混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
ここで、井草の問題が勃発します。
そして数日後、井草たちはトレーニングを行っていた。
イッセーや祐斗との模擬戦は、いい訓練になる。
なにせ二人はそれぞれ別ベクトルですさまじい能力を発揮している。その二人との模擬戦は、間違いなくいい訓練になる。
イッセーは圧倒的な力の具現だ。最大出力の攻撃ならば、既に最上級悪魔クラスはあるだろう。
祐斗は技と速さの申し子だ。聖魔剣の性能も含めれば、総合力ではイッセーすら凌ぐだろう。
そして、その二人との戦いで、井草は総合的に苦戦を強いられていた。
総合性能では二人とそこまで差があるわけではない。そもそも、素体の性能でならば井草が上だ。
だがしかし、想定外のトラブルが発生してしまった。
「聖剣と聖魔剣、悪魔にとってここまで害があるだなんて……」
「ど、ドンマイです!」
思わずぼやく井草に、ギャスパーが励ますようにスポーツドリンクを差し出してきてくれた。
その優しさに涙を浮かべながら、井草は自棄飲みで一気にあおる。
旧魔王派幹部との戦いで、井草はクルゼレイを撃破した。
クルゼレイはイーツと化していたので、その際に彼のイーツを取り込んだ。結果として、さらなる力を得たといえる。
だがしかし、それがよくなかった。
クルゼレイが使用していたのは、デビルイーツ。文字通り悪魔の力を手にするイーツだ。ディオドラも使っていた。
どうも、ディオドラの時にも残滓の一部を取り込んでいたらしく、クルゼレイ撃破の際にさらに取り込んだことで高出力になってしまっている。それがよくなかった。
デビルイーツの能力は先ほども書いたがわかりやすい。所有者に悪魔の力を与えるというものだ。
これが悪魔なら、単純に能力が上昇するというだけで済んだだろう。だが、そうは問屋が卸さなかった。
井草は堕天使である。そして、堕天使には三大勢力でも優位点がある。
それは目立った欠点がないということだ。
天使は堕天する危険性を考慮するため、メンタル的な隙がどうしても発生する。強い欲望を持つことができないといってもいい。エロスなどもってのほかだ。
井草は堕天使でよかったと思うが、しかし問題はそこではない。
悪魔は欠点が多い。
なれればどうってことはないが、日光にも影響を受ける。十字架や聖水などに触れると肌が焼けただれる。聖剣などの聖なる物体に触れると大ダメージだ。
そう、聖剣が効くのである。
兵藤一誠は、三大勢力のバックアップの元、アスカロンをもらっている。アスカロンは龍殺しの聖剣である。
木場祐斗は、聖魔剣を生み出す禁手を持つ。聖魔剣は、魔剣と聖剣が融合した、いいとこどりの武器である。すなわち聖剣の上位互換といってもいい。
結論を言おう。井草は聖剣で過剰にダメージを受けてしまうようになっている。
結果的に、井草は総合的に二人に対して弱くなってしまっていた。
戦闘経験と訓練の数、イーツ化による手数により、イッセーに対しては技で立ち回れる。反面、総合的な性能では劣ってしまう。
上位堕天使の血を継いでいるため、身体能力などの差で祐斗に対しては力で立ち回れる。反面、天賦の才を持つ祐斗のテクニックには勝てない。
そして今までは、堕天使の光力が悪魔である二人に有効だった。結果として、2人相手でも優勢な勝率を持っていた。
が、デビルイーツの特性を得たことで条件が互角になると、しのいでいる部分で押し切るより劣っている部分で押されることが多くなってしまった。
「俺って大したことなかったんだなぁ。わかっちゃいたけどやっぱりショックだ」
かつてナイアルに圧倒されたときほどではないが、しかしショックはショックである。
伊予と五十鈴を止めるために、できることなら救うために、井草は力が必要だ。
協力者はいる。だが、井草のわがままで始めることなのだから、井草が前線を張れるぐらいの力が必要なのだ。
しかし、条件が互角になっただけで負け越す始末だ。これはさすがにショックである。
「いや、井草さんも強いですって! 俺たち結構ぎりぎりですもん」
「イッセー君の言う通りです。僕なんて勝率は4対5じゃないですか」
イッセーと祐斗はフォローしてくれるが、しかしさすがに思うところがあるのである。
というより、祐斗の場合は足を止めれば一気に火力で押し切れるのだから比較的有利だ。
なにせ井草にはスパイダーイーツの力がある。蜘蛛の生態を最大限に生かして、接近する時点で相手が引っかかるように巣を張ることはできるのだ。
その相性をもってしても負け越している。これはやはり思うところがある。
「……でもさ、俺、伊予と五十鈴をできれば救いたんだよ? もうイッセー君たちを巻き込めないしさ?」
「い、いや! 俺は、てつ、てつだ……」
井草にイッセーは手伝うといいそうになるが、しかしどもってしまう。
それをすまなそうにするイッセーに、井草は苦笑を浮かべながら首を横に振った。
それでも井草は救えるなら救いたいと思い、冷徹な決断ができない可能性を覚えている。
手伝ってくれるのはうれしいが、直接戦うのは井草がするべきことだと思っているのだ。
だが、伊予も五十鈴も強い。具体的には、今のイッセーでは仲間たちの協力がいるぐらい強い。イッセーに負け越している井草では勝ち目が薄いのは明白だ。
「希望はあるって思いこみたいだけなのはわかってる。だけど、それでも救える余地を残したいのが俺のわがままだ。そこまでイッセー達を巻き込めないよ」
井草はそういうが、しかしそこに反論が飛んでくる。
「それは、違うと思います」
なんと、ギャスパーが首を横に振った。
その思わぬ反応に皆がきょとんとすると、ギャスパーは死線の集中に戸惑いながらも、しかし言い切った。
「大好きな人を救いたいと思うのは、当たり前のことだと思います。僕も、ヴァレリーが大変な目にあってたら助けたいですから」
その言葉に、井草は眩しいものを感じた。
そのヴァレリーという人のことはわからない。おそらくだが、ギャスパーの知人だということだけだ。あとは推測で、ギャスパーにとって大切な人だということぐらいだ。
あの臆病だったギャスパーが、それほどまでの決意を見せてくれた。この成長にもほっこりする。
だが、違うのだ。
望んで悪に堕ちている、伊予と五十鈴は根本が違う。ヴァレリーについてはわからない。しかし、ギャスパーのしるヴァレリーと、今の伊予と五十鈴は違うのだ。
だが、このギャスパーの決意を否定するのも大人げないので―
「じゃあ、停止世界の邪眼が必要な時は、手伝ってもらおうかな?」
そんな、あたりさわりのないことしか返せなかった。
休憩時間になったので、なんとなく一人で歩いていると、ニングと出くわした。
しかもなぜか、バスケットを持っている。
そして何故か、顔を赤くさせている。
直感的にフラグが立ったことを自覚して、井草は少し離れたところにいるイッセー達に視線を向ける。
……器用におにぎりを食べながら全力疾走で距離を取っていた。
―計ったな!?
井草はそう思ったが、しかし表情には出さない。
そして、ニングは故に気づかず、バスケットを差し出した。
「あの、軽食にサンドイッチを作ったのです! 一緒に食べたいのです!!」
「うん、ありがとう」
そう返事をしながら、井草は少し前のことを思い出す。
ニングは禁手に至っている。しかし、リムの話から判断すると、それは何らかのデメリットを持っているようだ。
リムはニングに禁手を使わせたくないようだ。使わせたことを心から悔いているようだ。
きっと、それが理由なのだろう。リムは、ニングにこそ井草と結ばれてほしいと思っている。惚れた相手と付き合ってほしいと思っているのだ。
だから、井草も踏み込もう。
「ニング、俺のどこが気に入ったんだい?」
ストレートすぎるが、しかしこれぐらいの方がいいだろう。
間違いなく、ニングは井草に好意を抱いている。
その、理由は知りたかった。
そして、ニングはいきなり聞かれて顔を赤くする。
だが、深呼吸一つで切り替えたらしい。すぐに冷静になると、ほんのり頬を赤らめさせながら告げた。
「……人を好きになるのに、理由がいるのですか?」
その言葉に、井草は返答できない。
井草は、伊予が好きだ。
だが、理由を説明できない。
あのかけがえのない日々で、なぜ五十鈴ではなく伊予を望んだのか、それがわからない。
ゆえに答えられない。
それに気づいたのか、ニングは苦笑すると頭を下げた。
「意地悪な質問だったのです。ただ、最初は一目ぼれだったのですよ」
と、そんな答えが飛んできた。
一目ぼれ。それはもはや、どうすることもできないものだ。
自分で言うのもアレだが、確かに以久は養子が整っている方である。それも、十分あり得るだろう。
「ただ、見た目だけで敵対勢力の人と恋愛関係だなんて問題なのですよ。だから、その時はついてなかったですませるつもりだったのです」
だが、そうはならなかった。
ニングもリムも、コカビエルの暴走によって発生したエクスカリバー強奪事件に駆り出されることとなった。
そして、また井草と出会い―
「その時の、井草さんの態度がとても気になったのです」
その理由はのちにわかるが、その時から気になってしまった。
優秀で、かっこよくて、そして優しい。
そんな人が、自分のことを卑下するのが何となく嫌だった。
そして自分の言葉でそれをフリとはいえ直そうとしたところを見て、更に深いところまで落ちてしまった
。
「そして、井草さんの理由を知って、あの二人の態度を怒って。そして、井草さんの決意を見て」
自分の責任だと背負い込みたがる、そんな生真面目な性分を見た。
大好きな二人に裏切られ、ショックを受ける姿を見て悲しくなった。
そして、そのうえで二人を止めようとする、決意に満ちた表情を見た。
結果、ニング・プルガトリオは井草・ダウンフォールに恋をした。
「だけど、付き合ってほしいというわけではないのです」
ニングはそう言って苦笑する。
「だって、リムも井草さんのことが好きなのです」
その言葉に、井草は自分の判断が勘違いでなかったと悟る。
リム・プルガトリオもまた、井草・ダウンフォールに恋をしている。
「リムのことを、不幸といってくれてありがとうなのです。それをリムが自覚できたのは、きっといいことなのです」
そういいながら、ニングは苦笑する。
「スケコマシなのは欠点だと思うのですが、これはもう惚れた弱みなのですよ」
「う……っ」
痛いところを突かれ、井草は思わず息を詰まらせる。ついでにサンドイッチものどに詰まらせた。
それを笑いながら、ニングはお茶を井草に差し出す。
そして、まっすぐに井草を見つめる。
「井草さん。どうか、リムの方を選んでほしいのですよ」
ニングは、そうはっきりといった。
それに対して、井草はちょっとムッとなった。
「自分のことを大切にしろって、君は俺に言ったじゃないか」
そのニングが、自分の恋心を優先しないのはどういうことだろうか。
恋のさや当てをして、リムと仲たがいしろと言っているわけではない。
だが、それはちょっと違うのでは仲と思うのだ。
「確かに、ちょっとリムに嫉妬した時期はあったのですが、でも考え直したのです」
そう反論するニングは、苦笑を浮かべていた。
「……きっと、次に私は未来を生み出せなくなるのですから」
―その言葉の意味を、井草は理解できなかった。
そして理解するとき、井草はもっと早く理解しなかったことを後悔することになる。
何でもかんでも取り込めばいいというわけではないというお話。
ディオドラ及びクルゼレイ達との連戦のせいで、堕天使という弱点の少ない異形であったはずの井草には、盛大な弱点が生まれてしまったわけです。少なくとも、イーツ状態では聖なる装備がかなり効くようになってしまいました。
そしてニング関係でさらに不穏な情報も出てまいりました。
恋愛方面ではリムと含めてめんどくさい考えだし、それとは別の意味で不穏な言葉も。さて、どうなる!!