混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
結局、井草は押し切られてしまった。
買い物に巻き込まれた井草・ダウンフォール。そして、よりにもよってリムに送り出されてしまった。
戸惑う井草に、服のコーディネイトなどを手伝い、そして送り出した。
その過程で、アドバイスまでしてくれている。
『ニングは暗部の仕事があまり好きじゃないんでさぁ。仕事から離れられる休暇が大好きなんで、しっかり楽しませることですぜ、井草』
……そんなことを言われたら、できる限り頑張るしかない。
元より、ニングが暗部の仕事に向いていないのはわかっていた。
もとよりあの性分である。暗部の仕事というのはストレスがたまるだろう。
だが、彼女は自棄を起こしたり精神を病むようなタイプでもなかった。それは褒められるべきことだ。
しかし同時に、それが彼女にとって本当に幸福だったのかはわからない。
結局は、つらく悲しい道のりをすすんでいるようなものなのだ。結果的にそれが正しい道に近かったとしても、当人が苦しいだけならば、それはきっと悲しいのだ。
井草のように自罰的な道を歩むつもりだったのなら構わない。だが、ニングは井草がその道を進むことを止めてくれた優しい少女だ。そんな道は似合わない。
アーシアの時だってそうだった。任務を考慮するのなら、強引にでもアーシアを確保するべきなのだ。それが無理でも、悪魔のもとに悪魔すら治療する神器の持ち主を置いておくのは問題だろう。和平前の状況では処罰を受けてもおかしくない。
それでも、ニングはそれがアーシアのためになると思ったのだ。リムもそうだったが、彼女はニングの説得を受けて悪魔と堕天使を同時に敵に回すことを避けた一面がある。
……リムが先日の一件でダメージを受けたのは、案外そこにも要因があるのかもしれない。まあそれは良い。
そういうことならば、ストレス発散に協力することにやぶさかではないのだが―
「これ、誘われてるのかなぁ」
などという予感を、井草は感じる。
リムは、井草に対して〇フレ以上の関係になることを避けている節がある。
そして、ニングとのデートに助力している。
ニングは、リムが井草と〇〇レになったことでリムとちょっと揉めていたことがある。
そして、イリナに買い物に付き合うをデート扱いされて赤面した。
ここから導き出せる答えがある。
つまり、ニングはリムと井草がそうなる前から井草に恋心を持っていた。そして、それを知っているリムが遠慮している。
リムが井草を性的に誘ったのは、リムの事情からある程度見逃されると思ったからか。もしくは、いっぱいいっぱいでその余裕がなかったからか。果てはその両方か。
リムとニングはパートナーとして行動している。そういう意味でも、お互いがお互いに一定の信愛を抱いているのだろう。
そのリムの期待に応えるべきか。
だが、それはすなわちリムに対する今の想いを裏切ることではないだろうか。
リムに対する想いを貫くべきか。
いや、そもそもそれを言うなら少し手順が違うだけで、ニングも条件は同じである。
そうではない。そもそも伊予と五十鈴のことはどうするつもりなのだ。
などと思考が煮詰まり始めていく。
どうしたもんかと思ったその時だ。
「あ、井草さん……」
そのニングの声に、井草は飛び跳ねるように振り返る。
そこには、意外とシックなワンピースに身を包んだニングがいた。
思わず五秒ほど見とれた井草は悪くない。
男とは、可愛い美少女に見とれてしまう哀れな性を持っているのだ。それが好意を持っている少女ならなおさらである。
「ごめんなさいなのです。誘ったのは私なのに、待たせてしまったようなのです」
双申し訳なさそうにするニングは、どうも井草が待たされたことに思うところがあると思ったらしい。
直ぐに誤解を解かねばならない。そも、井草が早く来ただけなのでそれは違うのだ。
「ニング、一つ覚えてほしいことがある」
井草は、ニングの肩に手を置いて―
「男は! 可愛い女の子とのデートで! 「いや、俺も今来たところだよ」というために何十分も前に待ちたがる生き物だから!!」
―緊張していたのか、つい大声で言ってしまった。
……当然のことだが、周囲の人々の注目を集めてしまう。
完全にやらかした。悪目立ちだ。
もしクラスメイトに見られたら、明日からニングが騒がれることになる。
井草自身はどうでもいい。ニングやリムたちからは何か言われるかもしれないが、前向きになったとはいえかつてやらかしたという事実まで無視できるわけではないのだから。
だが、ニングが悪目立ちしたら、それはちょっと心苦しい。
それが心配でどうしたものかと思いながら、ニングの方を向きなおすと―
「……デート? デートって、思ってくれていたのですね?」
そう、はにかみながら顔を赤らめてくれていた。
これは、明らかに辺りである。
ニング・プルガトリオは、井草・ダウンフォールに、L・O・V・E、LOVEしている。
しちゃっているのである。
「……い、行こうか? 何を買うんだっけ?」
「あ、はい。修学旅行に備えて、実用性重視だった寝間着などを新調したいのです」
想像以上にハードな買い物だった。
これは確定事項である。どう考えてもニングは井草に恋愛的な好意を抱いている。
同性のリムや、アーシア達教会トリオではない。異性である井草に寝間着の新調で付き合いを求めるということは、高確率でそういうことだ。
しかもデート扱いされて喜ぶなど、完璧にそうではないか。
「が、ががが頑張るよ! じゃ、じゃあいこうかかかかかかかな!?」
「……はいなのですっ!」
すごいどもってしまった井草だが、しかしニングはうれしそうなのでいいことにする。
そして、買い物も終了した。
途中で食事にも言った。ニングに配慮してヨーロッパ料理にするつもりだったのだが、ニングが興味があるということで日本料理になった。
「日本料理、気に入ったのかい?」
「はいなのです。イッセーさんのお母さんが作る料理は、どれもおいしくて大好きなのです」
そういわれると、イッセーの母も喜ぶことだろう。あとでそれとなく伝えておこうと井草は思った。
「そういえば、井草さんは日本生まれの日本育ちときいたのです。日本料理も好きなのですか?」
と、聞かれるが、実際その通りだ。
日本生まれでも日本育ちでも日本食が好物だとは限らない。逆に外国生まれの外国育ちでも日本食が気に入るものもいるだろう
とは言え、井草の大好物は日本食だ。それも、日本人でも敬遠するものが大好物である。
「俺は癖の強い日本食が好みなんだ。日本人でも苦手な人が多くてね」
「……納豆とかいう発酵食なのですか?」
ニングが真っ先に思いつくぐらい、納豆は日本の食事というイメージがあるらしい。
しかし違う。もっとマイナーである。
「鮒ずしだよ。鮒っていう淡水魚の発酵食品」
「……ヨーロッパで言うシュールストレミングみたいな感じなのですか?」
流石にそこまでひどくないと思いたい。シュールストレミングを試す度胸はないので言い切れないが。
「結構においがきついから、納豆より人を選ぶかな? あ、でもウォッシュタイプとかいうチーズに近いにおいらしいよ?」
「あれは日本人受けはしなさそうなのです。井草さんはいわゆる通なのですね」
そういわれると、なんだか食にこだわりのある美食家みたいな気がする。
「単純に味が気に入ってただけだよ。あと、先生がワルノリして日本酒まで持ち出してきたときに相性がよかったからかな?」
と、そこまで言って、井草は苦笑する。
「そういえば、ここ数年食べてなかった。今度こっそり食べに行くかな」
「そうなのです。いったいいつから?」
そういわれると困るが、嘘を言うのも気が引ける。
なので、ムードを阻害するとは思ったが素直に言うことにする。
「……大体、四年ぐらいさ」
「………井草さん」
やはり、悲しげな顔をされてしまった。
実際、食べる気にはなれなかった。二十歳になったときに少し思ったこともあるが、結局その気にはなれなかったものだ。
大好物を食べる資格を、井草は自分にあると思えなかった。それほどまでに、井草は罪深いことをしたと自分を苛んでいた。
だが、それももうやめるべきかもしれない。
ニングは井草の罪を許してくれた。十分すぎるほどに償ったといってくれた。リムも、ピスも、アザゼルも、イッセーも、皆が井草を認めてくれた。
なら、井草はそれに恥じない自分でいなければならないだろう。
井草自身、そんな自分になりたいと思っている。皆も、そんな井草でいてほしいと思うだろう。
過去の罪は忘れない。其れで人が離れていくことも覚悟する。
だがしかし、それだけで終わることだけは、もう選ばない。
「今度、食べに行くよ。さすがに人には勧めないけど、お土産に何か他のものを買って帰ることにするさ」
だから、井草はそういうことにする。
まだ抵抗はある。胸の痛みは確かにある。そして、伊予と五十鈴のあの変わり果てた姿を思い出せば、そんなことをしていていいのかとも思いたくなる。
だが、井草は自分を愛することをもう一度したいと思う。その資格があるといってくれた、皆の期待にもこたえたい。
事実、その言葉にニングは顔をほころばせた。
「それが、いいのですよ」
その言葉に井草も頷くと、話をほかの方向に進めようと思う。
「だけどまあ、ニングも大変だよね? 悪魔の血が先祖返りしたせいで、プルガトリオ機関なんて向いてないところに転がり込む羽目になるなんてさ」
「確かにそうなのです。でも、ヤーロウさんもリムもいい人なので助かっているのですよ」
そう告げるニングは、ニコニコ笑顔だった。
だからだろう、きっとニングは、いい親に育てられたのではないかとも思う。
もしかすると親の記憶が無くて孤児院育ちなのかもしれないが、しかしそれでもいい孤児院だったのではないだろうかとも思う。
だから、ふときいてみた。
「そういえばさ、ニングのお父さんとお母さんって、どんな人だったのかな?」
本当に、流れでなんとなくだった。
怒られそうになったら怒られそうになったで、井草はすぐに謝るつもりだった。
だったのだが―
「そ、それは……っ」
―なぜか、ニングは息を詰まらせた。
顔色も悪い。というより、明らかに動揺している。
何かを思い出すようにしながら、しかしそれが苦痛になっているかのような、そんな反応だった。
「―ゴメン。俺も覚えてないのに聞いたのは失礼だったね」
「い、いえ。事故死したけど、いい人たち……だったと聞いているのです」
謝る井草にそういうニングだが、どこか他人事のような雰囲気がある。
どうやら、ニングにとって両親との思い出は薄いものらしい。あるいは、井草のように物心がつく前に死別したか。
これは話を変えた方がよさそうだ。それも、できる限りすぐに。
「そ、そうだ! そういえばメモを見ながら歩いていたみたいだけど、あとは何処に行くのかな!?」
すさまじく情けないが、とりあえず話を逸らすことを井草は考える。
この空気はダメだ。事実上のデートの真っ最中に、それはダメだ。
それはニングも察してくれたのか、メモ帳を見せながらニングも慌てて笑顔を作る。
「ハイなのです。リムが、帰る前にここによるべきだって言ってくれた……の……で、す……?」
そのメモ帳を見た。
住所はすぐ近くだった。というか、隣だった。
そして、井草とニングはそれを見る。
というより、このあたりに来た時点で気づくべきだった。
ラブホテルだった。
「ニング」
「はいなのです」
「帰ったら、リムを怒ろう」
「当然なのです。ジャパニーズセイザなのです」
余計な気をまわしすぎである。そもそも、なんでリムが井草ですら知らないラブホテル街の場所を知っているのか。というよりおすすめの場所なんてものまで把握しているのか。
いろいろと問い詰めねばならないと真剣に判断しながら、井草もニングもこの状況をどうやって変えるかを考え―
「朱乃、これはどういうことだ……?」
などという、井草にとって聞き覚えのある声を聞いた。
井草は耳を疑った。
なんでここに彼がいるのか。なんで朱乃を叱責する内容なのか。っていうかこの状況を説明することが自分にできるのか。
どうせアザゼルが井草がデートしているうんぬんは言っているはずだ。それがラブホテル街にいるなどと知られれば、想像する展開などひとつだ。
間違いなく怒られる。
そして、そこまで至って井草も勘付いた。
朱乃はイッセーとデート中である。そして、イッセーに焦がれる少女たちは、誰もかれもアプローチがちょっとずれている。そしてイッセーは意外とその辺はしっかりとしている。
どさくさに紛れて朱乃がホテルに連れ込もうとしているところを、目撃してしまったのだろう。
「……やっば! イッセー君があぶない!!」
「へ!? わ、わかったのです!!」
井草が思わず叫ぶと、ニングが慌てて魔剣を生み出しながら駆け出した。
その瞬間、井草は失敗したことを悟る。
今の発言では、イッセーがピンチだということしかわからない。しかも割りと命の危険を察したせいで、緊迫感が強すぎた。
ニングは勘違いしている。間違いなく、イッセーや朱乃が神の子を見張るものが知っている危険人物に絡まれていると思っている。
まずい。具体的にはニングがまずい。
彼は神クラスとも渡り合えるだろう傑物。三大勢力でも最強クラスの実力者だ。うっかり攻撃をはなってニングが死んだという可能性も否定しきれない。
「待って待って待ってニング待ってぇええええええ!!」
慌てて追いかけて角を曲がれば、そこには思った通りの光景が広がっていた。
明らかにラブホテルに近い位置にいる朱乃と、その近くにいるイッセー。そしてガタイのいいよく知る大男。
大男は朱乃の腕をつかんでおり、勝つが隊がいいうえに強面なので、勘違いを促しやすい。
そして、当然のことだが、ニングは魔剣を振るって大男に切りかかった。其れも敵意満々でだ。
それに対して、男は雷光を纏った右腕で迎撃を行う。
突然の事態に手加減を忘れている。かなり本気モードだ。
聖魔剣すら打倒したコカビエルより格上の存在である彼の一撃だ。魔剣創造であるニングの魔剣では受け止め切れない。
「ストッ―」
ダメもとで停止を呼びかけようとしたその瞬間だった。
その雷光を切り裂き、斬撃が男性の腕を割と深めに切り裂いた。
「「「「なっ!?」」」」
イッセー以外のその場にいた全員、朱乃と男性、そして近くにいた老人と女性が驚いた。
と、いうか老人と女性はどういう組み合わせだろう。愛人関係か売春だろうか。
……などと現実逃避をしている場合では断じてなかった。
ニングは再び攻撃態勢を取り、イッセーも警戒態勢を強めている。
男性も男性で、脅威度を上方修正して、全身から雷光をはなち始める。
かろうじて、町中であることを考慮して誰もが全力を出しづらいといった状態。それがかろうじて均衡状態を作っていた。
そして、そのチャンスを逃さず井草は飛び込んで―
「すいません俺のミスです!!」
―ニングをかばうようにして、男性に向かって土下座を敢行した。
緊張感が微妙に霧散する。
そして何より、井草の対応でニングも男性も不幸な行き違いに気づいたようだ。
「……井草か。と、いうことは彼女は君の知り合いかね?」
「そうなんです! あなたの声が聞こえて「あ、これイッセーが勘違いで死ぬ」と思って慌てたせいで、敵襲だと勘違いさせてしまったんです!! 本当にごめんなさい!!」
男性には事情が分かったようで何よりだ。
そして、井草が説明台詞を行ったことで、ニングも勘違いを確信してくれたらしい。
慌てて魔剣を消すと、ニングも土下座を敢行する。
「ご、ごめんなさいなのです!!」
「……いや、かまわない。朱乃を大事に思ってくれていたからだろう。感謝する」
彼が悪人でなくて助かった。と、いうよりかなりの善人で助かった。
それにほっとすると、井草とニングは元凶を怒ることにする。
「朱乃ちゃん?」
「朱乃さん?」
当然、イッセーではなく朱乃だった。
当たり前のことだが分かっている。
兵藤一誠という男をよく知っているのなら、誰もがそう認識するだろう。
兵藤邸で行われるアプローチ合戦を見れば、誰もがそう認識するだろう。
「「イッセー(さん)をラブホテルに連れ込まない!」」
「ご、ごめんなさい……」
状況がややこしくなった自覚はあるのか、朱乃も素直に謝っていた。
そして、男性はショックを受けて崩れ落ちる。
「朱璃……。朱乃は、朱乃は……ふしだらな娘になってしまった……っ」
「いや、
崩れ落ちる男性に、井草は残酷なことを告げる。
神の子を見張るものの重鎮達から、目の前の男性も大概あれであると聞いている。母親の方も結構な人だったらしいとも聞いている。仲良くあれだったと聞いている。
なら、娘の朱乃が男をホテルに連れ込んでもおかしくないだろう。
血はきちんとつながっている。井草からするとそういうほかない。
しかし納得できなかったのだろう。男性は井草に詰め寄った。
「あ、朱璃はそんなふしだらではない! 朱乃だって、これは何かの間違いだ!! 娘はそんなみだらな子じゃない!!」
「いや、言いにくいんですけどね? 兵藤邸でイッセーは女性にエロエロアプローチされまくりです。現実見てください」
井草はそうはっきり言って首を振るが、しかし問題はそこではない。
とりあえず、いまだ混乱しているイッセーに説明をするのが先決だろう。
「あ、あの、井草さん? そ、その人、朱乃さんのことを娘って……」
そのイッセーの反応に同情しながら、井草はとりあえず紹介することにする。
「イッセー、ニング。こちらは
当初からの予定もあり、ニングを掘り下げることになりました。あと通な趣味の井草だったり。……さらりと未成年飲酒の経験(四年前の井草は十六歳)をしさしているのはご愛敬www
過去に対する不自然な反応や、魔剣創造とは思えぬほどの優れた性能の魔剣など、それなりに不穏な伏線を張ることに成功したと自負しております。