混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

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19話

 

 その余波に翻弄されながら、井草は何とか戦闘を行なおうとして、しかし動揺を隠しきれなかった。

 

 五十鈴の本音を知った。

 

 五十鈴の後悔を知った。

 

 五十鈴の苦しみを知った。

 

 五十鈴の本質を知った。

 

 そして、五十鈴の覚悟を知った。

 

 どこまで自分はバカだったのかと、井草は心から罪の意識を感じる。

 

 何でも要領よくこなす天才肌。そんな風に五十鈴を見て、そこに至るまでの努力を斟酌するどころか、努力しているなどと考えもしなかった。

 

 彼女が張った見栄をうのみにして、なんて酷い事を頼んだのだと後悔もする。

 

 その結果がこれだ。五十鈴は拗らせてあんな目に遭った。

 

 むろん、その殆どは五十鈴の自業自得で自己責任だろう。井草を責める者などそう多くなく、五十鈴を責める者の方が多いだろう。

 

 だが、大切な幼馴染に大事なことを隠して、挙句大切な幼馴染の苦労を知らずにのほほんと生きていた。

 

 そして五十鈴が苦しみながらも自分なりにけじめをつけようとしている間、井草は自己嫌悪にさいなまれて死に急ぐだけだ。

 

 誰が許しても、誰が保証しても、井草は五十鈴に罪悪感を抱いてしまう。

 

 そして、そんな状態でフェンリスヴォルフイーツを、アスクをどうにかする事などできなかった。

 

「遅い!!」

 

 振るわれる爪が聖剣を弾き飛ばし、そして井草を切り刻む。

 

 それを何とかしのごうとするが、しかし井草の乱れた精神では、それに対応する事などできない。

 

「井草さん!」

 

「井草!」

 

 援護するべくニングとリムが駆け付けようとするが、しかし量産型ミドガルズオルムやスコルとハティがそれを妨害する。

 

 リアス達も残りの敵の相手をするので精いっぱいだ。とても援護する余裕がない。

 

 バラキエルの戦闘不能と五十鈴の戦線離脱が、大きく状況を動かし、ヴァーリの不在も影響は少しはある。

 

 タンニーンを含めた、この場の四強のうち三人がいなくなった。この事実に状況は混乱していたのだ。

 

 そして何より、五十鈴の真実を知った井草の動揺が最も大きい。そして井草自身、この戦場においては有数の戦力なのである。

 

 敵のエース格が不調の隙をつく。ごく当たり前の駆け引きだった。

 

「くそ! ここで、死ぬわけにはいかないんだよ!!」

 

 何とか強引に振り切ろうとするが、しかしアスクの動きはそれを上回る。

 

「……あんたには同情するよ」

 

 どこか共感を感じさせる声で、アスクは井草にそう言う。

 

 しかし攻撃の手は緩めない。むしろ、今迄よりも攻撃は鋭さを増していた。

 

「だけど、負けられないんだ、こっちも。だから、死んでくれ!!」

 

 そしてその攻撃が、井草の腹部に突き刺さる。

 

 アーシアの回復は間に合わない、それほどまでの乱戦になってしまっている。

 

 遠距離からのピンポイント回復を当てる余裕はない。広範囲回復では敵すら大量に回復してしまう。近寄ればその時点でアーシアは殺されるだろう。

 

 そして、今のリムとニングでは、アスクを倒す事はできない。それほどまでの実力の開きがあった。

 

 井草は詰んでいる。

 

 だが、しかし、それでも―

 

「死ね、る……か」

 

 かろうじて急所を避けながら、井草は唸る。

 

 知ったのだ。分かったのだ。漸く理解する事ができたのだ。

 

 五十鈴は井草の知る五十鈴の実像とはかけ離れていたかもしれない。

 

 だが、井草の信じる五十鈴はまだ残っていた。

 

 取り戻したい。

 

 戻っても罪を背負い、償いの日々を生きる事になるだろう。下手をすれば、極刑もあるかもしれない。

 

 だが、しかし、それでも。

 

 ……このまま野垂れ地ぬなんて結末だけは、迎えさせたくない。

 

 抱きしめ足りない。謝り足りない。言葉を尽くし足りない。

 

 そう、まだ五十鈴に何もできていない。

 

 何よりも、何よりも―

 

「俺は、まだ―」

 

 枢五十鈴という、努力の方向性を間違えやすい、それでも井草に償おうとした彼女に―

 

「―なにも、償って……ないんだ……っ!」

 

「いや、終わりだよ」

 

 その残酷な宣誓が、井草の命の命脈を断ち切る―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させないのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―前に、ニングが割って入って魔剣でその一撃を受け止める。

 

 強引な防御で、エクスカリバーとも打ち合えるだろう攻撃を受け止める。

 

 魔剣創造で作られた程度の魔剣では、本来防げない。一撃で粉砕されるどころか、受け流す事ができなければそのままニングも切り裂かれるだろう。

 

 だが、その一撃をニングの魔剣は防いでいた。

 

「な……っ!?」

 

「させ、ないのです……っ」

 

 其の在りえない光景にアスクが戸惑った隙をついて、ニングはアスクを蹴り飛ばす。

 

 そして、静かに魔剣を正眼に構えると、静かにオーラを収束させる。

 

 小さいながらも、しかし戦意を感じさせるその背中。

 

 だが、井草にはそれが嫌な予感を感じさせる。

 

「ニング? なに……を?」

 

 ダメージが大きすぎて、すぐには動けない。

 

 そして、リムは敵の攻撃を回避するのに手いっぱいで、間に合わない。

 

「ニング!? やめやがりなさい! それは……だめですぜ!?」

 

 それでも強引に止めに行こうとするが、それがよくなかった。

 

 後ろから量産型ミドガルズオルムの砲撃が放たれる。

 

 リムはそれを回避には成功する。だが、着弾した余波までは防ぎ切れず、三十メートルほど吹き飛ばされる。

 

 そして、それが致命的なまでに状況を手遅れに挿せていた。

 

「死なせないのです。井草さんも、皆さんも……っ!」

 

 オーラの奔流は増大化し、魔剣に輝きが生まれる。

 

 そして、彼女は()()至ってしまった。

 

「やめやがれぇえええええええええっ!!!」

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

 リムの絶叫と共に、ニングの魔剣が変化する。

 

 その姿は、コカビエルとの戦いの時に使われた、合一化されたエクスカリバーにどことなく似ていた。

 

 そして、そこから放たれるオーラの質と量は、極めて莫大。それこそ、合一したエクスカリバーを凌ぐレベルだった。

 

「なん―」

 

 そして、一旦警戒の為に飛び退ろうとアスクが腰を落とし―

 

「―まずは一人!!」

 

 ―一瞬で追いついたニングが、一撃でアスクを弾き飛ばす。

 

「な!?」

 

「アスク!?」

 

 それに周辺のヴォルフイーツ達が慌てる中、ニングは更に魔剣を量産型ミドガルズオルムの群れへと向ける。

 

 その瞬間、魔剣が先別れしながら伸び、ミドガルズオルム達を貫いた。

 

 貫かれたミドガルズオルム達は絶叫を上げる。その傷口からは煙すら吹き出ており、明らかに龍殺しの力を受けている事が分かる。

 

「龍殺し! 創造系神器では作り出すのは難しいと聞いたのだがな」

 

 ロキはそう判断すると、イッセーが振り下ろすミョルニルを、ムジョルニアで弾く。

 

 そして、素早く指示を出した。

 

「スコル! ハティ! その女は任せる!!」

 

「「ウォオオオオオオンッ!」」

 

 ロキの指示に従い、高速で駆け出すスコルとハティ。

 

 それぞれ左右から距離を詰め、そして神にすら届く爪でニングを切り裂こうとし―

 

「そうは、行かないのです」

 

 一瞬で飛び上がって回避したニングは、紐で繋がった二振りの魔剣へと魔剣の形状を変えると、其のまま二匹の子フェンリルに突き立てる。

 

 そして、魔剣から莫大な力が放たれた。

 

「支配の聖剣でフェンリルを支配下に置けるのなら! わたしでも子フェンリルぐらいは……!」

 

 その言葉と共に、スコルとハティがどんどん小さくなっていく。

 

 見る見るうちに力と共に小さくなっていった子フェンリルは、いつの間にか大型犬程度のサイズにまで縮まっていた。

 

 そして、それを見たニングはちょっとおかしそうに微笑んだ。

 

「ふふっ。かわいらしいのです……よ……」

 

 そして、ニングは力なく倒れこむ。

 

 しかし、子フェンリル達は襲い掛からない。

 

 むしろニングを守るように近づきながら、ぺろぺろとその頬を舐めるだけだ。

 

 その光景を見て、ロキが唸る。

 

「スコルとハティを支配下に置いただと!? おのれぇ……ならば!!」

 

 その言葉と共に、ロキはマントを伸ばす。

 

 その陰から、新たに十体の量産型ミドガルズオルムが現れ、火炎を撒き散らす。

 

「そろそろ終わりにしよう。今度こそ赤龍帝からぶっ殺しだ!!」

 

 その抹殺宣言に、イッセーは決して引かなかった。

 

 ミョルニルのレプリカを構えると、まっすぐに突撃しながらロキを睨み付ける。

 

「させるかよ! ニングさんが頑張ったんだ、ここで俺が勝たなくてどうするんだ!!」

 

 そして、再び莫大な雷撃がぶつかり合い―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グォオオオオオオオオオオ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如現れた巨大な龍が、黒い炎を辺り一帯に撒き散らした。




無双タイムはいったニングですが、その代償は大きいのです。

そしてヴリトラも乱入して、戦いは最終局面へと向かっております。そろそろこのバトルも終わるぜ!!

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