混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
そして、次の日。
井草は何事もなかったかのように登校していたが、然しきちんとやることはやっていた。
むろん、アザゼルに対する説教である。
頼むから好き勝手しない。そして部下の手綱を握る。
之を電話越しでありながら土下座までして要請していたため、割と眠気がある。
いっそのことピスに頼もうかとも思ったが、こちらはこちらで和平会談の警備の準備で帰ってきていない。
世の中、ままならないものである。
「ふわぁ」
そんなあくびをしながら、校内を歩いて教室へと向かう。
そして、その背中を目撃した。
「あ、ゼノヴィアちゃん。おはよう」
「ああ、井草か」
サラリとゼノヴィアも挨拶を返す。
教会から派遣された聖剣使いが、魔王の妹の眷属となり、そして堕天使総督の名を受けた者とあいさつを交わす。
いろいろと異常極まりない光景だが、異形の存在を知らない者たちにはそんなことはわからない。
だからみな、そのままスルーしようとして―
「井草。私と子供を作る気はないか?」
―その言葉に全員がスッ転んだ。
それはもう、吉本○喜劇も感心するほどのずっこけっぷりだった。
そして、真っ先に復活したのは井草だ。
このあたり、奇人変人とよく絡む経験のたまものである。
「とりあえずゼノヴィアちゃん、こっちにいこうか」
「む? 何もこんなところでしなくてもいいんだが」
「しないからね」
井草は強引にゼノヴィアを引っ張ると、人気のないところで壁ドンを敢行した。
少女漫画とかで多用される壁ドンを、告白とかそういう感じではなく使用することになるとは、井草も思っていなかった。
しかし、どう考えても突拍子もなさすぎる。
とにかく話を聞き出そう。まずはそれからだ。
「どういうことかな?」
「なに、君は上級堕天使のハーフだそうだからね。……君と子供を作れば、なかなか強そうな子供ができそうだと思ったんだ」
どこから突っ込んでいいか、井草には全く分からなかった。
落ち着け、井草・ダウンフォール。お前は愚図で塵屑だが、仕事はちゃんとこなしてきただろう。
ニングも手腕は褒めていたし、それはつまりそういう能力に長けているということだ。
おまえなら話を聞き出すことができる。がんばれ自分。
そう心に言い聞かせ、井草はとにかく話を聞き出すことにする。
「そもそも、何で高校生の立場で子供を作ろうなんて言ったのさ」
「ふむ。確かにそこから話すべきか」
そこからも何も当たり前である。
「井草。私は今まで信仰のために生きてきた。それで十分だと思っていたよ」
信仰の徒としては、ある意味理想的だろう。
もはや趣味も生きがいも信仰のために生きること。世界がそう言う人物だらけなら、世界はある意味平和だったかもしれない。
だが、その前提は崩された。
信仰心の強さは、聖書の神の死によって反転する。その絶望は、彼女を衝動的に悪魔に転じさせるほどだった。
「だから、悪魔になってからどうすればいいかわからなくてね。リアス部長に相談したんだ」
「……あの子、意外と貞操観念硬いところあるよ?」
子作りに専念しろなどというあほなことは言わないと思うのだが。
「ああ。リアス部長が仰ったのは「悪魔は欲望に生きるもの。好きに生きろ」とのことだ」
なるほど、つまりは自分が望むことをしろと。
……で、その結果が―
「そして私は思った。なら、信徒の時は考えもしなかった女の喜びを知ろうとね」
なるほど。確かに子どもを生み出すのは女の特権だ。男は子供を孕ますことはできて、自らの体内で育てることはできないのだから。
そういう意味では悪魔らしい。悪魔は欲を司る生き物だから、種の保存本能という名の欲望を欲するのも当然だろう。
……だが。
「ゼノヴィアちゃん。目先の性欲にかられるのはよした方がいい」
それは、井草としては認められない。
「いや、私は赤龍帝のドラゴンの血や、貴方のような上級堕天使の種を取り込みたいだけなのだが―」
「いや、それでもだよ」
井草としてはそれは見逃せない。
「短絡的に性欲に従うのはダメだ。それはあまりにも綱渡りが過ぎるし、下手をすれば最低なことをしでかすことにもつながるからね」
ゼノヴィアに届いてほしいと、井草は真剣にそう言い聞かせる。
自分と同じところに堕ちてほしくないと、強く心から願っているから。そんな人たちがいなければそれに越したことはないと、本音で信じているから。
だから、なんとしても説得しなければならないと心から説得する。
「そういうのは、もっと考えて行動するべきだ。初めて会ったときから思ってたけど、君はちょっと即断即決すぎるよ」
「そ、そうか? これでも一週間ぐらい考えてたんだが」
ゼノヴィアとしては微妙に心外だったらしいが、しかし井草からしては足りないレベルだ。
「じゃあ言い換えるよ。考えが浅い」
酷い言い方ではあるが、これのゼノヴィアの為だ。
井草はあえて心を鬼にして、そう告げる。
「子どもを育てるのは大変だし、SEXってのはお互いがお互いを想ってするべきだ。今の君は子供が欲しいという感情が強すぎて、独りよがりで考えなしになってる」
それではだめだ。
一時の衝動に突き動かされて、客観的かつ俯瞰的な視野が足りてない。
このままうかつにことに及んでも、それは誰かが後悔するだろう。
それは、黙ってみているわけにはいかなかった。
「第一、俺なんかの子供をはらむなんて屈辱以外の何物でもない。子供にしたって俺なんかを父親にするなんて死んでも御免だろう。そういうところが考えが浅いっていうんだよ」
「……貴方は自分を卑下することがまず考えの根幹にあるな」
あきれられたのは心からの心外だった。
それはともかく、今日は公開授業の日だった。
厳密にいえば授業参観だが、しかし中等部などの生徒も見ることができるため、公開授業の方が正しいだろう。
まあ、それにしても親がいない自分にとっては意味がない行事だ。そういう意味では気が楽だ。
加えて授業は英語。個とヒアリングに関しては種族特性で万能といってもいい。書き取りに関しても二年分年上なのでアドバンテージはある。
だから変な方向で恥をかくこともない。失敗する可能性は低いだろう。
この想定は、色んな意味で大外れだった。
「……井草ぁ、大丈夫ぅ?」
まずピスが来ているという想定外の事態が発生した。
確かに戸籍上は義姉ではあるし、保護者でもある。彼女は立場的に来てもおかしくない人物だ。
だが、まさか仕事に休暇を入れてまで来るとは思わなかった。というより、快諾した
そして、ピスはものの見事に井草を心配していた。
理由は単純。
「あの先生。やっぱり紙粘土は英語と関係ないと思うんです」
「そんな事はありません。こういう英語もあります」
―紙粘土で工作をしろなどという授業では、色んな意味で大丈夫か聞きたくもなるだろう。
具体的には、こんな授業を考えた教師にだ。
これは英語ではなく図画工作だ。もう一度言うが、断じてこれは英語ではなく、完膚なきまでに図画工作だ。いろいろおかしい。
だめだ。これはツッコミを入れなければならない。
万が一にでもほかの生徒にツッコミを入れさせて、万が一にでも内申に響いてはいけない。あり得ないとは思うが万が一の可能性はきちんと考えるべきだ。
必然的に、自分のようなものが傷を背負うべきだ。
「先生! 真面目に授業をしてください!! こういうネタ授業は公開授業でやったらいけないかと!」
「何を言いますか! 私は公開授業では毎回こうしてます」
なぜクビにならない!?
井草は声に出しかけたツッコミをかろうじてこらえた。
自分ごときにそんなことを言われたら、ショックで先生が寝込むかもしれない。明らかな問題行動な気がするが、その報いがそれでは酷いだろう。
と、いうわけで何とか精神力を全開にして授業内容の改善を試みる。
「俺なんかにツッコミ入れられるんですよ!? もうおかしい以外のなにものでもないじゃないですか!!」
「何を言いますか。君のような優等生にツッコミを入れられるのはそんな問題行動ではありません」
なぜ周りの人物は自分の評価が高いのだ。
理不尽を感じて頭を抱えたくなった。
自分は小物であることを自覚している。故に謙虚に生きているだけだ。
世の中、素晴らしい人物が優遇され、罵倒されるべき人物がひどい目にあうべきだ。因果応報は必要不可欠だといってもいい。徹底しすぎているのは問題かもしれないが、ある程度は機能するべきだろう。
それなのに、なぜか自分は評価が高い。
この流れはどうにかしなければいけないと切に思う。確かに自分は反省しているし後悔もしているが、然しやらかしたことは事実なのだ。それ相応の立場でいるべきだろう。
罪人には罪人の礼儀がある。井草はそう思っていた。
「先生。前から思っていたんですが、俺なんかを高評価するのはあまり―」
「…‥む!?」
その言葉をガン無視して、英語教諭は視線をイッセーに向ける。
そこには、リアス・グレモリーの裸婦像が出来上がっていた。
ちなみに、完成度に関してはまず間違いなく最高水準だ。普通に商売にできるレベルだろう。再現度が高すぎる。
「……おぉ!?」
作ったイッセー迄驚いている。鼻血を流していたところを見るに、妄想しながら作っていたらしい。
ほぼ無自覚でこのレベルのものを作る。いつも思うのだが、スケベ根性でパワーアップしすぎではないだろうか。
「どうするんですか先生。イッセーが変なことしてますけど?」
「……私は、また一つ生徒の才能を発揮してしまった。素晴らしい」
井草のツッコミが完全スルーされている。それも、感動の感情で聞こえてない感じだ。
確かにできは良いから当然といえば当然だ。それについては、芸術に興味があるわけでない井草にもわかる。
だが、高校生が裸婦像を描くのはいただけない。それも、想像で書いたとはいえ実在する人物だ。第一主の裸である。
いろいろと問題になるから、とりあえず壊すように言おうとし―
「―五千!!」
その言葉で、授業は事実上の中断を迎えた。
ちなみに、イッセーは断固として売らなかったことだけは伝えておこう。
「まってぇええええ! ソーたん!!」
「昔の呼び名で呼ばないでください!!」
今一瞬、涙を流すソーナと、追いかける魔法少女のコスプレをしたソーナそっくりな少女が見えた気がする。
ちなみに声も聞こえた。
まあ幻覚だろう。そして幻聴だろう。
井草はそう自分をだますと、ジト目をピスに向ける。
「仕事抜けてまで来るのはどうかと思うけど?」
「大丈夫よぉ。……前から有給申請してるからぁ」
いつ申請したのか。いや、公開授業そのものは昨年もあったから、前もって申請していたのだろう。
しかしだからといって、この忙しくなってしまった時期にそれはどうかとも思う。
「俺なんかのために急務を止めたりしないでよ」
「貴方だからこそよぉ」
さらりとかわされた。
いつものことだが、この義姉にはかないそうにない。一見するとのんびりしているし、実際面倒くさがりだが、仕事はきちんとするし実力もあるのだ。
その彼女が、自分なんかのために態々時間を割いてくれる。
……その価値がいない自分がそんなことをされることに、心苦しい思いがあった。