混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
「……それ、本当?」
夜、イッセー達オカルト研究部二年生組は、イッセーの部屋に集合していた。
京都での妖怪による襲撃の話ではない。そこに関してはアザゼル達が動くので、イッセー達は修学旅行を楽しめと言われている。あと、リアス達には状況が分かるまで心配させない為に連絡するなとも言われている。
だが、五十鈴に関しては話が別だ。
井草にとって大事な幼馴染。そして、伊予とは違い罪悪感に駆られている彼女は、まだこちら側に戻せる可能性がある。
もちろん、数多くの悪行をなした彼女は、それ相応の罪に問われるだろう。彼女自身、井草に対する負い目は強く、暴走の末に起こした悪行に対しても罪悪感はある。
なので逆に戻ってくる可能性は低いのだが、だからこそイッセー達も同情意識を持っていた。
何より、井草にとってみれば、大切な幼馴染なのである。
どうしても皆が気になってしまい、こうして集まって会議擬きをやっているという事だ。
「はい。枢に助けられなかったら、更に揉めてたと思います」
イッセーも素直に答えるが、しかしそれはそれとして大問題だ。
禍の団を事実上脱走した五十鈴。京都の妖怪が許可証持ちを襲った事件。そして、五十鈴から提供された禍の団の英雄派が京都にいるという情報。
そのどれもが、この修学旅行が大変な事になるという予感を感じさせていた。
「英雄派というと、英雄の末裔や神器保有者で構成されている禍の団の派閥だったな」
と、ゼノヴィアが聞くと、イリナも頷いた。
「結構大きい派閥よ。たぶん、大魔王派とムートロンの次ぐらいじゃなかったかしら?」
それだけの規模の派閥が、この京都で暗躍をしている。
明かに緊急事態だ。しかも、京都の妖怪の動きから判断すると、既に相応の被害が出ていると考えていい。
井草としても、警戒心を強くせざるを得ない。
「しっかし、英雄派っつーとあれですな。アーシアを拘束した結界装置を作ったやつがいる派閥でやしたよね?」
リムの言葉に、井草達も思い出す。
ビルデの大魔王派に取り込まれるまでの旧魔王派。その一大作戦だった、ディオドラとのレーティングゲームを利用した首脳陣抹殺作戦。
その最重要ともいえる、アーシアの神器を増幅反転する結界装置を生み出したのが、英雄派のゲオルグである。
その男が所属していて、しかも最強戦力でもリーダーでもない。この時点で、英雄派の人材の豊富さは脅威といって過言ではない。
「どうするのです? アザゼル先生は自分達が調べると言ってきているのですが……」
ニングは自分から動こうという意識すら見せる。
だが、井草は静かに首を振った。
「いや、ここは待機でいいと思う」
その言葉に全員の視線が集中するが、井草はあえてそれを受け止める。
「俺達はあくまで学生だ。考えて行動するのは上層部の仕事だよ。今の段階で現場レベルが勝手に動くのは、現場の判断じゃなくて現場の暴走だ」
縦社会の現実ともいえる意見を、井草は口にした。
組織とは、上からの命令に現場が対応するのが基本である。
現場レベルでの独自裁量を認めない組織は崩れる事が多いが、だからといって現場の判断だけで全ての行動を決められるわけではない。
これは断じてただの傲慢ではない。
上層部と現場では視野が違う。現場はあくまで戦術での判断を行うものだ。それに対して、上層部およびそのトップである首脳部は、戦略的な判断を担当する。
基本的に、戦術とは一作戦の趨勢を決めるのが限界だ。そして、戦略はいくつもの作戦の重ね合わせなのである。必要とされる技能も視点も全く異なるのが実情だ。一つの作戦で失敗しても、取り返す余地がないわけではないのが戦略である。
戦術を重視しすぎた現場の判断で戦略が乱されるなど、あってはならない。
そして、アザゼルは
その人物が、戦術レベル、それも一部分を担当するイッセー達に待機を指示した。なら、余程の事がない限りはそれを守らえば今後の行動に支障をきたしかねない。
「でも、アザゼル先生達が心配になるんですが」
「それでもだよ。俺達の権限は限定的だ。その部を弁えずに動けば、返って先生達にも迷惑がかかる」
一応年長者として、それは言っておかねばならない。
組織行動というものはそういうものだ。
独断行動がしたいのなら、はぐれ者として生きるほかない。組織に属する以上、恩恵の代わりにそれ相応の拘束を受けるのが対価というものなのだ。
「ま、井草と私はもうこの国でも成人ですからねぇ。なんかあるなら連絡来ると思いますぜ?」
と、これまた年長者であるリムも同意見だった。
そして、まさにそのタイミングだった。
「お、見かけねえと思ったらここに集まってたのか」
「全員集まっていてよかったです。これから、現状分かっている事を説明するそうですよ」
と、アザゼルとロスヴァイセが姿を見せる。
実際問題、自分達が一切関わらないという可能性も低い。
悪神ロキの猛威を潜り抜けた、若手の精鋭。
その事実は、こういう時に戦力として計算されるという当然の宿命を作り出しているのだから。
そして、呼び出された料亭にはセラフォルーがすでにおり、事情を説明された。
冥界の現魔王派と、中国の須弥山、そして京都の妖怪で和議が結ばれる予定となっていた。
が、そこでとんでもない緊急事態が勃発する。
京都の妖怪の長。会談に参加する予定だった九尾の狐である、八坂が行方不明になったのだ。
ちなみに、八坂にはまだ小さい子供がいるそうだ。九重という小学生程度の少女らしく、イッセーを襲った一団を率いていた少女と容姿が一致しているので、彼女の暴走によるものだと判断されている。
「……兵藤、お前、なんでそんなに面倒ごとに巻き込まれるんだ?」
「俺が知りてえよ! しかも枢五十鈴に助けられなきゃ、もっと大立ち回りしてるところだったし……」
二年組の生徒会も呼び出されていたので当然いる匙に同情され、イッセーも正直途方に暮れる。
悪魔になってからトラブルに巻き込まれ続けているといってもいい。というより、球技大会と時期を同じくしたコカビエルの問題にしろ、体育祭直前で起きたディオドラの馬鹿にしろ、なぜか駒王学園のイベントと前後してトラブルに巻き込まれている気がする。
そして、アザゼルは料亭で出された料理や酒をたしなみながら、はっきりと言い切った。
「下手人は
「その枢ちゃんの言った通り、英雄派が関わってるみたいなのよん」
アザゼルもセラフォルーも真剣な表情だった。
禍の団の英雄派。禍の団の中でも有力派閥の一つである彼らが京都で動いているというだけで、かなりの非常事態だった。
「……ですが、井草さんには悪いですけど、枢五十鈴を信用していいんですか?」
と、シトリー眷属の由良が指摘する。
これは当然だろう。
五十鈴は徹底的に井草をぼろっかすにこき下ろしていたのだ。その話を聞いている側からすれば、心象は悪い。
井草達も真実を知っているが、しかしそれでもかなりのヘイトを稼いでいるのだ。素直に信用する気にもなりにくいだろう。
だが、アザゼルもセラフォルーもそこは心配していない要だった。
「それについてだけど、枢ちゃんは完璧に禍の団と手を切ってるみたいなのよん」
そう言って魔力で映し出す立体映像には、破壊された暴力団事務所や中小企業の姿が映し出されている。
加えて監視カメラの映像が映し出され、井草達は目を見張る。
そこでは、イーツを叩き潰しているハストゥールイーツの姿があった。
「裏取りが済むまで黙ってたんだが、あの戦いの後、五十鈴らしいハストゥールイーツがあの採石場近辺から京都に向かう直線ラインで、いくつもの企業などを襲撃してた。……ちょっと前に全部確認できたが、全部禍の団やムートロンと裏で繋がってやがった」
その言葉に、井草達は呆れるやら関心するやらだ。
確かに、これだけの事をしているのなら五十鈴はムートロンと手を切って敵対しているらしい。
だが、それならこちら側に来てもいいだろうにとも思う者達も数多かった。
「因みにね? こっちも安全確認が行われるまで黙ってたけど、五十鈴ちゃん名義でエボリューションエキスがトランク一個分郵送されてきたのよん」
……どうやら、裏切る事も想定していたようである。枢五十鈴は要領がいいらしい。
しかし、そこまで手土産があるのなら、投降するという手段はとってもいいだろうとは誰もが思う。
「ま、五十鈴のやつが何考えてるかはこの際置いておく。……今気にするべきは、英雄派がやろうとしている実験だ」
アザゼルはそういうと、静かに京都の夜景に目を向ける。
「京都は優れた呪術機構でもあり、九尾の狐は龍王クラスの妖怪。……五十鈴の言っていた「霊的スポットと龍王クラスを利用した実験」ってのに合致してやがる」
その言葉に、全員が気を引き締める。
五十鈴の言っていた英雄派の実験に必要なピースは、二つとも揃っている。
なら、英雄派はこの京都でその実験を行おうとしているのだろう。そう考えるのが自然だった。
当然、イッセーは何かしなければならないという使命感にかられる。
「先生! 俺達は何をすれば―」
「お前らは、指示を出すまで修学旅行を楽しんどけ」
イッセーが言い切る前に、アザゼルが出鼻を挫く。
それに戸惑う一同だが、しかし井草達三人は冷静だった。
「まぁ、俺達は任務できてるわけじゃないですしね」
「下手に学生まで動かすと、京都の面子も傷つきやがるわけですわな」
井草とリムはそう言いながら、日本酒をあおる。
断っておくが、2人は成人しているので日本でなら酒が飲めるのである。二十歳万歳なのである。
「いや、面子って、そんな場合なのですか?」
「大人の世界はややこしいんですぜ、ニング」
現実問題、大人の世界は子供の世界とは別の意味でややこしいのだ。
大人の都合で生み出された命であるリムは、ニングよりその辺りの機微が聡い。なのでたしなめる側に回っている。
アザゼルはそれに苦笑しながら、納得いかない様子だったイッセーの頭をなでる。
「何かあったらちゃんと呼ぶよ。だが、お前らガキにとっちゃ修学旅行は大事なイベントだろ? アーシア達に至っちゃ、人生最初で最後なんだからよ」
そう、学生にとって修学旅行は、間違いなく大事なイベントである。
更にアーシアやゼノヴィア、イリナにリムとニングは、これが最初で最後になるのだ。
できれば楽しんでほしいと願うのが保護者の見方である。それに、大人として子供のイベントを台無しにしてまで子供を巻き込む事に思うところはある。
「井草。五十鈴について分かったら連絡するから、今は旅行を楽しんで思い出を作りな」
その慈愛に満ちたアザゼルの視線に、井草は苦笑する他ない。
どうもこの総督は、井草に対して想うところがあるらしい。
事実上の保護者をやってもらっている立場としては、これは断れない。
「了解です」
「じゃ、呼び出しちゃった分楽しんでね? ここは私が奢っちゃうから♪」
そのセラフォルーの気前の良さに、皆がそれに乗っかる事にする。
とは言え、誰もが心のどこかで思っていた事がある。
何かあれば、自分達も動こう。禍の団の好きにはさせない、と。
ちょっとまとまった金が入ったので、新しいラノベのシリーズに手を出して遅くなりました。あと新作のネタまで浮かんでしまいました。
それはともかく最後の炎を燃やさんと暴れまくりの五十鈴。ちゃっかりくすねていたエボリューションエキスにより三大勢力側もだいぶ研究が進むことになります。