混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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オーディンが来てからもトレーニングを欠かさない努力家ぶりが、グレモリー眷属のいいところです。


6話

 

 イッセーたちがおっぱいドラゴンのイベントで冥界に出張している間、井草は静かにトレーニングをしていた。

 

 ……冥界、それも悪魔側はいろいろ大変だ。

 

 王の駒を使用する大魔王派と、それと連携する禍の団。さらにムートロンによる下位型のイーツによる、世界各地での犯罪の多発。

 

 今冥界には、明かりが必要だ。

 

 その一つが、乳龍帝おっぱいドラゴン。そして、小競り合いで勝利しているという事実。

 

 この大問題は結果として、何人かの不遇な者たちに光明を与えてくれていた。

 

 一人はソーナ・シトリー。

 

 彼女の誰でも通えるレーティングゲームという夢は、其のままでは上役たちが妨害をしてくるだろう。それぐらいには、上役たちにとって嫌なものである。

 

 だが、そうも言っていられない。

 

 一気に減少した新魔王派の悪魔。その悪魔の勢力を盛り返すには、有望な実力者を増やすことが必要不可欠だ。

 

 実践訓練としても使えるレーティングゲーム。そして、それを運用する指揮官としての王。さらには少数精鋭の実力者となる眷属悪魔。

 

 それらを少しでも多く用意しなければならない。そして、血筋を重視する旧家からすれば、これ以上貴族が戦死することはできれば避けたい。

 

 必然的に、使い捨てにしても困らない下賤な民草を強化しするしかない。そういう結論になるのは、すぐだった。

 

 結果、軍学校としての性質が強くなるが、レーティングゲームの勉強もできる学園の設立は必要不可欠と判断。ソーナの夢は、多少不本意ではあるがかなえやすくなった。

 

 また、その過程として実力者が優遇されているのも事実である。

 

 とくに貴族ではあるが、諸事情あって冷遇されていたものは、眷属悪魔込みで即戦力となっていた。

 

 むろん、若手悪魔の中でも個人戦力では最強のサイラオーグは取り立てられている。

 

 次男であるマグダレンが、大魔王派についたバアル家のものに担ぎ出されたこともあって、一時危うかったバアル家次期当主の座も回復したのだ。さらに旧家たちは、貴族たちを矢面に立たせないため、彼を指導者とした「バアル義勇軍」を設立しようなどといっている。

 

 之も裏の意味として、サイラオーグのシンパを危険な戦場に送り込んで減らすのがもう一つの目的なのだろう。だが、同時にサーゼクスたちの尽力で勲功としての昇格が認められてもいる。

 

 ビルデによる冥界のクーデターは、現魔王派にも大きな変革を生み出そうとしていた。

 

 それらの情勢に対応するには、井草もまた強くならねばならない。

 

 強くならねば、ナイアルを倒せない。

 

 強くならねば、伊予と五十鈴を止めることができない。

 

 そしてさらに強くならねば、2人を救うことなど―

 

「っ!?」

 

 その時、足元がぐらついて勢いよく転んでいしまった。

 

 とっさに受け身を取るとするが、しかしバランスを崩してブロック塀に激突してしまう。

 

「……痛っ」

 

 額に手を当てながら、井草は視界がにじむのを感じる。

 

 ……救えるのか、本当に。

 

 そんな疑念が、井草に浮かぶ。

 

 悪を自任し、悪であろうとし、井草を意図的になぶる五十鈴。

 

 ナイアルに心酔し、刺激を愛し、井草を無意識になぶる伊予。

 

 二人とも、致命的に変わってしまっている。少なくとも、一首の邪悪といってもいい存在になってしまっている。

 

 それを、改心させることが本当にできるのか。よしんばできたとして、それが二人のためになるのか。

 

 もしまともになったとしても、井草が知る二人は、かつてしてきたことを受け止めることができるのだろうか。

 

 それよりも、一思いに殺してやった方が彼女達のためになるのではないか―

 

「………っ!!」

 

 そんな想像をしてしまい、井草は全力で駆け出した。

 

 わかっている。それしか手がないのなら、殺す覚悟はある。そのつもりだった。

 

 だが、やはり井草は弱い。ふとしたことで最悪の想像がよぎり、心が軋む。

 

 走りながら、過去を思い出す。

 

 悪を自任する五十鈴は、井草の面倒をよく見て、いじめられていた時はいじめっ子に殴り掛かってきてくれた。

 

 狂気に満ちていた伊予は、心優しく、井草と五十鈴の喧嘩を苦笑しながらなだめてくれていた。

 

 それが、今ではあの様だ。

 

 なにより悪いのはナイアルだ。それは、断言できる。

 

 だが、悪の素質を介抱してしまった二人は、もう井草の幼馴染といえるのか。

 

 その感情に翻弄されながら、井草は兵藤邸へと戻る。

 

 そしてドアを開けると、そこにリムがいた。

 

 散歩から帰ってきたところらしい。ちょうど靴を脱いで、スリッパに履き替えているところだった。

 

「ちょ、どうしたんですかい!? なにがありやした!?」

 

 井草の様子を見て、ぎょっとなって心配してくれるリム。

 

 井草は、そんなリムを抱きしめる。

 

「……今夜は、一人になりたくない……っ」

 

 こんなことを頼めるのは、リムしか居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間ほどして、ようやく井草は収まった。

 

 そして、そんな井草に抱きしめられながら、全裸のリムが苦笑する。

 

「……突発的に不安になっちまったってわけですかい。ま、そういうこともありますわな」

 

「なんか、ゴメン」

 

 正直本当に恥ずかしい。

 

 昔の女がらみで不安に駆られて、今の女友達に性交を求めるなど、最低だ。

 

 自己嫌悪がぶり返しそうになる井草に、リムは微笑むとその体を抱きしめる。

 

 小ぶりな体は井草を包み込めないが、それでも井草の心は包み込まれた。

 

「ま、私は話に聞いたあれにはドンビキっすけど、井草にとってはいろんないい思い出もあったんでしょうなぁ」

 

 その言葉に、井草は無言で頷く。

 

 その背中をぽんぽんとたたきながら、リムは井草をあやす。

 

 リムもまた、伊予と五十鈴の狂気を直接目にせずすんだ側だ。

 

 だからこそ、井草の苦悩に触れることができる。

 

 イッセー達ではだめだ。どうしても色々見てしまったことが影響して、そこに関しては共感をすることができない。

 

「まあ、人って何かの出来事で一気に変わりやすからね。井草だってそうでしょう?」

 

 そこを言われると、反論できない。

 

 かつての井草と今の井草は、大きく変わっている。

 

 傲慢な中二病だった井草は、過去の罪悪感から大きく変わった。

 

 そういう意味では、伊予と五十鈴とは方向性が違うだけで同じだ。ある意味おかしなことでも何でもない。

 

 その言葉に井草はあきらめようとして―

 

「でも、変わってないものもあっちまうんでしょう?」

 

 ―その言葉に、はっとなる。

 

 反射的にリムを見れば、リムは苦笑しながら井草をなでてくれた。

 

「もしかしたら、変わってねえところもあるかもしれやせんぜ? そして、それがわかるのは井草だけじゃねえんですかい?」

 

 その応援に、井草はぽつりと漏らす。

 

「……できる、かな?」

 

「ま、それは私にはわかりませんがねぇ」

 

 あっさりとそんなことを言ったリムは、しかし井草をまっすぐ見つめる。

 

「やるなら思い残しがねえぐらい頑張りなせぇ。私は、そのサポートぐらいはさせてもらいやすぜ?」

 

 その言葉に、井草は苦笑した。

 

「リム、それ、殺し文句だよ?」

 

「おっと! 井草にはニングと一緒になってもらいてぇんで、今のはなかったことにさせてくれやせんかぃ?」

 

「ああ、やっぱりニングに気を使ってたのか」

 

 慌てたリムがぼろを出し、井草はリムの行動を確信する。

 

 どうやら、井草との関係をセフ〇止まりにしたのは、ニングとくっつけたかったからのようだ。

 

 顔を赤くするリムは、しかしそれが決定打になったのだと確信したのか、観念したように井草の胸に顔を埋める。

 

「……ニングは、いい子なんでさぁ」

 

「知ってる」

 

 そんなことはよく知っている。

 

 いきなりろくに会ったこともない男が、かつて強姦まがいの行動をした。そんなことを知って、相手が後悔しているからって許してくれるのは優しい証拠だ。

 

 人によっては甘さとも思うだろう。だが、ニングはあれで言うべきことはきっちりいうタイプだということも分かっている。

 

 だから、それは甘さではない。優しさなのだろうと井草は思う。

 

「でも、それはリムも同じだろう? 俺はどっちかを選ぶのは大変なんだけど?」

 

「なら、同情心で選んでくれても構いやせんぜ?」

 

 井草の冗談交じりの皮肉に、リムは即答でそう返す。

 

 そして、プルプルと震え始めた。

 

 井草は、最初笑っているのかと思った。そういう冗談交じりの展開だと思った。

 

 だが、違う。

 

 直ぐに気づく。これは、井草がついさっきしていた震えと同じだ。断じて笑いの類ではない。

 

 これは、泣いているのだ。

 

「リム……?」

 

「井草、疑問に思ったことはねえですかい?」

 

 何をといいたくなったが、それより先にリムは告げる。

 

「コカビエルの一件、リムは魔剣創造で(なに)と打ち合ったと思ってんですかい?」

 

 その言葉に、井草は一瞬思い出すのに集中した。

 

 そして、ふとあり得ないことに気が付いた。

 

 ニングは、ケンゴウイーツとなったバルパーからリアスを守った。

 

 その時ニングは、魔剣を使用していた。魔剣創造で生み出したものだ。

 

 だが、それはおかしい。

 

 バルパーがその時使っていたのは、破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を融合させた合一化させたエクスカリバーだ。

 

 ニングと同じく魔剣創造を使っている祐斗は、ゼノヴィアが使っていた合一化していない破壊の聖剣で魔剣を破壊されていた。魔剣創造の魔剣が、破壊の聖剣よりも強力な合一化エクスカリバーと何度も打ち合えるとは思えない。

 

 なら、何があればいいのか。

 

 禁手だろうか? しかし、それも妙だ。

 

 合一化したエクスカリバーと打ち合えるレベルに、祐斗の禁手はなった。

 

 だが、祐斗の禁手である双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)はイレギュラーだ。聖魔剣の性能は、並の魔剣創造の禁手を超えている。

 

「……ニングの禁手は、祐斗の禁手とまともに打ち合えるレベルでさぁ」

 

 そう告げるリムは、しかし様子がおかしい。

 

 友の力を誇らしく思っているわけではない。友の強大さに嫉妬の感情をいだいているわけでもない。

 

 ただただ、悲しんでいた。

 

「聖剣の特性を持っちゃいやせんが、頑丈差だけなら伝説クラスにも引けをとりゃしません。上級吸血鬼とやり合った時に、増援が来るまでしのぐために至ったからでさぁ」

 

 その過去をの思い出を語るリムは、静かに震えながら井草に縋っていた。

 

 先程と逆転した状況に、井草は静かに抱きしめる。

 

「……ニングは、優しい子なんでさぁ。そして、優しすぎるせいで、自分を犠牲にしてしまいかねないんでさぁ」

 

「そっか。確かに、そうだね」

 

 アーシアの意向を尊重して、ニングはリアスにアーシアを預けることを決めた。それは、和平を行う前では問題だ。悪魔に悪魔を癒す力を与えるのだから。処罰を受けた可能性だってある。

 

 井草が伊予と五十鈴に襲われたとき、ニングはリムと共に助けに来てくれた。だが、伊予と五十鈴は龍王クラスですら楽には勝てない。それは本当に命懸けだ。断じて、最低なことをした付き合いの薄い相手にやることではない。

 

 その優しさは、それゆえに自身を傷つける刃にもなる。

 

「でも、俺たちはそれを止めれない」

 

 そう、それは井草たちもそうなのだ。

 

 きっと井草は、リムは、イッセーは、リアスたちは。誰かが同じことになったら助けに行くだろう。

 

 だから、ニングを止めるのは井草たちには不可能に近かった。

 

「強くなろう、リム。ニングが自分を犠牲にしなくてもいいぐらい、俺たちも強くなろう?」

 

 そんな、あたりさわりのないことしか言えない自分に、少し嫌悪感が出てきてしまった。

 




伊予と五十鈴の変貌には、井草も結構ダメージが入っていたの巻。

そして、ニング関係で不吉な情報が出てきました。じっさい、祐斗の禁手に匹敵する真似をぶちかますには、それこそ禁手が必要不可欠なわけです。

では、そんな禁手とはいったい何なのか。そこが重要になわけなのです。

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