混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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そんなこんなでヘルキャット編でございます。

総合的にみると、ここ迄がこの作品の序章になるでしょうね。


冥界合宿のヘルキャット
1話


 

 そして夏休みに入る頃、井草の引っ越しがスタートした。

 

 軽トラに揺られながら、井草は運転するアザゼルに半目を向ける。

 

「……あの総督、思い付きで行動するのやめてくれません?」

 

「アザゼル先生と呼べ」

 

 軽トラを運転するアザゼルはそう答える。

 

 禍の団が宣戦布告をした事で、事態は大きく動き始めた。

 

『バルベルデ共和国を中心とする、ムー同盟が国連からの脱退を表明してはや三日。国境近辺の国連軍との衝突では、イーツを実戦投入したムー同盟が圧勝しており、国連軍は本格的な同盟軍の投入を検討にしており―』

 

 ナイファーザーの発言通り、世界各国で軍事的紛争にイーツが投入されるようになっていた。

 

 それにより軍事力も国力も小国であるはずのそれらの国家は、国連軍の介入すら押しのけて軍事的横暴を開始。事実上の鎖国状態を取っている国家も数多い。

 

 むろん、現代でそんな輸出入をほぼなくしてしまえば国家は立ち行かないが、それに関しても想定ができる。

 

 エボリューションエキスはムートロンの技術である。そして、ムートロンは詳細は不明だが禍の団の派閥の一つである。

 

 必然的に、彼らは禍の団の支援を受けているのだ。テロリストなのだからこちら側でできる限り避けている異能を利用しているのだろう。

 

 既に三大勢力はこれに対抗するべく、各神話との和平の準備も進めている。また水面下で悪魔祓いなどを送り込んで、ゲリラ戦の形でイーツを減らしていく行動もとっている。結果とすれば現在膠着状態に持ち込む事には成功している。

 

 だが、この程度でどうにかできるかと言われれば不安である。

 

 ムートロンは前座で魔王とも戦う事ができる者を送り込んでくるほどに戦力がある組織だ。そして、彼らが開発したエボリューションエキスの能力は上級クラスを用意する事ができる。

 

 加えてオーフィスの力によるドーピングも驚異的だ。無限の力を持つオーフィスならば、時間をかければ無制限に力を用意する事もできるだろう。

 

 この戦い、まだまだ前哨戦である事は明白である。そして、その行く先には世界全土を揺るがす戦いが生まれるのだろう。

 

 ならば、こちらもそれに備えた力を得る必要がある。

 

 そういう意味では、この夏季休暇はイッセー達にとって大切な時期になるだろう。

 

「アザゼル先生。俺も、特訓していいかな?」

 

「最初からそのつもりだよ。どうやらムートロンにとってもお前は興味を引く存在っぽいからな」

 

 そう告げながら、アザゼルは軽トラを止める。

 

 しかしおかしい。近くにイッセーの家はない。

 

 直ぐ近くにあるのはビルのような豪邸。そんなものに見覚えないので、イッセーの家の近所というわけでもない。

 

 ……否。すぐに気が付いた。

 

 向かい側の道路の建物は、全部イッセーの家の向かい側にあったものだ。

 

 つまり、この道路は間違いなくイッセーの家のすぐ前にある道路。ここはイッセーの家があった場所である事は間違いない。

 

 しかしイッセーの家はない。あるのは豪邸だけで―

 

「ああ、サーゼクス達が建て替えたらしいぜ?」

 

 ―一瞬で疑問は氷解した。

 

 異形の技術を使えば、ごく短期間で豪邸を建てる事は可能である。下手をすれば一晩で建て替える事も可能だろう。

 

 だがしかし―

 

「立ち退き手数料とかちゃんと払ってるんですか、コレ?」

 

「安心しろ。サーゼクス達に限ってその辺を無視したりはしねえよ」

 

 ならいいのだが、それはそれとして豪快であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、アザゼルが真っ先に入っていく中、井草はとりあえず荷物を運びこんだ。

 

 イッセーの家に引っ越しする理由は、割と簡単である。

 

 一つは、保護者であるピスが別の部署に向かう事になった為。

 

 多くの脅威が集まっている禍の団に対抗する為、刃狗(スラッシュ・ドッグ)チームを中心に、対策チームを作る事が決定。

 

 更に実力者をかき集めて、イーツを堂々と使用している国家を中心に行動する事が決定した。

 

 それに伴い、瞬間的にならば堕天使最強の領域にすら至れるピスも戦力として派遣される事が決定した。

 

 そうなると井草に保護者がいなくなる。しかし保護者抜きだと井草が暴走しかねない。だからといってアザゼルに組ませると井草が酷い目に遭いそうで、主に胃が可哀そう。

 

 そんな判断の結果、表向きには「ヴァーリ・ルシファーが兵藤一誠を狙う可能性があるので、ヴァーリを監督しきれなかった責任を兼ねて堕天使側から人員を出す」という表向きの理由がでっち上げられた。

 

 で、結果として井草が選ばれたのである。

 

 むろん表向きの理由しか教えられていない井草はそれを素直に受け取り、こうして引越ししたというわけだ。

 

「じゃ、そういうことでよろしくね?」

 

「は、はい……」

 

 何故かイッセーから微妙に不満げな返事が出てきた。しかし解せる。

 

「ごめんねイッセー。疑似的にハーレムだったのを邪魔しちゃって」

 

「いえ、上の方針には逆らえないですよね。仕方ないですよ、ハハハ……」

 

 心底残念そうである。

 

 まあ、グレモリー眷属は兵藤一誠宅で共同生活を送る事とお達しが下され、しかし祐斗とギャスパーは辞退したので、グレモリー眷属女性陣だけがごっそりイッセーの家に住む事になったのだ。

 

 これで井草がいなければ、疑似ハーレムといっても過言ではない。イッセーとしてはぜひ楽しみたかっただろう。

 

 正直少し可哀想な気もしないでもなかった。

 

「な、なんかごめんね……」

 

「いえ、いいんですよ、ははは……」

 

 なんというか同情する。

 

 イッセーにも同情してしまうが、井草としてはリアス達にも同情してしまう。

 

「俺なんかとリアスちゃん達を同居させるなんて、本当にごめんね」

 

「いえ、確かに残念極まりないけどあなたはもうちょっと自己嫌悪を治した方がいいと思うのだけれど」

 

 心底謝ったのだが、何故かリアスの文句は見当はずれな気がした。

 

 自己評価は正当にできている。むしろ他人の評価が高すぎるはずなのに、何故こんな事になるのだろうか?

 

 心底本気で疑問に思う。いや、本当にどういう事なのだろうか?

 

 まあ、それはこの際置いておく。

 

 問題は、だ。

 

「夏休みのオカルト研究部の合宿、俺も参加なのかい?」

 

 意外な話だ。

 

 オカルト研究部は確かに部活だが、その実態はリアス・グレモリーの眷属の集まりだ。

 

 しかし井草は眷属ではない。神の子を見張る者から派遣された、リアス・グレモリーとソーナ・シトリーの監視役である。

 

 そういう意味では目の上のたんこぶであり、距離を取れる機会があるなら距離を取っておこうべきものだと思っていたのだが。

 

 しかし、リアスは微笑すら浮かべている。

 

「あなたが悪い人でないのは分かっているもの。堕天使とも和平が結ばれたし、これぐらいなら問題ないわ」

 

 なるほど確かに。

 

 むしろ現場レベルで協調が取れていると認識される行動をとるのは、和平をアピールする意味で効果的だろう。

 

 それだけ溶け込めたというのは喜ぶべきだろうか。いや、彼女達のような善良な悪魔達に自分が加わる事は印象を悪くしないだろうか。

 

 しかし護衛役としての任務まで請け負ってしまった以上、断る理由も存在しない。

 

 さてどうしようかと思ったが、そんな井草の後頭部をアザゼルがわしゃわしゃとする。

 

「いいから行くぞ、総督命令だって」

 

「い、いや行きますけど! だけど―」

 

 リアス・グレモリーの名前に傷をつけないか。それが非常に気になってしまう。

 

 だがアザゼルは全く意に介してくれない。リアスももう諦めたのかスルーする方向で進んでいっている。

 

「どうせ井草のトレーニングもお前らと同時期にするからな。纏めてやった方が都合がいいってもんだ」

 

「つ、ついに俺も禁手(バランス・ブレイカー)に!」

 

 イッセーが勢いよくガッツポーズをするが、それを見てアザゼルは苦笑する。

 

「出来りゃぁいいがな。だが、お前がへっぽこなのを差し引いてもそう簡単にはいかねえのが実情だ」

 

「そんなー! きつい事言わないでくださいよ、先生!!」

 

 何時の間にやら完全に意気投合している。

 

 どうやらハーレムうんぬんがイッセーの琴線に触れたらしい。実際アザゼルも冷酷な行動をとる時はあるが、しかし外道どころかお人よしの類なので仲良くなる時はすぐになるのだろう。

 

 アザゼルからしても十分スケベの極みなので、イッセーの変態性も意に介さないのは明白である。

 

「ま、これはこれで三大勢力和平の象徴なのかな?」

 

 ならいいのだが、流石に仲良くなるのが速すぎる気もしないではない。

 

「良い事だとは思うよ? 禍の団の存在はあるけど、三大勢力の戦争が終わるのは素晴らしい事じゃないか」

 

 そうフォローする祐斗に、井草は苦笑する。

 

「教会が憎いとか言っていた祐斗くんも変わったものだね」

 

「う……。あ、あの時はちょっと色々あったから」

 

「皮肉じゃないよ。良い事だと本心から思う」

 

 そう、憎悪に飲まれるのは問題のある事だ。

 

 犯した罪に報いはあるべきである。だが、憎悪に飲まれて大切な事を忘れて憎しみを振りまくだけでは、人は進歩できない。

 

 少なくとも、教会に属する者達の多くは悪ではない。善を定義する聖書の教えを信仰し、善き者であろうとする者は大勢いる。

 

 そんな人達にまで憎しみを振りまいてはいけない。恨みつらみをぶつけるのは、それに相応する理由を持つ者だけにするべきだ。断じて、憎い相手にいた誰かではない。

 

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。その気持ちは分からなくないが、坊主と袈裟の間に一線を引かねばならないのである。

 

 それをきちんとしている祐斗を馬鹿にするつもりは一切ない。むしろ、きちんと褒めていくべきだとすら思う。

 

「うん、祐斗君は立派だよ。その想いを大切にするといい」

 

「ははは。井草さんに言われると身が引き締まるよ」

 

 いつの間にやら重要人物になってしまったものである。

 

 井草は、そう思うと苦笑してしまった。

 




ムートロンの技術供与により、世界各地で紛争が勃発。自分の作品、表の世界を巻き込む展開にするのが鉄板だなぁ。

それはともかく、ストーリーを書きやすくる目的もあって井草も同居。表向きはイッセーの護衛、裏では井草の首輪としてオカルト研究部を利用する形です。

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