混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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そして、決戦直前


14話

 

 そして、日も暮れた夜。

 

 オカルト研究部とシトリー眷属、そして五十鈴とヴァーリチームは、会談を執り行うホテルの屋上にいた。

 

 既にムートロンと大魔王派の部隊は、転送先の採石場付近に待機している。アザゼルもまた、会談の為にオーディンと同じくホテルの会議室に向かっている。

 

 そこでイッセー達は増援と合流する事になっており、転移用の魔方陣が展開された。

 

 現れたのは百人を超える下級中級の悪魔の群れ。

 

 そしてそれを率いる二人の悪魔に、イッセーが真っ先に反応する。

 

「……タンニーンのオッサン! それにサイラオーグさんも!!」

 

 最上級悪魔であるタンニーン。そして、紆余曲折あり次期大王に返り咲いたサイラオーグ・バアル。

 

 戦力としては十分すぎる二人の姿に、イッセーは感謝しながらも驚いた。

 

 タンニーンは良い。ミドガルズオルムと接触する為に協力してもらったし、合流する事も知っていた。

 

 だが、大王派から派遣されてくる増援を率いるのがサイラオーグだとは思っていなかった。

 

「久しぶりだな。リアス、それに兵藤一誠」

 

「サイラオーグ! あなたが増援だったなんて。百人力だわ」

 

 気負いなく挨拶してくるサイラオーグに、リアスは頼もしく答えながらも戸惑いが隠せない。

 

 その意味を理解しているのだろう。サイラオーグは少ししかめっ面になった。

 

「上役達は「バアル義勇軍と共に戦功を立てるついでに、グレモリーに恩を売ってこい」などと言ってた。……実態は、俺に賛同する者達を激戦で減らす事が狙いだろうがな」

 

『まったく。大王派の連中は腹に一物抱えている者が多すぎて困る』

 

 タンニーンがため息をつくのも当然だろう。

 

 敵対派閥に恩を売るついでに、面倒な連中を激戦で駆除する。大王派の重鎮達からすれば一挙両得といったところなのだろう。 

 

 今後の趨勢がかかった状況下ですら、その手の謀略がはびこってしまう。人間達の醜さをネタにした創作物でも多くある展開だが、冥界も似たようなものらしい。

 

 大魔王派の所為で追い込まれているにも関わらず、この状況。いや、大魔王派の所為で純血悪魔の多くが離反したからこそ、大王派はそういう動きをする他ないのかもしれない。

 

 政治とは難しい。イッセーは素直にそう思った。

 

 そして同じぐらい、サイラオーグには同情心が湧いてしまう。

 

 そんな気遣いの視線に気づいたのか、サイラオーグは再び気負いない表情を浮かべると、イッセーの肩に手を置いた。

 

「とは言え、冥界の未来にも大きく関わるだろうこの戦いだ。俺達も何かしたいと思っていたから、好都合といえば好都合だな。力を貸させてくれ、兵藤一誠」

 

「は、はい!」

 

 強い人だと、イッセーは心から思う。

 

 彼の来歴はリアスやアザゼルからある程度は聞いている。

 

 何も持たずに生まれて、大王の血筋でありながら底辺にまで追いやられた人生。そして這い上がってきたかと思えば、ビルデにしてやられた事が原因で暗雲が立ち込めた未来。

 

 しかしそれでも腐ることなく、前を向いた進み続けてきた強さは、イッセーからしても憧れるモノだ。

 

 素直に、彼のような強さが欲しいと思ってしまう。

 

 そんなサイラオーグは、朱乃の方を向くと、気づかわし気な視線をリアスに向ける。

 

「リアス。お前の女王(クイーン)は、確か堕天使と確執があったと聞いているが―」

 

 ある程度は事情を知っているらしい。その目は気遣いもあったが、懸念の色もあった。

 

 しかし、リアスは心からの安心の表情を浮かべながら首を振る。

 

「大丈夫よ。イッセーが男を見せてくれたわ」

 

 その言葉に、サイラオーグはイッセーと朱乃に視線を交互に向ける。

 

「……下世話なことになるが、リアスはそれでいいのか?」

 

 どうやら、そういうことだと勘違いしたらしい。

 

『割と嫉妬心の強いリアス嬢が、成長したものだ』

 

 タンニーンも勘違いしている。

 

 どうもイッセーの童貞卒業で認識が統一しているらしい、勘違いも甚だしい。

 

 イッセーは童貞であるという事実に悲しみを覚えながら、慌てて首を振った。

 

「違いますよ!? そんなやり方、間違ってますって!!」

 

 心底そうだと思う。

 

 その場しのぎで抱かれて安心を得ようなどと、そんな悲しい真似を認めるわけにはいかなかった。

 

 だから、抱いた事は抱いたが、抱きしめただけだ。それ以外のことは断じてしていない。心底綺麗並みで、純潔極まりない童貞である。

 

 その事実に涙を流すイッセーを、リアスは苦笑しながら抱きしめる。

 

「ふふ、こんなイッセーだからこそ、私達は大好きなのよ」

 

「『……なるほど』」

 

 その態度に、2人も納得の表情を浮かべる。

 

「どうやら、俺の親戚はいい伴侶に恵まれたようだ」

 

『ああ。ドライグの今回の宿主は、中々スケコマシのようだ』

 

 その二人の反応に、イッセーは小首を傾げてしまった。

 

 ……知らぬは当人ばかりなり。罪作りかつ女泣かせな赤龍帝であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、井草は五十鈴と顔を突き合わせていた。

 

「五十鈴、ムートロンはナイアルを送り込んでくるんじゃないだろうね?」

 

 心底そこが気になる。

 

 ただでさえ敵対者同士の同盟だ。ロキの厄介さゆえに呉越同舟となったが、しかしそれでも連携が上手くいくかは悩ましいところである。

 

 こと人選は重要だ。此処でナイアルが出てきたら、誰もが連携を取れないだろう。下手をすればその場で三つ巴である。

 

 しかし、五十鈴はため息をつくと額に手を当てる。

 

「んなわけないでしょ。ナイアルは艦隊司令部も扱いに困ってるのよ。今回は中隊の分隊が一つ出てきて、大魔王派からはAB二個中隊と悪魔一個中隊が派遣されるわ」

 

 五十鈴はそう言うと、半目を井草に向ける。

 

「ナイアルは、性格の悪い問題児を集めた愚連隊を率いてるのよ。戦闘能力は上から20番目の化け物で、しかも性格上下衆野郎が慕ってくる事するから、ホテップ艦隊司令も扱いに困ってるの」

 

 どうやら彼は、ムートロンでも問題児らしい。

 

 性格に問題があっても、実力があるのなら使うという事だろう。実際魔王クラスを超える千人以上の戦士がいるとはいえ、主神クラス以上がナイアルクラスだと考えると、多く見積もっても数十人といったところだろう。

 

 中々困っているようだ。一瞬ムートロンに同情しかける。

 

「言っとくけど、ホテップ艦隊司令の序列は2位よ。EEレベルも8,0の準最強。龍神はともかく、主神クラス程度じゃ一対一ぐらいなら余裕だと思いなさい」

 

 そう得意げに言うと、五十鈴は何かに気づいて視線を井草の後ろに向ける。

 

 そこには、微妙に敵意を向けているリムとニングの姿があった。

 

 二人は井草を庇う様に前に出ると、軽く睨みを利かせる。

 

 なにかすれば、戦闘を開始する。その覚悟を感じさせる態度だ。

 

「ずいぶん、井草さんにフレンドリーなのですね」

 

「邪悪らしい態度ありがとうごさいやすね。もうこれ、演技臭いレベルでさぁ」

 

 それなりにむかついているらしく、挑発的な言動まで飛んでくる。

 

 ここでもめるのはまずいと思い、井草は五十鈴の様子を伺い―

 

「………っ」

 

 何故か、五十鈴は息を詰まらせていた。

 

 そして井草の視線に気づくと、プルプルと頭を振ってから、挑発的な表情を浮かべる。

 

「ふふっ。可愛い子に好かれてるじゃない。私みたいな邪悪なんか気にせず、その子達を大事にすることね!」

 

 指を突き付けながらそう言うと、五十鈴は背を向けてバラキエルの方へと向かう。

 

 どうやら、作戦の最後の詰めを行うらしい。バラキエルが指揮官なのだから当然の態度といえば当然だろう。

 

 その姿を見送りながら、井草は静かに目を伏せる。

 

 ……彼女は敵だ。そして、手遅れの可能性すらあるほどに代わってしまっている。

 

 手遅れなのかもしれない。助けられないかもしれない。

 

 だけど、それでも助けられるのなら、やっぱり助けたい。

 

 井草は今の会話でそう思ってしまった。

 

 確かに彼女は変わってしまった。しかし、今の会話は何処か昔を思い返させてくれる。

 

 演技の可能性が高い。そういう精神攻撃なんだろうとも思っている。それでも、井草はやっぱり五十鈴のことが大事なのだと確信してしまった。

 

 ……やはり、駄目だ。

 

「ニング、リム」

 

 井草は、静かに告げる。

 

「……やっぱりだめだ。俺は、伊予と五十鈴がまだ大事で、振り切れない」

 

 本心を隠さず、井草はそう言い切った。

 

 酷いことを言う。今から始まる戦闘に差し支えるかもしれない。

 

 だが、これを隠したまま死ぬのは失礼な気がした。

 

「こんな想いを抱えたまま、俺は二人の内どちらかを選ぶなんてできないし、まとめてなんて優柔不断すぎる」

 

 だから―

 

「俺のことは、諦めて―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―なるほど、小細工なしか」

 

「―ふっ。恐れ入るね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バラキエルとヴァーリがそう漏らし、そして空間が歪む。

 

 ホテルの屋上であるヘリポートの直情が歪む。

 

 そしてそこから三隻の空を飛ぶ船が現れる。

 

 それらの船首にいるのは、ロキとアスクとカルネテル。

 

 アスクとカルネテルの後ろには、それぞれ数十名の戦士達が、臨戦態勢で待機。更にロキの後ろにはフェンリルが伏せている。

 

 ロキ一派。嘘偽りなく絡め手もない。正々堂々と正面からの登場だった。

 

「目標確認。作戦を開始する」

 

 バラキエルが無線でそう伝えると、屋上全体が巨大な魔方陣で包まれる。周囲のビルに散っていたシトリー眷属やバアル義勇軍の後方支援部隊による、強制転移魔法だった。

 

 ロキはその内容にすら気づいたようだが、笑みすら浮かべてそれを甘んじて受け入れる。

 

 そして光に包まれ、それが消え去ればそこは採石場だった。

 

 採石場全体を取り囲むように、数百を超える悪魔がロキ達を睨み付ける。

 

 更には、井草達と対をなす位置に十人足らずのイーツの姿があった。

 

 その中央、リーダー格は、どこか五十鈴のハストゥールイーツと似た感じのイーツだ。

 

 半魚人をヒロイン風に仕立て直したかのような、ヒロイックな意匠のイーツ。胸部が膨らんでいることを見るに、変身者は女性なのだろう。

 

「じゃ、ナイアル様にご褒美もらう為にも頑張らせてもらうわね」

 

 そのイーツはそう告げると、いつでも跳びかかれるようにかがみ、両手を地面につける。

 

 短距離走を思わせるその姿は、まるで陸上部でなんども練習してきたかのように様になっていた。

 

 そしてイッセーも禁手化のカウントダウンを開始。井草もレセプターイーツに変身。他のメンバーも戦闘態勢をとる。

 

 それをロキは、あえて悠然と受け止める。

 

 その余裕を持った態度に、思わずリアスは声を投げかけた。

 

「……逃げないのね」

 

「想定の範囲内故に、必要も感じない。最早オーディンには何があっても退場してもらうので、先ずは脅威である貴様達を排除するだけだ」

 

 その言葉に、バラキエルが顔をしかめる。

 

 ロキは、オーディンを完全に見限っているらしい。三大勢力や他の神話と和議をして、ムートロン対策の為に足並みを揃える。それを完全否定するという結論に至ったのだろう。

 

 それほどまでに自身の疑似エボリューションエキスに自信があるという事なのだろう。かなりの自信家なのか、それともそれだけの性能を引き出せたのか。

 

「ラグナロクを何が何でも成就させる。危険な考えだな」

 

「それはこちらのセリフだ。そもそも三すくみであった貴様らの協調から全ては歪みだしたのだからな」

 

 バラキエルの言葉に、ロキはそうすげなく返す。

 

 戦士達もそれに同意するかのように、周囲の者達に敵意の籠った視線を向ける。ロキと思想は一つのようだった。

 

 その光景を見てから、バラキエルは静かに首を振る。

 

「……やはり、話し合いは不毛か」

 

 そして、バラキエルは雷光を両手に纏う。

 

 そのタイミングでイッセーのカウントダウンも終了、ヴァーリも合わせるかのように禁手化を行う。

 

 そして、井草もまた一歩を踏み出した。

 

「イッセー。アスカロン貸して」

 

「はい! ドラゴンはいないから大丈夫です!」

 

 イッセーが投げ渡すアスカロンを受け取り、井草はそれを両手に握る。

 

 そしてそれを見て、ロキは不敵な表情を浮かべる。

 

「二天龍の共演とは見応えがある。なら、こちらも我が子を出すのが礼儀というものか」

 

 そしてロキは指を鳴らし、採石場にその音が響き渡る。

 

 それを合図にフェンリルが飛び出した。

 




そういうわけで、本格バトルが勃発します。

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