混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
そしてそんな日々が少しだけ続き、中級昇格試験当日。
「……少し緊張してきた」
「イッセー。万が一落ちても再試験は受けれるから」
イッセーの肩に手を置きながら、井草は苦笑する。
昇格試験といえば緊張するかもしれないが、しかしそこまで緊張する事もないだろう。
なにせ、一回や二回おいても受講資格を失ったりはしないのだ。考えようによっては気楽に受ける事もできるというものである。
そこまで緊張する事もないと、井草はそう肩を叩く。
「問題は試験を終えてからさ。なにせ、サーゼクスさんのところにオーフィスを連れて行くんだから」
「あ、そっちもかぁ……」
井草の指摘に、イッセーがはっとなって頭をかく。
そう、アザゼルは内密にサーゼクスにだけはのちに事情を話したのだ。
そして、今日試験が終わってから時間をとって、会談する事が決定された。
オーフィスはオーフィスで「ドライグが一緒なら」とあっさり承諾している。これも意外である。
「なんていうか意外でしたよね。あっさり承諾するんだから」
イッセーがそう言うのも無理はないだろう。
敵対している勢力のトップ相手に、テロリストの親玉が普通に会談に臨む。
確かにイメージしづらいだろう。テロリストというのは暴力で解決するイメージが強い。あっさり了承されるのは意外なイメージがあった。
それに、イッセーからすれば意外なイメージが強いのだろう。
アーシアがお茶を出したらあっさり受け取ったり、イリナがトランプに誘ったらこれまたあっさり承諾したりしている。
なんというか、普通断るだろうという事もあっさりしている。
ちなみに、黒歌とルフェイは兵藤邸の地下にあるプールで遊んでいる。観光かとツッコミを入れたいものが多数いたが、揉めると面倒なので承諾した形だ。
こんな様子を見ていると、イッセー達からすればテロリストのイメージを持てなくなるかもしれない。
「……はっきり言って、外見があれだから子供かとか思ったりしますね」
イッセーがそんな事を言うのは、否定してもらいたいからだろう。
気が緩んでいるから、それを引き締める為にもそれを指摘してほしい。人から言われる事で引き締まる事もあるのだ。
だが、井草はそれをする気にはなれなかった。
「案外、そうなのかもね」
と、井草は言う他なかった。
数日前の夜。五十鈴の復興支援金稼ぎの為の内職に興味を示したオーフィス。その反応がよみがえる。
もしかしたら、彼女は悪い事をしているつもりがないから禍の団に協力できているのだけではないか。
もし静寂を得る事が悪い事だと教え込んだら、案外素直に手を引くのかもしれない。
あくまでこちらの都合でしかないのでそこまでする気はなかったが、もし井草がもう少し自分達の都合を押し付けるタイプなら、話はすぐに―
「井草様」
と、そのタイミングでシアリーが一歩前に出る。
「私達メイドは家事がありますので、付いていけません。お嬢様とリム様はサーゼクス様と共に冥界のイベントに参加してから、会談時に合流となります」
「分かったよ。……五十鈴は?」
そういえば姿が見えない。
すると、シアリーはさらりと言った。
「オーフィスに気が逸れているようなので、買い物に行かせました。この時間帯限定のスイーツを、奥様に届けさせると言っておきました」
「ああ~。お昼の空いている人限定のスイーツってあるよねぇ」
「因みに奥様にお伝えしたところ、「チーズケーキだからイッセーの分も」とご要望がありました」
その説明にイッセーに視線を向けると、イッセーは少し嬉しそうだった。
「好物です!!」
「意外とおしゃれなものが好みなんだね」
意外と付き合いがあっても知らない事が多い者である。
「因みに俺は鮒ずしが好物だよ。あれ、ウォッシュタイプのチーズと似たにおいらしいね」
「……渋いですね、井草さん」
こちらも意外な趣味だと思われているようだ。正論なので文句は言わない。
だが、チーズのお菓子とチーズに似たにおいのおつまみ。
もしかしたら、ブランデー入りの紅茶で楽しむという事もできるかもしれない。などと井草は思った。
「井草様。変な想像はしないでください」
……婚約者のメイドは辛らつであった。
「……む~。寂しい」
「井草、貴方意外と寂しがり屋なのね」
寂しさのあまりやけ酒を足しない井草に、リアスが苦笑する。
今現在、井草達はホテルのレストランを貸し切って待機中だ。
イッセー達が試験を終えたら、一旦打ち上げをしてからサーゼクスと合流する予定である。それぐらいの時間が余っているのだ。
なのでその暇な時間を潰しているのだが―
「美味しいですか、オーフィスさま」
「うん。うまうま」
……ルフェイ達と共にモグモグと食事を食べているオーフィスを見ていると、なんというか気がほぐれる。
オーフィスは禍の団の盟主ではなくマスコットなのではないだろうか。そんな事を一瞬思ってしまう程度には可愛かった。
だが、可愛いとはいえ相手は禍の団の盟主にして、世界最強の存在である。
本来敵対勢力の長であり、そんな存在を都市のど真ん中に連れて行くなど、危険行為である。
間違いなく上手くいかなかったりしたら大問題だ。アザゼルの首が物理的に飛ぶ。
……堕天使全体の同盟内での地位を揺るがしかねないと思うと、酔いが醒めた。
「なんか、寂しさとは別の意味で酔い潰れたくなってきた。今すぐ飲み直していいかな?」
「今更よ。悪酔いはしないでね」
と、リアスがお酌してくれた。
……三秒後、井草は更に酔いが醒める。
「不倫扱いされたらやだからやめて?」
「……このぐらいの茶目っ気でそこまで言わなくても………」
三秒後、リアスは酒瓶から手を放した。
「イッセーは落ち込みそうね。やめておくわ」
「うん。それがいいよ」
ちょっと緊張感でおかしくなっていたようだ。リアスもまだ十代の少女なのだから当然ではある。
イッセーの中級昇格試験がやはり気にになるらしい。恋する乙女としても主としても心配にはなるだろう。
実技に関しては何の問題もないとは思われるが、しかし悪魔になってまだ一年も経ってないのだから、筆記では何かあるかもしれない。
落ちても受験資格を剥奪されたりなどされないとはいえ、流石に気にはなるものである。
「まあ、イッセーはモチベーションがあれば集中するし吸収もするからそう酷い点は取らないでしょ。……流石に冥界のテレビ番組とかあまり見ないものが設問に出てくれば分からないけど」
「……以前、セラフォルー様の番組が設問で出された事があったわ」
……とたんに不安になってきた。どうやら冥界は本当に多芸である事が求められるらしい。
とりあえず気を取り直そうとして、井草はふと思いついた事を告げる。
「そう言えば、リアスちゃんは今後のトレーニングの方針とか決めてる?」
「そうね。やっぱり足手まといにはなりたくないから強くなりたいけど、どう強くなればいいかっていうのが問題ね」
リアスとしては、前回のビルデ色々と思うところがあるようだ。
結果的に凌ぐ事はできたが、それは数多くの増援の突入と、シヴァ神の気まぐれによるところが非常に大きい。あのまま戦っていれば、相当の被害が発生していた事は想像に難しくなかった。
それだけの戦闘能力を、鍛錬と技術開発と強化装備によって成し遂げた、ビルデ・グラシャラボラス・サタン。そして、その更に上をいく主神クラスである、ムートロンのナイアル。
外部で戦闘をしていたホテップに至っては、主神を複数相手にしてなお立ち回るという異常とも言える力を発揮している。その戦闘能力の高さは正直強硬だろう。
そして恐ろしいのは、ナイアルはムートロンで上から数えて二十番目程度の実力で、ホテップですら一番強いというわけではないという事だ。
主神クラスであるEEレベル7,5以上。それが五十鈴曰く27人いるのがムートロンだ。更にロキの技術を取り込んだ事で、より強大になる可能性すら示された。神の子を見張る者などの異形組織から流出した技術を併用すれば、事になりかねない。
これに対抗する為には、どうしても強くなる必要がある。
なので、井草としても強くなりたいのだ。
「せめてナイアルを一発ぶん殴れる力が欲しいよ、俺も」
「それ、神や魔王の領域に到達するって事なのだけれど?」
いくら何でも求めすぎだろうと思うリアスだが、しかし必要だと井草は思っている。
なにせ禍の団の有力派閥と、オカルト研究部は何度も激突している。
ムートロンの魔王クラス以上の実力者とは何人も出くわしている。旧魔王幹部との激闘は死闘といってよかった。大魔王派や英雄派にはターゲットの一つとして認識されている節がある。
そして、ムートロンの本艦隊と激突すれば壮絶な戦いが始まるだろう。本格的な戦争に突入するはずだ。
どうしても強くなる必要はある。少なくとも、魔王クラスが複数人投入された戦場で生き残るぐらいの力は必須だろう。
その辺を考えると、とにかく力が欲しくなる時期ではあるのだが―
「……リアスはそこまで気にする事はないんじゃないか?」
と、そこで井草と同様に酒を飲んでいたアザゼルが、そんな事を告げてきた。
「アザゼル? どういうことかしら?」
リアスは怪訝な表情をするが、アザゼルは苦笑すら浮かべている。
「ライザー・フェニックスが言ってたろ? お前の最大の持ち味は、その巡り合わせの才能だ」
そう告げるアザゼルは、試験会場がある方向や、このレストランで食事をとっている者達を見る。
その目には親のような慈愛の感情があり、更には凄まじいものを見る畏敬の念があった。
「イッセー達は全員凄まじい才能の持ち主だ。普通、こんなレベルの金の卵を眷属にするなんてできねえんだぞ?」
教会の非合法実験からの逃亡者という、普通悪魔が接触できるわけがない立場の木場祐斗。
堕天使最高幹部の一人と、日本異能者の末裔から生まれたサラブレッドの姫島朱乃。
絶滅危惧種レベルの妖怪である、塔城小猫。
世界に一つしかない伝説の聖剣の使い手、ゼノヴィア。
北欧アースガルズで主神のお付きをしていた才媛、ロスヴァイセ。
聖女とまで呼ばれ、悪魔すら癒せる神器を持つ、アーシア・アルジェント。
デイライトウォーカーの名門の血筋で、更に高位神器すら保有している、ギャスパー・ヴラディ。
そして、神滅具が一角、赤龍帝の籠手を保有する、兵藤一誠。
眷属だけでこのそうそうたる面子だ。同格レベルが一人眷属に迎え入れただけで、その上級悪魔は将来注目され成果を上げる事ができるだろう。そんなレベルである。
それらを率いる主こそが、リアス・グレモリー。
この天運だけは、努力だけでは手に入らない。
「お前は王だ。その王として間違いなく素晴らしい才能を持っている。だから無理して個人戦力を鍛える必要はない。やるなら味方との連携で光る能力を目指すべきだな」
そう告げるアザゼルは、そして視線を井草に向ける。
「あと、井草もじきに禁手には到達するだろう。これに関しては確信レベルで断言できる」
と、神器研究者であるアザゼルは、はっきりと言い切った。
「……根拠は何です、先生?」
「簡単だよ。お前、一気に精神的な問題が解決しただろ?」
そう告げるアザゼルは、くしゃくしゃと井草の頭をなでると、ほっこりした表情を浮かべた。
「五十鈴と伊代を引っ張り戻して、お前もだいぶ吹っ切れただろ? あとは伊予が目を覚ませば、お前は自然に至ると思ってるよ」
その発言は確信に満ちており、間違いないと断言する勢いだった。
その言葉に井草は、かつてピスが向けていて今は向けていない感情を思い浮かべる。
なんというか、井草を男として見るようになってきたピスが、昔のようには決して出せない感情だった。
そう、それは―
「……むぅ」
-まるで親の視線のようで、男からのそういった視線になれてない井草は、なんとなく顔を逸らしてしまった。