混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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11話

 

 パーティ会場に駆け付けた井草たちの目の前に、霧が見える。

 

 その霧を、井草は二回見ていた。

 

 一度目は、三大勢力が図らずも共闘することになった、レイナーレとの戦いのとき。

 

 二度目はつい先日。駒王会談における禍の団の強襲の時。

 

 そして、その二度ともエボリューションエキスがかかわっている状況だ。

 

 考えるまでもない、二度あることが三度あっただけだ。

 

「……無有!!」

 

 誰もが注目するほどの大声で、井草は叫ぶ。

 

 そして、其の声に返答はあった。

 

「ナイアルって呼んでくれや。そっちが本名でな」

 

 そして霧から姿を現すは、無有影雄……否、ナイアル。

 

 そして、彼に引きつられるように、2人の姿が出る。

 

 一人は軽装の鎧に身を包んだ、長髪の悪魔。

 

 一人は、制服の上に中国の伝統衣装を重ね着した、槍を持つ高校生ほどの少年。

 

「久しいな、裏切り者の悪魔たちよ。真なる魔王の末裔が凱旋しに来たぞ」

 

「やあやあ。こういうのは趣味じゃないんだけど、ちょっと様子見をしに来たよ」

 

 憎々し気に声を出す悪魔と、軽々しく声をはなつ少年。

 

 しかし、その場にいる古参の悪魔たちは一様に色めき立った。

 

「あの方は、シャルバ・ベルゼブブ様か!」

 

「あの槍は、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ!!」

 

 旧魔王の正当たる末裔の1人、シャルバ・ベルゼブブ。

 

 神滅具の一つにして最強、黄昏の聖槍。

 

 魔王の末裔と最強の神殺し。その二つが霧とともに現れ、一同が色めき立つ。

 

 そして、その後ろから新たなる人影が現れる。

 

 軍服を身にまとい、挑発を三つ編みにした背の低い眼鏡をかけた女性。

 

 彼女たちは一様に色めき立つ悪魔たちを見て満足げにうなづくと、一列に並んだ。

 

「真なる魔王の一派の長、シャルバ・ベルゼブブだ。改めて覚えるがいい」

 

禍の団(カオス・ブリゲート)、英雄派。リーダーの曹操だ」

 

「私はムートロン先遣艦隊の指揮官、ホテップだ。以後よろしく頼むよ」

 

 その言葉に、全員の緊張感がさらに高まる。

 

 旧魔王派閥にムートロンは、駒王会談でテロを起こしたことで有名である。英雄派も、禍の団の派閥の中では有力だ。

 

 すなわち、禍の団の中でも発言力が高い三派閥。その長が三人そろって現れたのだ。

 

 衛兵たちが貴族をかばい、いつでも仕掛けられるように態勢を整える。

 

 それを手で制しながら、ホテップとなのった女性が声を放った。

 

「まあ待て。我々は降伏勧告をしに来ただけだ。ここで争うつもりはかけらもない」

 

 その言葉に、誰もが息をのむ。

 

 言うに事欠いて降伏勧告。テロリストが何を言うのか。

 

 怒りを通り越して呆れの感情すら見せ、誰もが絶句する。

 

 しかし、そこに声をはなつものがいた。

 

「……一応、最後まで話を聞こうか」

 

「ですね。情報も聞き出したいですし」

 

 このパーティに参加していたサーゼクスとミカエルが、一歩前に出る。

 

 その瞬間、シャルバの顔に殺意が浮かび上がる。

 

「忌々しいルシファーの名を僭称する偽りの魔王が。ちょうどいい、ここで滅ぼして―」

 

 そのまま魔力を垂れ流すシャルバだが、そこに差し出される光が割って入る。

 

 それをはなつのは曹操が持つ槍。聖槍ロンギヌスだ。

 

 そして、同時に稲光がホテップから放たれる。

 

「落ち着きなよ。ここはホテップの顔を立てようじゃないか」

 

「その通りだ。話が終わるまで何もしないことを条件に連れてきたのを忘れるな」

 

 二人掛かりで止められて、シャルバはとりあえず魔力を押さえる。

 

 だが、その表情は不満一色だ。すぐにでもサーゼクスたちに襲い掛かりたいのが明白だった。

 

 隙あらば、2人を無視して仕掛けかねない。

 

「チッ! 此処は貴様の顔を立ててやろう」

 

 傲慢以外の何物でもないシャルバの言葉に、ホテップはため息をつきながらもサーゼクスとミカエルに向き直る。

 

「まあ、降伏勧告の理由は簡単だ。……我々ムートロンの本隊が到着した場合、こちらの勝算は九割九分だ。部の悪い戦争をするのは政治家として悪手だろう? こちらとしても、戦争をせずに事態を解決できるならそれに越したことはない」

 

 九割九分。ほぼ十割。

 

 そのあきれ果てるほどに高い勝率を告げられ、貴族たちに怒りの表情が浮かんだのは当然だろう。

 

 サーゼクスが手で制さなければ、誰かが速攻で攻撃を叩き込んでいたはずだ。

 

「……理由を聞こう」

 

「いいだろう」

 

 サーゼクスに促され、ホテップは悠然と告げる。

 

「わかっていると思うが、ムートロンの名はムー大陸にあやかったものだ。我々は、数千年以上前に神々に迫害され、外宇宙へと逃れた古代文明人の末裔である」

 

 その言葉に、サーゼクスもミカエルも動じない。

 

 それはつまり、うすうす想定していたということだ。

 

「まあ、ナイファーザーの発言が正しければその可能性は十分思い当れますね」

 

「できれば驚愕してもらいたかったのだがね。ナイファーザーはやはり叱責するべきか」

 

 ミカエルの言葉にため息をつきながら、ホテップは告げる。

 

「単刀直入に言おう。そのナイファーザーと同格、EEレベル6,5以上のものは我々ムートロンの軍事部隊総力において、四桁存在している」

 

 その言葉に、全員が絶句する。

 

 ナイファーザーは、魔王サーゼクス・ルシファーと互角に渡り合った存在だ。

 

 それをすなわち、ナイファーザーは魔王クラスの戦闘能力を発揮するということ。

 

 その時点で、ナイファーザーはムートロンの中でも最高レベルの使い手だと判断していた。

 

 だが、ホテップははっきりと断言した。

 

 ナイファーザーと同格以上の使い手は、少なくとも千人以上存在している。

 

 想定している人数と比べて、桁が違いすぎる。

 

 魔王クラス以上が千人以上。それだけの戦力が全力を出せば、三大勢力は愚かあらゆる神話体系を叩き潰すことも不可能ではない。勝率九割九分も妄言ではない。

 

 ある意味でオーフィスを超えるといっても過言ではない戦力。その圧倒的な脅威に、誰もが息を止める。

 

 その光景を見てから、ホテップはさらに告げた。

 

「といっても誰も信じないだろう。ゆえに、我々が審議期間を設けさせてもらう」

 

 そして、ホテップは続ける。

 

「我々はほかの神話勢力に攻撃を続けながら、本艦隊が到着する来年3月末から4月初めまで降伏を受け入れるチャンネルを設ける。それまでに降伏するというのなら―」

 

「待ってもらおう」

 

 ホテップをさえぎり、サーゼクスは声を投げかける。

 

 それにいぶかしげな表情を向けるホテップを見据え、ミカエルがその言葉の続きをはなつ。

 

「その前に聞きましょう。旧魔王派と英雄派はともかくとして、貴方方ムートロンの目的は何なのですか?」

 

「なるほど、これは失念していた」

 

 その言葉に、ホテップは得心したかのようにうなづく。

 

 ちなみに後ろでは「旧魔王」の文字にシャルバが切れかけているのを、曹操が押しとどめるという漫才が発生していたがそれは置いておく。

 

 確かに、降伏するにしてもそれ相応の条件というものがある。

 

 そもそもムートロンの目的は判明していないのだ。降伏すればその目的に程度はともかく協力することになるのだろう。知らないでは済まされない。

 

 サーゼクスとミカエルの懸念は、きわめて当然のものだった。

 

 ゆえに、ホテップは当然の権利として告げる。

 

「大きく分けて二つ。我々を迫害した神々を蹂躙し、奴隷として使役すること。そしてもう一つ」

 

 すでにその時点でサーゼクスたちの答えは決まりきっているようなものだった。

 

 だが、その跡が更に問題だった。

 

「この地球の人類を労働力として運用し、我らムートロンによる宇宙開拓を行うことだ。いわば、大航海時代を宇宙規模で実行するものと思っていただければいい」

 

 大航海時代。

 

 帆船の技術が発達し、人々が広い範囲を移動した時代といえる。

 

 新大陸の発見などで人々が活気づいた時代といえる。

 

 だが、その実態は血なまぐさい。

 

 新大陸にいた者たちを奴隷として扱い、植民地の人々を火球として見下し、酷使する。

 

 そんな血塗られた時代。それを、目の前の女は行うと告げた。

 

「いいことだろう? 知的生命体とは虐げることができる弱者を求めるものだ。我々は我々に従うものをエボリューションエキスにより強者にし、従わぬものが蔑まれる世界を作る。不死の神は非常に都合がいい存在だ。一石二鳥とはこのことだよ」

 

 ホテップはそう告げ、そして右手をサーゼクスとミカエルに伸ばす。

 

「さて、一応聞いておこう。現段階での返答は?」

 

「論外だ。論じるに値しない」

 

「同感です。それは否定させてもらいます」

 

 即答だった。

 

 それに、ホテップはわずかに目を丸くする。

 

 どうやら、多少なりとも本気で驚いているらしい。

 

 確かに、圧倒的戦力差があるこの状況下で、損な発言が出てくることは想定しづらいだろう。

 

 だがしかし、サーゼクスもミカエルも、迷いなく断言した。

 

「悪魔も天使も堕天使も、そしてもちろん人間も。この世に滅びていい種族などなければ、理不尽に虐げられていい人々などいない。甘いことを言っている自覚はあるが、私は冥界を変えたいのだ。悪化させる君の提案を飲むことは、私の目が赤いうちはさせる気はない」

 

「同感です。かつて犯した過ちを繰り返すなど、それこそ主に対して申し訳が立たないという者。一応審議はしますが、セラフは全員が徹底抗戦を主張するでしょう」

 

 その全否定の言葉に、ホテップはため息をついた。

 

「全滅戦争を避けるために和平ができる頭脳があるのなら、飲んでくれるとも思ったのだが。……まあいいか」

 

 失望を見せながらも興味を明らかに薄くして告げ、ホテップはシャルバに視線を向ける

 

「よかったな。これでお前の望み通りだ」

 

「ふん。偉大なる悪魔を汚す偽りの魔王共が、飲むわけなどないだろうとは思っていたさ」

 

 その言葉と共に、霧から新たな影が現れる。

 

 四肢を持ちながらも、人間とは似ても似つかぬ姿をした、人型の異形。

 

 そう、それは、数百体のイーツだった。

 

「特別に調整した使い捨てのイーツだ。疑似的にEEレベルを3,0まで引き上げさせてもらったよ」

 

 その言葉と共に、大量のイーツたちが攻撃を開始する。

 

「さて、それでは彼等との戦いで自分たちがどれほど無謀なことをしているか、痛感してくれたまえ」

 

 その言葉と共に、ホテップはシャルバと曹操を連れ、霧の中へと戻っていく。

 

 それと入れ替わるように、更に数百体のイーツが現れ、そしてパーティ会場で暴れ始める。

 

 衛兵たちの多くがイーツに弾き飛ばされる中、貴族たちも戦闘を開始する。

 

 そして、パーティ会場は阿鼻叫喚の戦場へと早変わりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見て、井草は即座にイーツへと変身しようとした。

 

 まだ無有は残っている。あの男をここでどうにかすることができれば、何かが変わるかもしれない。

 

 今度こそ。たとえ命に代えても、無有を倒す。そして罪を償わせる。

 

 その衝動のままに井草はエボリューションエキスを活性化させようとして―

 

「ダメなのです!」

 

 その瞬間、ニングに止められてつんのめった。

 

「……ニング! あそこには、無有が!!」

 

「落ち着くのです!! ここでイーツになったら、ほとんどの悪魔たちが敵と誤認するのです!!」

 

 ニングの懸念は当然だ。

 

 イーツは形状からして多種多様だ。とりあえず、着ぐるみやボディスーツを着た人のような外見をしているが、だからこそ紛らわしい。

 

 井草の変身するレセプターイーツの姿こそない。だが、そんなことは何の慰めにもならないだろう。

 

 とりあえずイーツは全て敵。そういう思考になる可能性が非常に大きかった。

 

 となれば、井草がイーツになればその時点で井草も攻撃の的になりかねない。

 

「それでも―」

 

 それでもいい。今までの井草ならそう答えていただろう。

 

 だが、井草はなぜかその発言を一瞬躊躇してしまう。

 

 ……それほどまでに、ニングとリムのあの言葉は救いだった。

 

 井草はわずかながらにも自分を赦せた。ほとんど自分のことをよく知らない相手だからこそ、井草の心にその許しの言葉は届いた。身内出ないからこそできることだった。

 

 その事実に井草が正負双方の面で衝撃を受けた、その時だった。

 

「お、いたいた」

 

 あろうことか、無有自身が井草を見つけて近寄ってきた。

 

 まるで久々に会ったかつての同級生に対する態度で、軽く片手を上げながら、親し気に声をかけてくる。

 

 井草は一瞬で沸点に到達しかけるが、それより先にニングとリムが動いた。

 

 得物を引き抜きながら、2人は井草をかばうように前に出る。そして無有をにらみつける。

 

「無有影雄なのですね」

 

「ちょ~っち馴れ馴れしすぎやしやせんかねぇ?」

 

 静かな怒りを見せる二人を見て、無有は少しだけきょとんとする。

 

 そしてその瞬間、獣人の転生悪魔が後ろから爪を構えて無有に迫った。

 

 堂々と真っ先に霧から出てきたことから、人間の姿のままであっても禍の団の一員だと認識されたらしい。事実そうなので問題ない。

 

 だが、その行動は無謀だった。

 

「……あ、オタクら知ってる類か」

 

 そうぽんと手を打ちながら、無有は相手を見もせずに適当に足を動かして蹴りを叩き込む。

 

 その動きは一流の武芸者のごとき完成度で、美しさすらあった。何事も追及すれば一種の芸術になるとでも言わんばかりの自然な動きだった。

 

 そして、その蹴りは蹴りでその転生悪魔の腕を文字通り粉砕する。

 

「ぎゃぁあああああああ!? お、おれの腕がぁあああああ!!!」

 

「意外だなぁ。そりゃ俺が一番悪いけどよ? そいつも結構やらかしてる側だと思うんだけどなー、マジで」

 

 悲鳴を上げる転生悪魔を意にも介さず、無有は二人にそう尋ねる。

 

 一言で言おう、無有の戦闘能力は規格外というほかない。

 

 一見して普通の生身の姿であるにもかかわらず、最上級悪魔でもできないような芸当を平然として見せた。

 

 断言してもい。この状態ですら、無有はナイファーザーの足を引っ張らない程度の戦闘を行うことができるレベルに到達している。

 

 間違いなくリムもニングも勝てない。井草が参戦しても勝ち目はないだろう。それほどまでの絶望的な戦力差が目の前に立ちふさがっている。

 

 それでも、2人は気丈にも鋭い視線を無有に向けていた。

 

「反省も後悔も更生もしてるやつを、ねちねちといじめるつもりはねーんですよ」

 

「当事者ならともかく、第三者として一線は引くのです」

 

 その言葉に、無有はふむふむと頷いて納得の様子を見せる。

 

 其の間にも衛兵や眷属悪魔が無有に襲い掛かるが、しかし無有はそれを見ずに迎撃して返り討ちにする。

 

 そして、はたと気づくと指を立てながらにやりと笑う。

 

「後ナイアルって呼んでくれや。そっちが本名でな」 

「辞世の句はそれでいいのかな?」

 

 井草は光力を剣にしながら、歯を食いしばって無有を、否、ナイアルをにらむ。

 

 それを面白そうに眺めながら、ナイアルはしかし首を振った。

 

「いやいや~。俺も一応、ムートロン先遣艦隊のエースの看板背負ってんでな? 流石に初期段階で討ち死にするわけにゃぁいかねえな」

 

 上級悪魔クラスの魔力砲撃を裏拳で相殺しながら、ナイアルはそういう。

 

 そして、その視線が井草の右側にむけられる。

 

「ツーわけで、そいつは任せたぜ、五十鈴に伊予?」

 

 ―その言葉に、井草は頭の中が一瞬まっさらになった。

 

 生きている可能性はゼロではなかった。

 

 イーツの実験体にされている可能性も、考慮はした。

 

 だが、この展開はあんまりだろう。

 

 隣に視線を向け、その姿を認め、そして手に持っているエボリューションエキスまで認識して、井草は渾身の憎悪を込めてナイアルに叫ぶ。

 

「ナイアルぅぁあああああああああああっっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、そういうわけで悪いけど、悪党させてもらうわね、井草」

 

『ハストゥール』

 

「ごめんね、井草君。ナイアルさんに褒められたいから」

 

『クトゥグア』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、とっさにレセプターイーツになった井草は、暴風と灼熱に飲み込まれて弾き飛ばされた。

 




はい、ムートロンのやばさが出まくりの話でした。

以前、E×Eのラストはキバとか言ったと思いましたが、まさにそんな感じなのです。仮面ライダーキバのラストみたいな感じにする予定です。

やってきたムートロンの艦隊相手に挑む井草たち。俺たちの戦いは新たに始まるぜ!! 的な感じにする予定です。








そして最悪のショック療法、スタート。まさかあの流れで二人が準幹部ポジションなどとは誰も……想定できる余地はあるよね?

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