混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
そして、作戦会議の日が来る。
五十鈴はいない。作戦の概要だけ連絡すれば、こちらで合わせるとだけ返してきたらしい。
数日前の立ち飲み酒場での一件を気にしているのだろうか。それが原因でロキに後れを取らなければいいのだが。
井草はそう責任を感じるが、しかし言葉にはしない。
今はただ、作戦を頭に叩き込むことだけに集中するべきだと判断した。
「とりあえず切り札は手に入った。ミョルニルのレプリカはマジであった」
と、アザゼルは不機嫌な表情で告げる。
なんでも、ミドガルズオルムの話でオーディンがミョルニルのレプリカを隠しているとの話を聞きだしたらしい。
この状況下で切り札になるものを隠されていては、アザゼルとしてもいら立つのだろう。こと今回は北欧神話側の問題なので、当然といえば当然だ。
そしてアザゼルはイッセーを手招きする
「とりあえず、これはお前が使っとけ」
「オーディン様は、このミョルニルのレプリカを赤龍帝さんにお貸しするそうです。どうぞ」
ロスヴァイセがミョルニルを差し出し、イッセーはとりあえずそれを受け取る。
そして軽くぶんぶんと振り回してみる。
「そうじゃねえ。オーラを流し込んでみろ」
と、アザゼルのアドバイスに従ってイッセーはオーラを流し込む。
が、流し込みすぎた。
「うわ!?」
一気に巨大になったミョルニルは、それに見合うどころの騒ぎではない重量にもなったらしい。
イッセーが支えきれずに地面におとす。
それを持ち上げようとイッセーは力を込めなおすが、うんともすんとも言わなかった。
「あの、先生? これ使えないんじゃ……?」
井草が心配になって聞いてみるが、アザゼルは想定内だったのか平然としている。
「ま、禁手になれば使えるだろうさ。ただし、むやみに使うと主神クラスの雷撃でこの辺吹っ飛ぶから気を付けろよ?」
「ま、マジですか……」
とんでもない威力にイッセーは退くが、しかしこれに譲渡をくわえれば、ロキにも届くかもしれない。
多くの者たちがこの切り札に期待を寄せるが、しかしアザゼルは楽観視をしていないようだった。
「ただし、ロキはトールの力を使ってやがったことを忘れるな。下手すりゃ、アイツもミョルニルのレプリカを用意してる可能性がある」
「まじですか!?」
イッセーが狼狽するのも無理はない。
疑似エボリューションエキスでパワーアップしたロキは、フェンリルに並ぶ化け物と化している。例えていうのならば、剛力のロキに神速のフェンリルといったところか。
そのロキがミョルニル迄使えるのならば、鬼に金棒以外の何物でもない。
そして、状況が悪いのはそれだけではない。
「それから増援のあてが付いた。……大王派が戦力を提供してくれるそうだ。これでムートロンやそっちのヴァーリ共が土壇場で裏切っても、三つ巴の上で勝算ができたな」
「それは面白い。手の平を反すのも面白いかもな」
アザゼルの皮肉にヴァーリは挑発的な言動を返す。
とは言え、今のところ本気ではないようだ。冗談めかして言っているので……大丈夫だと井草は思いたかった。
「まあいい。それじゃあ作戦を説明するぞ」
と、アザゼルがホワイトボードを出しながら、作戦を説明する。
増援として派遣されてくるのは、タンニーンと大王派の戦力。彼らと合流したうえで、先ずロキの出現を待つ。
シトリー眷属は転移陣の形成を担当。戦闘はオカルト研究部とヴァーリチーム。そしてロスヴァイセと増援が行う。
転移する場所は採石場跡地。そこにムートロンたちが先行して包囲し、攻撃を叩き込むのが前提である。
指揮官はバラキエルが務める。アザゼルは万が一のためのオーディンの護衛と、会談の進行役などがあるため、今回の作戦にはサポートでしかない。
「ロキ戦のオフェンスは、ミョルニルを持ったイッセーと、サポートとしてヴァーリ。フェンリルはグレイプニルで捕縛し、オフェンスの援護をグレモリー眷属とヴァーリチームで行う」
しかし、それだけではいかないのが実情だ。
ロキは幾人もの戦士たちをシンパとして連れて生きている。しかも、疑似エボリューションエキスでイーツ化した戦士たちをだ。
「イーツ共の相手はイーツがするべきだ。ムートロンと大魔王派はそっちの相手。そして―」
そして、アザゼルの視線は井草にむけられる。
「お前もそっちだ、井草。……今後に備えて、お前はイーツを一人でも多くぶちのめして糧にしろ」
「はい!」
井草はしっかりと返事をする。
疑似エボリューションエキスの力まで取り込めるかはわからないが、しかし取り込めるのなら取り込めるべきだ。
どうせ彼らの相手もしなければならないのだから、その担当はその結果得をする者がするべきである。
「ニングとリムはその援護だ。……五十鈴のやつが井草に何かして来たら、俺が許すからぶちのめせ」
「了解でさぁ」
「ハイなのです」
その、気にしすぎぶりの三人のやり取りに、井草は軽く苦笑する。
とはいえ、気持ちはありがたい。
そして、増援のあてもできたことで勝機は見えた。
後は、強敵を打ち倒すのみである。
作戦決行は数日後。北欧神話と日本神話の会談当日。
今後の世界の趨勢にすらかかわる、大きな作戦がスタートしようとしていた。
その日の夜、井草はアザゼルの手伝いをするために兵藤邸で作業を手伝っていた。
無言で作業のフォローをしていると、アザゼルは井草の方に視線を向ける。
その意味は、井草も分かっていた。
「……五十鈴のことは、正直迷っています」
「そうか。いや、そうだな」
井草の素直な言葉に、アザゼルは理解を示す。
枢五十鈴。
天才肌で、特に勉強をしていないのにもかかわらずテストでも高得点。体育に関しても五段階評価で三以下を取ったことがない才媛だった。
伊予は身体能力は高くないので、そういう意味では身体能力抜群の井草を含めて、つり合いはとれていたと思っている。
「面倒見のいい、いい子だったな。今でも、その面影が残ってるみたいだな。監視映像をピスが見てそう言っていた。」
「今回の作戦、義姉さんは?」
ピスがいれば百人力だと、素直にそう思う。
だが、アザゼルは首を横に振った。
「……直接会ったら冷静ではいられないって、辞退したよ」
その言葉に、井草は納得する。
仕事の関係で中々会えなかったが、ピスも二人とは仲が良かった。
その彼女が、変わり果てた二人と直接対面すれば、調子を崩すだろう。
当人が苦戦するだけならまだしも、感情的になって五十鈴たちと戦い始めては、本末転倒だった。
「なあ、井草」
アザゼルが、苦笑する井草に面と向かって、何かを言いかける。
一瞬だけ迷い、そして、アザゼルは口を開いた。
「お前は、両親のことを深く知りたいと思うか?」
その言葉に、井草はすぐには答えられなかった。
井草は、両親のことを深く知らない。
物心ついた時には親戚にたらいまわしにされていたし、アザゼルたちに拾われてからも、なんとなく聞きづらかった。
そして、それに―
「特に気にしてないです」
井草は、素直に答える。
「多分愛されてなかったと思う。それが不幸なことだとも思う。……だけど、大丈夫です」
そう、なぜなら―
「義姉さんや先生は、俺のことを大事にしてくれたから。俺の家族はあなた達です」
―
罪を犯した井草を、それでも大事に育ててくれた。
罰を求める井草に、あえて危険な任務を与えてくれた。
そのうえで、ピスもアザゼルも井草のことを大切に思ってくれていた。神の子を見張るものの者たちに、井草は育ててもらったのだ。
「だから、それだけで充分です」
心からそう思い、井草は心底からの笑顔を向ける。
それを見て、アザゼルは目を伏せ―
「井草。実は、お前の両親は―」
「あ、先生」
そのタイミングで、イッセーが部屋に入ってくる。
「……朱乃さんのこと、グレイフィアさんから聞いたんですけど―」
「―だったら、2人で話すといいよ」
ちょうどいいタイミングだ。井草も少し疲れていた。
適度なところで休憩を取らないと、ミスをしでかしてしまいそうだ。
それに、朱乃の話は深入りしない方がいいだろう。
「あ、ああ。じゃあ、少し休んでな」
「了解です。じゃ、イッセー? 俺はちょっと仮眠をとってくるよ」
そういいながら、井草は廊下を歩き―
「―あ、井草さん」
「……うぉっとぉ」
―ニングと、出くわした。
さて、イッセーが朱乃といろいろあるタイミングに近いところで、ニングと出くわしたイッセー。
さて、これはどうなる!?