混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E 作:グレン×グレン
そして次の日、井草は早朝から京都でランニングをしていた。
あんなふうに言われたとはいえ、いざという時は動かなければならないだろう。その為の準備ぐらいは一応しておかなければならない。
そして、その時オカルト研究部の指揮を執るのは、主柱であるイッセーか、年長者である井草もしくはリムだ。年長者としては指揮を執らなくても補佐はしなくてはいけないと思う。
なので、軽く近辺の地理を確認するついでにランニングをしている。
周囲の地理を確認しながら、井草は全身に負荷をかける術式を掛けながら足早に走る。
ランニングとは言ったが、そのスピードはマラソンの世界大会クラス。常人の全力レベルだ。負荷がかかっている事を考えれば、中距離層の世界大会レベルの付加でランニングを行っている。
これぐらいを生身で行えなければ、ナイアルと戦う事などできないと思っているからこそ、これぐらいはしているのだ。
「……五十鈴」
幼馴染の名前を、ぽつりと呟く。
井草が知っていた気になって、しかし全然知らなかった幼馴染。
中二病、と言われれば、それで済むようなものだった。
泥臭い努力で這い上がる事を嫌い、一を聞いて十を知る事にこそ価値を感じたがるのは、子供の頃によくある精神状態だ。
井草もまた、方向性は違うが一種の中二病だった。
特別な生まれとちょっとした特殊能力。ただそれだけのことで自分は選ばれた者だとおごり高ぶり、身の程を知らぬ上から目線だった。
だが、それらが悪い方向に噛み合ってしまった結果、五十鈴は悪逆の世界にどっぷりとハマる事になってしまった。
五十鈴の責任は重いと言う人は多いだろう。井草の責任は軽いと言う人もいるだろう。五十鈴の方が失態をしていると、多くの者は結論付けるだろう。
だが、井草はどうしても自分の責任を強く感じていた。
彼女の苦悩を知ら無かった事に、井草は自分に怒りを覚える。
過程の話だが、井草が五十鈴に馬鹿な事を頼まなければ、五十鈴はナイアルにモーションを掛けるなどという馬鹿な真似をしなかっただろうと思う。
むろん、それも五十鈴が見栄を張ったのがきっかけだ。しかしそれでも、井草は責任を感じてしまう。
……五十鈴は、井草達の元に戻ってこようとしない。
その手は既に血に汚れている。何人も彼女は殺してきた。そして、その顔も名前も人数も、彼女は覚えるだけの余裕がなかった。
その罪の意識が、五十鈴を縛る。
……救いたい。だが、救う事ができるのか。
彼女は止まった。だが、それは井草が止めたわけではない。
そんな風に思考が空回りしていこうとして―
「漸く追いついたのです」
と、その言葉に気づけば、ニングが井草の隣を並走していた。
「まったく、そういうことするなら誘いやがりなさいな」
と、リムまでもが反対側を並走する。
「リム、ニング……」
「井草さん。私達は付き合ってるのではないのですか?」
と、ニングは少しむっとしながら、井草と並走する。
「ったく。見えないところで頑張りたがりですなぁ」
同じく並走を続けながら、リムは茶化すようにニヤニヤしている。
その二人の同時攻撃に、井草はどうしたもんかと思ってしまう。
だが、そんな対処の余裕を二人は与えない。
「井草さん。少しは頼ってほしいのです」
ニングは、そう言いながら微笑んだ。
「井草さんは、私が捨てた者に見合うぐらい立派になろうとしている。なら、私達もそんな井草さんに並び立てるぐらいには頑張るのですよ」
「いやいや、ニングは頑張りすぎでさぁ。ここは私に任せちゃぁくれませんかねぇ?」
と、リムはニングに反論する。
そして、その視線が井草に向けられる。
「頑張りましょうや、井草。ニングが私達の為に大切なものを差し出した分、私らはそれに見合う奴にならなきゃならねえんですから」
リムの言う通りだ。
ニングは、井草達を救う為に、子を育む能力を差し出した。
……それに見合うだけの価値が、自分にあるのか。
井草はそう自問自答した事もある。
だが、しかしそれは違う。
価値があるとかないとかいう問題ではない。価値を誰もが見いだせるぐらいにならねば、ダメなのだ。
そして、それはつまり―
「ニング、リム」
井草は、自分を見つめ直してはっきりと言う事にする。
言ってしまえば後には引けない。もう実行する他ない。
だが、それぐらい断行しなければ、井草はニングが差し出した物に見合う物を彼女に見せれない。
リムもニングも愛すると誓った。その井草・ダウンフォールが、自らの過去にけじめをつけないなど、2人に対する非礼である。
「俺は、少なくても五十鈴を取り戻すよ。そして、伊予を止めて見せる」
「そう来なくっちゃぁ!」
パチンと指を鳴らしながら、リムは応える。
ニングも、何も言わないが井草に微笑んだ。
これでもう、後には引けない。
正気のまま迷走し、そしてさらに返り血にまみれた五十鈴。
罪を償い必要はある。だが、その為の居場所ぐらい作って見せる。
その決意を形にしてこそ、ニング・プルガトリオとリム・プルガトリオを抱える資格が井草に与えられるのだと、井草は勝手にそう決める。
「……そしたら、2人は俺のお嫁さんだ」
「「……はいっ」」
格好を決めすぎて、井草は感極まった二人に抱き着かれた。
走っている最中だったので、三人そろって顔面をアスファルトで強打する羽目になったのはご愛敬である。
それはともかく、言われた通り観光を楽しむ井草達ではある。
まずは清水寺に向かい、三年坂でビビるものを多数発生させながらも楽しんだ。
イッセーとアーシアがおみくじで相性が抜群だということになり、松田と元浜が嫉妬したのはご愛敬だ。
「殺意が生まれる!」
「後でイッセーを殴る!!」
「落ち着きなって。あとでなんか奢るから」
殺意の波動すら出しそうな二人をなだめるのに、井草は苦労した。
リムやニングといちゃつけないのに、イッセーとアーシアのいちゃつきを見る事になって井草も少々残念ではあったりするのに、他者のフォローをする辺り苦労人体質な井草である。
そして銀閣寺ではゼノヴィアがショックを受けた。
銀色でない事にショックを受けたのだ。残念な事に、駒王学園で使われている教科書では銀閣寺の写真はないので知らなかったようだ。
ちなみに名前に反して、銀を使う予定は欠片もなかったという話があるそうだ。閑話休題。
そして金閣寺は金色なので、ゼノヴィアは狂喜乱舞した。アーシアとイリナも祝福していたのには苦笑ものだった。
と、そんな観光を楽しんで、今は茶屋で休息をとっているのだが―
「おっぱい! おっぱいは何処だぁああああ!!!」
などという絶叫で、色々と台無しになった。
ちなみに井草は五秒で麻酔術式を掛けて鎮圧した。観光旅行を汚す者には相応の報いアレ。
「……マジで何なんだ、あれ?」
「お前も新幹線でやらかしてただろ」
松田と元浜の会話をとりあえず聞き流しながら、井草はどうしたものかと頭を悩ませる。
いくらなんでも痴漢の発生率が高すぎる。昨日の今日でまたしても痴漢を見るなど、相当のレアケースだろう。
運が悪いというべきか、それとも何かしらの異能が関わっている時にするべきか。
しかし、異能を使って痴漢を増やす意味もない。不用意に異能の存在を知らしめるのはタブーだ。禍の団も、痴漢を増やすなどというわけの分からない真似よりもとる方法はあるだろう。
やはり運が悪いだけだと考えて、井草はとりあえずお茶を飲み―
「あれ、なんか……眠い……」
そう言いながら倒れる桐生を支えて、井草はため息をついた。
どうやら、白昼堂々と仕掛けてくる連中が出てきたらしい。
既にイッセー達も警戒態勢をとる中、井草は立ち上がると声を張り上げる。
「……俺達が、リアス・グレモリー眷属及び、天使長ミカエルと堕天使総督アザゼル直属のものだと知っての狼藉かい!?」
そう言いながら、井草は現れた妖怪を睨み付ける。
場合によっては本気で攻撃を行う事も考えた、その時だった。
「……落ち着いてください。これは戦闘の為ではありません」
ロスヴァイセが、思わぬ戦闘勃発に慌てながら割って入った。
「あ、ロスヴァイセさん! どうしたの?」
イリナが一瞬でいつもの調子になりながら聞けば、ロスヴァイセはあっさりと告げる。
「誤解が解けました。ついては、事情説明と謝罪をしたいとのことです」
「謝罪……ですか?」
アーシアが首を傾げながら、妖怪の女性に視線を向ける。
その女性は、静かに頭を下げながら口を開いた。
「先日は誠に失礼をいたしました。我らが姫君もあなた方に謝罪をなされたいと申されているので、どうか私達に付いて来ていただけないでしょうか?」
「……具体的にどこにだ?」
多少警戒心が残っているゼノヴィアの質問に、狐の女性は答えた。
「我ら京の妖怪が住まう裏京都でございます。魔王様と総督殿も既にいらっしゃっております」
となれば、最早断る理由はないも同然だった。
そして、井草達が連れてこられたのは、ある出江戸時代に戻ったかのような街並みだった。
異空間なだけあり空は暗い。そして、そこに住んでいるのは数多くの妖怪だった。
変な脅かし方をする妖怪もいるが、いちいち反応するとつけあがるので井草はスルーする。
「おいおい、悪魔に天使に堕天使だよ」
「三大勢力が揃いも揃って、なんでここに?」
「学生服だぜ、めんこいなぁ」
などと、珍しい客人の姿にひそひそ話も聞こえてくる。
「な、なんか……歓迎されてないのか?」
「ま、和平ブームはつい最近だしね」
戸惑うイッセーに答えながら、井草は道案内をする狐の妖怪に付いて行く。
そして連れてこられた先は、巨大な屋敷だった。
明らかに権力者が住んでいると分かる屋敷の前に、アザゼルとセラフォルーが少女を挟み込むようにして待っていた。
「よお、悪いな」
「やっほー☆」
そんな挨拶を返してくる2人に背を押される形で、少女が前に出る。
そして、道案内をしていた狐耳の妖怪が恭しく頭を垂れた。
「
その言葉と共に、女性は炎となって消える。
そしてそれを確認してから、九重と呼ばれた少女はさらに前に出た。
「私は表と裏の京都に住まう妖怪たちの長、八坂の娘である九重と申す」
そして、少女は勢いよくイッセーに頭を下げる。
「先日は誠に申し訳なかった。こちらの早とちりで赤龍帝殿にはご迷惑を―」
それを言い切る前に、手刀が軽く叩き込まれる。
「ちょ、井草さん!?」
イッセーが驚くのも無理はあるまい。
井草・ダウンフォールは、速攻でそんな事をしでかしたのだから。
ちなみに、手刀が振り下ろされたのと同時に凄まじいレベルの怒気と殺気が屋敷中から放たれる。
当然といえば当然である。VIPである九重に暴力を振るったのだ。妖怪達からすれば激怒案件だろう。
しかし、井草は逆にその怒気に向けて本気の怒気を向ける。
「……ケジメ一つつけただけでこの案件。三大勢力と和平結ぶ気が感じられないね」
……少なく見積もっても数十人単位で出したであろう怒気と、同等レベルの怒気を井草は向けていた。
その表情には、怒気を向けてきた者に対する失望と軽蔑の感情が見える。
「大方、ろくな説教すらしてないんだろう? あわや戦争すら起こしかねないだけの事をしでかしたんだ。子供だろうと主の娘だろうと、最低限のけじめはきちんとつけなきゃならないじゃないか」
心底からそう言うと、井草は九重に向き直る。
しっかり屈み込んで目線を合わせたうえで、井草はその両肩に手を置いた。
「九重。君がやった事は、下手をすれば君が将来面倒を見る事になるだろう妖怪達の多くを不幸にする事だ。……今のは最低限のけじめで、子供だからこそこの程度で済んでる事を、きちんと心に刻み込むんだよ?」
「う、うむ」
軽くとは言え上級堕天使クラスの手刀を喰らった九重は涙目である。
だが、井草の真摯な態度に思うところがあったのか、真剣に頷いた。
それに頷いた井草は立ち上がると、今度は屋敷からまだ残っている怒気に殺意すら向ける。
「……いい大人が子供の暴走に乗っかって戦争を起こしかけるとか、情けない。従者なら、処罰覚悟で子供に示しを付けるのが責務じゃないのかい?」
「ぐ……」
「せ、正論ではあるが……」
屋敷から少し反論擬きが飛んでくるが、井草は鼻を鳴らすとそれを無視する事にする。
反省の気配を見せている者もいるようだ。あとは身内で示しを付ければいい。
そう考えると、井草はもう一度屈み込んで、九重を視線を合わせ直す。
「……俺も子供の頃はとてつもない失敗をしたし、それが遠因でたくさん悲劇を起した身だから、これ以上は言わない。だけど、ちゃんと覚えておくんだ」
それは、罪を犯した井草だからこそ説得力がある言葉だ。
不甲斐ない大人に変わって、井草・ダウンフォールは嫌われ役を買って出てでも、将来重職に就くだろう九重に、教えなければならない事を教える。
「君の行動は、本当に戦争を引き起こしかねなかった。酷い話だけど、君は普通の子供より責任がある事を忘れないように。……いいね?」
「う、うむ! わかったのじゃ」
その素直な反応に、井草は苦笑するとイッセーに向き直る。
「で、被害を受けたイッセーはどうするんだい?」
「いや、俺は特に何もないですけど?」
むしろ、井草が何かしすぎだとすらイッセーは思っている。
過去にやらかしてしまった経験があるからこそ、井草はこういう時に積極的に大人として示しを付けたり、道を踏み外させないように行動する。
イッセーもその恩恵を受けた一人であるので、ちょっと苦笑してしまいそうになる。
とは言え今は九重の事だ。イッセーはとりあえず、井草に倣って目線を合わせる。
「えっと、九重だっけ? お母さんのこと、心配なんだよな?」
「と、当然じゃ」
「だったら間違える時もあるさ。そりゃ井草さんの言う事は正論だけど、ちゃんと九重は間違っていたって知ったから、謝ってくれたんだろ?」
「う、うむ……」
その言葉に頷いて、イッセーは九重の肩に手を置いて、微笑んだ。
「だったら、俺はもう何も言わない。ケジメは井草さんがつけすぎたぐらいだしさ」
その言葉に、九重は先ほどの手刀とは別の理由で涙目になる。
「……ありがとう」
そのお礼に頷きながら、イッセーは立ち上がる。
そして、アザゼルとロスヴァイセはほっこりとした表情だった。
「流石は子供のヒーロー、おっぱいドラゴン」
「はい、冥界の英雄と言われるだけはありますね」
「ま、まさかおっぱいドラゴンを京都で布教するなんて……っ! れ、レヴィアたんも負けないんだから! 魔法少女は女の子の夢なんだから!!」
セラフォルーは何やら対抗意識を燃やしていた。
そして、そこにゼノヴィアが井草の方を向く。
「仮面ファイターレセプターも布教したらどうだ?」
「あれは、子供向けじゃないからね?」
DシネマはVシネマの冥界版なので、子供を対象にしていない。むしろ十八歳以上推奨だ。
情操教育にも悪いので、井草はモデルとしての布教活動をする気は欠片もなかったりするのだった。
自分がやらかした自覚はあるので、その辺に関してのケジメつけはきっかりするタイプの井草。しかしいちゃつくときはしっかりいちゃついたりします。
まあ気づいているとは思いますが、最近スランプ気味だったりします。しかし伊予と五十鈴の決着までは書きたい……!
それはともかく新しいネタまで思いつくから困ったもんだな感じです。……詳しくは活動報告で。