混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
その光景に、フリードは心底から嫌な気分になった。
敵の悲劇を好む彼にとって、こういう感動ものの展開肌に合わない。心の底から鳥肌が立ちそうになる。
「そういうご都合主義は物語の中でしかはやらねえんだよ。マジうぜぇからこのタイミングですっぱり切られて頂戴な!」
まさにその通りの展開になれば、きっと心の底からすっとするだろう。それはもう、この国の漫画で言うなら元旦の朝に新品のパンツを穿いたような展開だ。
だから、遠慮なく天閃を発動させて切りかかり―
「殺気が分かり易いよ!」
それを受け止められ、フリードは目を見張った。
僅かにエクスカリバーが競り勝っているが、しかし拮抗と言っていいレベルだった。
あり得ない。たかが神器で作られた魔剣如きに、完全な状態にあと一歩まで迫ったエクスカリバーが追いすがられるなど。
「……うっわー。奇跡の超スーパーエクスカリバーを使ってこれとか、大恥もんだよ。すいませーん、これ無し、リテイクしまーす!!」
今度は遠慮なく破壊の力も籠める、念の為透明と夢幻の力も使って、刀身のサイズを誤魔化した。
その全てを利用したエクスカリバーの攻撃を、祐斗は剣の群れを地面から生やす事で相殺する。
「技量、速度、踏み込み、それら全てが高水準だ。間違いなく君は天才だよ」
余裕の表情で言われるのが、心の底から腹が立つ。
祐斗は断じて皮肉で言っているのではない。心の底からフリードの才能を称賛している。優れた才能を持っている事を、心底認めている。
しかし、そこには哀れみがあった。
「だけど、殺気が素直すぎる。それでは僕らには届かない」
「んの……野郎!!」
最も最悪なのは、フリード自身の才能が本当に天才的だということだ。
伊達や酔狂で14歳で悪魔祓いに任命されてなどいない。神器も特異な適正もなくそこに至れたのは、間違いなく天賦の才によるものだった。
しかし、それでも今の祐斗には敵わない。
それが腹立たしく、とっさにエボリューションエキスの使用すら考え―
「―なんだ。まさかと思うが、その程度なのか?」
その新たな乱入者に、フリードは怒りの矛先を向ける。
そこにいたのはエクスカリバーを奪われた、敵の聖剣使い。
確かゼノヴィアとか呼ばれていた。
ただでさえ爆発寸前だったこのタイミングでのこの登場。火薬庫に投げ込まれた火種も同様だった。
「……上等だ、先ずは手前から血祭りにあげてやるぜぇえええええ!!!」
まずはとりあえず人を殺して、すっきりして落ち着いてから対応した方がいい。フリードの中の冷静な部分がそう判断したのは当然。その辺り、彼は間違いなく天才であった。
しかい、彼我の力量さを見抜くという点が非常に足りていなかった。
ゼノヴィアという聖剣使いは、いまだその本領を一切発揮していないのだ。
「ペテロ・バシレイオス・デオニュシウス・そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
ゼノヴィアの手元が歪み、そして人振りの大剣が姿を現す。
そしてその使を握り、ゼノヴィアは勢いよく引き抜いた。
その余波だけで、周囲の地面にクレーターが発生する。
「子の刃に宿りしセイントの名において、我は開放する。―デュランダル!!」
その名を知らない聖書の教えの関係者はいないと言っていいだろう。
エクスカリバーと並び称され、単純な威力では最強の聖剣と呼ばれるコールブランドすら超えると言われる。攻撃力においては神滅具すら超えかねない伝説の聖剣。
それを、ゼノヴィアは引き抜いた。
「……何ぃ?」
流石のコカビエルもそれには目を見張る。
そして、バルパーに至っては腰を抜かしていいた。
「ば、馬鹿な!? 奴らの手に渡った研究でデュランダルが使えるわけがない! 今の私の研究ですらできないのだぞ!?」
明らかに狼狽するバルパーだが、それも当然だろう。
聖剣使いを人工的に生み出すことにおいて最前線にいる自負が、バルパーにはある。それが目の前で打ち崩されたのだ。
しかし、ゼノヴィアは静かに首を横に振った。
「私は天然ものなんだ。貴様の技術は欠片も使われていない、正真正銘生まれながらの聖剣使いさ」
「………~っ」
最早バルパーは言葉もない。
そしてフリードも最悪の気分だ。
エクスカリバーとデュランダルは同格の聖剣。しかしそれは、エクスカリバーが分割されるまでの話。そして今の段階でもまだ七分の六でしかない。
完膚なきまでに、格上である。
「礼を言うぞ。貴様達のおかげでエクスカリバーとデュランダルのどちらが優れているかが確かめられそうだ。こういう時だというのに気分が高揚するな」
「だからぁ! そういうご都合主義はいらねえんだよ、この糞ビッチがぁああああ!!!」
思わず唾をまき散らしながら叫び、そして強引にエクスカリバーを振るう。
それを、大して力を籠めずにゼノヴィアはエクスカリバーを弾き飛ばした。
一応破壊の聖剣を使っていたのに一蹴。まさしく相手になっていない。
単純破壊力において、エクスカリバーはデュランダルの足元にも及んでいなかった。
「……所詮は完全な合一に満たない聖剣か。デュランダルの相手にはならないな」
心の底からの落胆の声が届き、神経が逆なでされる。
それに目の前が真っ赤になった瞬間、殺気を感じて振り向いたフリードは天才だった
しかし、それ以上い木場祐斗は優秀だった。
「見ているかい、皆」
一瞬の交錯は―
「僕らの力は、エクスカリバーにも負けなかったよ」
―その一閃で、血しぶきが舞った。
井草はフリードの表情が、諦めのそれになったことに気づく。
そしてフリードはエクスカリバーを投げ捨てると、イーツに変身して距離を取る。
「ちょっとボス!! これぼくちゃん聞いてない!! 流石に勘弁してよん!!」
心底文句を言うが、しかしコカビエルは聞いていなかった。
「……ストラーダの奴がデュランダルを預けるとは、本物だな。しかしまだぬるい部類なのが残念だ」
などとぶつぶつ言っているが、然しそれ以上に問題なのはバルパーだ。
自分の研究の成果がものの見事に敗北した。そのショックで動揺しすぎている。
「あり得ない。聖と魔のオーラは相反するのだ。混ざり合うことなど、それこそ神の奇跡でも不可能だ……」
ぶつぶつとつぶやくバルパーを捕まえるべく、井草は一歩を踏み出す。
そして祐斗もまた、聖魔剣を構えて一歩を踏み出した。
「ここまでだ。おとなしく裁きを受けることをお勧めするよ」
祐斗は最後通告をおこなうが、バルパーは全く耳に入っていない。
そしてそのままぶつぶつとつぶやき、何かに気づいたかのように顔を上げる。
その目は、天啓が舞い降りた天才化のようなものだった。
そして同時に、自分に向けられたものではない殺気を感じてとっさに動く。
「そうか、そういうことか!!」
「……チッ」
舌打ちと共にはなれる光の槍。
放ったのはコカビエル。威力は低いが、非戦闘員一人を殺すのには十分すぎる威力がある、速射攻撃。
ゆえに井草が弾き飛ばすのは容易であり―
「―聖書の神もまた、死んだのか!!」
―ゆえに、その言葉が響いてしまった。