混血堕天使が幼馴染を邪悪な外道にNTRされたので、更生したおっぱいドラゴンとゆかいな仲間たちと共に、変身ヒーローになって怪人たちと戦いながら罪を乗り越えていくお話 旧題・ハイスクールE×E   作:グレン×グレン

99 / 157
斬りどころが難しくて長くなりました……。


6話

 

 そして、屋敷の奥に連れられて井草達は事情を説明される。

 

 京都の妖怪達を束ねる存在。九尾の狐が一匹、『八坂』。

 

 彼女は、須弥山のトップである帝釈天が送ってきた使いと歓談するべく、数日前にこの屋敷を出た。

 

 しかし、その会談の場に八坂が姿を現さなかったのだ。

 

 当然これは大騒ぎだ。京都側が慌てて調べたところ、同行していた烏天狗の一人が瀕死の状態で見つかった。彼はすぐに死んでしまったが、かろうじて伝えてきた事がある。それが、霧に包まれたという言葉だった。

 

 そこで大慌てになった京都の妖怪達が怪しい者をしらみつぶしに探しに行った結果、たまたまいやらしい願いをしていたイッセーだったという事だ。そして襲撃したところを五十鈴が見つけ、割って入ってたまたま見かけたらしき英雄派の情報を出して誘導したという事である。

 

 そして実際に英雄派のメンバーを京都の者が発見して小競り合いが勃発したらしい、そのうえで、アザゼルとセラフォルーも接触して事情を説明した事で、禍の団が関与しているという判断になった。

 

「……総督殿、魔王殿。八坂様を助ける可能性はないだろうか?」

 

「まあ、たぶんまだ生きてるだろうし、可能性はまだあるだろ」

 

 と、妖怪の代表にアザゼルはそう伝える。

 

 どういうことかよく分かっていない井草達に、アザゼルは京都を示す。

 

「京都は世界有数の術式都市だ。その今の中枢である八坂姫が京都にいなかったり死んでたりしてるのなら、この辺りの場が乱れてなきゃいけねえ」

 

「えっと……。つまり、異常が発生してない事が八坂さんって人が生きている証拠って事ですか?」

 

 イッセーが自分の中でかみ砕きながら確認すると、大人達が頷いた。

 

「そうだ、八坂姫の姿を知らなかったな。絵姿でよければすぐに出せるぞ」

 

 その妖怪の配慮で、八坂姫の絵が描かれた巻物が開かれる。

 

 そこに描かれているのは、九重の面影のある美人の姿。因みに巨乳である。

 

 イッセーが本能に忠実になってにやけているので、気づいたアーシアが嫉妬で太ももをつねるのはご愛敬だ。

 

 そして、それが目に入っていない九重はお辞儀をする。

 

「頼む。……いや、お願いします。どうか、母上を助けてくださいませ」

 

 その姿に、誰もが英雄派に対する怒りを覚えた。

 

「任せてくれ! 八坂さんは、俺達が必ず助け出す!!」

 

 イッセーが即座に返答する。

 

 それは良い。むしろ、そういうところがあるからこそ子供達のヒーローをやっていられるのだろう。おっぱいドラゴンの面目躍如である。

 

 だがしかし―

 

「イッセー。流石に鼻血を流しながらってのはどうかな?」

 

 ―井草のツッコミに、イッセーはようやく自分が鼻血を流している事に気づいて大慌てした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、井草は屋上で一人黄昏ていた。

 

 ……この話がスムーズに進んだ理由の一つは、五十鈴の提供した情報だ。

 

 英雄派は、術式都市と龍王クラスを用意して、何かを企んでいる。その事実は、アザゼルの頭脳と現状が結びついた結果、八坂姫の生存の可能性をとても上げた。

 

 それどころか、五十鈴が速やかにその情報を妖怪側に提供しなければ、イッセー達との小競り合いで怪我人が出ていたかもしれない。

 

 五十鈴には感謝してもし足りない。本当に、一度会ってお礼を言いたい。

 

 だが同時に、井草はそれだけでは止まらないと自覚していた。

 

 抱きしめたい。謝りたい。取り戻したい。

 

 その感情を抑えきれないだろう。それほどまでに、井草は五十鈴に想いを寄せていた。

 

 圧倒的にふざけた話だ。

 

 井草・ダウンフォールはリム・プルガトリオとニング・プルガトリオの2人を同時に愛するなどと決意したのだ。

 

 そのうえで幼馴染まで毒牙にかけようなど、何を考えていると糾弾されるかもしれない。

 

 何より、五十鈴自身がそれを望まないだろう。

 

 彼女は間違えて、井草を傷つけた。

 

 その果てに、伊予を変貌させた。

 

 そして井草に憎まれる事で贖罪しようと、悪逆の側に立った。

 

 戻れと言われて戻るのならば、そもそも既に投降しているだろう。そう言われれば返す言葉もない。反論の余地すらない。

 

 だが、しかし、それでも。

 

 井草・ダウンフォールは五十鈴や伊予との日常が、掛け替えのない宝だと痛感した。

 

 井草・ダウンフォールはそれを取り戻したいと、今でも願っている。

 

 井草・ダウンフォールは、枢五十鈴の隠された一面を知って、それを受け入れた。

 

 ……どうしたものかと自分でも思ってしまう。本当に、どうしたものか。

 

 そんなことを悩んでると、いつの間にか背中に柔らかい感触があった。

 

 未発達の少女の身体。それも、2人分。

 

「リムに、ニング?」

 

「そりゃそうじゃねえですかい?」

 

「すぐに気づいたのは嬉しいのですよ」

 

 そう苦笑する二人に、井草はちょっと恥ずかしくなる。

 

 二人は、五十鈴を取り戻す事を認めてくれた。そして、その勢いでプロポーズ迄した時、喜んでくれた。

 

 既に決めている覚悟を決め直す。そして、井草は考え直した。

 

「……ニング、リム。その、言いたいことがあるんだけど」

 

「なんなのです♪」

 

「ふふ~ん?」

 

 何なのか分かり切っているうえで、あえて二人ともそれを聞くまで待ってくれている。

 

 それに感謝しながら、井草は言い切った。

 

「……卒業したら、冥界で結婚式を挙げたい」

 

 言った時点で、ものすごく真っ赤になっているのが分かる。

 

 そして、ニングの井草を抱きしめる力が増大化した。

 

「……子供、産める身体じゃないのですよ?」

 

「かまわない。俺を助ける為に大事な物を捨ててくれたんだ。それぐらい背負わせてくれ」

 

 ニングの言葉をそう切り捨てると、井草は振り返って微笑んだ。

 

「俺を救って許してくれた、大事な未来(二人)と一緒にいたい。これが、俺の本音だよ」

 

 ああ、そのために、井草・ダウンフォールは全てを掛けよう。

 

 ……大事な過去(二人)を取り返し、今手元にいる未来(二人)を裏切らない。

 

 そう、井草は決意して―

 

「……なら、今夜は三人仲良くしましょうかねぇ?」

 

 ―と、リムのニヤついた笑みを見た。

 

 その手にあるのは、駒王学園生徒に与えられた部屋とは違う、ホテルの部屋の鍵。

 

「こんなこともあろうかと、上層階の部屋を一つ予約してるんでさぁ」

 

 そういったリムは、ぺろりと唇を舐め、井草とニングの頬ずりする。

 

「……複数人でのハーレムプレイ、先ずは練習しやしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にそのまま眠りはしなかった。とだけ伝えておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日、井草たちの班は何人か寝不足だった。

 

 ついでに言うと、井草は寝不足とは別の意味でげんなりしていた。

 

 結局、ロスヴァイセにバレてしまった。

 

「……井草さん。修学旅行で羽目を外しすぎないでください。他の先生方には内緒にしますが、ばれたら面倒ごとになる行動ですよ、これは」

 

「すいません。テンションが上がって賢者タイムに入るまで頭が回りませんでした」

 

 ロスヴァイセの小声の小言に、井草は素直に頭を下げる。

 

 ちなみに、リムとニングも説教確定である。一応武士の情けでメールでばれた件は伝えている。離れたところでは二人が慌てていた。

 

 賢者タイムに入った事で冷静になった井草はすぐさま部屋に戻ったのだが、其処では既にイッセーが就寝していた。

 

 そこで油断してすぐに自分も寝たのだが、どうもその前にロスヴァイセは部屋に入っていたらしい。

 

 井草・ダウンフォールが品行方正なのは知っている。だがいないという事は何かあったのだろう。そして、井草はつい最近リムとニングに告白して受け入れられたばかり。

 

 そこから帰結してカマを掛けられ、井草は素直に白状したというわけである。

 

 ちなみに、ゼノヴィア達が井草がいない隙にイッセーの部屋で子作りを敢行しに来たらしく、ゼノヴィアから「仲間!」的な視線を向けられている。困ったものだ。

 

 そして勝ち組負け組がはっきりしているので、詳細を知られるとややこしい事になるかもしれないと、井草は戦々恐々としていた。

 

「井草さんにしろアーシア達にしろ、なんか眠そうなのはどういうことかしら」

 

「……まさか、イッセーから寝取―」

 

「そこの眼鏡。それ以上言ったら本気で殴るからね?」

 

 最悪な勘違いをされかけたので、本気で釘を刺す。

 

 NTRなどするぐらいなら、井草は腹を切って死ぬ。それぐらいにはトラウマである。

 

 それはともかく。

 

 自由に観光できる日ではあるのだが、イッセー達はとりあえず駅前で待機中である。

 

 前回の騒動のお詫びという事で、九重がイッセー達を案内してくれる事になっているのだ。其の為、一旦駅で待っているのである。

 

 とはいえ、いきなりの事なのでよく分かってない者もいる。

 

 そのうちの一人である松田は、首を傾げてイッセーに質問してきた。

 

「しかしイッセー。なんでまだ出ないんだ?」

 

「いや、京都を案内してくれる奴がいるんだよ。その子を待ってるんだけど……」

 

 イッセーが、待ち時間を確認しながら辺りを見渡したその時だった。

 

「おお、見つけたぞイッセー!」

 

 ちょうどそのタイミングで、狐耳だけを隠した九重を駆けよってきた。

 

 井草はなんとなく周囲を確認するが、どうやら彼女だけらしい。

 

「イッセー。おまえこんな子供をナンパしたのかよ?」

 

「うっひょぉおおおおお! 小さくて可愛い!!」

 

「イッセーなにこの子! マジで可愛いじゃない!!」

 

 と、三者三葉で九重に視線を向ける。

 

 とりあえず、井草はそれとなく誤魔化す事にする。

 

「彼女は九重(くのお)っていって、アザゼル先生や会長のお姉さんの知り合いの子供なんだよ。今は事情があって三人とも席を外してるんだけど、少し前に色々あったから観光案内をしてくれるってことになってね。いわゆる特別ゲストってやつだよ」

 

 とりあえず、嘘にならない程度の情報をあたえてお茶を濁す。

 

 まあ、実際問題現地に慣れている人がついているだけでも効率はだいぶ変わるだろう。

 

 それに、九重にとっては気晴らしにもなる。

 

 どちらにしても、修学旅行の間に八坂姫が見つかる可能性は低いだろう。なら、駒王町の担当が基本の自分達はこれぐらいのサポートで十分のはずだ。

 

 そう考え、井草は空を見上げる。

 

 ……修学旅行が終わったら、アザゼルに頼んで京都に派遣してもらおう。

 

 そうでもしなければ、五十鈴に会えない気がするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして天竜寺、二尊院、竹林の道などを案内してもらい、今は九重おススメの湯豆腐屋で昼食をとっている。

 

 一口食べて、井草はかなり唸った。

 

「いいね。出汁も聞いてるし、ポン酢も豆腐のいい味してるよ」

 

「井草さん。あなたけっこう趣味が渋いのね」

 

 食レポ一歩手前になっている井草の感想に、桐生は感心している。

 

「和の味、いいな」

 

「はい、いつもお家で食べているお豆腐とは何かが違います」

 

「日本の味……いいわぁ」

 

 教会トリオもご満悦である。松田や元浜もかなり唸っている。

 

 そして満足げな九重だが、しかしなぜかしんみりいた。

 

「此処の湯豆腐も良いが、やはり母上の湯豆腐が一番好きじゃ……」

 

 その言葉に、事情を知る井草達はしんみりとなる。

 

 そして、できる限り力になろうと皆が決意しながら食べ終え―

 

「ん? おまえらもここで昼食とってたのかよ」

 

 と、お猪口を傾けているアザゼルと遭遇した。

 

 隣にはロスヴァイセが座っており、困り顔だったりする。

 

「ちょ、アザゼル先生!? 教師が昼間っから昼酒はいかんでしょう!!」

 

 イッセーは即座にツッコミを入れるが、しかしアザゼルはどこ吹く風だ。

 

「いいじゃねえか。こっちは京都の調査がひと段落ついたんだぜ? ガス抜きぐらいさせてくれや」

 

「……諦めた方がいいよ、イッセー。この人こういう人だから」

 

 平然と寝言を起きて言うアザゼルに、井草はため息をついた。

 

「おいおい、酒を教えてやった俺になんて口だ」

 

「教わったのは未成年の頃ですけどね」

 

 そう井草はため息をつく。

 

 あの頃はただのピスの親戚だとばかり思っていたのだが、まさか堕天使の総督だとは思わなかった。

 

 かなり悪い遊びを教わった気がする。上司運はもしかすると悪いのではと、井草はふと思い―

 

「……ごめんくださーい! ここ、昼酒やってますかー?」

 

 ……聞き覚えのある声がした。

 

「やってるなら一番高いお酒と、それと一番相性のいいメニューを……」

 

 そして、相手も井草たちに気づいた。

 

 二十歳ぐらいの、茶髪の女性。

 

 髪型は軽くそとはねしているミディアムヘアー。目つきからして活発な印象を与える、サバサバした感じの女性。

 

 単刀直入に言おう。枢五十鈴だった。

 

「……あ、用事思い出しちゃった。これ、騒がせ賃ね?」

 

 速攻で一万円札を近くのお盆に置くと、五十鈴はわき目を振らずに全力で走り去った。

 

「逃がすかぁああああああ!!!」

 

 井草もまた、周りを一切無視して全力疾走で走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってよ待ってよ待ってよ待ってよ待ってよ!!」

 

「待たない待たない待たない待たない待たない!!」

 

 二人は全速力で逃走と追撃を行っていた。

 

 そのスピードは、ここが人間世界だということも自分たちが人間離れした身体能力を保有することも忘れた、完全な本気モードである。

 

 時速数十キロは普通に発揮し、速度制限のある道次第では、車を追い抜くことすらあった。

 

「お願いだから待って! 話がしたいんだ!!」

 

「話すことなんてないでしょう!」

 

 五十鈴を止めようとする井草に、五十鈴は全力で逃走する。

 

 本気で必死に五十鈴は逃げるが、井草もまた必死に追いかける。

 

「謝りたいんだ! 今までのことを!」

 

「必要ないでしょ! 悪いのは、全部私なのよ!」

 

 五十鈴は本心からはっきりとそう言い切った。

 

「勝手に嫉妬して! 勝手に裏切って! 自分勝手な贖罪をしようとして!! 私に、井草のそばにいる資格なんてない!!」

 

 そうはっきりと言い切りながら、五十鈴は其のままさらに速く走り―

 

「……ふざけるな!!」

 

 ―井草もまた、怒りに身を任せてさらに走る。

 

「なにが資格がないだ! 資格があろうがなかろうが、五十鈴は俺の大切な人だ!!」

 

「あんた自分が何言ってるかわかってる!?」

 

 すさまじいことを言われて、五十鈴は顔を真っ赤にする。

 

 そのうえで全力疾走をする五十鈴もすごいが、井草も負けていない。

 

「わかってるさ! なくしてからようやく気付いた! 五十鈴は俺にとって、空気みたいに重要だった!」

 

 走って、走って、走って走る。

 

「だから、いて当たり前だと思い込んでたから、五十鈴をイラつかせてしまったんだ! 心から悪いと思ってる!!」

 

 逃がさない。逃がすわけにはいかない。逃がしたくない。

 

 その想いを足に乗せて、井草はとにかく駆けた。

 

「土下座しろというならいくらでもする! 殴りたいならいくらでも殴ってくれていい!!」

 

 それぐらいのことはされるつもりだ。それでいいなら安いものだ。

 

「そして五十鈴もしっかり償ってくれればいい! 死んで償えなんて言わないし、死ななくて済むように俺も頭を下げる!!」

 

 もちろん、五十鈴も償わなくてはならないだろう。

 

 だが、それでも死なないのなら何年でも待つ覚悟はあった。

 

 だから―

 

「お願いだよ五十鈴! ……戻ってきてくれ!!」

 

 それは、魂からの言葉だった。

 

 そして、五十鈴は―

 

「……無理よ」

 

 ―それでも、五十鈴は止まらない。

 

 そして、わずかずつだが井草との距離を話していく。

 

 捕まらない。捕まりたくない。捕まるわけにはいかない。

 

 そして、もし捕まったとしても―

 

「もう、私は手遅れ何だから!!」

 

 ―もう、意味もないのだから。

 

『ハストゥール』

 

 そして、人気のないところであるのをいいことに、イーツへと変身して飛び上がる。

 

 井草もまたレセプターイーツになってから堕天使の翼を広げようとするが、しかしそのタイミングで足をもつれさせて転んでしまう。

 

 直ぐに受け身を取って態勢を整えるが、その一瞬で五十鈴を見失ってしまった。

 

「………クソ!」

 

 思わず地面を殴りつけるが、それで五十鈴を捕まえることができるわけではない。

 

「……くそぉ……っ」

 

 眼に涙が浮かぶ。視界がにじむ。

 

 自分で言っていて、情けなさに気づく。

 

 井草・ダウンフォールにとって、枢五十鈴は大切な女性だ。

 

 一緒にいたいと、心から思ってしまう。

 

 ふざけた話だとは思う。リムとニング相手に告白をして、しかも逢瀬を交わしたうえで、感情的になっての発言とは言えこれだ。

 

 だが、しかし、それでも。

 

 井草・ダウンフォールは枢五十鈴が大事なのだ。行仁伊予と同じぐらい、大事な存在だと痛感した。

 

 それでも五十鈴は戻らない。

 

 手遅れだと、時間がないと、そう五十鈴は言った。

 

 ……その意味を、今だ井草は正しい意味で理解していなかった。

 

 そしてそれに気づくことなく、井草は携帯を取り出した。

 

 これ以上の我儘は許されない。すぐにみんなと連絡を取らなければならないだろう。

 

 そして、井草はとりあえずイッセーに電話を繋ぐ。

 

『井草さん!? 大丈夫ですか!?』

 

「……ゴメン、逃げられた」

 

 息を切らしているイッセーの声に、井草はかなり心配させてしまったようだと反省する。

 

 せめて移動しながら場所を説明する事ができればと思ったのだが、そうもいかなかった。

 

 とにかく合流しようと考えていたのだが、イッセー達は真剣な声でこちらに指示を飛ばしてくる。

 

『ホテルで合流しましょう。木場やニング達の班も、適当に理由をつけて生徒会と一緒にホテルに向かってくるそうです』

 

 その声は、急に現れた五十鈴というイレギュラーに関するものではない。

 

 それにすぐ気づき、井草も表情を切り替える。

 

 間違いない。どうやら、京都での大騒ぎはいきなり新展開に突入したらしい。

 

「何があったの?」

 

『英雄派の連中が、俺達に宣戦布告してきやがった……っ!』

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。