混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
井草は体の痛みを感じながら、意識を取り戻す。
戦闘中に気絶をするとはうかつだった。イッセーは無事だろうか。
そう思いながら起き上がり―
「小猫ちゃんはなぁ、自分のおっぱいが小さいのを気にしてるんだぞ!! そんな子のおっぱいを半分にするとかふざけんじゃねええええええええ!!! もう一発殴ってやろうか、この半分マニア!!」
―そんな事を大声で吠えながら涙すら流しているイッセーに目を丸くした。
いったいこれは、どういう事何だろうか?
「井草ぁ! 起きたのねぇ!!」
そして、起きた事に気づいたピスに抱き着かれて我に返る。
ちなみに体中の痛みが実感できて悶え苦しむが、それを無理やり我慢する。
今はそんな事を気にしている場合ではない。しかし別のそんな事が気になってしまう。
とりあえず周りを見渡すと、ナイファーザーもカテレアもいなくなっていた。
つまり少しは気を抜けそうな状況なので、とりあえず聞いてみよう。
井草はそう結論。とりあえず聞いてみる事にする。
「義姉さん。これ、どういう状況?」
「うん、総督がやらかしたわ」
よく考えない方がいいだろう。
井草はそう結論すると、とりあえず立ち上がる。
ヴァーリも相当ダメージが入っているようだが、しかし油断はできない。
ヴァーリ・ルシファーは神と戦ってみたいとか、世界最強になったら世界に興味がなくなるから死ぬとかいうほどの戦闘狂だ。下手をするとこれで逆にテンションが上がるかもしれない。
それにヴァーリにはまだ手札が残っている。禁手すら不完全なイッセーではいくらなんでも発動できないだろう、封印系神器の伏札があるのだ。
あれを出されたら流石に周辺被害がシャレにならない。その前に何とかする必要がある。
「イッセー! 直ぐにヴァーリを気絶させるんだ!!」
「井草さん! もう起きて大丈夫なんですか?」
イッセーが振り返ってこちらを心配してくるが、そんな事をしている余裕はない。
「ヴァーリはまだ切り札を持ってる! 出されると駒王町が吹き飛びかねないからすぐに叩きのめして!!」
「ぇえ!?」
イッセーは明らかに驚愕する。
仕方がない事だろう。兵藤一誠という少年は、まだ戦士ではなく学生に意識が寄っている。そんな彼に即座に敵にとどめを刺せというのも酷な話だ。
だが、それが良くなかった。
「我、目覚めるは―」
既にヴァーリは詠唱を開始している。
そしてオーラをはなって接近も阻害している。是では詠唱を阻止する事はできないかもしれない。
このままではまずいと、井草がそう思った瞬間―
「あらぁ、そうはさせないわぁ」
―オーラを強引に突き破り、ピスがヴァーリの目の前に立っていた。
「残り57秒、フルボッコねぇ」
そして、五十七秒間の地獄がヴァーリに襲い掛かった。
その乱打、文字通り神速。
その連打、文字通り神殺しに匹敵。
そしてその連撃は、ボロボロのヴァーリでは対処する余裕は欠片もなかった。
五十七秒間、ヴァーリは文字通り何もできずにただ雷撃を纏った右腕で殴られ続け―
「じゃあ、あとはよろしくぅ~」
そう、最後に行ったピスと共に、地面に倒れて動かなくなる。
「………え?」
イッセーはその光景にそんな事を言うしかない。
井草はそれに同情すると、周りを見渡す。
そこには、その光景を予想していたアザエルが面白そうに笑い、隣のサーゼクスはほうほうと感心してピスに目を向ける。
離れたところではセラフォルーとミカエルに連れられて停止から回復した者達やその場で停止していたモノを護衛していた者達も来ていた。
そして、大半がぽかんとしている。
「……あれが、ヤーロウと戦って生き延びた者ですか」
「ええ。私はてっきり、聖書に名前が残された者を相手にしていたのかと思ったものです」
と、感嘆するミカエルにヤーロウが苦笑を返す。
確かにそうだろう。未来永劫歴代最強になるとまで言われた白龍皇を、一分足らず一方的に叩きのめし、しかもそれでほぼKO状態にする堕天使など、最強格だ。
しかし、ピス・ダウンフォールは聖書に名を刻まれていない堕天使である。
その事実に、全員が堕天使陣営の人材の多様さを思い知る。
「ま、こいつはちょっと反則技使っててな。一分でぶっ倒れる代わりに、一分間だけグリゴリ最強になれるんだよ」
と、アザゼルが得意げに言った時だった。
「……おいおい、ヴァーリの奴やられてるじゃねえかよぉ」
そんな声と共に、結界が破壊され一人の青年が降り立つ。
中国に由来すると思われる鎧で身を包み、頭には金の冠が付けられている。
その姿を見たとき、井草は自然と一匹の動物を想像した。
そして同時に、義姉の窮地に体が動いた。
「この猿! 義姉さんから離れろ!!」
即座にレセプターイーツに変身し、そして拳を放つ。
だが、その一撃は簡単に受け止められた。
「いい拳だが、まだまだだぜぃ?」
「だろうね!」
だが、井草も即座に対応する。
糸を出してピスを確保しつつ、牽制の為にケリを放つ。
そして糸で振り回してピスを投げ飛ばすと、更にその勢いを利用して再び殴り掛かる。
その一撃を喰らった猿を連想させる男は吹っ飛ぶが、しかしその瞬間に井草は失態を悟る。
「まだまだあまいぜぇ?」
そう、それは吹っ飛ばされたのではない。わざと吹っ飛んだのだ。
そして、気づけばヴァーリを抱えられていた。
「しまった!? やはり俺なんかじゃこれが限界か……!」
「兄ちゃん、自虐しすぎじゃねえの?」
敵にまで言われた。解せぬ。
何故敵まで自分を罵倒するのではなく、評価が高い傾向にあるのだろうか?
世の中の理不尽を感じ、井草は一瞬だけ世界の在り方を嘆く。
しかしそんな時間的余裕はない。
よりにもよって堕天使の命運を握る会談に身内がテロリストを手引きしたというのだ。取り逃がすなどもっての他だろう。
故に遠慮なく踏み込もうとしたが―
「落ち着け。へとへとのお前が勝てる相手じゃねえよ」
その言葉と共に、アザゼルが片手で器用に井草を止めた。
「ったく、美猴じゃねえか。須弥山は禍の団に出資したのかぁ?」
「そうじゃねえぜ、総督さんよぉ。これは俺っちの独断ってやつさ」
そうフレンドリーな二人の会話を聞いて、井草は戦慄する。
どうも知り合いらしい。しかし問題は、須弥山という言葉だ。
異形業界でも五指に入りうる実力者、帝釈天が率いる中国の異形勢力の総本山。アジアの神話関係では最大の組織と言ってもいい。
独断という言葉が一安心ではあるが、どうもこの騒ぎ、相当広範囲に広がっているとみていいようだ。
「あ、アザゼル! あいつ誰だよ?」
「一発で分かる様に言ってやる。孫悟空の子孫だ」
イッセーにアザゼルが馬鹿でも分かる説明をしてくれた。
孫悟空。西遊記に出てくる猿の妖怪。おそらく世界でもっとも有名な猿だろう。
須弥山でも有数の戦力にして、伝説クラスの千人でもある。その子孫ともなれば、七光り的な考えではあるが、ただものだとも思えない。
そして、そんな人物がテロ組織である禍の団に所属しているという事実は脅威という他ない。
「俺っちは自由に生きるって決めてるんでねぇ。気ままに生きさせてもらうぜぃ?」
そんなことをのたまいながら、美猴は持っていた棍を地面に叩き付ける。
途端に棍が叩き付けられた場所を中心に地面が泥のようになり、そして美猴はヴァーリと共に地面へと沈んでいく。
まさに逃げようとしているのだ。
「あ、待てこの―」
思わず追撃しようとするイッセーだが、しかしその瞬間に禁手が解ける。
リングの限界が来たということだろう。
元より禁手を疑似的に発動させるなどという無茶な真似だ。長時間運用する事など不可能に近い。更にその状態で禁手を更に高めているヴァーリを一時とは言え圧倒するような真似をして、ただで済むわけがない。
「んじゃ、俺っち達はこの辺で返らせてもらうぜぃ。赤龍帝、今度は俺っちとも戦おうぜぇ♪」
その言葉と共に、美猴達の姿は消えていった。
「ったく、お前さんは口が軽すぎるぜ」
帰還早々、無有は呆れ半分でナイファーザーに半目を向ける。
意気揚々と出撃し、実際データを持ち帰り、そしてEEレベル6以上でなら魔王クラスとすら渡り合えると証明した。
ナイファーザーは確かに成果を上げた。そこは褒められるべきだろう。
だが、それと同じぐらい情報をペラペラしゃべりすぎである。
流石に機密事項には触れていないし、知られてもそこまで致命的な情報ではなかった。だから罰則を受ける事はないだろう。
だが、優れた研究者でありイーツのサンプルや生態データを持っているアザゼルならある程度の情報でもだいぶ推測できるだろう。というより、既に情報をすり合わせてだいぶ想定されている。
どうせすぐにばらすとは言え、これはこれで一応叱責を受けるべきではある。
ゆえにこそからかい目的でそう言ったのだが、そこに凄まじいレベルで怒気の篭った視線を向けられるのは苦笑ものだ。
「この……いい加減な貴様にとやかく言われる筋合いはない!!」
「そこまで言うなよ? 之でも俺、EEレベル7,5だぜ?」
それが更にイラつかせていると分かっていて、しかし無有はあえて言う。
彼はそういう性分なのだ。だからこそ、余計な真似をしてしまったともいえる。
「フン。どうやらあまり楽しめなかったようだな」
そこに、黒髪を伸ばした一人の堕天使が姿を現す。
元
彼もまた禍の団に参入していた。
彼に接触していたのはごく最近ではあるが、それでも参入した彼は相応の立ち位置を手にしていた。
なにせ禍の団に関わっている堕天使の中では、彼は立場的にも能力的にも最高レベル。加えてEEレベルこそそこまで高くないが、戦闘経験と基礎能力の高さで下手なムートロンの戦闘員を大きく上回る力を発揮している。
ムートロンの第二の目的から言っても、彼は相応の立場で迎えるべきだった。
「よぉ、コカビエルさんよ。頼んでた情報でも持ってきてくれたのかい?」
「フン。貴様らがサーゼクス達とどれだけ戦えたのか知りたかったのでな」
馴れ馴れしく声をかける無有に不満げな表情を浮かべながらも、コカビエルは手に持っていた資料を渡す。
そしてそれに目を通しながら、無有はフムフムと頷いた。
「なるほど、井草の野郎の神器が関わっている可能性が大……か。他にその神器もってそうな奴ってどれぐらいいるよ?」
「本気で探せばそう珍しいものではない。それに、奴を直接奪い取るという方法もあるぞ?」
むしろそれこそ望ましいといわんばかりのコカビエルの返答に、無有はしかし肩をすくめて首を横に振る。
「流石に手間が掛かり過ぎるっての。準備段階でんな手間暇はホテップが認めねえよ」
そうため息交じりに言いながら、無有は資料をナイファーザーに渡す。
苛立ちながらも素直に受け取り、そして資料を確認したナイファーザーはすぐにうなづいた。
「確かにな。このレベルの神器なら探せば他にいくらでもいるだろう。そいつらを捕まえて実験すれば十分データは採れるか」
無有をあからさまに嫌っているナイファーザーもその意見で同意している。
という事は、おそらくムートロンそのものがそう言う考えで行動するだろう。井草を直接狙うのはのちの話になりそうだ。
それに少しだけ肩透かしといった感想を抱きながら、コカビエルはしかし笑みを浮かべる。
自分の予想通りヴァーリも禍の団についた。更にムートロンが提供するエボリューションエキス。とどめに首魁であるオーフィスの力。
この戦争、勝つにしろ負けるにしろ相当の規模になるだろう。
それが楽しみでたまらず、コカビエルは嗤う。
それを面白そうに眺めながら、無有は駒王学園での戦いを思い出す。
そして、連鎖的にあの雨の日の事も思い出した。
井草はデフォルトイーツと似て異なる状態に変化している。これはかなりレアなケースだ。
そんな実例を生み出した無有としては、世界初のそのケースを確保したいと思ってはいる。
だがそれ以上に、彼は面白い見世物になってくれそうだとも思う。
何時どのタイミングでその見世物をスタートするか考えながら、無有はこれを幼馴染に渡そうとし―
「そういえば、だ」
ナイファーザーが、疑問符を浮かべながら声をかけてきた。
「……いつまで無有影雄なんていう名前を使い続けるつもりだ、ナイアル?」
その言葉に、無有影雄と名乗る男は。
ムートロン実働部隊最精鋭の1人、ナイアルは平然と答える。
「今度アイツと会った時にでも、本名で呼ぶように言ってやるよ」
毎回毎回おっぱいブチギレモードを書くのもあれなので、井草視点にすることで飛ばすテクニック!
そしてピス、めちゃつよ。短期決戦なら神の子を見張るもの最強格は伊達ではありません。ヴァーリも覇龍の発動を食い止められたらこの通り。因みに計算が合わないかもしれませんが、時間経過で回復したので合計時間は一分よりちょっと長めであります。
後勘違いされてましたが、無有影雄は偽名で、ナイアルが本名です。
もうネタバレしますが、ムートロンのネームドは全員クトゥルフ神話のナイアルラトホテップスに連なる名前で統一しています。ナイファーザーはナイアルラトホテップスの化身の一つの手まで黒い黒人神父、ナイ神父から取りました。
あとは戦後処理的な話が二つで、ヴァンパイア編も終了です。書き溜めはそろそろヘルキャット編の激戦に到達する感じですね。