俺こと黒沢 鉄はひょんなことから雄英高校ヒーローを受験することになった。
雄英高校ヒーロー科。
ヒーローを志す人間だったら誰もが行きたいと思う偉大な場所だ。
オールマイト、エンデヴァー、ベストジーニストなどヒーロー業界のトップを走り続ける猛者達も皆、雄英出身である。
それ故、全国同科中で最も人気で難しいらしい。
そんな実力、地位、名声、全てを金揃えている学校にたかが一年頑張った程度で受かるものなのか。すんごい心配。
おっと、そんなことを考えながら歩いてたら学校に着いちゃった。
俺の通う学校は挨拶にうるさい。だから挨拶だけはいつもちゃんとしている。しないと校門の前で挨拶の前田に説教される。あいつの説教は30分もグダグダ同じことを言うから皆から避けられて当たり前か。
今日は進路相談がある。今日の進路相談は生徒指導室で担任と一対一で話す。
担任の先生は俺が雄英を受けるといったら何て思うだろうか。それが悩みの種である。
俺のクラスの立ち居ちはボッチではないが、表にでて輝けるような人間でもない。
簡単に略せば友達は少なく物静かな部類に属する。つまりは陰キャラだ。
そんなやつが雄英を受けると言ったら担任は心配するだろうな。
そして、その時間はやって来た。
トントン
「どうぞ入ってください。」
担任の穏やかな声に俺は少なからず心をほぐされた。
教室中にはいつもと変わらず背筋良く座っている茶谷先生がそこにいた。相変わらず座っている姿も様になる。俺の担任の茶谷先生は他の教師達にはない貫禄がある。
茶谷先生の前には俺の進路表がおいてあった。一番上の欄に赤い線が引かれている。そこは俺の第一志望高である雄英が記されていた。
「貴方とこうやって真剣に顔を向け合って話すのははじめてですね。」
先生が話をきりだした。
「…そうですね。」
「そんなに進路のことが気がかりですか?」
そう言うと先生は雄英高校と書かれた欄をペンの先で軽く叩いた。
「単刀直入に言うと、私は貴方と合ってまだ日は浅いですが貴方がヒーローを目指すのには納得ができます。」
予想外の答えが返ってきた。否定されると思っていたが。
「私が貴方の担任になってまだ日は浅いですが、貴方はヒーローとしての性質を持っています。」
「俺のどこをみて、そんなことを思うんですか?」
単純に疑問をぶつける。さっきも言った通り俺は陰キャ。
クラスという小さな枠でさえ発言力を持てないし人間にとって、ヒーロという職業は程遠い存在だ。
「貴方は自分のことを過小評価しすぎです。貴方は“その他大勢の一人”の枠に入るような人じゃありません。」
俺は自分を過小評価したことなんて一度もない。
「定期試験では常に学年でトップ3をキープしている。更に運動も出来る。去年の体育祭の選抜リレーではアンカーとしてビリからトップになってクラスを優勝へと導きました。陰キャとしての要素があるようにみえません。」
確かに自分でも潜在能力が全体を見渡して上位だということは自覚している。でも俺が言いたいのはそういうことではない。
「俺は人としてつまんないんです。コミュニケーション能力も高くはないし行動力もない。」
「本当に自覚がないんですね。貴方のそういう謙虚なところに惹かれる生徒は少なくありませんよ?」
全く知らなかった。俺は自分を卑下しすぎているのか。
「貴方がどんなヒーローになるのか楽しみです。」
茶谷先生は微笑みながらそう言った。
その後、俺は先生との雑談を楽しんだ。普段、他人には話さないこともさらけ出した。
先生の猫に顔を引っ掛かれた話しはツボッた。
教室を出たときにはもう迷いはなかった。
改めて雄英高校を受験しようと決心した俺であった。
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