混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
井草は放課後、速やかに電話をかける。
「……リアスちゃんかい」
『あら、どうしたのかしら、井草』
返事には棘がある。
リアス・グレモリー。駒王学園の二大お姉様と呼ばれる、海外からの留学生。
才色兼備を地で行く少女で、この学園に入って少しでも立っているものなら知らないものはいないレベル。駒王学園のアイドルと言っても過言ではない。
そのリアスは、基本的に誰に対してもいい対応をするはずなのだが、しかし井草と誰もいないところで対話する時だけは棘がある。
当然だ。彼を名義だけとはいえ自分の部活であるオカルト研究部に入れる事すら反対だ。できる事なら学園から追い出したいとも思っている。
それは、井草とリアスの立ち位置が関係していた。
「……上級悪魔リアス・グレモリーに新しい眷属ができたようで何よりだよ」
『あなた達堕天使のおかげね。友人を始末するとは使命に忠実なこと』
皮肉の応酬をしてから、井草は嫌な予感が当たった事に気が付いて、ため息をついた。
井草・ダウンフォールは堕天使である。それも、高位の堕天使と人間のハーフだ。
リアス・グレモリーは悪魔である。それも、名門元72柱グレモリーの次期当主だ。
そして悪魔と堕天使、そして天界率いる教会は、基本的に三つ巴の冷戦状態だ。井草やリアスが生まれる前には泥沼の殺し合いをしていたレベルで仲が悪い。
これに北欧神話体形のアースガルズや、ギリシャ神話体系のオリュンポスなどの各種神話。更に他の宗教迄加えるとさらにややこしい事になるが、ここは割愛する。
この駒王町は、リアス・グレモリーが悪魔の仕事を行う場所であり、日本神話からも神社に部下を住まわせてもいいと取り決めがなされているほどだ。完全にリアスのホームである。
そんなところに井草がいるのは、ひとえにリアスの監視に他ならない。
「グレモリーの次期当主が、冥界ではなく人間界の学園に来るとは、何かあるのではないか?」という邪推から、監視役として派遣されたのだ。
堕天使統括組織、
彼女とその側近の集まりともいえるオカルト研究部に名義貸ししているのも腹立たしい。できる事ならさっさと追い返したいが、それでは上の意向に逆らう事になってしまう。
はっきり言えば、リアスにとって井草は目の上のたん瘤だった。
「悪いんだけど、上からイッセー君に関しての情報を欠片も貰ってないんだ。問い質すにしても情報が必要だから、少し教えてくれないかい?」
確実に、後で面倒ごとを押し付けられるんだなぁと思いながら、井草はしかしそう頼み込む。
直接来るとリアスが意固地になりかねないからこその電話での相談だ。それだけの事をしてでも、井草は今回の件を詳しく知りたかった。
……細かい交友関係まで上には伝えてないとはいえ、駒王学園の生徒をターゲットにするとなれば井草に話が行かないわけがない。それが一番スマートに進めるはずだからだ。
にも関わらず完全スルー。これには井草も立腹だった。
情報を集めて、それを足掛かりとして上に問い詰める。その為の懇願だった。
その覚悟が伝わったのか、リアスはため息をつくと、素直に話してくれた。
たまたまチラシをイッセーが持っていて、強い願いゆえに自ら出た事。
そして、兵士八駒を必要とするだけの価値がある事から、イッセーを甦らせることにした事だ。
悪魔は、戦争で激減した種の数を増やす為に、
これはチェスの駒をモチーフにした物だ。そして、其れを貰った上級悪魔はその資質と主の力量に応じて、転生にかかる駒のコストが変化する。
兵士の駒一個を1として計算されているそれは、実際のチェスと同じだけの価値計算だ。
即ち、騎士と僧侶は3。戦車は5。女王が9。
しかし複数の駒を必要とする事はマレだ。個と人間なら、高位の神器を保有していない限り駒など兵士一つで事足りる。
それが、八駒。
『言い方はあれだけれど、今回堕天使はきちんと仕事をしているわ。黙ってたのも貴方に対する気遣いじゃないかしら』
リアスの言う事ももっともだ。
井草が知る限り、イッセーは異能とは何の関わりもない。彼の両親も、どこにでもいる一般人だ。魔法使いや悪魔祓いなどといった、異形に関わる職業にもついていない。
そんな彼が、そんなレベルの異能の資質を持っていたとして、果たして制御できるか。
「俺如きでも分かるさ。上が暗殺を決行したのも仕方ないのはね」
井草は、どうしようもないといわんばかりの思いを、息とともに吐き出す。
それだけのレベルの異能。それを制御する事は完全な一般人であるイッセーには不可能だ。井草なら指導はある程度できるかもしれないが、おそらく交友関係も洗っているはずだ。不可能だと判断されたのだろう。
そしてそれだけのレベルの異能が暴走すれば、ほぼ確実に周囲にも大きな悪影響が及ぶ。下手をすれば、この地方都市に天変地異が起きるかもしれない。
殺してでも無力化するのは確かに当然だ。堕天使には悪魔の駒のような転生技術もないのだから、当然といえば当然だろう。
だが……。
「それでも、イッセーの心を弄ぶような真似をしたのは納得いかないからね。俺みたいなロクデナシでも、かなり酷いやり方だってのは分かる」
『そんなに酷い事したの?』
「ああ。モテない男に告白して、有頂天にさせてから殺したらしい。……そんな奴、堕天使の名に傷がつく」
吐き捨てた戦の言葉に、リアスも僅かだが電話越しに息を呑んだ。
確かに悪趣味極まりない。
リアスもイッセーの悪評を聞いた事はあるが、しかし最近は井草のチラつかせた餌によって抑えている。
そもそも、覗きの常習犯というのは殺されるほどの罪だろうか。被害にあった当事者ならまだ分かるが、それにしたって殺し方というものがあるだろう。
ましてや相手の心を踏みにじるかのような悪鬼の所業。悪魔であるリアスにとっても正直、苛立つやり方だ。
特に覗きを辞めてからは、友達想いの好漢の側面が見えてきて、学内での評判は上方修正されている事も知っている。
仲間思いで体を張れる男。そういう話も聞いていた。
それが問題点こそあれど、こんな悪辣な方法で殺される。
いい気になるわけがない。
『いいわ。後で資料を作成してあなたの家に送る。その上でしっかり文句を言ってちょうだい』
「ありがとう。で、何か言う事はあるかな?」
『結果的に得したけれど、私の領地でそんな悪趣味な真似をするなって言っておいて頂戴』
その言葉に苦笑し、井草は電話を切った。
「……総督。俺です」
『よぅ、井草。その様子じゃ、もう知ったみたいだな』
一人暮らしのアパートの一室で、井草はしかめっ面でアザゼルと画面越しに対面した。
まさか総督が直々に出てくるとは思わなかったが、こちらとしてはリアス・グレモリーからのメッセンジャーとしての側面もある。遠慮なく言ってしまっても問題ないだろう。
「兵藤一誠の暗殺の件です。いや、暗殺自体は俺なんかでも仕方がないって思いますけど、やり方ってものがあるでしょう」
心底文句を言う他ない。
暗殺自体は仕方がない。上だって無意味に人殺しをしたいわけではないのだから、きちんと仕事をした上でその決定を下すだろう。
だが、あまりにもやり方が残酷すぎる。
いくら覗きの常習犯だった男とは言え、一応の更生はしてるのにこの扱いはあんまりだ。
堕天使の評判を悪化させるような悪辣な所業。これを上が直接指示したというのなら、井草はリアス・グレモリーのところに亡命してもいい。それ位には腹を立てている。
そして、幸か不幸か上が直接たてた殺害計画ではなかったようだ。
事情を聴いたアザゼルの表情が、明らかに不快の感情を示す。誰がどう見ても「嫌な気分です」と分かる表情だ。
そして、アザゼルは少しの間席を外すと、すぐにFAXで資料を送ってきた。
『実働部隊はまだその辺で遊んでるらしい。そいつらに指示出した管理職は俺が説教するから、現地の奴らは俺の名代で説教しといてくれや。査問会だと脅しとけ』
「はいはい。あと、イッセーに謝罪は?」
そちらに関しては期待薄だ。
実際、そっちに関しては手をヒラヒラさせた。
『悪い事はしたが必要な事だからな。ま、お前が個人的に謝る分まで止めやしねえよ。……悪趣味だった分は菓子折りでも持って行ってやれ、金は払ってやる』
「了解しました。俺なんかが行っても意味ないでしょうが、しないよかマシですよね。……では」
そう言って通信を切ると、井草は窓の外を見る。
堕天使の人間離れした視力が、そこにある廃教会を捉えていた。
思った以上に近くにある。どこかに行かれる前に、今から説教をしに行こう。
井草はそう判断すると、すぐに出発する事にした。
リアスたちの監視役であり井草。まあ、魔王の末裔が本来冥界で学校に通っているはずなのに人間界にいると知れば、それなりの監視はついてもおかしくないでしょうと思いまして。
因みに今気づいたけど、自分の作品の主人公、これで三大勢力コンプリートです。