混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
さあ、ヴァーリをボコるのは……だれだ!?
その時、ヴァーリ・ルシファーは何が起きたのかを理解する事が出来なかった。
衝撃と共に、兵藤一誠達が一瞬で遠くに離れていく。
否、違う。
自分が殴り飛ばされたのだ。
「な……に?」
あり得ない。
余裕が油断に代わっていた可能性は認めよう。それほどまでに今のは名案であったと思っている。
だが、それでもそれをなしたのは一体誰なのか。
アザゼルではない。カテレアなわけがない。リアス・グレモリー如きでは不可能だ。兵藤一誠に至ってはその光景にぽかんとしている。ピス・ダウンフォールも唖然としている。
そう、すなわち答えは一つ。
「……こんなもんで済むと思っているのかい?」
答えに行きついた瞬間、急激に自分体が引っ張られる。
そして一気に元の場所に戻っていく中、ヴァーリはその種に気が付いた。
気づけば、自分の体に糸がついている。
殴り飛ばした時につけたのだろう。結果として、勢いよく引き戻されたのだ。
そして、その糸は蜘蛛を模した手の甲の意匠から伸びており、その意匠を持つのはただ一人。
「今お前は、超えてはいけない一線を越えたんだよ」
井草・ダウンフォールがそのままヴァーリを地面に叩きつける。
「面白い、やればできる奴もいるじゃないか―」
「うるさいよ」
褒め称え様とすれば、顔面に拳が叩き込まれてそのまま強制的に口を塞がれる。
そして反撃の拳を叩き込もうとすれば、その腕を掴まれてひねり上げられた。
『馬鹿な!? この私の力を引き出しているヴァーリが、一方的に!?』
アルビオンが驚愕し、自分もまた驚愕している。
同じ異形とのハーフで神器を持つ身ではあるが、ヴァーリと井草には大きな隔たりがある。
井草は上級堕天使のハーフらしいが、自分は最上級悪魔を通り越して最強の魔王の血を引いている。
ヴァーリの神器は神滅具の一つだが、井草の神器は戦闘用でもない、低性能の神器のはずだった。
にも関わらず、一方的に殴り続けられている。
打ち身程度はいくつもできたし、骨にヒビが入ったかもしれない。それほどまでに一方的に攻撃を受けている。
なるほど、これがエボリューションエキスによって変化したイーツの力か。
そう納得し、しかしヴァーリも本気を出す。
なにせ、自分は現在過去未来において最強の白龍皇になると称された男。たかが上級の混じり物風情にやられるわけにもいかない。
『Divid!』
半減を発動させて相手の力を奪い、そして勢いよく絡みついていた糸を魔力で弾き飛ばす。
そして、力が抜けた井草の腹に、全力の拳を叩きつけ弾き飛ばし―
「まだだよ!」
そのまま自分まで吹き飛ばされた。
気づけば、弾き飛ばしたと思った糸がまた引っ付いていた。
どうやら攻撃を喰らったその瞬間につけたらしい。
戦闘経験もそう多くないと聞いているが、よくもまあここまでの捨て身の判断ができるものだ。正直関心する。
だが、その程度でこの白龍皇を倒せると思ってもらっては本気で困るという物であり―
「言っとくけど、キレてるのは俺だけじゃないんだって分かってるよね」
その井草の言葉と共に、ヴァーリの肩に手が置かれた。
「……おい、このクソ野郎」
そして振り返ったその瞬間―
「ぶち殺すぞこの野郎!!」
顔面に赤龍帝の拳が叩き込まれた。
その短時間の攻防を終え、井草は何らかの充実感を覚えていた。
ふと気づけば、イーツと化した自分の体はまた変化していた。
腰の部分に日本の鎧のパーツらしきものがついている。確か草刷りとかいう名前だったはずだ。
そして、その理由もなんとなく分かる。
「分かってきたよ、このイーツの能力が」
ああ、単純な事だ。
蜘蛛の意匠はドーナシークが変身していた蜘蛛のイーツ。草刷りの部分は、エクスカリバー事件で同じく井草が止めを刺したケンゴウのイーツと化したバルパーの意匠に似ている。
そう、そしてナイファーザーが教えてくれた自分のイーツの名前。
レセプター。和名は受容体。
細胞の膜に存在し、細胞膜の外の物質と結合して多様な反応を起こす機能を持つ体の一部。
その名を冠すこのイーツの力は―
「……倒したイーツの力を取り込めるってわけだ。漫画の主人公になった気分だよ。……役者不足にもほどがある」
なんとなく居心地が悪い気分になる。
物語の主人公に自分のような屑がなるなど、最悪ではある。
だが、この状況下では少しは助かっているだろう。
今後のイーツとの戦いにおいて、自分が主力となってイーツを倒し続けていれば、そのイーツの力をどんどん手に入れることができるということだろう
今後の対イーツ戦において、間違いなく有用だ。
とは言え―
「ああ、これあれだね。普段動かしてない筋肉動かしてすぐに筋肉痛になるアレ。……カラダイタイ」
「井草!? あなた大丈夫!?」
思わずリアスが心配するぐらい体が震えている。
まったく動かしたことのない機能を怒りに任せて動かしたせいだろう。今までの人生でも経験したことがないぐらい痛い。肉体的苦痛においては人生最高峰である。
正直これ以上闘える自信がないのだが―
「安心してください、井草さん」
イッセーは一歩前に出ると井草の肩に手を置いた。
鎧に包まれている状態では表情はわからないが、しかしそこには強い決意が伝わってくる。
「アイツは俺が殴らないと気が済まない。徹底的にぶちのめす」
「分かった。確かに部外者がしゃしゃり出てもあれだしね」
それに今の衝撃でさらに痛くなった。とても動けそうにない。
「だからあとは任せてください。……赤龍帝の意地を見せてやります!!」
その言葉に、井草はうなづいた。
ああ、そうだ。自分のような屑に、この決意を邪魔する資格はない。
それに共闘するのもあれだろう。それは、赤龍帝の名に傷をつけるようなものだ。
「じゃあ、頑張るといいよ、イッセー」
その言葉と同時に、井草はへたり込み、そしてイッセーは駆け出した。
そして、アザゼルはカテレアに視線を向ける。
「んじゃ、こっちもさっさと終わらせるとするか」
「言ってくれますね、ですが、貴方に勝ち目はありませんよ?」
カテレアがそう不敵に嗤った瞬間、変化は起きた。
カテレア・レヴィアタンが保有する魔力。その漏れ出すオーラが一気に増大化したのだ。
カテレアは魔王の末裔なだけあって、最上級悪魔クラスの魔力は保有している。
しかし、総合的にセラフォルー達現四大魔王や初代レヴィアタン達旧四大魔王には劣っている。だからこそ内戦で負けたわけだし、魔王の座を奪われる事になったのだ。
そして血統に拘る悪魔は才能が自然に成長する事に任せ、努力を厭う傾向がある。ならばこれは特訓とは思えない。
すなわち答えは一つ。
「まだイーツにはなってねえな。なら、オーフィス絡みか」
その言葉に、カテレアは静かに微笑む。
どうやら正解らしい。
「ま、何か持ってきてるとは思ってたぜ」
そう静かに言うと、アザゼルは懐に手を突っ込む。
正直に言えば、これを使う機会が欲しくて堪らなかったところだ。作った者のお披露目をしたがるのが愉快犯の気がある自分のようなタイプの技術者というものだ。
故に、遠慮なく開帳しよう。
「俺は神器を研究してるんだが、色々あって人工的に作る研究もしてるのは知ってるか?」
「それぐらいは内通者が話していますとも。ですが、ろくに形にできていないとか―」
「―OK。スパイがどの辺まで潜り込んでるのかは分かった。その程度か」
その言葉に、カテレアは警戒心を強くする。
アザゼルはその戦闘勘を素直に評価する。
正解だ。この切り札は、間違いなくオーフィスの蛇のアドバンテージをひっくり返す。神滅具を使うヴァーリにすら対抗できるだろう。
何故ならこれは、それだけの代物なのだ。
「五大龍王が一画、
「そこ迄開発が進んでいたと!?」
狼狽するカテレアだが、その隙は命取りだ。
「行くぜ、
その瞬間に、瞬時に人工神器を禁手化させる。
現段階では使い捨て覚悟の暴走でしかないが、しかしそれをするだけの価値のある相手ではある。
故に見せつけよう、この黄金と黒で彩られた龍の鎧を。
「
「アザゼル! それだけの力を持っていながら、何故あなたは……っ」
カテレアが何を言いたいのかはなんとなく分かる。
それだけの才覚があるなら世界を変革しろとか、そういう事を言いたいのだろう。
だが、そんな事に対する返答は決まっている。
「お前みたいな小物には分からねえよ」
「な……めるなぁあああああ!!!」
激昂したカテレアは、魔力を最大限に込めてこちらに接近戦を挑む。
それに対し、アザゼルもまた光の槍を展開して迎撃し―
「―よっと」
「―かはっ!?」
その一瞬の交錯は、アザゼルの勝利に終わった。
当然といえば当然の結果である。
如何に魔王クラスにまで能力を上昇させようと、魔王クラスとすら渡り合える存在が更に龍王の力を宿せば、合計の力量では上回る。
それにアザゼルはカテレアよりも長く生きている分年季が違う。加えて激昂して冷静さを欠いたカテレアと、彼我の能力差を正確に把握して冷静だったアザゼルとの間には、メンタル面でも大きな差が開いていた。
ゆえにこの戦いの勝利はほぼ確定。深手を負ったカテレアでは、勝ち目はないも同然だろう。
「んじゃ、叩きのめしてとっ捕まえるとすっか―」
「舐めるなぁああああ!!」
その余裕っぷりに神経を逆なでされたのか、カテレアは懐から何かを取り出す。
見れば、それは筒状の何か。
「チッ! 噂のエボリューションエキスってやつか―」
『シールド』
とっさに倒そうと光の槍を投げつけるも、それよりカテレアがエボリューションエキスを打ち込む方が早い。
その瞬間、カテレアは盾を全身に鎧のように取り付けた異形の怪人になると、全ての攻撃に耐えきった。
シールド。すなわち楯。
名の通りの高い防御力が特徴なのだろう。蛇を取り込んだカテレアが使ったからだとは思うが、それだけの防御力を発揮していた。
そして、状況は変化する。
「あ、やべ。時間切れだ」
鎧が砕け散り、一個の宝玉を残して完全に崩壊する。
その宝玉を回収しながら、アザゼルはどうしたもんかと頭を書いた。
「まだまだ持続時間が短いなぁオイ。こりゃ要改良だな」
そんなのんきな事を漏らした瞬間、アザゼルの頬を魔力弾が掠める。
放ったのは当然カテレアである。
「させると思いますか?」
殺意がこれまで以上に叩きつけられるが、アザゼルはどこ吹く風だ。
そして、カテレアはその態度に苛立ちを隠さない。
何故なら、自分がこれ以上戦闘を続行しないという事を見抜かれていると理解しているからだ。
先のアザゼルが叩き込んだ攻撃は、ものの見事に深手だった。できる限り早くの治療が必要だろう。
そんな状態で戦闘を行っても、本領を発揮する事はできないだろう。よしんばアザゼルを切り抜ける事が出来ても、その後はセラフォルーやグレイフィア、ミカエルが控えているのだから。
「……覚えておきなさい、アザゼル。この汚名は必ず雪がせていただきます」
「お前じゃ無理だよ。ま、それでもいいなら好きにしな」
アザゼルとしても今の彼女を捕まえるのは困難なので、見逃す他ない。
それほどまでの耐久力を持っている相手に、今の自分ではどうにかできるとは思えない。堕天龍の鎧が無事なら考えるが、おそらくどちらにしても逃げられるだろう。
そういう意味では痛み分けではあるのだが、意気揚々とこちらを殺しに来たらしいカテレアはそのあたりに気づいていない。
そういうところが小物なんだと思いながら、アザゼルはカテレアが転移するのを見送り―
「よそ見をするとは余裕だな」
その瞬間、後ろから迫ってきたナイファーザーの攻撃に、反応が遅れた。
とっさに腕を盾にし、更に全力でオーラを流すことでその役目を果たさせることはできた。
が、それが限界だ。
瞬時に向けられたナイファーザーの持つブレードが、アザゼルの右腕を切り落とした。
イッセーの戦闘は原作とあまり変わらないので、飛ばしてアザゼルに視点を移しました。
そしてカテレア生存。イーツの能力でかろうじて命をつなぎました。
ですが、そこで一瞬でも油断したせいで、せっかく守れた腕を失ったアザゼル総督。ナイファーザーは戦闘においては舐めていい敵ではないのです。