混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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そんなこんなで共闘を提案した、禍の団側。

そして今回はその過程での作戦会議戒といえます。


10話

 

 ロキ襲撃の翌日。オカルト研究部はシトリー眷属を加えて、兵藤邸の地下にある、大広間に集まっていた。

 

 そして、そこには共闘を申し出たヴァーリチームと、ムートロンから派遣された五十鈴もいる。

 

 ヴァーリチームは普段通りの様子だが、五十鈴は戦闘になる事を考慮しては、ハストゥールイーツの状態で参加していた。それが緊張感を生み、井草達は臨戦態勢をとる。

 

 流石に現場の判断で即断できる事でもなく、その日はいったん保留となった。

 

 そして、その答えを聞きにヴァーリチームと五十鈴が兵藤邸に招かれたというわけだ。

 

「まず一つ聞くぜ? 俺達と共闘する理由は、一体なんだ?」

 

「純粋に神と戦いたいだけだ。美猴達も付き合うと了承してくれている。是では不服か、アザゼル?」

 

 睨み付けるようにして放たれるアザゼルの詰問に、ヴァーリはそうさらりと答える。

 

 だが、それに対して五十鈴が肩をすくめた。

 

「嘘つきなさい。白龍皇(アルビオン)の力と支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)でフェンリルを我が物にするのが目的でしょうに。うちの内部監察班が突き止めてる……っていうか、食堂でする会話じゃないわよ? 馬鹿なの?」

 

 その言葉に、井草達は警戒心を強くする。

 

 神と敵対する禍の団。その禍の団に、神殺しの力を持つ魔獣が渡る。

 

 どう考えても警戒する他ない。

 

 そして、ヴァーリチームの怒気が籠った睨み付けが、五十鈴に集中する。

 

「……英雄派にしろムートロン(君たち)にしろ、こちらの都合を考慮してほしいな」

 

「アンタ馬鹿? こっちが下出に出ないといけない状況で、目的も話さないとか考えられない。しかもアンタ、神の子を見張る物(こいつら)の裏切り者でしょ? 恥の概念とかないわけ?」

 

 苛立ちを露わにするヴァーリに、鼻で笑う五十鈴。

 

 むしろこの場で禍の団による内乱が勃発しそうな雰囲気であった。

 

「……英雄派やムートロンとお前らが、反りが合うわけないか」

 

「当然だ。英雄派とは不干渉という事で落ち着いている。ムートロンの連中とも関与したくないのだが、たまたま出くわしてな。いい迷惑だ」

 

「こっちのセリフよヤンキーども。組織に属してるなら、最低限のルールぐらい守りなさい。報告連絡相談(ほうれんそう)は基本でしょうが」

 

 お互いに殺意すら向ける状態に、アザゼルは本気でため息を吐いた。

 

 そして、それに対して想うところがあったのか、五十鈴は持ってきたトランクケースを取り出す。

 

「アザゼル総督。ムートロンも大魔王派も、この()()()()とは違います。敵対勢力に共闘を申し込んだ以上、それ相応の対価を持ってきました」

 

「……待った。改めさせてもらうよ」

 

 井草はそれに割って入って、トランクケースをひったくる。

 

 そして、ヴァーリチームの近くまで移動してトランクケースを開けようとする。

 

「……何故、私達の前で?」

 

「罠だったら困るからだよ」

 

 アーサーの言葉に、井草はこともなげに答えた。

 

 完全に、巻き込んでも問題ないと思っているからこその対応だった。

 

「裏切り者の舎弟なんかに遠慮する必要ないし。共闘したいならぜひ盾になってくれない?」

 

「そうね、本当に爆弾でも仕込むべきだったかしらね」

 

 脊髄反射レベルで井草に乗っかる五十鈴に、美猴は心底嫌そうな顔になる。

 

「お前ら、息ぴったりだなオイ」

 

「「幼馴染だし」」

 

 完全にハモって返答されては、美猴も苦笑いするしかない。

 

 そして、空けられたトランクケースの中身は、高品質のオリハルコンだった。

 

 あまりの質の良さに、価値を知るアザゼルとリアスが瞠目する。

 

 それを見て、五十鈴はさらりと言い切った。

 

「精鋭用のムートシリーズはオリハルコンが必須らしいから。既にムートロンは、神の御業すら再現できると思った方がいいわよ?」

 

「世界全てを敵に回して、勝率九割以上を断言するだけの事はありますね」

 

 ソーナが苦苦し気に漏らすなか、アザゼルは頷いた。

 

「共闘の代金は確かにもらった。だが、そっちの目的が知りたい」

 

「……上からは「スパイが掴んだロキの研究が流石に看過困難なので、三つ巴の予定を中止して共闘する」って言われてるわ。それともう一つ」

 

 五十鈴は指を立てながら、ため息をついた。

 

「井草とそっちのニング・プルガトリオが気になるらしいわよ? そのデータを取って来いって話よ」

 

「……私なのです?」

 

 思わぬ展開に、名指しされたニングは自分を指さしてぽかんとする。

 

 想定外の展開に、一同は目を見はる。ヴァーリチームも聞かされてなかったのか、興味深そうな視線をニングに向けてきた。

 

 五十鈴もそれは想定内だったようだが、しかし首を横に振る。

 

「悪いけど、私は小間使いだから理由は知らないわ。あと、データ取りのセンサーは埋め込まれてるから、もう終わってると見ていいわ」

 

 そう言いながら、手のひらを上にして肩をすくめる。

 

 それに対して、井草は苦笑した。

 

「ペラペラしゃべりすぎだよ。口封じされそうだけど?」

 

「それも下っ端の邪悪らしくていいわね。でも、あなたと決着つける方が好みだわ」

 

 その口ぶりに、井草は苦笑する。

 

「で、どうします、先生」

 

 井草に聞かれ、アザゼルは頭を悩ませながらも頷いた。

 

「……戦力が必須なのは確かで、一応交渉の態度を取ったムートロン側は弾除け程度にはなるだろう。ヴァーリに関しては、サーゼクス達は旧魔王末裔のコイツを無下にする事はできないとよ。断ったら断ったで三つ巴になるだけだろうしな」

 

「分かってるわね。上はそのつもりよ」

 

「俺達もだ。まとめて相手をするのも面白そうだ」

 

 さらりとアザゼルの指摘を肯定した五十鈴とヴァーリに、周囲の警戒度は更に上がる。

 

 しかし、アザゼルは肩をすくめると仕方なさげに笑って見せた。

 

「甘い判断ではあるが、野放しにするよりは協力してもらった方が賢明だろうしな」

 

「現場としては納得しきれないけどね」

 

 リアスは不満を露わにする。それは、この場にいる三大勢力の関係者の意見そのものと言ってもいい。

 

 だが、トップである魔王が良しとしているのなら、悪魔側は良しとするしかない。少数派のイリナ達天界側も反論の意味はないだろう。

 

「いざとなれば、俺が後ろから刺すから大丈夫さ」

 

「そう簡単にやられないさ」

 

 井草の反目の指摘に、ヴァーリはそうこともなげに返した。

 

 そして、本題ともいえるロキとの戦いの会議となった。

 

「で、だ。ロキ対策にドラゴン関係者は後で別の部屋に集まってもらう」

 

「え、何でですか?」

 

 イッセーが首を捻るが、それに応えたのは五十鈴だった。

 

「ロキが生み出したのはフェンリルだけじゃないのよ。そのうちの一角、五大龍王の一臂である『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』のミドガルズオルムと接触するんでしょうね」

 

 その説明にイッセーは思わず頭を下げ、しかしすぐに飛び跳ねるように頭を上げると、五十鈴を睨み付ける。

 

「って、なに仲間みたいな態度をしてるんだよ!」

 

「一応共闘するんでしょうに。割り込んだ身として説明ぐらい請け負うわよ」

 

 そう返す五十鈴だが、しかしイッセーは睨み付けるのをやめない。

 

「……あんだけ井草さんを痛めつけたくせに、よくもまあぬけぬけと……っ」

 

「イッセー、ストップ」

 

 食って掛かるイッセーを止めたのは、井草だった。

 

 それに対して、ヴァーリチームすら含めた全員が程度はともかく驚いて見せた。

 

 何より、五十鈴に至っては変身が解けてしまうほどに驚いていた。

 

「……井草? あんた、何考えてるのよ……ぉおっと!?」

 

『ハストゥール』

 

 とっさに再変身するが、しかしそれを妨害するものは何処にもいない。

 

 それぐらいには、井草の対応は想定外だった。

 

 特にイッセーやリアスに小猫。リムとニングは唖然としている。

 

 それほどまでに、五十鈴が井草に対してとった態度は辛辣なものだった。

 

 だが、逆に井草はその対応に戸惑っていた。

 

「……あれ? どういうことかな?」

 

「ちょ、井草大丈夫!?」

 

 なんというか、五十鈴が一番心配していた。

 

 額に手を当てると熱を確認。その跡脈拍数を確認。ついでに顔色や瞳孔の様子まで確認し始める。

 

「ちょっと! あんたは邪悪である私と殺し合うのよ!? 体調管理をミスってその前に死ぬとかやめてよね!? ……アザゼル総督にリアス・グレモリー! あんたら井草の体調ぐらい管理しなさいよ!!」

 

「んなこと言われても困るわ!! 俺達も想定外だよ!!」

 

「そうよ! 第一あなたがそれを言わないでくれるかしら!?」

 

 喧嘩腰になり始める三人だが、そこに井草が割って入った。

 

「はいはい! 落ち着いて三人とも! 共闘するんでしょ?」

 

「「「誰の所為よ(だ)!!!」」」

 

 三人がかりで井草は怒られた。

 

 井草は「解せぬ」という三文字を顔全体で表現しながら、何を言ってるんだこいつらはという顔をした。

 

「いや、上から目線な上に要請だけしているヴァーリチームと違って、五十鈴はきちんと対価を持ってきてるし? なんだかんだで律儀で、なんか懐かしくなったし」

 

 そういうと、井草は笑みすら浮かべて見せる。

 

 それに対して、アザゼルと五十鈴は顔を見合わせて沈黙した。

 

「……調子狂うわ。帰っていいかしら?」

 

「ああ、とりあえず連絡先だけ用意しろ。合流タイミングがつかめねえ」

 

「あ、それなら使い捨てのスマホをもらってるから、それでお願い」

 

「へ? は?? え???」

 

 訳が分からないといった表情をしている井草を置いて、五十鈴は肩をすくめながら大広間から転していった。

 

 そして五十鈴が転移してから、アーサーは静かに眼鏡を直す。

 

「……相当の因縁があると聞きましたが、平然としてますね」

 

 アーサーの意見は全員の総意だった。

 

 だが、井草はきょとんとして首を捻るだけだ。

 

 頭大丈夫か、こいつ?

 

 そんな疑問が全員の共通認識になる中、井草はぽんと手を打った。

 

「……ああ、そういうことか」

 

 漸く気付いたと苦笑しながら、井草は懐かしむように額に手をやる。

 

 そこに触れた五十鈴の体温を思い出しているのか、井草は穏やかな笑みを浮かべていた。

 

昔の(いつもの)の五十鈴の雰囲気だったからね。なんだが、ほっとしちゃってたよ」

 

 ……その言葉に、皆は何も言う事ができなかった。

 




共闘のためにちゃんと対価を払うムートロン。仮にも組織なだけあって、足元を見ずに交渉する当たりが違います。

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