混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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今回の話は、ある意味で原作と大して変わりないです。


12話

 

 ぼろ雑巾という言葉がまだましと思える状態で、ディオドラは倒れ伏していた。

 

 体中焼け焦げ、全身の骨は二けたは砕け、皮膚が消滅している個所も多数ある。

 

 単純明快に言って再起不能だ。少なくとも、この状態で戦闘を行うなど寝言の一言で片づけられるだろう。

 

 正直全員が本気の本気で放った節がある。殺さない程度の全力で放ったが、しかしそれが十人以上いれば普通に消滅してもおかしくない。

 

 かなり高いEEレベルだったようだ。オーフィスの蛇による強化も生きたらしい。ディオドラはそれなりに強いイーツだったのだろう。

 

 とはいえ、其れゆえにディオドラは激痛にもだえ苦しんでいたが。

 

「……部長、イッセー。殺しても構わないとアザゼル先生も言ったのだから、首をはねてもいいんじゃないか?」

 

「流石にまずい。いろいろ聞き出すことやややこしい政治的問題があるからね」

 

 怒りが冷めやらないゼノヴィアがデュランダルを構えるが、しかし一人いやいやながらディオドラを治療する井草は首を振った。

 

 その井草とて、ディオドラに情がわいたわけではない。

 

 むしろ井草が一番ディオドラを嫌っている。似たようなことをしていたことがあるが故の同族嫌悪もあり、さらに下衆であることから生理的に受け付けない。目の前で仲間の心を蹂躙されたこともあり、殺意だって消えてはいない。

 

 だがしかし、それでも井草は冷静だった。

 

「彼の言う通りだ。総督殿が責任を取るとはいえ、実際に殺せば問題は生まれるだろう。すでに戦闘不能になっている以上、公式に処罰すればそれで十分だ」

 

「そういうこと。禍の団との戦いでややこしいんだから、いらないトラブルやもめ事は避けれるなら避けないと」

 

 ディートヘルムの援護射撃を利用して、井草は皆の説得を試みる。

 

 じっさいアザゼルが責任を取ったとしても、責任を取るということは問題が発生するということだ。そうなるとどうしても手間も負担も生まれる。

 

 それを避けれるのなら、避けた方がいいことは多い。

 

 どちらにしてもディオドラは裏切りの罪で処罰されるのだ。なら、法にのっとって行動した方がスムーズに進むことになるだろう。

 

 万が一にでも老害がこれを利用して堕天使側から利権を貪るなどという真似をしてこられてはたまらない。殺しさえしなければ言い訳は立つのだ。アザゼルの責任問題にはならない。

 

 とはいえ、油断はできないところではある。

 

「……さて、五十鈴と伊予の代わりが派遣される可能性はあるんだよねぇ。それを警戒しないと」

 

「OK。それは俺たちがやっておくよ。君たちはアーシアちゃんと合流しな」

 

 井草の懸念をすぐに理解して、デュリオ達御使いが動く。

 

 彼らにはとても助けてもらった。

 

 少なくとも、デュリオ達がいなければ、ディオドラの眷属と神滅具使いをどうにかすることはできなかっただろう。

 

 それを理解しているリアスは、誰もが見ほれるような微笑を浮かべながら軽く一礼する。

 

「ありがとう。アーシアの救出にも一役買ってくれたみたいだし、お礼を言うわ」

 

「気にすんな! 悪い悪魔をぶっ飛ばすのは俺たちの仕事ってね!!」

 

「同期の子を助け出せたので、よかったです」

 

 ネロとミラナがそう答えながら、先行する。

 

 そしてデュリオも続き、ディートヘルムも飛び立とうとして―

 

「……できれば、合流は早めにした方がいい。絶霧使いは取り逃がしてしまったのでね。彼が作ったと思われるアーシア・アルジェントの拘束具については不明な点が多い」

 

「わかりました。重ね重ねありがとうございます」

 

 ディートヘルムのその言葉に、祐斗が代表して返答する。

 

 そしてディートヘルムも飛び立ち、彼らの背にむかってイッセーが声を張り上げた。

 

「……本当にありがとうございます!! アーシアを助けてくれて、助かりました!!」

 

 心からの本音で、まっすぐな感謝の言葉をイッセーは伝える。

 

 それを笑みを浮かべて受け止めながら、御使いたいは周囲の警戒のために飛び立っていった。

 

 神の子を見張るもののエージェントであるハーフ堕天使、井草・ダウンフォール。

 

 冥界の機体のルーキーたち。リアス・グレモリー眷属。

 

 そして、教会プルガトリオ機関と、天界の御使いであるA達とジョーカー。

 

 三大勢力の和平を象徴するかのような共闘は、またのちの戦いにおいても組まれることになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、イッセー君!!」

 

 そして、すぐに合流できた。

 

 なにせ目立つ拘束具と、それをえっちらおっちら運ぶ信徒二人に天使1人。目立つ。

 

 むしろ今までよく襲われなかったと思いながら、井草たちは合流した。

 

「お、イッセーさんじゃねえですかい。井草も無事っぽくてなによりですなぁ」

 

「まあね。ディオドラはしっかりボコって拘束済みだよ」

 

 リムにそう答えながら、井草はとりあえず苦笑する。

 

 なにせアーシアは拘束されたままだ。そのせいで微妙にシュールである。

 

「イッセーさん!! 井草さんも怪我をしてるじゃないですか! あぅぅ……。なぜか神器が使えないんです」

 

「気にしなくていいのです。仲間を助けるのは普通のことなのですから」

 

 イッセーたちの負傷に気づいたアーシアが、役に立たないことを落ち込んで、ニングがそれを励ました。

 

 そして、ニングは困り顔でイッセー達に視線を向ける。

 

「あの、この拘束具が頑丈で壊れないのです。イッセーさんに任せたいのです」

 

 どうやら、拘束具のまま運び続けていたのは間が抜けていたわけではないらしい。

 

 仮にもプルガトリオ機関の若き精鋭と転生天使のAが壊せないとは、驚くべきか感心するべきか。

 

 しかし、この運びづらい拘束具をそのままにする選択肢はない。さっさと隠れるためにも身軽になった方がいいし、アーシアの精神衛生上にも悪い。というより、目立つ。

 

 ゆえにイッセーが鎧を展開したままだったので引きちぎろうとし―

 

「あれ? ……ビクともしないぞ!?」

 

 ひびどころか、きしむ音すら産まれなかった。

 

 一同はそれに目を見開く。

 

 なり立て手で未熟とは言え、神滅具の禁手で壊れない。

 

 その時点で、ただの拘束具どころの話ではない。異常事態だ。

 

「祐斗くんにゼノヴィアちゃん! とりあえずためしにその辺をダブルアタックでたたいてみて!」

 

「ああ!」

 

 井草の指示にゼノヴィアが頷き、祐斗も即座に聖魔剣を生み出す。

 

 そして、たたきつけられた。

 

 二人の戦闘能力はイッセーにも匹敵する。デュランダルは近接攻撃力なら鎧状態のイッセーにも届く。聖魔剣の木場祐斗は、まず間違いなく赤龍帝のイッセーと並び称されるレベルの実力者だ。

 

 だが、傷一つつかなかった。

 

「嘘でしょ? イッセーにゼノヴィアに祐斗の三人でも壊せないだなんて!?」

 

 リアスが目を見開くのも当然だ。

 

 そして、井草はすぐに反応して行動する。

 

 事情を知っているだろう者をすぐ近くに連れて生きている。彼は今回の主犯の一人といってもいい立場で、拘束具に拘束するところも見ていたはずだ。

 

 そもそも、この作戦が読まれている可能性は予期されている。それでも強行した以上、旧魔王派も勝算の一つぐらいは持っているはずだ。わざわざアーシアの誘拐というディオドラの趣味を優先したなんて理由ではないだろう。

 

 つまり、アーシアはピースの一つかもしれない。

 

 拘束具の異常性からそれに思い至り、井草は素早くディオドラをつかみあげる。

 

「……死にたくなければすぐに説明するんだ」

 

 その行動に、ディオドラは震える気力すら無くしたのか、淡々と答える。

 

「その装置は、神滅具(ロンギヌス)の一つである絶霧(ディメンション・ロスト)の禁手で作られた結界装置だよ。所有者の望む結界装置を霧の中から作り出す、創造系の亜種禁手、霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)。その装置は特別製で、機能の関係上使い捨てだけど、逆に一度使わないと停止できないようになっている」

 

 その言葉に、井草たちの嫌な予感は加速度的に膨らんでいく。

 

 神滅具の禁手を使って、わざわざアーシアのための拘束具を作る。其れも特別製の結界装置でだ。

 

 ディオドラの趣味に、態々英雄派が付き合ったとも思えない。というより、戦場の中でそんなことをする意味もない。

 

 間違いなく、アーシアの拘束具は個の襲撃のピースの一つだ。

 

「結界装置の発動条件と能力、そして効果範囲は? ……言え」

 

 祐斗が危機感に突き動かされ、聖魔剣を突き付けてさらにうながす。

 

 そして、ディオドラはようやくわずかに震えながら、すぐに口を割った。

 

「この場合は、僕が倒されたから発動したんだ。の、能力は、枷にはめられたアーシアの能力を増幅させて反転(リバース)させる」

 

 その言葉に、井草たちは目を見開いた。

 

「反転!? それって神の子を見張るもの(うち)が研究してた!?」

 

「っていうか、それって確か会長とのレーティングゲームで会長たちが使ってた奴じゃねえか!?」

 

 シトリーとのレーティングゲームを伝聞でしか聞いていない井草の叫びに、イッセーの事情を知っているが故のさらに焦った声が重なる。

 

 井草が気絶している間に行われた、リアスとソーナのレーティングゲーム。

 

 その試合のおいて、ソーナたちは神の子を見張るものから提供された反転の技術を適格に運用した。

 

 もともと相反する属性を反転させる能力だが、それを併用することによって、聖剣のオーラを反転させて悪魔が受け止めれるようにしたり、治癒の力であるフェニックスの涙を反転させて攻撃に転用するなどの運用を見せた。

 

 そして、ソーナ達が最も反転を生かしたのは、アーシアを倒した時だ。

 

 アーシアが回復のオーラを広範囲に展開したそのタイミングで、ソーナの僧侶の一人である花戒桃がその範囲に飛び込んで反転を使用。回復のオーラを反転させることでアーシアと相打ちになったのだ。

 

 お互いの戦略的価値からみて、戦術的勝利といってもいい戦いだったが、それはまた別の話。今回重要なのは、そこではない。

 

「効果範囲は、このフィールド全体と観覧席だよ」

 

 アーシアの癒しの力は非常に強大。致命傷寸前のけがすら短時間で治すことができる。

 

 そんなものが反転し、しかもディオドラの言う通りの効果範囲だとすれば―

 

「……いま戦っている各勢力のトップが、根こそぎやられるかもしれない」

 

 その可能性を言葉にした祐斗はもちろん、全員の表情が青ざめる。

 

 是こそが、旧魔王派の作戦の根幹。

 

 絶大な治癒の力を反転させることによる、重鎮の全滅こそが本命。

 

「―オイ、ドライグ何とかならないのかよ!? おまえだって神滅具だろ!?」

 

 イッセーが焦りながら、籠手に封印されているドライグをたきつけようとするが、ドライグはあきらめムードだった。

 

『無理だ。赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》は確かに神滅具だが、絶霧はその上だ。禁手同士でも一歩劣るだろう。覚えておいてくれ、俺より格上の神滅具も存在するんだよ』

 

「くそ! こうなったら波状攻撃でやるしかない!!」

 

 井草はディオドラを投げ捨てると、素早くレセプターイーツに変身。そして拳を叩き込む。

 

 しかし、イッセー達と共に攻撃を叩き込んでも、まったくもって傷一つつかなかった。

 

 そして、其の間に結界装置は駆動し始めているのか、起動音をはなつ。それが全員の焦りを増大化させる。

 

 このままでは、自分たちはもちろん首脳陣も全滅。

 

 その可能性が脳裏をよぎったとき、アーシアの声が届いた。

 

「イッセーさん。いっそ私を―」

 

「ふざけんな!! 次そんなこと言ったら、アーシアでも許さねえぞ!!」

 

 イッセーは怒鳴りながら結界装置を攻撃する。

 

 だが、今だかすり傷一つつかない。

 

「イッセーさん! このままでは先生もミカエルさまも……。そんなことになるぐらいなら―」

 

「それでもだめだ! 俺は二度とアーシアに悲しい思いをさせないって決めた。絶対に助けて見せるから!! 一緒に変えるんだ。父さんと母さんがアーシアを取るんだから―」

 

 イッセーはアーシアを諭しながら、結界装置を壊そうと試みる。

 

「……だけど、時間がない」

 

「そうで、やがりますね」

 

 結界装置の発動は目前と思われた。

 

 井草も、リムも、最悪の手段を考慮し始める。

 

「井草さん!? リムも!! そんなこと―」

 

「……ですが、このままでは間に合わないのです。なにか突破口が無ければ、全員死んでしまうのですよ……っ」

 

 イッセーを諭すように、ニングも歯を食いしばりながらそう告げる。

 

 そう、現実問題時間がない。

 

 ここで全員全滅するか、アーシアを見捨てて残り全員が生き残るか。

 

 その究極の選択肢を皆が突き付けられる。

 

「ああもう! 伊予と五十鈴の件でもきついのに、ここでこれは心が折れそうだよ……っ!」

 

「井草さん、ここは暗部の私達がするのです」

 

「いや、これは年長者の俺がするべきだ……っ」

 

「いや、私は井草と同じで二十歳ですからねぇ。ここは私が汚れるしか―」

 

 井草にニングにリムといった、汚れ仕事の必要性を知っている者たちは、リアスたちの代わりに泥をかぶろうとすらしている。

 

 そして、その言葉がイッセーに天啓をあたえた。

 

「………あ」

 

 そう、五十鈴だ。

 

 その言葉で、イッセーは最後の可能性に思いいたった。具体的には、全裸を思い浮かべながら。

 

 この装置は、アーシアを拘束している。拘束しているということは、アーシアに密着している。すなわち、身に着けている者の一部である。

 

 ……とてつもない拡大解釈で考えれば、()()()()()()()()()()とも考えられないこともない。

 

「ドライグ、お前を信じるぞ!!」

 

『相棒? 嫌な予感がするのだが―』

 

「アーシア、先に言うけど御免!!」

 

「え?」

 

 すさまじく嫌な予感を周囲に覚えさせながら、イッセーは渾身の力を込めた。

 

 そう、これを衣服の一部と仮定することができるのなら、絶大な効果を発揮する力がある。

 

 それだけでは難しいだろう。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だけでも難しいだろう。

 

 だが、それが二つそろえばどうなるか。

 

「高まれ、俺の性欲、俺の煩悩!! 洋服崩壊(ドレス・ブレイク)禁手(バランス・ブレイカー)ブーストバージョン!!」

 

 そして、その絶大な力が結界装置と拮抗する。

 

 一瞬だが、拮抗した力は結界装置が押し返そうとするが、しかしイッセーは負けなかった。

 

「いけ、俺の煩悩と神器(セイクリッド・ギア)!! アーシアは死なせない! アザゼル先生たちも死なせない!! そして―」

 

 そう、負けられない理由はいくつもある。

 

 それがある以上―

 

「―井草さんだろうがリムだろうがニングだろうが、俺の仲間にアーシアを殺させて溜まるものかぁああああああ!!!」

 

 ―不可能を可能にするぐらい、やってのけねばならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、結界装置はアーシアの衣服ごと粉々に分解。

 

 慌てて顔をそむける祐斗に、対応が遅れたギャスパーの自分の腹部で隠しながら背を向く井草。

 

 そしてイッセーは、歓喜の鼻血を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろと題無しである。

 




汚れ仕事の経験もあるリムとニング、そしてそういう現実を知っている井草は覚悟完了しかけてたので、実に危ないようでいて、大局的な最悪の事態はどちらにしても回避できた状況。

そしてそれゆえにこそ、イッセーはさらに奮起。こう言うところが自然に想像できるのが、イッセーのいいところです。熱血系主人公の鏡ですね♪

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