混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
兎にも角にも、この会談は何としても和平成立で終わらせる必要がある。
イーツ関連で余計な疑いが入りかねない以上、堕天使は何としても和平を成立して、天界と教会、そして悪魔の力を借りる必要がある。
へたをすれば他の神話勢力が動き出しかねない程、近年のイーツ事件は頻発化している。
世界各地でイーツが出現し、その不意打ちじみた突発性ゆえに、各地で被害は悪化の一途をたどっている。
人間サイズであり、下位の異形に匹敵する戦闘能力を持ったイーツ。軍事部隊が到着するのにも時間がかかり、それまで百人単位の死傷者が生まれることもざらにある。
これが堕天使の仕業だと誤解されれば、あらゆる神話勢力が敵に回るだろう。
その前になんとしても、三大勢力間での情報共有を行う必要がある。そして無罪であることを証明する必要があるのだ。
何より、イーツに関してはそれ以上の危険性もある。
現状どの勢力も、人間世界に不用意なかかわりはしないのが暗黙の了解だ。
それは傲慢な物言いだが、人間の欲望と技術力の発展を警戒しているからである。
人間の急激な技術の発展。ここに異能が絡めば、それは爆発的に発展するだろう。
その結果、人間は核すら超える脅威を生み出し、そして自らの争いで使用するかもしれない。
その結果は人類滅亡すらありうる。それも、自分たちの勢力を巻き込んで滅びることだって十分あるのだ。
ゆえに、どの勢力も人間世界を大きく巻き込む形での活動はしていない。教会ですら、血で血を洗うような悪魔や堕天使との戦いを表ざたにはしていない。
しかし、イーツは表にも裏にもばらまかれている技術。これはその均衡を崩すことすら十分あり得る。
それに対抗するためにも、被験者を大量に確保することができた堕天使陣営が他の勢力と協調を取ることは必要だ。
最低でも三大勢力で和平することは必要だろう。すでに主要な戦争継続派は死ぬか追放されるかされている以上、現状の主流派同士で敵対するなどあってはならない。
……そして、自分がその礎となるのは名誉なことだ。
そんな素晴らしいことのためにこの命を燃やせるのなら、自分を少しは赦せるのかもしれない。
井草はそう思い、睡眠時間を削ってまで、自主的な行動を行っていた。
堕天使側の視点での詳細な報告を行うため、何度も資料を作り直した。
会談の会場となるこの駒王学園の自主的な警備も行っている。何度も何度も巡回したし、その時間も意図的にランダムにすることで警戒度を高め、隙あらば入念に確認した。
そして今日もまた、自主的な警備を行うべく、裏の林を確認して―
「とりあえず、そこのヴァンパイアには赤龍帝の血を飲ませることをお勧めするぜ。神器の成長にはドラゴンの血を飲ませるのが手っ取り早い」
「……騙す気じゃないだろうな?」
アザゼルがイッセーたちに助言をして、深読みしたイッセーが警戒していた。
「何をしてるんですか総督!?」
思わず殴りにいかずに、ツッコミを入れるだけにとどめた自分を褒めてやりたい。
余計に刺激するなと懇願したはずなのに、懲りずにまたこっちに来ているとはどういうことだ。
しかも、私服によく使っている着流しだ。相当お気に入りの奴を使っている。完全にプライベートだ。
「なんだ井草か。お前からももうちょっと助言ってものを―」
「―副総督。総督がまたグレモリーにちょっかいかけてます。説教の準備をお願いしたいのですが」
即座に連絡を入れる。
アザゼルは何か言っていたが、意図的に無視した。
流石にそろそろ我慢の限界である。これまで以上に神の子を見張るものはアザゼルに監視をしなければならないということがよくわかった。ひどすぎる。
悪戯好きで好奇心旺盛にもほどがある。者には限度があるし、これは限度を超えかけている。しかも
いくら相手が自陣営の指導者とはいえど、諫言や苦言は呈すべきだ。自分なんかにいわれることは苦痛だろうが、必要な時はある。それに自分のようなものなら罰せられてもそれほど組織の不都合にならないだろう。
あらゆる理由で密告を行うことに否はなかった。
「お、おま!? シェムハザはうるさいんだぞ!?」
「だからしてるんですが?」
慌てるアザゼルに、井草はにっこりとほほ笑んだ。
いい加減にしないと一発殴るぞダメリーダー。
そう思い始めている心の声よ届け。っていうか本当に処罰覚悟で言ってやろうか。俺はいつでも処刑上等だ、この野郎。
割と本気でそう思っているのが届いたのか、さすがのアザゼルも一歩引いた。
「……わかった。もう帰るからバラキエルにまで連絡しようとするのやめろ!! あいつ近くに来てるから、二重に説教受けるじゃねえか!!」
譲歩を引き出せたので、とりあえずスマートフォンはしまうことにする。
相も変わらずこの人には時々困らされる。真剣に組織で対策会議をしてもらうべきだろうか、そろそろ本気で考えてしまう。
流石のこのピリピリしている非常時に子の悪戯はやめてもらいたい。しかもターゲットが自分の友人ならなおさらだ。
「ゴメンイッセー。……あれ? そちらのお嬢さんは?」
みると、そこには見慣れない少女がいた。
金髪赤目の少女だ。歳はイッセーより少ししただろうか。駒王学園の制服を着ているが、こんな美少女なら噂の一つや二つにはなってないとおかしいと思うのだが。
などと思っていると、近くにいた匙が肩を落とし、イッセーも視線をそらした。
「井草さん。こいつは男です。女装が趣味な、部長のもう一人の
……まあ、趣味は人の自由だから、迷惑をかけない限りは良いだろう。
井草はそう判断して、即座に視線をアザゼルに向ける。
「で、何を適当ぶっこいたんですか?」
「嘘はついてねえよ。そこのヴァンパイアの
……なるほど。今まで井草にも教えられてないわけだ。
停止世界の邪眼はかなり強力な神器だ。おそらく神滅具に次ぐレベルの神器だと思われる。
それを制御できていないというのは問題だ。視線が合ったものを手当たり次第に停止させかねない。下手をすれば、常時停止効果を発動させるという排除も考慮しなければならない事態が起きかねないのだ。
これが神の子を見張るものなら、すぐにでも制御装置を着用させるところだが、悪魔側はそんなことをしている様子もない。
おそらくそこまで研究が進んでないのだろう。これは和平を進めるにあたって交渉材料を増やすという意味ではいいことだが、リアスたちにとっては大変なことだっただろう。
つい苦笑して、井草はギャスパーに近づくと、その肩に手を置いた。
「ひ、ひぃいいいい!? 堕天使ぃいいい!?」
邪眼が発動するが、停止することはない。
上級クラスに位置してるものまでは停止できないのだろう。もしくは、自分の中にあるイーツに変身する力の根源が効果を発揮している可能性もある。
それはともかく、井草はそのままポンポンと軽く励ますように叩く。
「……いろいろ、大変だったろうね」
神器の制御がうまくいかないものは、その大半が人生をうまくいかせることができないものだ。
聖書の教えが神器の存在を公表して、彼らを崇めるように指導していったのならそうはいかなかったかもしれない。そうなれば、彼らは神の寵愛を受けた者として聖書の教えでは厚遇されただろう。
だが、聖書の神が死んだことで、そうもいかなくなった。
混乱を避けるためか、聖書の教えは神器の存在を公表しようとしない。その結果として、能力を人前で発現させてしまった神器使いは、往々にして迫害されている。教会の中ですら、一部の神器使いが追放されているという体たらくだ。
特に制御できていないものは大変だろう。自分の意志で抑え込むことができないから、なおさら迫害されやすい。
だが、少なくとも三大勢力内でならもう少しの辛抱だ。
……和平が成立すれば、という前提条件は付く。だがそうすれば、暴走する神器を制御するための装置を提供することも可能だろう。少なくとも、これによって切り捨てざるえなかった者たちは大幅に減るはずだ。
「あとちょっとだから。だから辛抱してね?」
言いたいことはちゃんと言った。
これ以上怖がらせるわけにはいかない。別のそのつもりはないのだが、井草自身が堕天使であることもあってか、かなり警戒されているようだ。
と、言うことで井草はアザゼルの耳を引っ張りながら、さっさと帰ることにする。
「ほら、帰りますよ総督。ごめんねイッセー君。僕はこの人に説教しとくから」
「痛い痛い! 痛いから指離せ!!」
そんなものはガン無視だった。
「で、懲りてないんですか、総督?」
井草はとりあえずてきとうなカラオケボックスに総督を叩き込むと、そのままドスの利いた声で問いただす。
上下関係はこの際言葉遣いだけで置いておく。
この男には説教が必要だと痛感した。いや、説教だけでは足りないので場合によっては折檻もいるだろう。懲りさせないといけない。
むろん総督にそんなことをすれば厳罰ものだが、自分が厳罰を喰らっても何の問題もないだろう。最悪極刑ものだからこそ、こういうのは自分の役目である。
「いや、聖魔剣の奴はまだ見てないから、ちょっとのぞき見に―」
「あん?」
とりあえず光力の槍を出してみる。
本気とかいてマジと読む状況なのを察して、アザゼルはひやりと汗を一滴たらした。
ここに至ってアザゼルはようやく理解したのだ。
この男。マジだ。
「わかったわかった。会談まではもうしねえよ。わかったからその槍を仕舞え」
ものすごく疑わしいが、一応言われたとおりにしまう。
「あのですね総督? 今、神の子を見張るもの《グリゴリ》は大ピンチなんです。冤罪でつぶされかねないんですよ? わかってますか?」
「わかってるってわかってるって。ただそれ以上に好奇心が先行しただけだよ」
馬鹿が馬鹿な子をばかげた口調で言ったので、再び槍を展開した。
やはり一度痛い目を見なければ懲りないようだ。しかし相手は総督なので、やったら厳罰ものだ。つまり自分がやるほかない。
すさまじいまでの己を卑下する性質ゆえに、井草はためらわずに一発急所を外して突き刺そうと試みる。
そこに遠慮はない。躊躇もない。躊躇いもない。
罪悪感はあるがやるしかないので仕方がない。
条件反射でアザゼルが交わしてなければ、本当に脇腹に突き刺さっていただろう。それ位には威力のこもった一撃だった。
「うぉおおおおい!? 待て、俺が本当に悪かった!! 控える!!」
流石のアザゼルも本気で慌てる。
この男、自己犠牲精神が強いというよりかは自己保身を考えてないから判断が速い時は非常に速い。
自分以外に責任を取るものがいないと判断したのなら、「まあ俺が死ぬなら問題ないか」などと一瞬で結論付ける。其れゆえに恐ろしいまでに判断が速い上に、躊躇なく行動してしまう。
この問題点をどうにかしなければいけないとは思うが、さてどうしたものか。
数年越しで考えている事案を改めて考えながら、アザゼルは両手を上げて井草を落ち着かせる。
「お前には会談に参加してもらわねえと困るんだから、頼むから落ち着いてくれ」
「会談に? 俺なんかが参加したら堕天使の心象が底値を割りますよ?」
本気でそう思っている井草にため息をつきながら、アザゼルはとにかく話を続ける。
方向を変えないと本当に刺されそうだ。自己犠牲で済む範疇内なら遠慮なく行動するこの男は本気でやる。
「悪魔側はリアス・グレモリーたちが参加決定。天使側もニング・プルガトリオとリム・プルガトリオを連れてくるって連絡がきた。だとするなら、俺もお前を連れてこないと形が整わねえ」
「……紫藤イリナって子は?」
井草はふと気になって質問を出す。
あの事件でコカビエルと相対した面子が参加するなら、当然彼女もかかわると思ったのだ。
これ幸いとアザエルは速やかなに唇を動かして言葉を作り出す。
「奴はミカエルから出さないと連絡がきた。……聖書の神の死をうかつに公開するわけにはいかねえからな」
「なるほど。確かにそうですね」
信仰心が高い心とにとって、聖書の神の死は劇薬以外の何物でもない。
うかつに知れば信仰心が崩れさる。下手をすれば、狂喜に取りつかれて暴走するだろう。自殺に走る可能性だって十分にある。
そういう意味では、熾天使ミカエルの判断は当然だった。
下手をすれば、枢機卿の中にも知らないものはいるかもしれない。そんな危険な情報を、うかつに他者に教えるわけにはいかないだろう。
「この会談、前提条件として聖書の神がくたばったことは話すだろうからな。お前もそのつもりで頼むぜ」
井草にそう念押ししながら、アザゼルは考えを巡らせる。
このチャンスを逃すわけにはいかない。この機に和平を結べなければ、三大勢力はいつか必ず共倒れだ。どこかの神話勢力に付け込まれるか、自分達だけでくたばるか。そのどちらかしかない。
それに、神の子を見張るものがイーツを生み出したわけでないことを知らしめるためにも、三大勢力だけでも査察団を送ってもらう必要もある。
このチャンス、生かせば堕天使陣営は首を皮をつなげるが、逃せば確実につぶされる。
堕天使総督として、アザゼルはこれでも決意を決めている。
幸い、こちらにはイーツ関係で確保した実験体からとったデータと、神器に関係した様々な技術がある。
これを生かせば勝ち目はある。そして、其れをつくことにためらいはなかった。
―たのむぜぇ、サーゼクスにミカエル。お前らだって戦争も共倒れも御免だろ?
あのお人よしたちに期待し、アザゼルはそのあと―
「あ、それはそれとしてまず俺から説教させていただきますから」
―悪ふざけの責任を負い、しっかり説教を受けることとなった。
あ、活動報告であらたな募集をしてみました。よければご一読ください。