混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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2話

 

 

 

 

 

 そのころ、兵藤一誠は、ヴァーリを名乗る少年の接触を受けた。

 

 その名前は聞いている。イッセーはそれを即座に思い出す。

 

「あんたが……白龍皇?」

 

「ああ。そういう君が赤龍帝だったね」

 

 そうさらりと挨拶をするのは、銀髪の青年だ。

 

 年齢は自分とそう変わらないぐらいだが、しかしどこか危ない雰囲気を見せている。

 

 と、いうよりだ。

 

 井草以外の堕天使とは、たいていの場合ろくな接点がないのがイッセーだ。レイナーレには殺され、その上司のコカビエルはこの街を吹きとばそうとし、とどめにトップのアザゼルは自分の暗殺がらみを指令した男だろうし何より悪戯を仕掛けてきた。井草の義姉に関しては、接点が薄いのでノーコメントにする。

 

 そんな存在の秘密兵器みたいな立場の者に接触されても、どう対応していいかわからない。

 

 そもそもなんでこの学園に来たのだろうか。先日アザゼルが正体を隠して自分に接触した権威ついては、リアスが井草を経由して文句を言ってきたはずだ。

 

 まさか、さらにちょっかいを駆けに来たのか。そもそも歴代二天龍はたいていが激突を繰り広げてきたはずだ。こいつもそれを望んでいる可能性は大きい。

 

 イッセーは思わず身構えた。

 

「何だよ? 井草さんからは何も聞いてないぞ?」

 

「井草……というと、監視役の名目で隔離されているあのハーフか」

 

 一瞬考えこんだあたり、どうも井草のことすらろくに知らないらしい。

 

 というよりだ。

 

 今、明らかに気になることを言ってきた。

 

「井草さんが隔離って、どういうことだよ!?」

 

「言葉通りだ。彼は自分の死に場所を探している節があるそうでね。アザゼルはもの好きなのかそれを阻止したいらしい」

 

 ヴァーリは特に興味なさげにそういう。

 

 そして、その内容は、イッセーを驚愕させるには十分だ。

 

 ……死に場所を探している。それはつまり、井草は何らかの形で死にたいと思っているということだ。

 

 井草は常に自己評価が低い。口癖は「俺なんか」だと、詳しくする人物ならだれもが知っていることだ。

 

 もはやそれは自己嫌悪の意気だろう。堕天使総督アザゼルから、直々に特使として送られてきたのだ。それも、その前から魔王ルシファーの妹であるリアスの監視役に抜擢される。

 

 そんなもの、死にたがりに任せられることじゃないだろう。

 

 なぜならアザゼルは戦争に興味がない。下手に死にたがりを監視役に送り込めば、悪魔に打撃をあたえんと暴走して、特攻を仕掛けてくる可能性だってある。

 

「……アザゼルは戦争をしたくないんじゃなかったのか?」

 

「だからさ。井草はコカビエルのような戦争屋じゃないらしい。そして彼は「殺されても懐が痛まないから、こんな危険な任務に抜擢された」と心から思いこんでいるそうだ」

 

 イッセーの言葉に返答しながら、ヴァーリは肩をすくめた。

 

「だが実際は「あのバラキエルの娘を迎え入れるリアス・グレモリーなら、井草・ダウンフォールを殺そうとはしないだろう」とアザゼルたちは考えてる。知らぬは当人ばかりなり、さ」

 

 その言葉に、イッセーは驚愕する。

 

 バラキエルの娘というのがまずわからない。確かバラキエルというのは、堕天使の幹部だったはずだが、そんなものの娘をリアスは迎え入れているというのか。

 

 娘といったのなら、その人物は少女だろう。そしてそんな人物が教会の非人道的実験に参加するわけがない。さすがのバルパーも気づくはずだ。

 

 つまり、木場ではない。

 

 当然イッセーでもない。ついでにいえば、シスターであるアーシアの可能性もない。

 

 となると考えられるのは、小猫か朱乃、もしくはいまだ紹介されてないもう一人の僧侶ということになる。

 

 それについて考えようと思ったが、しかしそれより先にヴァーリは言葉を続ける。

 

「だがそんなことはどうでもいい。其れよりも、だ」

 

 興味深そうな目で、ヴァーリはイッセーを見る。

 

 そして不意に、彼の右手が持ち上がった。

 

「ここで二天龍の決着をつけるのもありだろう。今の君に呪いの一つでも掛けたら―」

 

 そして人差し指が向けられ―

 

「そこまでだ」

 

「その辺にしてもらおう」

 

 ―祐斗の聖魔剣とゼノヴィアのデュランダルが、ヴァーリの首元に突き付けられた。

 

 動けば切る、と態度で示す。そこには仲間を守らんとする確固たる意志があった。そしてそのためなら命をとさんという覚悟もあった。

 

 そして双方ともに下級悪魔の次元ではない強さを持つ。祐斗はイレギュラー極まりない禁手を持っているし、ゼノヴィアもまたデュランダルの使い手だ。生半可な上級クラスとなら互角以上に渡り合えるだろう。

 

 そんな猛者たちに剣を突き付けられ、ヴァーリはしかし余裕だった。

 

 ここで攻撃を本当に仕掛けられて、自分が死ぬことなどありえない。相対で示している。

 

「やめておけ。震えているよ」

 

 ―そして、其れは二人ともよくわかっている。

 

 彼が圧倒的強者なのは、コカビエルとの激突で嫌というほどわかっている。この状況ですら、逆に返り討ちにできる可能性の方が大きい。

 

 コカビエルなら、確実に鼻で笑っていただろう。そして嫌みの一つぐらい確実に言ってきているはずだ。

 

 しかし、ヴァーリに嘲りの感情はない。

 

「恥じなくていい。そういう者たちこそ強くなれ―」

 

 それどころか賞賛の言葉を投げかけようとして―

 

「……ヴァーリ。その辺にしてくれないかな?」

 

 そこに、井草が現れた。

 

 相当機嫌が悪いのが目に見えてわかる。今すぐにでも殴り掛かりかねないほどの怒りを持ちながら、然しギリギリのところで抑えていた。

 

「それ以上悪ふざけをするなら、俺は死んでも君を叩きのめす。……総督の悪ふざけでただでさえリアス・グレモリーは機嫌が悪いんだ。ダメなところばかり似てるようだね」

 

「怖い怖い……と、言いたいところだけど、本当に死ぬぞ、君の能力じゃあね」

 

 それは嫌だろう? と言外に告げるが、しかし井草は意にも介さなかった。

 

 ……否。

 

 彼は、無自覚だろうが笑っていた。

 

 ほんのわずかだが口角が吊り上がってる。

 

 まるで、望むところだといわんばかりだ。それ以上に、それこそが望みだといわんばかりだった。

 

「君と違って、変わりはいくらでもいる捨て駒だしね。そんなのが死んで会談が無事進むなら、神の子を見張るもの(グリゴリ)にとっても好都合じゃないかい?」

 

 その言葉に、何よりイッセーたちが絶句する。

 

 ヴァーリが言った通りだ。井草は死を恐れていない。

 

 それどころか、まさにそれを望んでいる節がある。出なければ、無自覚に笑みなど浮かべるものか。

 

 イッセーはその時になって、井草のことを何も知らないのだと思い知らされる。

 

 自分に更生のきっかけをくれた恩人。駒王学園でも上位に位置する人格者。そして、組織の下した判断の殺しに謝罪し、アーシアを助けるために体まで這ってくれた好漢。

 

 その彼の、裏の側面ともいえるものがさらけ出されようとしていた。

 

「まあ、安心してくれ。俺は弱い者いじめは好きじゃない。コカビエルとは違うんだ」

 

「そうかい。史上最強の白龍皇になるといわれた男は言うことが違うね。まだコカビエルに勝てないけど」

 

 皮肉で返してくる井草に、ヴァーリはしかし肩をすくめるだけだ。

 

「まあ、俺もまだまだ最強には程遠い。あのサーゼクス・ルシファーですら十本の指には入らないだろうしね。まだまだ先は遠いさ」

 

「まあ、そうだろうね」

 

 何やら意味深な会話が聞こえてくる。

 

 ヴァーリはサーゼクスと何か関係があるのだろうか? リアスとは似ても似つかないから、親族の可能性は低いと思う。そもそも髪の色すら違いすぎている。

 

 それついて問いただそうとしたとき。

 

「―どういうつもりかしら、白龍皇」

 

 足音をあえて高く響かせ、リアスが敵意を向けた視線をヴァーリにぶつける。

 

「貴方は堕天使とつながっている。これ以上の接触は正式に抗議させてもらー」

 

「二天龍にかかわったものは、みな碌な生き方ができなかった」

 

 リアスの言葉をさえぎり、ヴァーリはそう言い放つ。

 

 その言葉い言いよどんだリアスをみて、ヴァーリは疑問符を投げかけた。

 

「―貴女はどうなるんだろうな、リアス・グレモリー」

 

「馬鹿馬鹿しい」

 

 挑発と受け取られかねないヴァーリの言葉に、井草が鼻息荒く声を荒げる。

 

「そんな事はそう簡単にはさせないさ。ま、俺の命ごときでどうにかできるかって言われると反論しづらいけどね」

 

 何処まで行っても自分の価値を否定する井草の態度に、ヴァーリは今日がそがれたのか、鼻を鳴らす。

 

「まあ、君たち全員力を蓄えるべきだ。この世の中、力のないものは強者に蹂躙されるのが基本だから―」

 

「―いや、そう捨てた者ではないさ」

 

 ヴァーリが言いたいことを言いつくすより先に、新たな参入者が現れた。

 

 カソックを身にまとった一人の中年男性。灰色の髪を短く切りそろえ、黒い目を細めている。体つきはしっかりとしており、かなり鍛えられているのがよくわかる。

 

 彼からはさっきも戦意も感じられないが、然しそれでもただものでないことがわかる。

 

 なぜなら、炎に包まれた十字架のロザリオをつけていたからだ。

 

 イッセーたちはそれを見ている。かつてレイナーレと対峙した時に、ニングとリムが持っていたものと同じだった。

 

「貴方もプルガトリオ機関の人なの?」

 

 そう尋ねるリアスに、男性は軽く一礼する。

 

「プルガトリオ機関所属の、ヤーロウ・プルガトリオだ。三大勢力会談の時はミカエル様の護衛をさせてもらう。此処には下見で来ただけだし、一応事前に連絡が届いているはずだ」

 

「確かに、先日教会のものが下見に来るとは聞いておりますわ」

 

 朱乃が肯定する中、ヤーロウと名乗った男性は、ヴァーリに咎めの視線を受ける。

 

「悪ふざけはほどほどにするといい。いかに君が強大であろうと、世界全てを敵に回して勝てるなどと奢ってはいないだろう? 若さは武器にもなるが、若気の至りになってはいけないといっておこう」

 

「説法感謝する。まあ、俺もまだそんな気はないさ」

 

 ヤーロウの説教もどこ吹く風。ヴァーリはつまらなさそうにため息をつくと、そのまま歩き去っていく。

 

 その背を見送りながら、ヤーロウは何かを危険視するかの表情を浮かべる。

 

「……危ういな、あれは」

 

 そのつぶやきは、幸か不幸かリアスたちには聞こえなかった。

 

 そして、誰にも勘付かれることなく、ヤーロウは柔和な笑顔を浮かべると、アーシアに視線を向ける。

 

「君が、アーシア・アルジェントだね?」

 

「あ、はい」

 

 素直に返答するアーシアに対して、ヤーロウは頭を下げる。

 

「改めて、プルガトリオ機関を代表して謝罪しよう。君が死にかけたのは、こちらの落ち度だ」

 

 ニングとリムが謝罪したことを、改めでヤーロウは謝罪する。

 

 それだけで、彼が高潔な人物であることがいやでもわかる。

 

「き、気になさらないでください! 私は、イッセーさんと一緒に居られてとても幸せですから……」

 

 そう顔を赤くするアーシアの返答に、ヤーロウは静かに顔を上げる。

 

 そして、苦笑を浮かべた。

 

「なるほど、聖女といっても、女の子であることに変わりはない……か」

 

 そういうと、イッセー達に軽く会釈をすると、彼もまた背を向ける。

 

「今度は会談の場で会おう。なに、ミカエル様なら悪いようにはしないだろうさ」

 

 そしてゆっくりとした動きで、しかし遅くなりすぎずに、ヤーロウは去っていった。

 




オリジナルの登場人物も、少しずつですが増えてきはじめました。

このヴァンパイア編で、一気にオリジナル要素が強くなる感じにしていくつもりです!

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