混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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さて、そろそろ二話使ってのエピローグといった形ですね。

とりあえず、今回はヒーローズ全体のエピローグといったところでしょうか。


14話

 

「はむ……ぐすっ……もぐ……ひっぐ……」

 

 数日後の夜、行仁伊予(ぎょうにんいよ)は涙を流してご飯を貪っていた。

 

 より正確に言うと、起きた後の検査を終え、安全が断言できる状態となって、メイドとして兵藤邸に派遣された日の夕食である。

 

 ポロポロと涙が零れるのを止める事ができない。

 

 そして、食事を口に運ぶ事も止められない。

 

 なんというか、温かい食事だった。

 

 食事そのものの温度ではない。食事に込められた真心の温かさだ。

 

 こういったものが込められた食事を食べたのは、いつ頃だろうか?

 

 心に染み入るその温かさに、伊予は涙を止める事なくご飯を掻き込む。

 

 そして、それを見ながら、イッセーの母親である三希は、井草と五十鈴に苦笑を浮かべる。

 

「この子も大変な目に合ってきたのねぇ。おばさん詳しく聞かないけど、もっと作った方が良かったかしら?」

 

「あ~。その、ある意味五十鈴より大変だったというか~」

 

「……ごめんなさい奥様、おかわり用意していただけると嬉しいです」

 

 事情を詳しく言うわけにはいかないが、しかし多少は察してくれているようで助かって入る。

 

 井草も五十鈴も苦笑いしながら、しかしほっこりと形容するべき感情で、伊予の喰いっぷりを見つめていた。

 

「伊予さん? 良ければこれも食べますか?」

 

「……うん」

 

 アーシアにおかずを勧められて、伊予は漸く我に返る。

 

 ちなみに、彼女の格好は五十鈴と同じくメイド服だ。

 

 まかり間違っても、その格好で家人の目の前で家人よりがっつり食べるような恰好ではない。

 

 思わず顔を赤くする伊予だったが、その目の前にご飯がよそわれたお茶碗が置かれる。

 

「え?」

 

「あら、食べないの?」

 

 三希はそう首を傾げ、そしてにっこりと笑う。

 

「貴方若いんだから、たくさん食べるぐらいでちょうどいいわ。ご飯ならまた炊けばいいんだし」

 

「え、でも……」

 

 思わず伊予は戸惑った。

 

 なにせ伊予の立場はメイドである。

 

 五十鈴と同じく、ニングの眷属悪魔に転生する事で罪業を賠償金で支払う形にし、神の子を見張る者がそれを無利子で立て替えている。そして、ニングの眷属悪魔兼直属メイドとして活動する事で、その給金の八割を返済に充てるという形だ。

 

 メイドなのだ。普通はご飯をよそう側である。

 

 そして彼女達はニングが間借りしている家の家主であり、普通に考えるとご飯をよそってもらうのではなく、ご飯をよそってあげなければいけない側だ。

 

 冷静に考えて、もの凄いまずい事をしているのではないだろうか?

 

 そこまで考えた伊予だったが、イッセーの父である五朗も、ニコニコしながら伊予を促す。

 

「ほら、今日ぐらいは素直に食べたいだけ食べていいんだよ。一日ドカ食いしたぐらいで太ったりしないさ」

 

 そして、五朗は五十鈴に視線を向けた。

 

「五十鈴ちゃんもここに来て最初のご飯の時は、君みたいにボロボロ泣きながら美味しそうに食べたしね、気にしなくていいよ」

 

「だ、旦那様ぁ!? それ言っちゃいますか普通!?」

 

 五十鈴が大慌てするが、それをスルーして、五朗は伊予ににっこり微笑む。

 

「君も五十鈴ちゃんも、詳しく知らないけど大変な思いをしたのだけは分かったよ」

 

 そして、伊予の肩に手を置いて、ゆっくりと頷いた。

 

「だから、おかわりぐらいは一杯していいんだ。それぐらいのことで文句なんて言わないさ」

 

 その言葉と笑顔が、本当裏のない事である事を理解させてくれる。

 

 それを受け入れて、伊予はボロボロと涙をこぼした。

 

「……良い人達でしょ、本当にさ」

 

 五十鈴は伊予の背中をさすりながら、涙目で微笑んだ。

 

 そう、この人達は、本当に優しく、器の大きい人達だ。

 

 彼らのような人達に迎え入れてもらう事が、本当に素晴らし事だと断言できる。

 

「ここから、一緒にやり直そう?」

 

「……うん。うん………っ」

 

 その光景を見て、井草もまた微笑んだ。

 

 二人は本当に良い人達に出会えた。

 

 ナイアルに出会ってからの四年間の出遅れも、きっとこれから取り戻す事ができるだろう。それだけの何かが、この家にはある。

 

「イッセー」

 

「は、はい」

 

 井草は、イッセーに苦笑を向ける。

 

「ちゃんと親孝行しなよ? こんな良い両親なんて、きっと滅多にいないんだから」

 

「……うっす!」

 

 親絡みで色々あった井草に言われて、イッセーは少し気合を入れ直した。

 

 今度、おっぱいドラゴンで稼いだお金で何か買ってあげよう。親には財布を拾って届けたら、一割貰ったとでも言ってごまかそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして夕食後、祐斗とギャスパーを連れて、アザゼルが状況説明にやってきた。

 

「……で、責任を取って総督を表向き更迭で自主退職した、と」

 

 井草が簡単にまとめると、ため息を付いた。

 

「公的資金の着服の罪で追放されるとばかり思ってたら、これは想定外だね、ご先祖様」

 

「こそばゆいからご先祖様言うな。っていうかお前そんなこと思ってたのか」

 

 アザゼルの半目が突き刺さるが、井草は無視した。

 

 とはいえ、アザゼルの更迭は仕方のない事だろう。

 

 なにせ、テロリストの親玉を同盟の重要地域に潜り込ませたのだ。結果的にオーフィスを引き込む事に成功し、更に彼女が変な連中に利用される事を阻止する事になったが、結果オーライで済ませていい事ではない。

 

 ケジメとして更迭というのは、まあ妥当な案件だろう。

 

 とはいえ、そんな相手に酷い事を言った井草に、伊予が目を見開いた。

 

 そしてプルプルと震えると涙を流す。

 

「ど、どうしよう五十鈴ちゃん……! 私たちがナイアルに引っかかって暴走したせいで、井草君が意外とグレてた!!」

 

 涙目でそんな事を言う伊予の方に、リアスが手を置く。

 

 そして視線が向けられてから、静かに笑顔を浮かべた。

 

「安心して。アザゼルはこれまでに何度も自分の組織(グリゴリ)の資金を着服して怒られてるから。井草の冗談も当たり前のことよ」

 

「え、マジですかリアス様」

 

 むしろ五十鈴がぎょっとなるが、皆が一斉に頷いた。

 

 イッセーに至っては遠い目をしている。

 

「俺、純然たる被害者なのに女の裸を向いた悪党にされてボコボコにされたよ。……真女王で殴りたい」

 

 ぷるぷる拳を震わせるイッセーの意見ももっともである。

 

 それ以外にも色々と思い付きでイッセーが酷い目にあっているのも事実。しかも、その思い付きを実現しているから始末に負えない。とどめに神の子を見張る者(グリゴリ)の資金を横領してやる事も多々あるのだ。

 

 むしろなぜ今まで更迭されなかったのだろう。伊予と五十鈴の心は一つになった。

 

 異形社会は平和である。人間達との間に一線を引いている理由が分かるというものだ。

 

「あの、こんなノリで人間界と共同戦線とれるんですか? イッセー、アンタは悪魔歴短いけど、どう思ってんの?」

 

 思わず、比較的染まってないであろうイッセーに、五十鈴は質問してみる。

 

 エロス関係においては暴走特急な側面を持つイッセーだが、しかし根は意外と常識的だ。エロさえ絡まなければ良識も常識もわきまえている。それも人間世界よりのだ。

 

 裏社会にどっぷり染まっていた自分よりもまともな側かもしれないので、素直に聞いてみた。

 

 答えは、遠い目が全てを物語っている。

 

「おっぱいドラゴンとか、日本じゃ子供にはやらないと思う」

 

「「ああ~」」

 

 伊予と一緒に納得してしまった。

 

 確かにあれははやりづらい。主にPTAとかがマジギレしてクレームをつけてきそうだ。

 

 異形社会のノリは人間界とは違う。これに関して一発で分かる例えが出てくるとは思わなかった。

 

 乳龍帝おっぱいドラゴン。異形社会の風土ゆえにはやった、伝説の作品である。

 

 と、そこまで言ってアザゼルが咳払いをして話を戻す。

 

「話を戻すぞ。で、今の俺の役職は三大勢力重要拠点のこの駒王町周辺の監督だ。神の子を見張る者での役職は特別技術顧問ってところだ」

 

「因みに総督は繰り上がり人事で副総督だったシェムハザさん。副総督はバラキエルさんだよ」

 

 井草がそう続けて言っている間に、アザゼルは明らかにほくそ笑む感じだった。

 

「ふっふっふ。ま、結果的に俺は趣味に没頭できる。面倒くさい業務から解放されてほっとしたぜ」

 

 その態度と言葉に、イッセー達は不安を覚える。

 

 冷静に考えると、組織のトップであるという自覚は一種の枷になる。少なくともアザゼルはそういうタイプだろう。それでもあれだが。

 

 そのトラブルメーカー気質のアザゼルが、組織のトップから降りて自由度の高い立ち位置についた。それも、趣味と実益が一緒になった役職だ。

 

 何かやらかすだろ、こいつ。

 

 皆の心がだいたいこんな感じになった。

 

「あ、先生。ちなみに俺の役職は特別技術顧問監視役が追加されたから。何かあったらレセプターエボリューションになってどついていいってさ」

 

「嘘だろ!? シェムハザの野郎、覚えてやがれ!!」

 

 そして一応対策はされていた。

 

 この場において真女王に匹敵し、手札の数では上回る戦力であるレセプターエボリューション。

 

 それを鎮圧に使う許可が出ているのなら、指す釘としては十分だろう。

 

 ……最も、痛い目にあっても懲りないダメな大人なので、あまり効果はないかもしれないが。

 

 まあそれで総督更迭については終わったのか、アザゼルは三枚の紙を取り出す。

 

「で、本題だが昇格試験の結果が発表された。サーゼクスは色々と忙しいから、暇になった俺が代理で告げる」

 

 その言葉に、イッセーが特に緊張感を露わにする。

 

 まあ、事前連絡も無しにいきなり合否発表とかされれば、戸惑うのも仕方がないだろう。

 

「まず木場だが、合格だ。授与式は後日だが、今日から中級悪魔だぜ」

 

「ありがとうございます」

 

 と、あっさりと合否発表がなされていく。

 

 そしてできる男、木場祐斗はあっさり合格だった。

 

 そして祐斗に書類を渡したアザゼルは、次に朱乃に向き直る。

 

「で、朱乃も合格だ! 先にバラキエルに伝えたんだが、あいつ男泣きしてやがったぞ」

 

「バラキエルさんらしい。朱乃ちゃん、後でからかったりしないように」

 

「もう、父様ったら……」

 

 井草の苦笑に、朱乃は赤面しながら書類を受け取る。

 

「最後にイッセー」

 

「は、はい!!」

 

 そして、イッセーは背筋をピンと伸ばしてドキドキしながらそれを待っている。

 

 合格できているかどうかマジ不安。そんな思考がもろばれだった。

 

「イッセーって最上級悪魔クラスの強さよね? 合格余裕じゃないの?」

 

 その緊張っぷりに、五十鈴が首を傾げる。

 

 ちなみに、五十鈴はレストランにいなかったし、その後超巨大魔獣絡みで色々あったので、イッセーが実技試験で本気殴りをぶちかましてワンパンで試験を終わらせた事を知らない。

 

「……なり立てなので筆記が気になります。あと、実技もやりすぎているところがありますので、そこも気になるのかと」

 

 小猫がそれを察してそれとなく伝えると、呆れた視線が向けられた。

 

「EEレベル換算6,0以上は確実のスペックが、なにやってるんだか」

 

「なんでみんな俺の実力を俺以上に正確に把握してるんですか!! 五十鈴さんはそもそもムートロンでしょ!?」

 

「え?」

 

 五十鈴に対するイッセーの文句に、伊予が首を傾げた。

 

「イッセー君、ムートロンの警戒対象リストの上位にいたはずだよ? 確か若手悪魔の中じゃ「戦闘能力が高いうえに、何しでかす分からない」って理由で凄く危険視されてた気がするけど?」

 

 ……ムートロンの方が、イッセー自身よりもよほどイッセーの危険性を分かっているようだ。

 

「そんなリストまで出回ってるの?」

 

「いえ、私が抜けたのは発表前なんで、詳しくは……」

 

 リアスにそう返答する五十鈴はちらりと伊予を見るが、しかしすぐに肩をすくめた。

 

「……伊予がそんなのに注目してるわけないか」

 

「うぅ。ゴメンなさい」

 

 伊予がシュンとなるが、しかしその長い脱線はイッセーの緊張を更に高める。

 

 汗まで書いている姿に皆が苦笑し、視線をアザゼルに向ける。

 

「もういい加減話してやったらどうだ、先生?」

 

「そうね。イッセー君気絶しそうだわ」

 

 ゼノヴィアとイリナにそう言われて、アザゼルはちょっと残念そうに紙を見せる。

 

 もっと引っ張ってから買いたがっているようだ。鬼畜である。

 

 とはいえ、その書面に書かれている文字は―

 

「ま、お前も無事に合格だ」

 

「………いよっしゃぁ!!」

 

 イッセーも勢いよくガッツポーズをする。

 

 念願の上級悪魔へのステップが、一段進んだのだから当然だろう。

 

 アーシアも我が事の様に感激し、涙を浮かべてイッセーに抱き着いた。

 

「おめでとうございます、イッセーさん!」

 

「ありがとうアーシア! やった、俺、中級悪魔だ!!」

 

 イッセーもアーシアを抱きしめ返し、感激に振るえる。

 

「流石はイッセーだわ」

 

「私がマネージャーをしたのですから当然のことですわ! で、でもおめでとうございますわ!」

 

 リアスが褒め称え、レイヴェルもツンデレ成分を見せながら褒め称える。

 

 そして次々に賛辞の言葉が飛び交う中、アザゼルはイッセーの肩に手を置いた。

 

「ま、お前のことだから上級悪魔も案外すぐだろうな」

 

「マジっすか!?」

 

 驚くイッセーに、アザゼルは軽く笑いながら頷いた。

 

 実際問題、イッセーの戦闘能力はこの場のメンツの中でも最高格。真女王になれば、砲撃戦闘ならレセプターエボリューションを超える最大火力だ。

 

 総合性能なら同格で、手札の数ならレセプターエボリューションの方が上。しかし、シンプルな勝負なら真女王の方が僅かに凌ぐだろう。味方のサポートという面でも、赤龍帝の籠手は譲渡があるので、そこそこ渡り合えるはずだ。

 

 既に戦闘能力なら最上級クラス。魔王クラスとも真っ向勝負ができるだろうそのポテンシャルは、力量に限定すれば全く問題がない。

 

 実績を更に積めば、確実に昇格できるはずだ。

 

「ま、そういうわけだ。これからちょっとお祝いするぞ!! 酒持ってきた!!」

 

「先生! イッセー達は未成年だからね! 教師が未成年飲酒を勧めたらいけないでしょ!」

 

 速攻で井草が踵落としを叩き込んで鎮圧したが。

 

 そして、その光景を見てイッセー達も苦笑する。

 

「あらあら。正式に親族として認められた事もあって、気の置けない関係になりましたわね」

 

「あまりからかわないでよ、朱乃ちゃん」

 

 井草がむっとした目を向けるが、事実である。

 

 既にイッセー達には、アザゼルと井草の血縁関係については説明している。

 

 最初は色々と混乱されたが、しかし当人達が結構軽く流している事もあって、すぐに収まった。

 

 とはいえ、変化はきっちりあるのだ。

 

「……それで、総督更迭を気にダウンフォール性を追加ですか」

 

「そうだよ小猫。ま、人間世界には遠縁の親戚って事で通すがな。駒王学園でもそういう事にするから、フォローがいる時はよろしくな」

 

 アザゼルはそう言いながら、更新した免許証を見せる。

 

 そこにはしっかりと「アザゼル・ダウンフォール」の文字が書かれていた。

 

「ってことは、対外的にはピス姉さんの親戚って事にもなるのですか、アザゼル……元総督?」

 

 五十鈴がふと気になった事を聞くが、それ以上にアザゼルをどう呼ぶかで一瞬混乱する。

 

 それを笑って流しながら、アザゼルは五十鈴の頭をなでる。

 

「アザゼル先生で通しとけ。ま、井草の嫁の一人だから、親のように接してくれても構わねえぜ? 伊予もな」

 

「あ、あぅ……」

 

 伊予がいきなり振られた事もあり、顔を真っ赤にしてうつむく。

 

 ちなみに、五十鈴もそっぽを向いているが顔が真っ赤であった。

 

「ですが、これから色々と忙しい事もありますよね」

 

 と、ロスヴァイセが緩み切った空気を引き締めるように、あえて言った。

 

「そろそろ魔法使いとの契約も迫っています。また、ギャスパー君に謎が生まれたタイミングで、吸血鬼がこちらに接触を試みているとか」

 

 そう、なかなか問題も数多い。

 

 そろそろ若手悪魔が魔法使いと契約を行う時期が迫っている。

 

 何分若手の化け物が集まっているグレモリー眷属だ。募集をかけたら凄い数の応募が届くだろう。そこから選りすぐるのも大変である。

 

 吸血鬼に関しても問題だ。

 

 ギャスパーがゲオルクを圧倒した、謎の闇の力。そこに関しては不明な点が数多い。

 

 そこに来て、未だに和平にテーブルに乗っかりもしなかった吸血鬼が交渉を求めてきた。

 

 タイミング的には完璧に偶然だろうが、しかし何か嫌な予感を覚えもするだろう。

 

「あぅ。すいません、僕のことでなんか大変な事に……」

 

「いやいや、ギャスパーの所為じゃねえでしょう。神の子を見張る者でも分からねえんですから、落ち込むのはやめなせぇ」

 

 そう言ってギャスパーをリムが慰めるが、確かにひと悶着起こりそうではある。

 

「そうなのです。冥府もムートロンに襲撃を受けたそうですし、これからも大変な事は多いのですね」

 

 と、ニングはそういうと、イッセーと井草にまっすぐに目を向ける。

 

「……お二人のこと、頼りにさせてもらうのです」

 

「分かってる」

 

 井草はそう言って決意を新たにする。

 

 逆に、イッセーはちょっと戸惑っていた。

 

「お、俺としてはもうちょっと平和に生きたいんだけどなぁ」

 

「当分無理だな」

 

 と、アザゼルがバッサリ切った。

 

「まあ確かに、ムートロンの本艦隊はあと一年もせずに来ますからね」

 

 と、ロスヴァイセもそれに同意し、小猫も頷いた。

 

「……ある意味、そこからが本番」

 

「そうですなぁ。禍の団も本来はそこまで戦力を温存する気でしょうし、そっからが本格的な戦争ですなぁ」

 

 リムもそう言い切るが、しかしアザゼルは意外と気にしてない感じだった。

 

 そして、イッセーの方を見ながら、にやりと笑う。

 

「俺としてはお前らが何とかしそうな気がしてきたな。なんつーか、俺達おっさんがどうにかするより、お前達若い奴らを主軸に据えた方がいいんじゃねえかって思ってきたぜ」

 

「先生、俺達学生なんだけど?」

 

 もうちょっと大人の責務を果たしてくれと言いたげに、井草が釘を刺す。

 

 だが、アザゼルは静かに首を振った。

 

「いや、どっちにしても禍の団はお前らに寄ってくる。そしてお前らに叩き潰される。旧魔王派や英雄派が壊滅的打撃を喰らったようにな」

 

 確かにその通りな気がするのが、難点である。

 

 実際問題トラブルの方が寄ってきて、結果的に叩き潰しているのが基本傾向だ。

 

 旧魔王派も英雄派も、それで壊滅的打撃を受けた。ムートロンや大魔王派も痛い目を見ている。普通にあり得る展開だ。

 

「襲ってくるなら叩き潰す。これがグレモリー眷属の鉄則ですね」

 

「出世の種が向こうからやってくる。前向きに考えるとここまで手柄を立てやすい環境もそうはないですね」

 

 などと、小猫とロスヴァイセは物騒な事まで言ってきた。

 

 そして、ゴホンと咳払いをしてニングは周りを見渡す。

 

「まあ、結局やる事は一緒なのです。……毎日を楽しく生きて、そしてそれを害する者達を撃退するだけなのですね」

 

「なるほど、そういう意味ではいつもと変りないわね」

 

 と、リアスも同意する。

 

 そう、やる事は結局いつもと変わらない。

 

 日常を穏やかに過ごす。

 

 悪魔は悪魔の稼業もしっかりとこなす。

 

 そして、将来を生き残る為に毎日トレーニングを積む。

 

 たまに外敵が襲い掛かってきた時は、一致団結して立ち向かう。

 

 やる事は何も変わらない。欠片も何も変わらない。

 

「……凄いところでメイドするのよねぇ、私達」

 

「うん、なんか不安になってきたかも」

 

 五十鈴と伊予は苦笑を交わし合うが、しかしこれも運命と割り切ってもらう他ない。

 

 井草はそう諦め、そして言い切る。

 

「ま、今日ぐらいは思いっきり羽目を外そうか、……オーフィスもいいかな?」

 

「ん。我、ドライグの友達。遊ぶし食べる」

 

 と、そこで沈黙していたオーフィスがそう告げる。

 

 結局のところ、オーフィスの扱いは実に難儀した。

 

 テロリストの親玉だが、いつの間にやら切り捨てられ、弱体化。しかし弱体化しても同盟の誰よりも強い存在である。

 

 結果として、多重封印をかけたうえでイッセー達が監視する形になった。

 

 誰かの後ろをちょこちょことついて行ったり、家事の手伝いをしたりしている。もはやマスコットのノリである。

 

「我、ドライグの友達」

 

「あの、イッセーって呼んでくれないか? 友達は俺のこと、そう呼ぶんだよ」

 

「それにドライグだとこんがらがるよ? 赤龍帝ドライグと兵藤一誠は別個の存在なんだから、紛らわしいのはダメだと思うね」

 

「分かった。我、イッセーの友達」

 

 イッセーと井草の言葉に、オーフィスは素直にそう答えた。

 

 きわめて素直である。純粋すぎる良い子でしかない。

 

 これがテロリストに利用されて強化手段になっていたのだから、同情するべきではある。

 

 と、そこで五十鈴がふと気づいてオーフィスに近づいた。

 

「あ、オーフィス? そういえば今日の内職は終わった?」

 

「バーコード500枚張った。今日のノルマ終了」

 

 と、オーフィスは親指を立てる。

 

 ちなみに、五十鈴がやっている復興支援金捻出の為の内職を、地味にオーフィスもやっている。

 

 事情はあれどテロに加担した以上、封印措置と名目上の監視を付けているとはいえ、それとは別にケジメもいるのではないかと進めてみたら、あっさり承諾された。

 

 ここまで素直だと逆に気が引けるが、まあ、色々と考えた上である。

 

 複雑な事情なので、オーフィスはここにいないという事になっている。だが、万が一ばれる可能性はある。

 

 その際、程度はともかくケジメはつけているという言い訳があった方がいいというわけだ。

 

 それを確認して、五十鈴はにっこりと微笑んだ。

 

 突撃訪問をされたときは失神までしたが、既に姉貴分である。

 

「そっか。ま、私も今日はやったんだけどね」

 

「あれ? 私は明日からだけど……オーフィスが先輩?」

 

 ふと伊予が気づいてはいけない事に気が付いたが、そこは皆がスルーする。

 

 そして、マスコットを加えたオカルト研究部は活気づいて少しだけお祝いをして、リアス達は悪魔家業に出発する。

 

 ニングはアザゼルと共に今後の慰問関係で少し話をすると言って、外に出て行った。

 

 リムはリムで、ピスと何か話があるとの事で、外に出ていく。

 

 そして、井草達は改めて集まる事になる。

 




まあ、そんな感じで伊予もメイド見習いとして再スタートです。

井草とアザゼルの関係も微妙に変化。親族なうえにど突き倒す役目が正式に与えられたので、敬語を省いた気やすい関係になりました。

そして五十鈴の内職仲間と化したオーフィス。ほんと、「悪いことしてたからお詫びしなきゃダメよ」とか言ったら素直にこれぐらいはしそうですよね。









そんでもってヒーローズ編は次回でラスト。

ヒーローズ編としての締めくくりはこの話で終わり。次回は、井草自身の物語の節目です。
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