混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

22 / 157
9話

 

 打ち上げられたヴァーリは、少なくない驚愕に実を染め上げられていた。

 

 まともにやり合っても、自分はコカビエルより強いと思っている。

 

 これに関してはアザゼルも同意見だった。だからこそ、自分をコカビエルの鎮圧に派遣したのだ。

 

 まともに戦っても勝てる。さらに白龍皇の半減の力を使えば、コカビエルを雑魚同然にもできる。

 

 だからこそ圧倒できたのだ。それほどまでに自分は強くなった。

 

 そう、自分は強くなった。禁手を持続させることもできるようになった。覇をある程度運用することもできるはずだ。

 

 そう、そしていずれはあの男を倒す。そこ迄の強さを得なくてはならない。

 

 にもかかわらず、コカビエルごときに逆襲の一撃を叩き込まれた。

 

「馬鹿な!? この……俺が!?」

 

 驚愕するヴァーリの視界に、コカビエルの姿が移りこむ。

 

 そして、その視界は拳に埋め尽くされた。

 

 鎧にひびが入り、そして地面に叩きつけられる。

 

 自分がコカビエルを使って創り出したよりも大きなクレーターが生まれた。そして全身に衝撃が走って、思わず息を吐き出す。

 

「ガハッ!」

 

「三流のセリフだな」

 

 さっきの意趣返しを行いながら、コカビエルは体の調子を確かめるように、軽く動かす。

 

 そして、視線をヴァーリに向けた。

 

「……まあいい。後の同胞をむげにすることもないか」

 

 そして翼を広げると、破壊された結界の隙間から、外に飛び出した。

 

 その明らかに見逃す体制が、非常に癪に障る。

 

「逃げる気か? 俺を見逃して、後悔するのは貴様だぞ?」

 

「ふん。この程度の貴様なぞ、後でいくらでも倒せるさ」

 

「わけのわからないおもちゃに頼っているお前に何を言う権利がある」

 

「神滅具というおもちゃに頼っている貴様に言われたくないな」

 

 ヴァーリの挑発すらサラリと受け流し、コカビエルは遠くに視線を向ける。

 

「これ以上闘っても望む結果は得られそうにない。なら、新たな戦争をするためにあそこに行くのも一興か」

 

 その言葉に不安をあおられ、一同がいやな予感を覚える。

 

 まさか、他の神話勢力に戦争を仕掛けるつもりなのか。

 

 だがコカビエルはすでに組織を離反したようなものだ。神の子を見張るものは間違いなく追放処分をするだろう。これだけの事態になったのだから、悪魔側や天界側もそれを認めるはずだ。

 

 単純にコカビエルが集中攻撃を受けるだけ。他の形など誰にも予想ができない。

 

 しかし、コカビエルはなぜか不安の表情を浮かべ、そして飛び去って行く。

 

「戦争のときはもうすぐだ! お前らにそのつもりがなくても、世界はそうではないことを知るがいい!!」

 

 その言葉と共に、コカビエルは飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……義姉さん。とりあえずこっちは無事だよ」

 

 井草はそれから少しして落ち着いてから、ピスに電話をつなげる。

 

 どうやら向こうも決着がついたようだ。堕天使とはぐれ悪魔祓いはほぼ壊滅。何人かがイーツになったようだがこちらも戦力をそれなりに投入していたので少ない被害で倒すことができた。

 

 結果的に見れば、コカビエルによる戦争再開の危機は堕天使が積極的に動いて解決に尽力した形になるだろう。

 

 だが、交渉は確実に難儀するはずだ。

 

 なにせコカビエルは逃亡に成功している。これは堕天使の責任問題になるだろう。少なくとも、堕天使は身内の暴走を身内で解決することが不可能に近いということを証明していた。

 

 しかも、謎の勢力と内通していると思しきフリードもいつの間にか姿を消している。

 

 元凶の一人であるバルパーは捕獲で来た。だが、彼もまたイーツに変身してこちらに攻撃を仕掛けてきた。

 

 イーツに関してまたも堕天使関係者から出てきたことになる。余計な誤解が広まるのも、時間の問題だろう。

 

 これは、和平交渉の時は相当したでに出ないといけないだろう。

 

 そう思うと、井草は責任を感じてしまう。

 

 自分がもっと動けていればと、どうしても思っていしまう。

 

 ……やはり、自分なんかでできることは大してないのだろう。上級堕天使の血と、人間由来の神器を持っていてもこの程度のことしかできない。どこまでも自分は屑でしかなかった。

 

 なら、自分にできることは何か。

 

 決まっている。いつの間にかイーツになってしまったことを利用して、検体として堕天使の利益になることだ。

 

 少しでも多くのイーツのデータを提供することができれば、堕天使の責任をある程度は晴らすことができるだろう。そのためには、イーツである自分の調査が必要不可欠。

 

 そう。自分の死に場所がやっと出てきたのだ。

 

「義姉さん。それで次の検査はいつになるのかな?」

 

『えぇ? 当分ないわよぉ?』

 

 その言葉に、一瞬頭が真っ白になった。

 

 何を言われたのかわからない。

 

 イーツ製作者が自分達だと誤解される可能性が高い現状。そのデータを取ることで言い訳をする必要がある状況。イーツである自分は必要不可欠な検体のはずだ。

 

 それが、当分ない?

 

『今回の件で一杯イーツを捕まえられたもの。まずは彼らを使って実験するのが先でしょぉ?』

 

「そんな! 彼らにだって人権ぐらいはあるだろ!?」

 

 井草としては本気でそう言っていた。

 

 以下に暴走して追放されてさらにまた暴走した連中といえど、最低限の人権は保障されるべきだ。

 

 少なくとも、今ここに自発的に検体となる覚悟を消えた者がいる。自主的に検体になろうとしている者がいるのだから、自分が優先的に検体になるべきだ。

 

 心底からそう思い、だからこそ語気も強くなる。

 

『―ふざけないでぇ』

 

 だから、その語気を強くしての反論に、気圧された。

 

『この事態解決に尽力した貴方をぉ、なんで私達が優先的に切り捨てなければならないのぉ?』

 

 悲しさも怒りも混じったその言葉に、井草は反論を封じられる。

 

 そして、何よりもそんな感情を向けられてしまうことが悲しい。

 

 そんな価値のない存在に、立派な人物が一生懸命親身になってくれている。

 

 それは間違っている。それはおかしい。もっと向けるべき相手に向けるべきだ。

 

 心の底からそう思うが、そういう本音を言うたびに、彼女達は悲しそうな表情をしてしまうのだ。

 

 自分なんかを大事にしてくれる、そんな立派な人たちが、自分のせいでそんな表情をすることに、井草は耐えられない。

 

 だから、こういわれたらもうどういうこともできない。

 

「……わかった。そっちは任せるよ」

 

『ええ。それと、当分は駒王学園(そこ)に残って中継役をお願いねぇ』

 

「了解了解」

 

 そうできる限り笑顔を超えに乗せると、井草は電話を切った。

 

 そして、心からため息をつく。

 

「……俺なんかが優先されて、長い年月を生きている古参の方々が酷い目に合うのか」

 

 当然の報いではある。

 

 彼らは上層部の意向を無視して暴走したのだ、それも、下手をしなくても甚大な被害者が生まれるであろう戦争を起そうとした。

 

 それ相応の償いをしなくてはいけない。その罪に見合った罰をうけなければならない。それは当然のことで、井草としても反論はしない。

 

 だが、最低の屑である自分が優遇されているのは、やはりどうしても違和感を覚えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……裏切り者」

 

 そんな、悲しみに満ちた言葉を、井草は遠くから聞いた。

 

 今は、戻ろうとしている教会の悪魔祓いたちをこっそり監視しているところだ。

 

 万が一ばれても、自分なら共闘したものを見送りに来たといってごまかせる。そういう判断から、気晴らしも兼ねて行った独断だった。

 

 だが、逆にきが曇ってしまう光景を見てしまった。

 

 よくはわからないが、どうやらゼノヴィアは残るようだ。それで紫藤イリナと揉めていた。

 

 そうこうするうちに飛行機の時間が来てこれだ。見れば、ゼノヴィアもどこか寂しそうにしている。

 

 それが見ていられなくて、思わず声をかけた。

 

「やあ、どうしたんだ?」

 

「……ダウンフォールか。いや、実は私はリアス・グレモリーの眷属悪魔になってね」

 

 ……どういう展開でそうなった。

 

 声に出してツッコミを入れることすら困難なぐらい、井草はパニックを起こしていた。

 

 それを気合で抑え込み、井草はジト目でゼノヴィアに視線をむける。

 

「紫藤イリナと喧嘩していたみたいだけど、そりゃケンカもするよ」

 

「といわれてもな。さすがに彼女に聖書の神の死を伝えるわけにはいかないさ」

 

 と、ゼノヴィアは寂しげな顔のままため息をついた。

 

 詳しく話を聞くと、聖書の神の死でやけを起こして教会をやめたらしい。教会の上層部も切り捨てることを選んだらしく、デュランダルごとゼノヴィアを放逐したそうだ。

 

 教会の至宝ともいえるデュランダルすらあきらめてまで放逐するとは、よほど上層部にとって聖書の神の死は鬼門なのだろう。

 

「だからって、転生悪魔になるのはやりすぎなのです」

 

 と、そこに聞き覚えのある声が届いて振り返る。

 

 そこには、私服姿のニングがあきれ顔で立っていた。

 

「言ってくれればプルガトリオ機関に入れたのに、なんでわざわざ転生悪魔になったのです?」

 

「……勢い任せで」

 

 ニングの疑問に、ゼノヴィアは思いっきり視線をそらした。

 

 そしてそれも納得の答えだ。

 

 この女、勢い任せで人生を生きてないだろうか? そんなことを井草は考えてしまった。

 

「あの、そういう生き方見直した方がいいと思うけどね」

 

 井草はそれを素直に言葉に乗せる。

 

 流石に今回は考えなしだろう。信仰心の前提がなくなったからといって、いきなり敵対組織に入るなど、勢い任せすぎる。

 

「そういう生き方は感心しない。勢い任せの人生は、どこかで致命的に道を間違えても戻れなくなるからね」

 

 井草はゼノヴィアの両肩に手を置くと、静かにまっすぐその目を見つめた。

 

 ……彼女が自分のようになるのを見るのは嫌だ。それは、相手がだれであっても気分がいいものではない。

 

 だから、井草は心の底から本音を言う。

 

「ちゃんと周りを省みるんだ。そして、自分が本当に正しいか考えること。きっと、それが一番大事なことなんだから」

 

「あ、ああ……。わかった」

 

 気圧されながら、ゼノヴィアはそう頷いた。

 

 それを見て、井草はほっとした気分になる。

 

 自分より上のところに押し上げることができて何よりだ。これをしっかり考えて行動してくれれば、自分としても叱咤したかいがある。

 

 なぜか、ニングがあきれた目線を向けていたことは黙っておこう。

 

「まあ、グレモリーにいるのがいやになったら私達にいうのです。プルガトリオ機関には、悪魔や堕天使のメンバーもいたりするのです」

 

「……それは節操なしではないだろうか」

 

 プルガトリオ機関が暗部で、そういう立場の者たちを集めているのは知っていたが、しかしそれにしても悪魔や堕天使すら参入を認めるとは思わなかった。

 

 ゼノヴィアも軽く引いている。まあ、コレ移管しては同意見だ。

 

 それはニングも分かっているのか、こちらも少し苦笑いを浮かべていた。

 

 そして、その笑顔もまたかわいらしいと、なんとなく井草は思ってしまった。

 




割と何でもありなプルガトリオ機関。悪魔と堕天使でも参入できる教会側の組織など、異端意外に何者でもないので暗部なのです。

そして不安をあおるコカビエル。まあ、ハイスクールD×Dでコカビエルを迎え入れる組織何て、一つしかないわけで……ねぇ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。