人を見捨てる選択肢はない。それを選ぶのは、井草・ダウンフォールには不可能だ。

 

 そこに罪悪感を感じながら、しかしその後頭部が軽く小突かれる。

 

「まったくもう。困った年上の後輩ね」

 

 小突いたリアスはそう言うと、不敵な表情を浮かべて魔力を手に宿す。

 

 そして、圧倒的な力を発揮するビルデ達に真っ向から向き合うと、後ろにいる仲間達に告げる。

 

「私の可愛い下僕達! 私達の大切な仲間が、ついに本願を果たしたわ! なら、私達のする事は一つよ!!」

 

 その宣言と共に、イッセーもまた井草を庇う様に前に出る。

 

 既に真紅の鎧は解除されている。その鎧をもってしても、ビルデに一矢報いるのが限界だった。

 

 だがしかし、彼の眼に絶望に二文字はない。

 

「勿論です! 惚れた女と恩人の為だ、意地でも全員生存してやりますよ!!」

 

 その言葉に勇気づけられるように、グレモリー眷属達は戦意を漲らせて並び立つ。

 

「全くだ。ここまで来たのなら最後を汚すわけにはいかんというものだ。……何としても撃退するぞ」

 

「俺としてはどうでもいいが、しかしここまで盛り返して負けるというのも味気ないしね。最後まで付き合おうじゃないか」

 

 サイラオーグとヴァーリもまた意気揚々とイッセーに並び立ち、それに率いられバアル眷属とヴァーリチームも戦闘態勢を取り直す。

 

「ふっ。私達の長年の悩みが解決したのだ。此処が頑張りどころといったところか」

 

「祝福されるべき奇跡が起きたのです。天使としては大縁談で絞めなければいけませんね」

 

「そうね。此処まで来て結局敗北なんて、ゲームでもブーイングが起こっちゃうわ」

 

「全くだね。俺ももうひと踏ん張りするとしますか」

 

 バラキエルも、ミカエルも、ロイガンも、そしてデュリオも、一歩も引かぬ決意でオーラを放ちながら戦意を向ける。

 

 それに対し、ビルデ達もまた態勢を整え直して戦闘態勢をとる。

 

「上等だ。全員殺せばミスも帳消しだろうしなぁ!!」

 

「塗り替え直させてもらう。今度は再びこちらのターンだ」

 

 ナイアルが吠え、ビルデが反撃を宣言する。

 

 そしてそのままに激突が再開しようとし―

 

『いや、スマンが今すぐ撤収してくれ』

 

 それに水を差す、ホテップの声が響いた。

 

 思わず全員がつんのめりかける。

 

 悪い意味でタイミングが良すぎる。此処までタイミングが良すぎる水入りもそうはないだろう。

 

 なんとなく空気が弛緩し、誰もが思わず投げ槍になる。

 

「ホテップ? こっちは色々と大失態しちまってるんだが。汚名返上の機会ぐらいくれや、まだ余裕あるだろ?」

 

「流石に承諾しきれん。まだ損害は軽微ではないか。まさか、我々が負けると?」

 

 明らかに不満を魅せるナイアルに、ビルデも懸念を浮かべる。

 

 当然だろう。この作戦、ムードだけで見るのなら禍の団側の敗北だ。

 

 確かに圧倒的な力を見せつけてはいるが、現段階においては一矢報いられている。この流れで離脱してしまえば、誰もが実態はともかくビルデ達は撃退されたと認識するだろう。

 

 ナイアルに至っては五十鈴に続いて伊予まで離反されてしまったのだ。挙句の果てに放っておけば死ぬかと思ったら延命に成功されている。このまま何もしないで帰還すれば、処罰が重くなるのは明白だ。余裕があるうちに手柄を上げて、それでできる限り相殺したい。

 

 それに実際問題、戦力的に有利なのはビルデ達である。

 

 このままいけば先にリアス達を何名か殺す事もできるだろう。そうなってから離脱した方があらゆる意味で得なのだ。

 

 だが、それは現状が想定の範囲内だった時の話である。

 

『……シヴァが動いた。マハーバリ達阿修羅神族を率いてアグレアスに向かっている』

 

「マジか!?」

 

「チッ!」

 

 ナイアルが驚き、ビルデも舌打ちする。

 

 インド神話の破壊神、シヴァ。

 

 インドラと並び立つ最強の神であり、状況次第ならオーフィスすら退けかねない化け物中の化け物。

 

 それが武闘派ぞろいの阿修羅神族と共にアグレアスに向かっている。到着すれば趨勢が一気に不利になるのは明白で、犠牲者は大きくなるだろう。

 

 速やかに撤退しなければならない。それが嫌というほどよく分かり、ナイアルもビルデも納得するしかなかった。

 

「だぁあああ!! これ減給じゃ済まねえだろオイ!! 結果的にこっち損しかしてねえじゃねぇか畜生!!」

 

「……まあ、グレモリー・バアル眷属とヴァーリチームをまとめて相手取って我らの眷属は優勢に立ち回った。大魔王派(こちら)は最低限の目標は達したとみるべきか」

 

 頭を抱えて絶叫するナイアルと、ため息を付きながらも納得するビルデを中心に、黒い霧が現れ襲撃者達を包み込む。

 

 絶霧(ディメンション・ロスト)による転移。どうやら英雄派も撤退支援を行っているらしい。

 

「……逃げる気か、ナイアル!!」

 

 井草はトールセイバーを突き付けながら吠えるが、しかしナイアルは肩をすくめると皮肉気な視線を向ける。

 

「逃げるっての。お前殺してたらシヴァに殺されるからよ。流石にこの戦力であいつらとやりあうほど馬鹿じゃねえよ」

 

 ナイアルの言葉は正論だ。死ぬと分かっているのなら逃げるのは当然の判断だろう。

 

 そして井草と戦えば、逃げるのが間に合わなくなるまで決着が長引く。ならばここでの決着は避けるのが無難。ナイアルは外道であるがゆえにそういう判断を下す男である。

 

 そこまで粘られる難敵認識だと前向きに受け取りたいが、しょせんその程度の相手だと馬鹿にされているのは明白であり、井草は歯噛みする。

 

 だが、実際問題井草達も満身創痍。此処での戦闘はデメリットの方が遥かに大きい。

 

 故に誰もが苛立ちながらも転移を見逃し、そして霧が全員を包み込む。

 

 そして霧が消える直前。ビルデの声が響く。

 

「次に全力で相まみえる時は、今度こそ決着を付けよう。我々は精進を続けるがゆえ、そちらも心構えを見直して力を得る事をお勧めする。……でなければ、死ぬぞ?」

 

 ただ聞けば負け惜しみとしか取れない言葉。

 

 だが、それは間違いない真実だ。

 

 もしロイガン・ベルフェゴールが救援に来なければ、いったい何人死んでいたか分からない。

 

 その事実を噛み締め、屈辱の判定勝ちをあえて皆は受け入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして霧が晴れた時、何時の間にやらヴァーリチームもいなくなっていた。

 

「……まあ、ここまで助けてもらって捕まえるのも気が引けるか。今回は見逃しとけば、粛正する時に後ろめたくないし」

 

「ヴァーリ達には遠慮がないな、井草」

 

 複雑な表情でそういう井草に、バラキエルは少し苦笑する。

 

 現実問題テロリストであるがゆえに当然だが、この場のメンツの中では特に井草はヴァーリチームに対する辺りがきつい傾向にあった。

 

 かつて過去盛大にやらかして悔恨している事もあるのだろう。三大勢力の趨勢を決める会談に敵を手引きして寝返った上に、恥じる事なく堂々と「共闘するか三つ巴か選べ」と言ってくるところが不快感を覚えているに違いないと、バラキエルは判断している。

 

 おそらく、ヴァーリチームと決着をつける時は、ヴァーリの相手は赤龍帝の兵藤一誠ではなく井草が挑むのではないか。井草は兵藤一誠を友人として大事にしているし尚更介入してくるだろう。そんな想像すらしている神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部は多い。

 

 グレモリー眷属の大半が、敵というカテゴリーでヴァーリチームを括らなくなっている状況下で、井草はヴァーリのことを「恥知らずの裏切り者」という認識で一切変えていなかった。

 

 そしてそれを不安視している者が多い事に気づかず、井草は息を吐くと視線を逸らす。

 

 既に結界は解除され、救護部隊がコロシアムに突入している。

 

 アグレアスを襲撃してきた部隊も撤退を開始している。元々ビルデがリアス達を殺す事をサポートし、神と戦う為のデータを取るのが目的だったようで、ダメージ覚悟の戦闘を取らず、足止めに徹していたのが功をそうしたようだ。結果的にお互いに大した被害は発生していない。

 

 そして、意識を失った伊予が担架で運ばれていくのを、井草は見送った。

 

 少し離れたところでは、一応の拘束術式をかけらている五十鈴も同じように見送っている。

 

 できる事なら一緒について行きたい。そして、眠っていても語り掛けて、思い出話に花を咲かせたい。

 

 だが駄目だ。上から命令が出て、ついて行かないように言われている。それも、井草達の安全を考慮した結果だ。

 

 今回の伊予の暴走は、ムートロンによる伊予の脱走阻止が目的で仕掛けられていたものだ。

 

 五十鈴の離反と共に情報が洩れ、それなりの数のムートロンと繋がっていた者が叩き潰された。ムートロン側のマイナスこと軽微だが、現政権側のプラスは莫大だ。

 

 ことジエームの開発が出来た事は僥倖だろう。エボリューションエキスに対抗できる、同種の技術が開発された。これによって生まれるメリットは莫大だ。

 

 ムートロンに何度も煮え湯を飲まされている現政権にとって、大きな朗報なのは明白だ。この公表によって沈みがちだった全体の雰囲気は上がっていくだろう。戦力としてどこまで通用するかはともかく、アザゼル達が開発した新兵器というだけでだいぶ変わるはずだ。

 

 どこまで予期していたのかは分からないが、二度目は看過する気はない。それがムートロンの決断だった。

 

 だから、伊予に何が仕込まれているか分からない。もしかしたら生還した事を考慮したトラップが仕掛けられている可能性もあり、それについて専門家による精密検査が必須の状況となっている。

 

 だから、井草達の安全の為にも一緒にいるわけにはいかない。

 

 井草も五十鈴も分かっている。これで伊予に仕込まれている術式が原因で二人に何かあれば、一番傷つくのは伊予なのだから。

 

 だから井草は精神を切り替えて、ニングのことに意識を向ける。

 

「……ニング」

 

「井草さん、お疲れ様なのですよ」

 

 ニングはそう言って微笑み、井草はその頬を撫でる。

 

 取り乱すでもなく、しかし僅かに頬を赤らめた。そんな反応が可愛らしい。

 

 そして、そんな彼女に無理をさせてしまった。

 

 ルシファーになる事にはいくつも理由があっただろう。

 

 現魔王派の活性化によって大魔王派をけん制し、それによって教会に理をもたらす事。そも、井草と付き合っている教会の戦士であるニングがルシファーを受け入れれば、三大勢力の和平の象徴にもなり、士気も上がる。その影響は計り知れない。

 

 更にDDB(ディアボロス・ダウンフォール・ボトム)だ。これにより、これまでの旧家悪魔達の事情などで冷遇されていた者達にも新たな居場所ができるだろう。追い込まれて犯罪に走った者達が世界に貢献し、そして贖罪ができる場所を作る事も、ニングの目的の一つだったに違いない。

 

 もちろん懲罰部隊という都合上死の危険はあるが、それでも長い年月を幽閉されるだけよりはましだと判断する者も多い。ニングに限って使い捨ての盾にする為に適当に集める事はないだろう。生き残れる可能性がある物を厳選して結成するはずだ。

 

 そして、特注の悪魔の駒。これもまた、重要な目的だったに違いない。

 

 DDBのメンバーの一人として、そしてルシファーの眷属悪魔として五十鈴と伊予を迎え入れる事で、事実上の減刑嘆願をニングは行ったのだ。

 

 魔王血族がゴロゴロと出てきてムートロンと手を組み、更には現政権から多くの民衆が流れ出ている現状だ。多少の我儘を聞いてでも、ルシファーの血を取り込む意味はある。旧家の者達もやれやれと思いながらもそこまで反論はしなかったに違いない。

 

 罪は償わなければならない。麻薬生産組織などといった、悪党同士の殺し合いといえどだ。それを罪だと五十鈴も伊予も認識しているのだし、現政権にも牙をむいた。償う必要はあるし、二人自身が自分を許さない。

 

 遺族には恨まれるだろう。これを不満に思う者もいるだろう。これ見よがしに敵はそれを突き付けて、二人は苦しむ事になるだろう。

 

 それでも、彼女達が死刑になる事はない。

 

 そして、また会う事ができるのだ。

 

 それをなしてくれたニングに、井草は謝るわけにはいかない。苦しむわけにもいかない。

 

 ―色々なくしてまで守りたかったものが曇ったら、私が馬鹿みたいなのですよ。

 

 かつて、子供を産む事が出来なくなった時、彼女はこう言った。

 

 もう一度言わせるわけにはいかないだろう。

 

 だから、こういうべきだ。

 

「ありがとう、ニング。俺はニングが胸を張れる自慢の男になって見せる」

 

 そう、せめてその価値を証明しよう。

 

 一緒にいる事を諦めたくない少女。そんな彼女が、色々なものを指す出すだけの価値がある男である事を証明しよう。

 

 今はまだまだだろう。なら、これからなって見せるだけだ。

 

 そう、しいて言うなら―

 

「冥界の英雄でも目指してみるかな? それぐらいあれば、明星の夫には相応しい箔だよね?」

 

 そう茶化すと、ニングはクスリと笑った。

 

「ええ。やっぱり井草さんは笑顔の方が素敵なのですよ」

 

「君もだよ、ニング」

 

 そして井草とニングは口づけをかわす。

 

 ちなみに、色々あったり結界の解除関係のごたごたで民間人の避難は進んでいない。というより、報道関係は半ばやけくそで生中継をぶちかましている。

 

 当然二人とも気づいていたが、もう見せつける事にした。

 

 隠し立てする事は欠片もない。それぐらいでなければ決意表明には程遠い。

 

 そして井草はもう少し続けていようとして、しかし唇に指を押し付けられて放される。

 

「あ、流石に恥ずかしくなってきた?」

 

「それはどうでもいいのですが、井草さんにはやる事があるのですよ?」

 

 そういうと、ニングは苦笑を浮かべながら人差し指を軽く振る。

 

 できの悪い子を叱るように、ニングは井草にこう言った。

 

「井草さんを大事に思っている人達は他にもいるのです。本妻としてそこは指摘するのですよ」

 

 ……敵わない。

 

 そう思いながら、井草は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何よりするべき事の為に歩き出す井草に、リムとピスが歩み寄る。

 

 二人ともボロボロだが、しかし傷は既にない。

 

 アーシアの回復フィールドを存分に使用できる為、服の損傷などといった治癒が効かない部分しかもう戦闘の後は残っていない。

 

 それに安心して、井草は微笑んだ。

 

「二人のきれいな肌に傷が残らなくてよかったよ」

 

 心からの本音だった。

 

「ふふぅん。井草ってばスケコマシ度合いが上がってやがりますなぁ」

 

 リムはそう茶化し、しかしとてもうれしそうにすると井草にすり寄る。

 

 となればピスも連携をとってきそうだ。はっきり言って、リムとピスは相性がいいと井草は思っている。語感も似てるからなおさらだと思っている。

 

 だが、なぜかすり寄ってこない。

 

 なんでだと思ってみてみれば―

 

「……うぅ~」

 

 -なんかすごい顔を真っ赤にしている美女がいた。

 

 あれ? 何この可愛い生き物。

 

 井草は心からそう思う。思わぬギャップ萌えに、井草は姉貴分の新たな側面というものを感じ取った。

 

 そしてすり寄っているリムの体温も心地よい、微笑みながら井草は抱き寄せる。

 

 しかし、ここでリムから軽くチョップが入った。

 

「井草? やること忘れてますぜ?」

 

「おっと」

 

 ニングに言われてすぐにいきなり忘れてしまった。

 

 井草は少し反省するが、これは男なら仕方がないだろう。イッセー辺りは理解してくれそうだ。

 

「二人がかわいかったから、つい」

 

「ふぬぁああああ!?」

 

 なんかピスが悶絶している。

 

 そしてそんな姿も何というか、意外性があってみてて楽しい。

 

 しかしそこで再びリムからチョップが入った。

 

「そこのスケコマシ。優先順位をわきまえなせぇ」

 

「了解。じゃ、行ってくるよ」

 

 確かにそうだと反省して、井草は本命のところへと向かう。

 

 その背中に、二人の声が届いた。

 

「今度は、手放したらいけねえですぜ」

 

「ちゃんと抱きしめてあげなさぁい」

 

 その言葉を、ちゃんと形にして見せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、井草はたどり着いた。

 

 拘束のための術式をしっかりかけられて、事情聴取のために連行されそうになっていた五十鈴のもとに。

 

「すいません。十分ぐらいいいですか?」

 

「ああ、まあ逃げ出す気もなさそうだし、構わないよ。……先に手続きを済ませるぞ」

 

 サーゼクスが手配してくれたのか、話が一瞬で通ってしまった。いわゆるドアインザフェイスのつもりだったのだが、どうしたものか。

 

 まあいい。全部終わってから抱きしめ続ければいいだけの話だ。ラッキーだと考えよう。

 

 井草はそう割り切り、五十鈴に苦笑する。

 

「……お帰り、五十鈴」

 

「………た、ただいま」

 

 五十鈴は顔を赤らめながら、そっぽを向く。

 

 どうやら恥ずかしいらしい。まあ、それもそうだと納得する。

 

 数えきれないほどの罪を犯し、そもそも井草を裏切った。そして井草に対する罪滅ぼしを考えて、井草から恨まれる存在になろうと迷走。間違っていたと分かったときには寿命もあとわずかで、だからこそ逃げ出した。

 

 それが死んでから生き返って、しかも長生き確定だ。これは冷静になると恥ずかしい。

 

 とはいえ―

 

「五十鈴の顔が見たいから、そっぽ向かないでくれると嬉しい」

 

「……井草、アンタ変わったところは変わったわね、マジで」

 

 マジ顔になって振り向かれた。

 

 まあ確かに、そうだろう。

 

 どちらかといえばお調子者でハイテンションな性格かつムードメーカー。それが昔の井草だ。

 

 それが抑え役で基本落ち着いている、場の調停役といった感じになっている。

 

 明らかに方向性が真逆である。跡形もないといっても過言ではない。昔の写真を見たことはあるが、もう魔改造といってもいい領域だろう。

 

 自分でも納得者だ。そして、それゆえにどうしても不安になることもある。

 

 五十鈴の知る井草と、今の井草は大きく変わっている。それはもう、自分でも断言できるほどに変わり果てていると断言できる。

 

 だから、不安になる。

 

「今の俺じゃあ、いやかな?」

 

 かつて、枢五十鈴は井草・ダウンフォールのことが好きだった。

 

 だが、かつての井草と今の井草は大きく違う。

 

 かつての井草が好きだった五十鈴にとって、今の井草は違和感があるのではないかと思い―

 

「―馬鹿ね」

 

 五十鈴は、呆れた顔になると、両手で井草の顔を挟むとまっすぐに見つめる。

 

 顔が少し赤いが、しかしどこかそれすら喜びにして、五十鈴は井草に微笑んだ。

 

「ナイアルの襲撃の直前に言ったこと忘れたの? 私のせいだからとやかく言わないけど、そういう自分に自信のないところは改良必須ね」

 

 そういって自戒の表情を浮かべるのも、一瞬だった。

 

 華やいだほほえみを取り戻すと、五十鈴はもう一度本音を口にする。

 

 泣きたくなるほど悲しかったあの時とは違う。心からの喜びを温かさを胸に、もう一度はっきりという。

 

「井草。私、井草のことが大好き。惚れ直した。昔よりも、愛してる」

 

 その言葉に、井草は涙をポロリとこぼす。

 

 その言葉がとても嬉しい。

 

 昔愛してくれていた事が嬉しい。そして、傷つけたのにも関わらず、もっと愛してくれている事がとても嬉しい。

 

 だから、井草は五十鈴を抱きしめる。

 

「井草……」

 

 五十鈴は抵抗しない。井草に身も心も委ねて、そして抱きしめられる。

 

 罪悪感はお互いに今でもある。そして、下手をすれば一生背負い続けるだろう。

 

 特に五十鈴は何百人も殺している。その咎は一生背負い続けなければならない。

 

 だからこそ、井草は告げる。

 

「……肩を貸すよ。だから、ずっと一緒にいてほしい」

 

「他の女(はべ)らせて言うことじゃないわよ、ホント」

 

 五十鈴はそう苦笑するが、しかし素直に体を預ける。

 

 それでいい。十分だ。

 

 かつて罪を犯した自分が、盛大に井草を裏切った自分が、井草と愛し合える。十分すぎる事だ。

 

 それに、自分の為に不利益を背負ってくれた主が本妻ならむしろ上等だ。はっきり言って、自分1人よりも井草を幸せにしてくれるだろう。

 

 そして、なにより―

 

「その言葉、伊予にもちゃんと言ってあげてよ」

 

「ああ、分かってる」

 

 -それが聞ければ十分だ。

 

 かつてくだらない嫉妬で妬み、そして裏切った幼馴染。

 

 だけど、二人と一緒にいた時間は五十鈴にとってかけがえのないものだった。それが今ならとても分かる。

 

 それが、更に大きくなって帰ってくるのなら―

 

「……一緒にいてあげるから、時々肩を貸してよねっ」

 

 ―それは、立った二人で添い遂げるよりある意味で幸せな事なのだろう。

 

 満面の笑顔と愛の言葉を組み合わせながら、五十鈴は心からそう思い、井草に口づけた。

 

 

 

 




撤退理由:激化しすぎて想定外の乱入者が出かけたので撤退。

本格戦闘は本艦隊が来てからの予定なので、現段階でシヴァまで相手するつもりはムートロンにも無かったり。ホテップクラスなら勝算はありますが、万が一インドラとタッグを組まれたら押し切られる可能性があったので今回は撤退です。









そして井草による連続スケコマシタイム。ニングから始まりリムとピスを経由して、五十鈴で締めました。

因みに、本文でも追記しましたがまだ非難は完了どころかろくに進んでません。報道陣は半ばやけくそで映しまくっています。

……ケイオスワールドの兵夜すら超える衆人環視のラブシーン。イッセーの告白を超えるキスシーンですwww
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