混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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ちょっと諸事情あったので、17時の投稿は抜きでこうなりました。


8話

 

 そんな事を繰り返していた日々の夜。

 

 オーディン神は駒王町の外側にも出ては、寿司を食べたりキャバクラに行ったり遊園地で遊んでいたりしている。

 

 完全に観光である。和議を結ぶ為の会談の為に来たのではなかったのだろうかとすら思う。

 

 だがしかし、時々日本神話が関係している施設に行ったりしているので、完全に忘れたわけではないのだろう。

 

「ほっほっほ。キャバクラは楽しいのぉ」

 

 ……偶然なだけの気もしないではないが。

 

 まあ、そういうわけで井草は空を飛んで周辺警戒中だ。

 

 スレイプニルという、八本足の巨大な軍馬。その軍馬が引く巨大な馬車に、オーディンとロスヴァイセ、そしてイッセーとリアスとアーシアが乗っている。リムとニングは留守番だ。

 

 そのリムとニングがいないこのタイミングに、井草は聞きたい事を知ってそうな人物に聞いてみる事にする。

 

「……ねえ、ゼノヴィアちゃん。ニングについて聞きたい事があるんだけど」

 

 警戒を緩めるのもあれだが、井草はどうしても気になって集中力が散ってしまっている。この方が問題だろう。

 

 リムについては知っている。ニングについても知っている。

 

 だが、リムが伝えていない、ニングの秘密がある。

 

 それが理由で、ニングは自分の恋心をを諦めようとしている。リムもまた、ニングに自分の恋を譲ろうとしている。

 

 何があったのか、とても気になる。当事者としては尚更だ。

 

 だが、ゼノヴィアは戸惑うだけだ。

 

「いや、私も初めて顔を合わせたのはコカビエルの一件が初だ。知っている事は貴方とそう変わらない」

 

 実に残念な答えだった。

 

 とはいえ、教会もかなり大きな組織だ。

 

 ゼノヴィアとイリナはエクスカリバーの使い手で、タッグで任務に挑むのが基本だった。それ以外のメンバーは任務次第という事らしい。

 

 そしてニングとリムは暗部であるプルガトリオ機関の人員だ。本来ならプルガトリオ機関の者達とだけでチームを組むだろう。

 

 逆にいえば、それほどまでにコカビエルのやらかした事は大きいという事だ。

 

「……神の子を見張る者(ウチ)から出た人がご迷惑をお返しました。いや、教会クビになったのは本当あれだよね」

 

「いや、それについてはもういいのだが」

 

 ゼノヴィアが軽く返し、それにイリナもうんうんと頷いた。

 

「そういえば、ニングさんって悪魔の血を引いているのよね? ……どんな悪魔だったのかしら?」

 

 そういえばそれも気にならないわけではない。

 

 とは言え、その辺に関しては望み薄だ。

 

 どうも三大勢力の大戦終了前の時に交わった血が先祖返りしたらしい。今更その時の資料を探すのも難しい。

 

 そも、遊びで抱いた結果生まれてしまったというのなら、資料すら残っていないだろう。今から探すのは至難の業だ。

 

 大戦や内戦で滅びた血筋だとするなら、絶望的でもある。

 

 とはいえ、これ以上の踏み込みはプライベートの心外でもあるだろう。

 

 ……気にはなるが、踏み込みすぎるわけにもいかない。

 

 そう考え直した井草だが、しかしイリナの興味深そうな視線が向けられていた。

 

「そういえば、井草さんはリムさんとニングさんのどっちを選ぶのかしら?」

 

「………コラ、そこの天使」

 

 下世話である。張り倒したくなった。

 

 いい加減にしろ、この駄天使と思うが、しかしそこは口には出さない。

 

 とは言え、井草もいい加減自分を客観的に見直す事はできている。

 

 顔は整っている。能力は優秀である。自分で言うのもあれだが、癖が強い性格ではあっても邪悪な性格ではないと思う。止めに金もある。

 

 総合的に見て、これだけ見ればモテるだろう。

 

 最大の欠点は強姦の前科持ちという事だが、それについても心底後悔しているのだ。それを認めているリムとニングからすれば、大きな問題ではないのだろう。

 

 結論。リムやニングからしてみれば、井草は非常にいい男である。

 

 だが、それゆえにかリムとニングは、互いが互いにあなたが井草とくっつけばいいと考えている節がある。

 

 ……これは井草が決めるしかないのか。

 

 そう、井草がとりあえず覚悟を決めて色々と考えようとして―

 

「井草さん、やっぱりハーレムにするの?」

 

 だからお前は駄天使なんだ。

 

 イリナの突拍子もない発言に、井草は軽くキレかけた。

 

 ハーレムというのは、そう簡単にできる事ではない。

 

 少なくとも、誰かを選ぶのが嫌だからそうする……なんて優柔不断な理由でしていいものではないだろう。

 

 加えて言えば、ハーレムというのは男の負担が大きいものだ。

 

 体力、財産、器量などといった素質は必要不可欠。下手をすればどろどろの人間関係になる可能性だってある。

 

 ハーレムだから勝ち組の男なのではない。勝ち組の男になれる奴だけがハーレムを作れるのだ。

 

「イリナちゃん。俺がハーレム作れるような甲斐性持ちだと思うかい?」

 

「それは大丈夫だろう」

 

 以外にも、バラキエルが乗っかった。

 

「おそらくアザゼルよりは大丈夫だな。人間の血が濃い事もあるのだろう」

 

 なんかとんでもない事を言ってきた。

 

「バラキエルさん? 愛妻家がなんて事を言っているんですか!?」

 

「別にハーレムを否定しているわけではない。私も堕天使……待て!!」

 

 空気が弛緩しかけたその時、バラキエルは声を上げて皆を制止させる。

 

 そして、井草達の目の前で空間が歪み始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほぅ。情報通りだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ。気まずいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 馬車からイッセー達が顔を出し始めるのと同時、歪んだ空間から何人もの人影が姿を現す。

 

 先頭に立つのは、眉目秀麗を地でいく男性。そして、そのオーラはアザゼルやバラキエルすら上回る。

 

 その両隣に立つのは、一組の男女。

 

 何処か病んだ空気を纏った眼鏡の黒髪男性と、ヴァルキリーの鎧を纏った女性。

 

 更に後ろには、複数の鎧を着た戦士達を乗せた船が空に浮かんでいる。

 

 全員が井草達に敵意を向けてくる中、戦闘の男性が両手を大きく広げて声を放つ。

 

「初めまして、三大勢力の諸君! 我の名は、北欧の悪神、ロキだ!!」

 

 その名に、殆どの者達が目を見開く。

 

 悪神ロキ。北欧神話におけるトリックスター。

 

 北欧神話に詳しくなくとも、そもそも北欧神話を知らなくとも、ロキの名を聞いた事があるものは多いだろう。

 

 知名度ならオーディンすら凌ぐかもしれぬ、北欧神話のある種の顔。それがロキ。

 

 そのロキが、今目の前で大軍を連れてオーディンの進む道に立ち塞がっている。

 

「……そういえば、オーディン様は―」

 

「―厄介な人に非難されているとか言っていたですぅ……」

 

 祐斗とギャスパーの言う通りだ。

 

 アザゼルはヴァン神族が関わっていると踏んでいたが、どうやらそれよりもっと身内が揉めていたらしい。

 

 そして、ロキはその言葉を耳ざとく聞きつけていたのか、堂々と頷いた。

 

「その通りだ、若き悪魔よ。……我らが主神殿が我ら以外の神話体系と仲良くしようなど苦痛でしかないので、こうして邪魔をしに来たのだ」

 

 はっきりと、堂々と敵対宣言を言ってきた。

 

 そして、ロキが引き連れる戦士達もまた、敵意を馬車から出てきたオーディンに向ける。

 

神々の黄昏(ラグナロク)を乗り越えるのではなく、避けようなどと……っ」

 

「主神殿も耄碌されたようだな」

 

「ならば、我らが新たなアース神族となる他あるまいて」

 

「……いい感じに過激な連中が集まってるな、オイ」

 

 アザゼルが呆れる中、ロキはそれを無視してオーディンに鋭い視線を向ける。

 

「我らが主神に最後に聞こう。……本当に、他神話体系などと和議するという愚行を行うつもりか?」

 

 その殺意すら込められた言葉に、オーディンはしかし、余裕綽々だった。

 

 ほっほっほと笑うと、顎鬚を優雅に撫でる余裕すら見せている。

 

「勿論じゃよ。少なくとも、お前よりはアザゼルやサーゼクスと話していた方が面白い。わしは日本の神道を知りたくての。あちらもこちらのユグドラシルに興味を持っておるので、和議を果たした後に異文化交流を検討しとる」

 

 その言葉に、ロキは心底から落胆の意思を全身で放つ。

 

 後ろにいた戦士達も、殺意を通り越して呆れの感情を示していた。

 

 そして、ロキの隣に立っている男性が、ロキに顔を向ける。

 

「どうします? これ、話し合いで済みそうにないですよね?」

 

「愚問だアスク。最早ここで黄昏を執り行う他ない」

 

 アスクという青年にそう答えると、ロキは視線を隣にいるヴァルキリーへと向ける。

 

「カルネテル。周辺警戒をしろ。アザゼルが伏兵を用意しているかもしれん」

 

「承知しました」

 

 ヴァルキリーの一礼を待ってから、ロキは静かにこちらへと向き直る。

 

 明らかな臨戦態勢。いつ戦いが始まってもおかしくない。

 

 しかし、その前にアザゼルは人羽ばたきぶん前に出ると、ロキに指を突き付ける。

 

「最後に聞くぞ! てめえ、まさか禍の団(カオス・ブリゲート)と繋がってるなんて事はねえだろうな!!」

 

 その返答は、明らかな不機嫌という感情で返される。

 

「神を奴隷にするなどとうそぶく、愚者の群れと一緒にしないでもらおう。奴らの技術を利用する事はあっても、共闘などありえ―」

 

 その瞬間、莫大なオーラがロキに激突した。

 

 三秒ぐらい、ロキの後ろにいた者達がぽかんとなる。それほどまでにタイミングがいい一撃だった。

 

 思わず井草が後ろを見れば、そこにはいい笑顔をしたゼノヴィアがいた。

 

 間違いなく、デュランダルをぶっ放したそれだった。

 

「な、ななななにしやがる!?」

 

 思わず戦士の一人が怒鳴るが、ゼノヴィアは意にも介さない。

 

「返答は聞いた。敵対はしている。ならば先手必勝だ」

 

 暴論だが正論だった。

 

 確かにロキは敵対を宣言している。そして、最後の質問と言ったアザゼルの問いは、あっさりとロキが答えてくれた。

 

 なら、確かに速攻で攻撃を叩き込んでも問題はない。

 

 問題はないが、空気は読めてない。

 

 そして効果もあまりなかった。

 

「ふむ、流石は音に名高い聖剣デュランダル。いい波動だ」

 

 などと、余裕綽々で言い放ちながら、ロキは姿を現す。

 

 ローブには僅かな損傷があるものの、そこに負傷は全くなかった。

 

「だが、この程度では神には届かん、素振りからやり直すがいい」

 

 平然とそう告げるロキは、確かに神そのものだった。

 

 おそらく北欧神話でも上から数えた方が早いレベルの神。其の力は、魔王すら超えているだろう。

 

 その脅威を改めて認識し、祐斗もイリナも獲物を構える。

 

 それを見て、ロキは愉快そうに目を細めるだけだった。

 

「これが人間なら英雄(エインヘリヤル)に迎えたい素質を持つ者達だな。だが、神を相手にするには程遠い」

 

 そう言いながら、ロキは魔方陣を展開し―

 

「させねえよ!!」

 

「同感だね!」

 

 既に禁手になっていたイッセーと、レセプターイーツになっていた井草が殴り掛かる。

 

 その連続攻撃をさらりと回避しながら、ロキはふむ、と感心した。

 

「中々いい動きだ。赤龍帝はともかく、三大勢力唯一のイーツというのも興味深い。……が」

 

 しかしその瞬間、魔方陣から大出力の魔法が放たれようとする。

 

「―神の相手にはまだ早いぞ!」

 

「舐めんな、この野郎!!」

 

 それに対して、イッセーも事前にチャージしていたドラゴンショットを放つ。

 

 二つの波動がぶつかり、大爆発が発生。

 

 そして、その爆発を目くらましに井草は突貫する。

 

「イッセー! アスカロン、パス!!」

 

「はい!!」

 

 イッセーが射出したアスカロンを受け取り、井草は速攻で切りかかる。

 

 アスカロンなら普通に光力の剣を使うよりかは攻撃力がある。イッセーは剣術には長けていないが、井草はケンゴウイーツの力もあって相応の技量があった。

 

 ゆえに連携。当たれば効果は見込める。

 

 しかし―

 

『トール』

 

 その合成音声と共に放たれた拳が、井草を勢いよく弾き飛ばした。

 

 そして煙から出てくるロキは、その姿が変わっていた。

 

 巨大な籠手と腰巻を付けたその姿が、悪神というよりかは戦神に近い。

 

 そして、その姿を見たオーディンとロスヴァイセが、目を見開く。

 

 ロスヴァイセはともかく、オーディンすら驚愕する。それだけで、この事態が異常である事がよく分かった。

 

「その力、そんな、まさか!?」

 

「ロキ!? 貴様、何をした!?」

 

 その驚愕の声を受け止めながら、ロキは不敵な表情を浮かべる。

 

 そして、全身から稲光を放ちつつ、強大な戦意を放つ。

 

「単純な事よ。……数年前、アスクを経由して確保に成功したエボリューションエキス。それを参考に、我もまたエボリューションエキスを開発したのだ。個人個人に調整した特注品をな」

 

 その言葉に、アザゼルすら瞠目した。

 

 エボリューションエキスは、人間世界である程度は流通している。それによるイーツ犯罪も数多い。

 

 だがしかし、それを回収して独自に開発したなどという話は聞いた事がない。

 

 その驚愕が心地良かったのか、ロキは微笑すら浮かべている。

 

「未だ研究段階故にオーディンにも秘していたが、結果的に好都合だったようだ。……量産体制の確立まで二か月もかからぬ。この力があれば、我らアースガルズのみでムートロンと渡り合う事もできるというもの」

 

 そううそぶくロキは、しかしオーディンの周りにいる井草達を見て、ため息をついた。

 

「……赤い髪の悪魔は、現魔王の血筋のグレモリーか。堕天使幹部も二人。さらに噂の聖魔剣とデュランダル。とどめにイーツと赤龍帝。ただの護衛にしては厳重というか豪華というか」

 

「実際にお前のような馬鹿が来たんじゃ。むしろ足りぬぐらいじゃろうて」

 

 ロキにそう言い返すオーディンだが、流石にその表情は険しい。

 

 それほどまでに、ロキの隠し玉は強大だった。場合によっては、ロキだけで井草達全員を相手にして渡り合えるほどに。

 

 しかし、ロキの警戒心はその余裕を上回っていた。

 

「なら、こちらも本命を呼ぶとしよう。―来い、我が息子よ!」

 

 一瞬の後、空間が歪む。

 

 そこから現れたのは、体長が十メートルを超える巨大な狼だった。

 

 そして、そのオーラは今の状態のロキと同格。それだけで、その脅威の度合いが知れるという物。

 

 戦慄する者達に愉快気な表情を向けながら、ロキは告げる。

 

「これぞ、我の切り札。―神喰狼(フェンリル)である」

 




ロキ、超強化。

根回しして同士を連れてくるだけならまだしも、こっそり研究していた技術をもってしてエボリューションエキスの疑似再現にまで成功。しかも神の力をイーツ化している分、一部では本家を凌いでいるといっていいでしょう。

ちなみにその件についての説明は今回はあまりされませんが、ナイアルがやらかした結果であります。あいつ戦犯モノやでぇ。

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