混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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こっからオリジナル要素が少しずつ入ります。

せっかく原作がかなり進んでるんだから、それを生かした改変を入れてみないとね?








あと、感想を促すために更新の予定タイミングを書いてみるという試みをしています。

現段階において書き溜めは150kb以上。大体一話につき9kb強なので、15話ぐらいですね。今はラグナロク編の序盤です。

とりあえず、平日は17時から18時ぐらいに一つ。0時に予約投稿で一つ……といった感じになる予定です。この調子なら一週間ぐらいは大丈夫でしょう。

と、いう感じで露骨に感想と高評価がほしいなーと、ちらっちらっとみてみたり……してます!!



6話

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ディオドラとリアスのレーティングゲーム開始の数時間前。

 

 井草達は、プルガトリオ機関の資料室に来ていた。

 

 ここには教会関係の資料の八割以上のコピーが揃っている。それは教会に入れない者達が殆どのプルガトリオ機関の者達が情報収集に困らないようにする為だ。

 

 そうしなければならないという事に、無情は感じる。聖書の神の死による、システムの不調。それが今に至り悲劇の一環であると思うと、井草も思うところはある。

 

 だが、今はそれどころではない。

 

 レーティングゲーム開始まで後数時間。既にリアス達は冥界に移動している頃合いだろう。

 

 出来る事なら、その前にこの違和感の答えを知りたい。

 

 だが……。

 

「数が、多すぎなんですぜ、これは」

 

 うんざりとした様子で、リムがぼやいた。

 

 今は二手に分かれて行動しているが、しかしこれはかなりきつい。

 

 ……単純に資料が多すぎる。しかも、根拠に乏しい為他に人の力を借りたりするのも困難だ。

 

 正直井草も気分転換をしたい。しかしどうしたものかとも思う。

 

 とりあえず、探しながら世間話でもするしかないのだろう。まあ、それぐらいの気分転換はしてもいいだろう。

 

 そう判断すると、井草はリムと共通の話題がないか考える。

 

 そして、ふと気になる事があった事に気づいた。

 

 間違いなくプライベートに関わるのだが、しかしふと気になってしまう。

 

 そして、井草は長時間の資料探しで判断力が鈍っていた。

 

「……そういえば、リムってなんでプルガトリオ機関に所属しているのさ?」

 

 つい、気になっていた事を聞いてしまった。

 

 プルガトリオ機関。諸事情あり教会においておけない者達を集め、戦力として運用する事で居場所を作る事を目的とした機関。その特性上、任務の質に関係なく暗部組織として公式には認められない。

 

 ニングはそうだろう。先祖返りの悪魔というだけでも、当時の教会には置いておけない。聖書の神のシステムが彼女の存在をスルーするなど前代未聞だ。信仰に悪影響が出ると判断するのも当然だろう。

 

 だが、リムはどうしてなのだろうか?

 

 本当に、ふと気になったのだが―

 

「ああ、私は犯罪組織がセクサロイド目的で作ったデザイナーズチャイルドっつーもんでしてねぇ」

 

 ―想像以上に重い返答が来た。

 

 一瞬で、精神的疲労で麻痺していた精神が正気に戻ってしまった。

 

「……ごめんなさい」

 

 付して詫びたい気持ちになった。

 

 だが、リムは全く意に介さず資料をあさっている。

 

「別にかまやしません。確かに術式的にそういう技術を体に叩き込まれてやすし、定期的にそういう事しねーとホルモンバランスが崩れやすが、元からそういうもんとして生まれてんですから、そういうもんだと納得しちまってますしね」

 

 本当に、リムはなんて事が無いように言い切った。

 

 本当に、リムにとってはなんて事もないのだろう。

 

 生まれた時からそういう存在。そしてそんな環境が当たり前。

 

 だからこそ、リムからすればそれは当たり前でしかないのだろう。

 

 だが―

 

「……リム、あえて言うよ」

 

 これは、誰かが言わなければならない事だろう。

 

 そして、井草はあえてそれを自分が言う事を決めた。

 

 きっと誰もが言えなかった事だろう。だが、誰かがあえて指摘する必要がある事でもある。

 

 そして、リムに恩のある自分がそれを言うのは、ある意味で恩返しだろう。

 

 人によっては恩を仇で返すという形に受け取るのかもしれない。

 

 だが、誰かが言わなければならない事ではある。そして、井草はそれを引き受けたい。それほどまでに、井草はリムに恩を感じている。

 

 だから―

 

「―それは、きっと不幸な事なんだよ」

 

 ―あえて、それを指摘する。

 

「ある種の悪意で産まれさせられる。そのスタートラインは、きっと不幸だ」

 

 万人が、愛情を持って産んでもらえるわけではない。

 

 祝福されない産まれはある。井草もその可能性がある。

 

 だからこそ、言わねばならない。

 

「酷い事を言ってるのは分かってる。だけど、それを当たり前だと思っちゃいけない」

 

 自分が不幸だと理解もできない。それはきっと、とても不幸な事なのだ。

 

 もちろん、今のリムがその環境を気に入っている事も十分あり得る。ましてや、気のいい人達が集まっている駒王学園に転入してきた事は、きっといい経験になる。

 

 だが、その始まりは、きっと不幸なのだ。

 

 不幸なものは、それを自覚しなければいけない。出なければ、そこから這い上がる必要性も自覚できない。

 

「……そっか。私、不幸だったんですかい」

 

 そして、リムはそれを受け入れた。

 

 そこに驚愕はない。絶望もない。

 

 だが、納得はあった。

 

「まあ、道具として生まれて暗部に引き込まれたら、普通不幸ですわな」

 

「ああ、それは―」

 

「でも良かったですぜ」

 

 その言葉に、井草は目を見開いた。

 

 何故、そんな事が言えるのか。

 

 そんな思いを胸に振り返れば、そこにはリムがこちらを慈しむ様に見つめている視線が合った。

 

「だって、少なくとも一人救えちまったわけでしょう?」

 

「……あ………」

 

 確かに、そうだ。

 

 少なくとも、リムと出会っていなければ井草は救われていなかった可能性がある。

 

 自分の不幸を自分の所為だと思い、救われてはいけないとすら思い込んでいた。そんな井草を救うのは、至難の業だっただろう。

 

 たまたま関わっただけの、そんなリムやニングが井草の罪を知ったうえで許してくれたからこそ、井草は前を向く切っ掛けを得る事ができた。

 

 そう、確かにリムの不幸は、井草の復帰のピースになったのだ。

 

「そりゃまあこちとら不幸なんでしょうがね? んなもん気の持ちようですぜ?」

 

 そんな風に、リムはなんて事が無いように言う。

 

 それが、井草にとっては眩しくて―

 

「―リムは強いね」

 

 そう、素直な感想が出た。

 

「ああ、強い。俺は君の強さに救われたんだよ、きっと」

 

 そう、感謝の気持ちすら言葉に出た。

 

 リムならそれを笑ってすましそうだと思ったのだが―

 

「……っ」

 

 何故か、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 

 ……落ち着け井草。そう、井草は自分を叱咤する。

 

 これは違う。これは違うはずだ。勘違いするな、井草・ダウンフォール。

 

 現実にニコポナデポなどありえない。勘違いするな井草。これは違う、なんか違う。もっとこう、惚れるきっかけってものが必要だろう現実には。

 

 だがだとすればこの流れは何なのかと思うが、とにかく井草は自分を律する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして井草達は、とりあえず平静を取り戻すとニング達と合流する。

 

 同じく調べていたニングやイリナと話をして、きっかけを掴みたかった。

 

 運が良ければ、2人が既に調べを付けているかもしれない。其れならそれで好都合だ。

 

 と、思ったのだが―

 

「お、そちらさんが噂のイーツくんかい?」

 

 と、そこにはなんというか、微妙に軽そうな男がいた。

 

 あと、そこそこの年齢の男性と、少年少女。

 

 そして何故か、イリナと親しそうだった。

 

「お、お、おおっ!? こんなところになんで!?」

 

「こんなところなんて言っちゃダメだって。プルガトリオ機関だって立派な教会の組織だろ?」

 

 と、驚愕するリムに、軽そうな男がにこやかに言う。

 

 どうやら、教会側の重要人物らしい。

 

「えっと、どちら様で?」

 

 井草がそう言うと、何故かイリナが胸を張った。

 

「ふふん! なんと、たまたまここに来ていた四代天使のAと、なんとなんとジョーカーと出くわしちゃったのよ!!」

 

 その言葉に、井草も流石に面食らう。

 

 つまり転生天使。

 

 確かトランプを参考にしているとは聞いていた。しかし、まさかAが全員揃ったうえで、ジョーカーまでいるとは思わなかった。

 

「俺はウリエル様のA、ネロ・ライモンディさ!」

 

「ガブリエルさまのA、ミラナ・シャタロヴァです」

 

「ラファエル様のAを務めている、ディートヘルム・ヴァルトゼーミュラだ。よろしく頼む」

 

「あ、これはどうもご丁寧に。神の子を見張る者の井草・ダウンフォールです」

 

 と、丁寧に挨拶を交わす。

 

 仮にも現状アザゼルの直属である井草も、四代天使直属の転生天使と立場的には近しい。今後も関わる事は多いだろう。

 

 となれば、ここで第一印象をしっかりするべきではあるのだが―

 

「……ヤバイ。マジ気後れ」

 

「いやいや、あんまり気にしなくていいよ。和平結んでるしね」

 

 と、ジョーカーらしき青年がにこやかに手をのばして握手を求める。

 

「よろしくね、井草きゅん。俺はジョーカーのデュリオ・ジュズアルドさ」

 

「ど、ども、よろしくです」

 

 心底気後れするが、井草はとりあえず握手に応じる。

 

 と、其れで挨拶も終わり、話は探し物に移る。

 

「でね、皆? この人達なんだけど、心当たりないかしら?」

 

 と、イリナが該当の眷属の写真を見せる。

 

 転生天使達は皆一様に首を捻る。どうやら心当たりはないらしい。

 

「ふむ、だが何故彼女達が気になるのかね?」

 

 ディートヘルムが当然の意見を言う。

 

 確かに色々揉めている悪魔の関係者だ。過去の来歴だけが書かれていないのも気になる。

 

 だが、冷静に考えればそれがどうしたというのだろうか。

 

 まさに当然の意見なのだが、しかしニングは真剣な表情を向けた。

 

「色々と嫌な予感がするのです。なんていうか、片手間に聞いただけな気がするのですが、流れ的に見過ごせないような何かを感じるのです」

 

 ニングの意見に、全員が考え込む。

 

 事情は既に皆が知っている。なので、真剣に気にしてくれている。

 

 なにせセラフが直々に祈りを捧げる許可を出した悪魔である、アーシアが関わっているのだ。天使にまでなった信徒からすれば、少しは気に掛ける対象だろう。

 

 だが、それはそれとして誰も思い出せない。

 

 之ではどうしようもないと思ったその時、井草はふと思った。

 

「……だったら、ちょっと別ベクトルから攻めてみたらどうかな?」

 

「別ベクトル? 例えば?」

 

 ネロがそう聞くと、井草は資料ページをめくりながら答える。

 

 まあ、大した事ではないが気分転換にはなるだろう。

 

「他の眷属の情報だよ。一応記載されてたし、悪魔祓い上がりなら、一戦交えた事も―」

 

 そう言ったその時だった。

 

「……待ってください!」

 

 突然、ミラナが声を上げて、ページを掴む。

 

 そして、いきなりページを開くと、目を見開いた。

 

 覗き込めば、そこにいるのはディオドラの眷属の1人。

 

 名前から判断してロシア系統。だが、それ以外にはあまり詳しく書かれていない。あくまで参考資料程度の内容だ。

 

「あ、ミラナさんは正教会の出身だったわね。……それで、どうしたの?」

 

 イリナの言葉で、井草も少しは理解した。

 

 正教会はロシアの派閥だ。其れなら、心当たりがあるのかもしれないが―

 

「……同期です」

 

 震える声で、ミラナはつぶやいた。

 

 そして、顔を跳ね上げる。

 

「この子、教会から行方不明になった同期のシストラです!!」

 

 ……その言葉に、一同が固まった。

 

 シストラは正教会におけるシスターの呼び名だ。

 

 しかしそんなことはどうでもいい。重要なのはそこではない。

 

 教会の出身のシスターが、悪魔の眷属にいる。問題はそこだ。

 

「待ちたまえ。確かに悪魔の眷属にシストラがいるのは驚きだが、それを言うならリアス・グレモリーの下にいるゼノヴィアとアーシア・アルジェントのケースもあるだろう?」

 

 ディートヘルムが冷静にそう諭すが、しかしその時飛び跳ねるように動いた者がいた。

 

「待つのです! 確かこの辺りに……あった!!」

 

 そしてファイルを取り出すと、即座にページを開く。

 

 そしてそのファイルの中に―

 

「あ! いた!」

 

 井草が思わず声を上げる。

 

 そこには、探していたディオドラの眷属が映っていた。

 

 疑問の一つが解消されるが、しかしそれ以上に不安が勝り始めていた。

 

 ミラナの同期がディオドラの眷属にいた。そして、そこから連鎖反応でニングが思い至ったリストに、ディオドラの眷属がまた一人。

 

「……ニング、このリストは?」

 

 井草は、微妙に震える声で問い質す。

 

 凄まじく嫌な予感がする。

 

 踏み込んではいけないかもしれない。だがしかし、踏み込まなくてはいけないだろう。

 

 そんな嫌な予感は、ニングが無言で示したファイル名で解消される。

 

 ―悪魔が関与したと思われる、教会関係者の行方不明者リスト。

 

「「「「「「「……っ」」」」」」」

 

 ニングを除く全員が息をのみ、そしてすぐに行動に移った。

 

 ディオドラの眷属のファイルと行方不明者のリストをばらし、総当たりで調べる。

 

 結果、そのディオドラの眷属の大半がリストに名を連ねていた。

 

「ちょ、ちょっと! これ……どういうこと!?」

 

「考えてみれば、おかしな事ではない」

 

 イリナが動揺するが、ディートヘルムは比較的冷静だった。

 

 彼はこの中でも最年長。ゆえに、教会と悪魔の戦いで起こった出来事の経験も多い。

 

 故に分かる。これが、かつてはよく起こっていた事を。

 

「若い信徒が信仰だけの人生に疑問を持ち、そこを悪魔がついて眷属にする。……そんなよくある話だ」

 

「だけどよ、旦那! それにしたって多すぎねえか!?」

 

 ネロが反論するが、しかしこれに関しては井草が断言できる。

 

 そう、井草は最初から勘付いていた。

 

 ディオドラ・アスタロトと、無有影雄ことナイアル。その二人を連想するほどに、井草は本能で判断していた。

 

 そう、これは単純な事。

 

「ただの性癖じゃないのかい? ……シスターフェチなんて日本のエロスじゃ定番だよ。イッセー達もその手のエロビデオをちょくちょく見てた」

 

「場を和ますジョークなら、落第点ですぜ、井草」

 

 リムが酷評し、そして舌打ちする。

 

「……こりゃ、アーシアに対する告白も本心とは思えねえですな」

 

 リムの言葉は全員の意見だ。

 

 ディオドラ・アスタロトの性格が、人間の視点では褒められたものでないのは既に分かっている。

 

 そして、この眷属構成から見てディオドラがシスターを眷属にしたがる趣味なのは言うまでもない。

 

 ディオドラはアーシアにけがを治療された。しかし、それが切っ掛けとなってアーシアは教会を追放される事になった。

 

 全ての情報が、嫌な予感を皆に知らせてくる。

 

「……ですが、アーシアさんって人は堕天使に拾われていたと聞きます」

 

「それ、ディオドラの予定通りだったんじゃないかい?」

 

 ミラナが最悪の予想を信じたくなくて言った反論を、デュリオは静かに首を振って否定する。

 

「その時アーシアちゃんって子は死にかけたんだろ? グレモリーの領地だから手を出し損ねただけで、その時にタイミングよく助けるつもりだったんじゃないかな?」

 

 ……非常に有効な手だろう。

 

 教会から追放され、堕天使に利用された哀れな少女。その彼女がまさに命を落とそうとしたその時、助けに入る少年。その少年はかつて少女に救われた者で、彼らは運命の再会を果たす。

 

 小説で定番のシチュエーションだろう。年頃の少女が実際に経験すれば、恋に落ちても不思議ではない。

 

 ……井草は吐き気と殺意を催しながら、即座に通信をアザゼルに繋ぐ。

 

『―なんだ、井草? 俺はちょっと忙しくて―』

 

「アザゼル先生! 直ぐにリアスちゃんとディオドラのレーティングゲームに待ったをかけてください!!」

 

 そう怒鳴りつけてから、井草はこの情報を即座に伝える。

 

 無論、和平を結んだ以上ディオドラを今から処罰する事は難しいだろう。

 

 かつてのそういったもめ事に関する事情を、ある程度は水に流さねばならないのが和平を行うにあたっての前提条件だろう。それはそれで軋轢を生むが、これをある程度受け入れねば、和平など不可能だ。

 

 だがしかし、新たに生むというのなら話は別だろう。

 

 少なくともディオドラには話をしなければいけない。

 

 だが、アザゼルの返事は―

 

『駄目だ。俺の命にかけてもそれはできない』

 

「何でですかっ!?」

 

 信じられない。

 

 確かにアザゼルは非道を許容できるが、外道ではない。

 

 ましてやアーシアは自分の教え子だ。身内に甘いところのあるアザゼルが、見捨てるなどおかしいはずだ。

 

 しかし、アザゼルは諭すように通信を続ける。

 

『井草、そこにいるイリナ達もよく聞け。―ディオドラは禍の団の旧魔王派と繋がっている』

 

 その言葉は、青天の霹靂だった。

 

『あいつらはこのレーティングゲームを利用して、観戦しているゲストごと現魔王関係者を抹殺する気だ。……イッセーがヴァーリに忠告を受けた事と、ディオドラのアガレスとのレーティングゲームでの異様な力から裏が取れた』

 

 確かに、ディオドラのパワーアップはおかしかった。

 

 レーティングゲームにおいて苦戦しながらも、突如強大な力を発揮してアガレス相手に無双。そんな逆転劇で勝利を掴んだのだ。

 

 それにはリアス達も懸念を示していた。いくらなんでも急激に戦闘能力が上昇しすぎていると。

 

 ディオドラは典型的な上級悪魔だ。才能と血統を重視し、努力を軽視する。自然な成長で強大な力を手に入れるがゆえに、特訓してまで急激に強くなろうという意識が薄い悪魔だ。

 

 それが短期間での急激すぎる成長。カテレア・レヴィアタンが使用していたというオーフィスの蛇を連想する事も十分あり得る話だった。

 

『……リアスには悪いとは思っている。最悪、俺の首を物理的に飛ばす事も覚悟の上だ。だが、禍の団の有力派閥である旧魔王派を潰すこのチャンス、逃すわけにはいかなかった』

 

「……ああ、もう!!」

 

 気持ちが痛いほどよく分かるから、怒るに怒れない。

 

 だが、だからといってこのままにはしておけない。

 

「先生! 俺も一枚かませてください!! ……資格がないのは分かっていますが、ディオドラの奴は殴らないと気が済まない!!」

 

 その言葉に、沈黙が僅かに響く。

 

『……言っても聞きそうにねえな。リアス達には言うな。これが飲めるならフィールドに緊急対応班としてお前らを潜り込ませてやる』

 

「当然。知らせる前に終わらせます」

 

 こんな事はアーシアに知らせるわけにはいかないだろう。

 

 世の中には、知らなくていい事もある。特に人生を大きく揺り動かした出来事の裏にあったのは、まさに最悪の真実だ。

 

 アーシアが知る前にカタを付けるべき。これはそういう内容だ。

 

 そして、井草はニング達に振り向くと、頭を下げる。

 

「……力を貸してくれないかな? 流石に、俺一人だと俺が死にそうだ」

 

 そう簡単に死ぬわけにはいかない。それでは伊予と五十鈴を止めれない。

 

 正直心苦しいが、人に頼る事も必要だ。

 

 そして、彼女達はむしろ心外だといわんばかりの表情だった。

 

「行くなっつっても行かせてもらいますぜ?」

 

「こんな話、黙っていられないのですよ」

 

「その通り! アーシアさんの友達として、ディオドラ・アスタロトは裁いてあげるわ!!」

 

 リムの、ニングの、イリナの言葉に井草は自然と微笑んでしまう。

 

 自分は、アーシアは、本当に人に恵まれた。

 

「三人とも、ありがとう!」

 

 そして、八人は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八人は、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「え?」」」」

 

 うち四人が振り返る。

 

 具体的には、井草とリムとニングとイリナが振り返る。

 

 そして、四人を見る。

 

 具体的には、デュリオとネロとディートヘルムとミラナを見る。

 

「……なんでついてくるのです?」

 

 代表して、ニングが聞いてみた。

 

 それに対して、心外だといわんばかりに苦笑しながら、デュリオが告げる。

 

「ちょっとちょっと。今の話を聞いて、天使になった信徒が黙っていられるわけないでしょ? 俺らも力貸すよ」

 

「その通りだ」

 

 と、ディートヘルムがそれに続いた。

 

「それに、こういう事態を転生天使や堕天使、悪魔が共同して阻止すれば、「実際に悪行をしている悪魔の処罰まで妨害されている」悪魔祓い達の不満も抑制できる。誰もが得をする行動だろう」

 

 確かに、今回のディオドラの行動は悪質極まりない。

 

 それでも和平を結んだ以上、其れだけで罰するのは困難だ。

 

 だがしかし。ディオドラがこれだけの事をしでかしてくれたのだ。徹底的に処罰すれば教会側のガス抜きに使う事ができるというものである。

 

「まったくだ! 悪党をぶっ飛ばすのは俺の特技だしな。頼ってくれていいぜ?」

 

「同期を助けたいです。手伝わせてください」

 

 と、ネロもミラナも乗り気だった。

 

 ……井草は一瞬考えこむ。

 

 そして、決意した。

 

「正直な話、俺にディオドラを殴る資格はない。……俺はかつて下衆な行為をしたから、ディオドラに同じ穴の狢となじられれば、反論できない」

 

 大まかにだが、自分の事情を説明する。

 

 何時かは詳しく話す機会があるかもしれない。その時は嫌われるかもしれない。

 

 だが、彼らはあえて静かに受け止めてくれた。

 

 それに感謝し、井草は走りながら頭を下げる。

 

「……それでも頼む、友達を助けるのを手伝ってくれ」

 

 井草の言葉に、デュリオがはっはっはと笑い飛ばす。

 

 そして、にやりと笑った。

 

「勿論さ。これでも俺、前からいい悪魔や堕天使とは仲良くしたかったんだよ。今度美味いもん食べに行こうぜ、井草きゅん」

 

「あ、だったらグレモリー眷属と一緒に打ち上げしやしょうぜ?」

 

 などとリムがのっかり、皆が苦笑した。

 

 そして、全員が転送魔方陣の上に乗る。

 

「……さあ皆! 悪すぎる悪魔をお仕置きしに行くわよ、アーメン!!」

 

 イリナの決意表明と共に、全員が一気に転送された。

 




リム当たりの設定はこんな感じです。

プルガトリオ機関に属する以上、それなりの理由は必要ですからね。いろいろ考えました。

設定のモデルキャラはSF系エロゲの金字塔、バルドシリーズのヒロインの1人からとりました。ロリ巨乳、いいよね……っ

そして順調にフラグを立てる井草。しょせん貴様はエロ漫画業界の登場人物がモデルキャラよ……。さあ、寝取られる側主人公からワープ進化し、ハーレム系主人公へと再起を遂げるのだ!!

因みに現段階ではヒロインはあと三名を予定しております。追加で愛人枠ができるかも。




そして御使いのA達とジョーカーが参戦。ディオドラ大ピンチ! ざまぁ!!

ですが、この手の糞野郎が地味に強くて苦戦するというのは逆転のカタルシスがありますからね。ディオドラもただではやられません。

レーティングゲームでの強襲は、変化球をくわえてきます。こっからが、ハードモードだ!!

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