混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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会談編 第二弾といったところでしょうか。


6話

 

 そして会議はひと段落した。

 

 元より、トップ陣営が全員和平に賛成しているのだから当然だ。これでこじれるのは、よほど政治家や外交官に向いてない者が出張ってきた時である。

 

 そして全員にサーゼクスの女王であるグレイフィアが入れたお茶が行き渡り、そして一息つく。

 

「これは美味しいのです! 機会があればもう一度飲みたいのですよ」

 

「お褒めに預かり恐縮です」

 

 余程美味しさに感動したのか、ニングが顔をぱあっと明るくしてグレイフィアを褒め称える。

 

 グレイフィアは平然と受け止めるが、心なしか少し機嫌が良くなっている風にも見えた。

 

 全体的に場の雰囲気も丸くなっている。外側がピリピリしているのとは正反対だ。

 

 ある意味でこれが全体の縮図なのかもしれない。過去の遺恨や戦争に勝利する事を望む下僕の者達に対して、上の者達は争い事そのものに辟易している節がある。コカビエルのような一部を除いて、戦争を望む上層部はごく少数だ。

 

 その事実が、今の会談の様子からでもうかがい知る事が出来た。

 

 そんなことを思っている井草の視線の先、ミカエルが視線をイッセーに向ける。

 

「そういえば、赤龍帝は私に聞きたい事があるという事でしたね」

 

 その言葉に、井草はイッセーを評価するか引くべきか考える。

 

 聖書の教えの現状最高指導者であるミカエルに対して、態々問い質すなど並の度胸ではできない。それだけでも凄い事だ。

 

 しかしそれをこのタイミングで聞いてくるミカエルも意地悪だと思う。普通の神経の持ち主なら、まず間違いなく言えないだろう。

 

 これは助け船を出すべきかと井草は思い、しかしイッセーはまっすぐにミカエルと向き合った。

 

「……なんでアーシアを追放したんですか?」

 

 その言葉に、リアス達はもちろんアーシア自身驚いていた。

 

 和平が結ばれていい雰囲気になったタイミングで言いう事ではない。場の空気を読んでないと言われたら、それはそうだというしかない。

 

「イッセー。流石にそれをこのタイミングで聞くのはまずいと思うけど?」

 

「すいません井草さん。でも、俺どうしても許せないんです」

 

 井草を制しながら、イッセーは問い質す視線をミカエルに向ける。

 

「プルガトリオ機関何ていう受け皿があるのに、なんでアーシアを追放したんですか? 何より、悪魔を治してしまった事はそんなに悪い事なんですか?」

 

「その件に関してはこちらの不手際だ」

 

 真っ先に応えたのはヤーロウだった。

 

 彼はイッセーに対して頭を下げると、苦渋位満ちた声を出す。

 

「プルガトリオ機関はその特性上、枢機卿の大半からも受けが悪い。ゆえに情報を伝え損ねた事にして、追放という形で放逐したがる者も数多い」

 

「だから! なんで悪魔を治しただけでアーシアが追放されなきゃいけないんだって聞いてるんですよ!!」

 

 ヤーロウの言い分は理解できたが、それ以前の問題を感じてイッセーは声を荒げる。

 

 そもそもアーシアが追放されたのは、負傷した悪魔を治療した事だ。

 

 悪魔が治療できるなど魔女だ。故に追放する。

 

 宗教観が緩い日本出身だからなのかもしれないが、しかしイッセーからしてみれば理不尽以外の何物でもない。

 

 心優しく、人の善意をまず信じるアーシアのような者こそ、教会がまず尊ぶべき存在ではないのだろうか。

 

 そんな思いを込めた言葉に、先ず対応したのはリムだ。

 

 彼女はヤーロウとイッセーの間に割り込むと、イッセーを堂々と手で制す。

 

「まあまあ。大絶賛戦争してる、滅ぼすべき邪悪を治しちゃったら、そりゃいい顔しない連中が出てきやがってもおかしくないでやがるでしょう?」

 

 とりあえず落ち着けようと、常識的な切り口から諭すが、その肩にミカエルの手が置かれる。

 

「そちらについてはこちらの現状にも問題はあります。……聖書の神が残したシステムについてはご存じで?」

 

 それについては井草も聞いている。

 

 聖書の神は信仰を奇跡に変えるシステムを作り上げた。神器などの運用を行っているのも、そのシステムによるものだ。そして、神が死んだ後はセラフ達がそれを運用する事で制御しているとも聞いている。

 

「現状、システムを維持する為にはそれに不都合なものを切り捨てざるを得ないのです。例えば、貴方の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)もその一つで、アーシアさんの聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)もそうなのです」

 

「……悪魔を治せるってのは、そんなにダメな事なんですか?」

 

 不満げなイッセーに、ミカエルは静かに肯定の頷きを返す。

 

「聖書の神が滅ぼすべき邪悪とみなした存在を癒せる。これが基本となれば、信徒の信仰心に揺らぎが生じます。現状において、教会に彼女を置いておくのはリスクが大きすぎました」

 

「本来そう言ったものを招き、信仰の為に異端者と戦わせる事で居場所を作るのがプルガトリオ機関なのだが、それゆえに存在を知る信徒の大半には嫌われていてな。……結果、情報を出し渋られて堕天使側に確保されてしまったのだ」

 

 苦苦しい顔をしながら、ヤーロウが補足する。

 

 そして、そんな彼女をどうするか監視。可能ならばプルガトリオ機関に招き入れる事を目的として、ニングとリムが派遣される。

 

 そしてレイナーレのところに送り込まれたアーシアは、道に迷っていたところをイッセーに道案内される事となる。

 

 それらが絡み合った結果、ややこしい共同戦線が生まれたのは、井草達の知っている通りだ。

 

「他にも、信仰の維持に不都合な存在を追放することもあります。……そちらのゼノヴィアが該当しますね」

 

「これまたそういった者もプルガトリオ機関が引き入れるのだが、彼女の場合は―」

 

「―スカウトする前に悪魔に転生したそうですもんね……」

 

 こちらは申し訳なさそうにする必要はない。ミカエルにしろヤーロウにしてもだ。

 

 井草はそうフォローする。なにせ、やけを起こして即座に悪魔になったのはゼノヴィアなのだから。

 

 だが、ミカエルとしては思うところはあったらしい。ゼノヴィアとアーシアに体を向けると、ミカエルは頭を下げた。

 

「この件につきましては、我々天界と教会の失態でもあります。本当に申し訳ございません」

 

 その光景に、井草はもちろん、会議室にいる多くの者達が絶句していた。

 

 確かに失態であるとはいえ、熾天使の一角が一回の信徒、それも追放されている者に頭を下げるのだ。過激な信徒は失神するかもしれない光景だった。

 

 そして、ゼノヴィアは静かに首をふる。

 

「頭をお上げください。長年教会に育てられた者として思うところはありますが、事情を知れば当たり前のことです」

 

「ですが、我々の至らなさの所為で信徒を裏切る形になったのは」

 

 今まで相当苦渋の決断だったのだろう。ミカエルの顔は痛々しい。

 

 しかし、ゼノヴィアはむしろ笑みすら浮かべて、リアス達を見渡した。

 

「他の信徒には申し訳ないですが、悪魔になった事で信徒であると気では味わう事ができない幸せも手に入りました。ミカエル様を恨む事などありません」

 

 その言葉に、アーシアも祈りを捧げるように手を組みながら笑みを浮かべる。

 

「私もそうです。イッセーさんや部長さん達良い人達と出会えて、今は幸せです」

 

 確かに、信徒としてはあれかもしれない。

 

 信徒が悪魔になった事を喜んでいるのだ。配信者として処罰するべきだというものも出てくるだろう。

 

 だが、まだ確定ではないとはいえ和平はここになった。なら、それもまた変えていかねばならない価値観だ。少なくとも、この場にいる者達はそう思っている。

 

 その事実をかみしめたのか、ミカエルは安堵の表情を浮かべて頭を上げた。

 

「貴方達の寛大な心に、心からの感謝を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして話もまとまりかけたところで、アザゼルが視線をアーシアに向ける。

 

「そうだった。うちのところの離反者がそっちの嬢ちゃんには迷惑かけたようだな」

 

 割と軽いその言い方に、井草は眉間にしわを寄せる。

 

 人によっては神経を逆なでする態度だ。こういうことを面白がってするから、この男は質が悪い。

 

 そして井草が何か言う前に、イッセーがいら立ちをあらわにして食って掛かった。

 

「そうだ! あんたをしたってあんたの側に立ちたいと思ってる奴の所為で、アーシアは殺されるところだった! ニングさんとリムさんが動いてなかったら本当に死んでたんだぞ!!」

 

「そこに関しちゃこっちの落ち度だ。今現在生き残った首謀者のレイナーレは指名手配。捕まえたらそっちに引き渡すから、煮るなり焼くなり好きにしていい」

 

「そういう問題かよ! っていうか、俺なんて殺されかけたんだぞ!?」

 

 イッセーからすればそこも腹が立つところだろう。

 

 なにせ普通に生きてて、覗きという問題行為もきちんとやめて更生している。それがいきなりあんな悪質な行為で殺されたのだ。

 

 一発ぶん殴ってやろうかという気持ちになはなるだろう。

 

 だが、アザゼルはそこに関しては平然とした態度を崩さなかった。

 

「それに関しちゃ必用案件だ。確かにレイナーレのやったことは監督不行き届きだが、殺す殺さないの案件じゃあれは必要だ」

 

「んの……野郎……っ」

 

 今にも殴り掛かりそうなイッセーに、しかしアザゼルはまっすぐに視線を合わせる。

 

「悪質な神器保有者や、暴発の危険性がある神器保有者を排除するのは、暗黙の了解で堕天使の役目だ。そこに関しては天界や悪魔、他の勢力も理解してるはずだぜ」

 

「……そこに関しては否定できないな」

 

「結果的に汚れ仕事を押し付けている形ではありますが」

 

「そういうことだ。まあ趣味のいい真似じゃねえが、ああしなけりゃこの街が滅びる大惨事が起きている可能性だってあったことを忘れるなよ」

 

 サーゼクスとミカエルの言葉を追い風に、アザゼルはまっすぐにイッセーに言い返した。

 

 それに反論しづらい状況になっているイッセーに、アザゼルはにやりと笑う。

 

「そもそも謝罪の言葉や土下座なんて、俺みたいなやつじゃあ余裕でできる。俺はそんなもんよりちゃんとした詫びの品で返す主義でな。……あとでアッと驚く方法で代償をしてやるよ」

 

 凄まじく嫌な予感を井草は覚えた。

 

 目の前の総督は、色んな意味で問題児だ。

 

 思い付きで突拍子もない行動をする。其れに積極的に人を巻き込む。挙句の果てに思いつきを実現する技術力を持っている。三コンボだ。

 

 妙な事をする前に止めた方がいいかもしれない。後でピスに相談しておこうと、井草は決意する。

 

 ピスは外側で警備をしているはずだ。アザゼルは彼女を非常に買っているし、井草もその実力に不安はない。

 

 以前模擬戦した事があるが、かなり手加減をされたうえで一蹴された。自分という隠れ蓑の内側に潜む、緊急用の最後の戦力こそがピス・ダウンフォールなのだ。

 

 ……実際は緊急用は緊急用でも、緊急時に井草を守る為の戦力なのだが。それについては井草は完全に思い込まされている為仕方がない。

 

「ま、そういうわけだ。それで、今度はイーツについて話を進めようか」

 

 その言葉に、全員の表情が引き締まる。

 

「そうですね。人間界を騒がせるだけでなく、適合者によっては我々異形の上位クラスですら手こずらせる、あれは危険な存在です」

 

「そうなのよねぇ。さっきも言ったけど、色んな勢力にばらまかれてみたいで、どこも他の勢力でもばらまかれてるって気づいてないから内密にしてるけど、結構被害が出てるみたいなのよ」

 

 ミカエルとセラフォルーが困り顔を浮かべる中、アザゼルは即座に紙の束を取り出すと、それを広げる。

 

「その件についてだが、判明した事がある」

 

 その言葉に、全員の視線が集まった。

 

「そのイーツについてだが、戦闘不能になるまで叩きのめした後、爆発して消滅する個体と謎の物体だけ壊れて、変身者は戦闘不能になるだけで済む場合がある。……そこのグレモリー達は知ってるだろ、ウチのはぐれ者が前者で、バルパーが後者だ」

 

 その言葉に、全員が息をのむ。

 

 すなわち、これまで人間界で暴れまわり撃破されたイーツは、素体となる存在がいたということがほぼ確定したのだ。

 

 これで各国の軍隊は、知らずに人殺しを行っていることになる。

 

 むろん、軍隊とは人殺しを行う組織だ。その為の精神的修練なども積んでいるし、それなりの覚悟があって志願するものだろう。

 

 だが、例えそうだとして問題は多い。

 

 この事実が知れ渡れば、大衆はイーツを生み出した者を叩くだろう。万が一にでも三大勢力がそれだと誤解されれば、大打撃を受ける事は間違いない。

 

 そして、もう一つの事実も明らかになる。

 

 それは、イーツにも種類、もしくは位階があるということだ。

 

 そもそも人間世界で暴れまわっているイーツと、異形達と相対したイーツでは性能が異なっている。

 

 素体となる存在の性能差もあるのだろうが、それを差し引いても戦闘能力の向上値が大きすぎる。

 

 イーツの開発者を直接締め上げねば分からない事も多いだろうが、しかし一つだけ言える事がある。

 

「おそらく、イーツを作り出した連中は本気を出しちゃいねえ。……イーツがらみの案件は、俺達が思っている以上に厄介な事になるだろうぜ」

 

「ゾッとしませんね。……そもそも、誰がどうやって開発したのかも分からないというのが恐ろしい」

 

 ミカエルがおぞましも物を見る視線で、資料に視線を向ける。

 

 イーツ。その存在はまだ底が見えず、同時に恐るべき実態も垣間見える。

 

 戦闘不能になると所有者が消滅するか、もしくは所有者が戦闘不能になるだけで済むか。

 

 そしておそらく、これは前座だ。

 

 これ以上の何かがイーツにはある。その核心と言ってもいい予感が、全員の空気を鋭くさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその瞬間、時は凍り付いた。

 




さて皆さん、はっきり言うとここまでは前座です。

あと少しで本格的にオリジナル要素が増していきますぜ、旦那ぁ。

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