混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
そんな事が続いた夜。井草と五十鈴は冥界の病院に居た。
堕天使側の領地内の、医療施設。最近では医療の進んでいるシトリー領との技術交流も発達し、大幅に進んでいる。
その病室の一角で、行仁伊予は眠っている。
「伊予、今日も来たわよ」
五十鈴は眠り続ける伊予の手を取り、そして寂しげに微笑んだ。
井草も、手を重ねて苦笑を浮かべる。
「もう術式の解除も終わったそうだね。できれば早く目覚めてほしいかな?」
「ほんとよ。メイド長は結構厳しいから、なまる前に目覚めないとリハビリも含めてハードな仕事よ?」
伊予が答えないのは分かっている。意識を取り戻していないのだから尚更だ。
それでも、どうしてもついついしゃべってしまう。
いつかは起きる。それも、何年もかかったりはしない。そんな事は分かっている。
四年かかった。四年間の苦しみを乗り越えて、三人はまた一緒に暮らせる可能性をその手に掴んだ。
あとは時間の問題だ。だから、心配する事はない。
分かっているが、やっぱり少しつらいのだ。
「待ってるからさ? それまでに、少しでも教えられるように頑張るから……」
「みんな良い人だよ。きっと、伊予も受け入れてくれるから……」
二人は微笑みながら、少しだけ心の痛みを感じながら―
「「……早く起きて、伊予」」
―そう、どうしても願ってしまう。
「でもまあ、やっぱり世界がへだってると毎日はいけないわよね」
病院内の喫茶店コーナーで、五十鈴は紅茶を飲みながら苦笑する。
井草も全く持って同感だ。ここに来るのも数日ぶりである。
堕天使側の最も医療の発達している施設に伊予が運び込まれて、はや数週間。
最新技術をふんだんに使って調べ上げ、安全を確保した状態でこうして伊予は治療を受けている。
それにエボリューションエキスの研究は、五十鈴からエキスの提供を受けた堕天使側が最もっ進んでいる。エボリューションエキスによる影響も懸念されているのなら、堕天使側の方が都合が良かった。
なので、伊予は堕天使側の施設で入院治療中だ。とはいえ治療も検査もほぼ終わっているので、意識が回復次第、兵藤邸でメイドをする事になる。
「生き物って筋肉使わないと弱るしね。早く起きないと本当にハードな事になるかも」
「あの家、面積広いから掃除大変なのよ。伊予、リハビリとメイド稼業同時にできるかしら」
そんな事を言いながら、二人はお茶を飲む。
正直に言うと、凄く心配である。
大丈夫だと安心したい。というより、アザゼルが本腰を入れてくれているのだから、安心しなければ失礼だ。
しかし、こういうものは理屈ではないのである。
「……気分切り替えよう。伊予以外の話をしないと」
井草はそう判断し、そして五十鈴はふと気づいた。
「そういえば、ちょっと伊予が残るけど聞いていい?」
「ん? なにかな?」
五十鈴は井草に小首を傾げて、事情を知ってからふと気になった事を聞く。
「言っちゃなんだけど、アザゼル総督ってなんで井草のこと気にかけてるの?」
……そこはよく気になっている事だった。
井草があんな事になった後、親身になったのがアザゼル総督である。というか、厳密にはその前からちょくちょく関わっていた。
「いや、そこが疑問なんだよねぇ。そりゃあの人は基本お人好しでお節介なところあるから、近しい人物には気を遣うけど―」
アザゼルは井草の言う通りの人物である。
だが、それでもおかしなところはある。
「……そもそもなんで井草を近しい立場に置いているのかしらねぇ」
五十鈴の疑問はもっともである。
アザゼルの人格なら、身内があんな事になれば気を遣うだろう。なので、井草にした対応そのものについては疑問を挟まない。
だが、そもそも井草は先祖返りのハーフ堕天使で、アザゼルとの接点はそこまでない。
幼馴染と離れたくないという我儘を聞く。死に急ぎまくっている井草が納得しそうな安全牌の任務をあてがう。そもそも、神にすら届く精鋭を親代わりに派遣する。
親しい人物にならそこまでしてもおかしくない人物だ。問題はなんでそこまで親しく扱ってくれるのかである。
あれで組織の長として、ドライになるべきところはきちんとドライにやれる人物だ。でなければイッセーの暗殺など了承したりはしないだろう。汚れ仕事にもきっちり理解を示す人物なのだ。
たかがハーフ堕天使ごときに、何故そこまで親身になるのか。きっかけさえあればなるだろうが、そのきっかけを井草は知らなかった。
「そういえば、伊予と五十鈴の件が解決したらそこについて話してくれるって言ってたけど、色々あって忘れてた」
「……今更聞くのも恥ずかしいわね、それ」
当分聞けそうにない気がする。
なんというか、完璧に時機を逸している。改めて聞くのは何というか気恥ずかしい。
二人は顔を見合わせて唸ると、結論を先延ばしにする事にした。
「……伊予が起きたら聞きましょう」
「そうだね。それがタイミング的にいいよね」
井草と意見を一致させて、五十鈴は紅茶がまだ残っているカップに視線を向ける。
少しの間黙っていたが、五十鈴はカップに視線を向けたまま告げる。
「……この前、両親に手紙を送ったわ」
「……え?」
正直少し驚いた。
なにせ五十鈴の場合は、四年間が四年間で、そのきっかけも問題だらけだ。
はっきり言って合わせる顔もないだろう。というより、井草もどうしたものかとふと考える。
事情はしっかり説明しているので、堕天使や悪魔などの裏事情もある程度は知られている。
だがしかし、井草の場合は幼馴染相手の事実上の強姦行為である。当然殴られているし、彼らも顔を合わせたくないだろう。
そしてその計画犯人は五十鈴である。しかもその後テロリストと殺し合いをする毎日である。計画を立てた時は心神喪失が適用されるが、正気になった後の暴走テロ行為はあれである。
はっきり言って、五十鈴の両親はもちろん、伊予の両親に至っては目の前で死んで詫びるぐらいの事をした方がいい気もしないではない。
「……まだ、返事は返ってない」
五十鈴はそう言って、カップから視線を逸らさない。
それは当然だろう。五十鈴はそれだけの事をしてしまった。罪があまりに重いだろう。
両親からしても、どう返事をしていいかが分からないはずだ。縁を切る選択肢を相手がとったとしても、文句を言える状態でもない。
それが分かるから、井草も何も言えず―
「……井草、携帯鳴ってる」
その空気をぶち壊す携帯のバイブレーションに、五十鈴が反応した。
危ないところだった。喫茶店スペースは電源を入れていいので問題ないが、他の場所だったら顰蹙を買っていたかもしれない。
そして慌てて確認すると、リアスからだった。
「……どうしたの?」
『あ、井草? まだ病院にいるかしら?』
「うん。何かあった?」
この時間、日本は深夜である。
それがどうしたのかと思い―
『……猫又の発情期を抑える薬とか、貰ってきてくれない?』
「……はい?」
訳が分からなかった。
「小猫ちゃんが発情期?」
最新技術の薬を貰って帰ってきた井草と五十鈴に、アザゼルはそう説明した。
なんでも、小猫が発情期を起こしてイッセーに迫ったらしい。
いつもなら発見され次第大揉めになるのがこの家の基本パターンだが、流石に異常を察したリアスは、駒王学園に在学しているその手の事に詳しい人物に相談したそうだ。
その結果が、発情期。
「……まあ、高校一年生って立派な思春期だものね。そんな歳の猫又なら……盛っても当然?」
「五十鈴、言い方」
確かにそうだが、言い方があれなので井草は一応たしなめる。
とはいえ、疑念もある。
「……言い方あれだけど、小猫ちゃんって体格的に未成熟ですよね? なるんですか?」
「普通はならん。っていうか、今の段階で妊娠及び出産をしたら高確率で死ぬからならない筈なんだがなぁ」
井草の質問にそう言いながら、アザゼルはぼりぼりと頭をかく。
そして、一緒に井草達が帰ってくるのを待っていたニングもため息を付く。
「リアスさんとイッセーさんの仲睦まじい様子を見て、どうも対抗意識が芽生えたのではないかという意見があるのです」
「最近はみんな微笑ましく見守ってると思ってやしたが、思わぬところから火種が出てきやしたねぇ」
リムがそういうが、確かにそうだ。
イッセーとリアスは最近特にいちゃついている。
イッセーの鈍感の原因が判明してある程度克服され、更にイッセーがリアスに告白したのが原因だ。
漸く恋が成就した事もあり、リアスは今まで以上にイッセーにかまっている。それはもう、ハタから見ていて苦笑するレベルにだ。
普段は取り合いに発展するメンバーも、基本的にはリアスに関しては別格扱いで当面見守る方針だった。当然、比較的冷静な小猫も表向きはそういう体制だった。
だが、本能は別だったらしい。
肉体の問題を超えるほどにまでイッセーを恋慕していたという事だろう。冗談交じりに恐るべしおっぱいドラゴンというべきなのかもしれない。
「……で、どうするんです?」
井草はその辺をどうしたものか聞く。
イッセーはなんだかんだで男を見せるタイプだ。覗きを何度も行うほどにはスケベだが、しかし最低限の一戦は守る。朱乃に迫られた時も、そのタイミングで致せば朱乃の為にならないと渾身の精神力で抑え込んだそうだ。
だが、それでも限界はあるだろう。恒常的に迫られれば、我慢の限界を超えるかもしれない。
アザゼルもその辺は同感なのか、これまた首を捻りながら困った表情を浮かべている。
「ああ。薬で抑え込んだら今度は大人になっても発情期にならないとかもあるからな。イッセーが我慢する以外の手はないが、それでも対処策を考えた方がいいかもしれん」
「……欲情した童貞って、未経験だからこそ始末に負えないからなぁ」
経験論で井草は相談じるが、その両肩にニングとリムの手が乗っかった。
「井草さん。自虐は自嘲するのです」
「五十鈴死んでますぜ」
「……あぁ!? ゴメン!!」
「い、いいのよ。……全部私が悪いし」
微妙にシュールなコントになったが、しかしアザゼルが咳払いをして空気を換える。
「……話は変わるが、実は明日この家に来客が来る」
「来客? 堕天使側から話は聞いてませんが?」
井草は首を傾げるが、アザゼルはまっすぐにその目を見つめながら続けた。
「色々あってな。……で、だ」
そう一度切ってから、アザゼルははっきりと言った。
「絶対に敵意や殺意の類を抱く相手だが、こっちから仕掛ける事だけはするな」
……この言葉に、嫌な予感を覚えた井草と五十鈴の勘はとても正しい。
リムとニングも先に聞いていたが、しかし嫌な予感を覚えている。
どうもヴァーリチームが関わっているようだが、それだけでもないらしい。アザゼル曰く半分正解だという事だ。
確かに半分正解だが、戦力的には一パーセント正解だと言って欲しかったと、のちに井草は語ったと言う。
衝撃のお宅訪問まであと少し(苦笑
それはそれとして、家族関係でひと悶着ありかねない五十鈴と伊予。まあ、当然のことですが彼女たちは普通の一般市民だったので、家族もいます。
ぶっちゃけこの章で井草の家族関係の秘密が明かされますが、原作第四章での五十鈴編と伊予編では、家族がらみのトラブルが巻き起こる予定です。具体的にはデイウォーカー編とデュランダル編でかかわる予定。必然的にニングとリムはヴァルキリー編とファニーエンジェル編ですね。
全体的に「家族」をテーマに描こうかと思っています。まあ、まだ構想段階が大半なので、変更する可能性は結構ありますけどね。