これから、物語は始まった~~~
???SIDE
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・ズガッシャーーーーーーーン!!!!
過去最大級の地揺れによって、山の内部に建てられた立派な祠は見るも無残な姿と化した。立派にたたずんでいた祠は見る影もなく、今は瓦礫の山となっている。これでは、人が立ち入ることは容易ではない。その瓦礫がさらに崩れれば、下敷きになって生き埋めになる可能性もある。
その時だった――――――――
カッ!!!!ドォォォォォォン!!!!!!
突然、閃光が放たれ、爆風がこの地に起きた。その爆風によって瓦礫は吹き飛ばされる、もしくは粉々になってあれだけあった瓦礫の山が綺麗さっぱり消え去っていった。このようなことが自然に起きるはずもない。人為的な何かしらの力が働いたことだろう。その証拠に、そこにはなにやら人影が現れたのだ。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・・・・・・・
元祠があった場所には人が地を踏みしめて歩く音が聞こえてきた。
砂埃が舞う中、だんだんと現れてくる人影。背はそこそこに高い、体格からして男である。
「ふ~~~~~~。やっと、封印が解けやがった。中々時間がかかったなぁ」
こちらに歩いてくる人影から声が聞こえてきた。野性的な男の声だ。封印が解けた、とこちらに歩いてくる男は確かにそう言った。
「・・・・・ざっと――――――――――二、三千年ってところかぁ?肩が凝ってしゃあねぇぜ。ったくよぉ」
男は歩きながらゴキゴキと首を鳴らしていた。確かに、そのような膨大な年月をこんなところで過ごしていたらそうなるのは当然だ。こんな、火の光も当たらないような山の中ならなおのことである。
そして、砂埃の中から現れてきたのは、異様な雰囲気を纏った男であった。頭髪は黒と濃い紫色が入り混じっている長髪で、後ろで髪を縛っている。身長はおそらく百八十センチ後半といったところか。おまけに整った顔立ち。表に出れば女性の気を引き付けるであろう。そして特徴的なのが、右目は常闇のような黒色、左目は濃い紫色というヘテロクロミア。ヘテロクロミアとは、通称虹彩異色症。猫などにみられる虹彩とよばれる眼の組織の色が左右で違うという害のないレアな病気の一つである。人間には珍しいものだが、この男もその病気を持っているのだろうか?しかし、少なくとも実際に虹彩の色が違うのだ。はっきりと。
「おいこら、クソ女神にクソ勇者、てめーらの封印から復活してやったぞ?おい、早くあの時の続きをやろーぜ。数千年ぶりの心躍る戦いをよ!」
男はいまだに凝り固まった肩を揉みほぐしながらデカい声で言った。この山の中にある講堂に男の声が響く。しかし、ここには祠から出てきた男一人しかいない状況。男の声に反応するものなど、当然一人たりともいなかった。
「あ?おいおいおい、クソ女神にクソ勇者よぉ!出て来いよ!まさか、いないなんて最高につまらないことはないよなぁ?折角封印されている間テメーらを苦しませてぶち殺せる方法を考えたんだぜぇ?」
シーン・・・・・・・・
男の声はむなしくこの講堂にこだますだけであった。これには祠から出てきた男も動揺する。
「あれ?おっかしいな。あのクソ女神がいねぇ。まあ、勇者はよくよく考えりゃあ人間だもなぁ。とっくに死んでるか・・・・・てっきりあのクソ女神に神格化でもしてもらったかと思ったが。そうじゃないとしてもクソ女神はいるはずなんだがなぁ。勇者は・・・・・やっぱいねぇかぁ・・・・最悪子孫とかいればいいけどなぁ・・・・・・」
祠から出てきた男はこの事態にそうとう落ち込んでいるように見えるが、そうしていても仕方ないだろうと割り切っていた。
「とにかく、ここから出るか」
男はとりあえず、行動に出た。まずはこの山から外に出るようだ。出入り口に向かって歩いて行った。この男、先ほど言っていたことが真実ならこの山を吹き飛ばして外に出ることもできるだろう。しかし、あえてそうしなかった。何か理由でもあるのだろうか?
男は、通路をひたすら歩いて外へつながるの道を辿った。
「ふぅ・・・・・・これが、今の世界か・・・・・。」
先ほどから数十分で男は外に出た。男は数千年ぶりに見るであろう外の世界に目を向ける。その眼にはまるで子供のような無邪気さと凶悪さが映っていた。
「やっぱ・・・・
男は背伸びをしながらそう言う。確かに、誰に聞いても山の中の薄暗い、空気も悪いところより外のほうがいいと答えるだろう。
「っち・・・・。数千年ぶりに外に出たんだ。とりあえず記念に暴れてやろうと思ったが、魔力がすっからかんだ。簡単な魔法も使えやしねぇ。おそらくあのクソ女神の封印の作用かよ・・・・めんどくせぇ。しゃあねぇ、だったら予定変更だ。魔力が回復するまで、暇つぶしに観光でもしてやっか」
男は先ほど暴れまわるというとんでもなく恐ろしいことを言っていたが、それをどうやら辞めるらしい。観光など、先ほどの言葉からは想像もつかないような言葉だ。男は真新しい世界に少しばかり興味を持っているようだった。
男は空中に浮き、空を飛んでこの山岳地帯を後にする。そして、その山岳地帯から離れた町へ行くのだった。
「んだよこれ・・・・んな高い建物今までにあったかよ」
男は比較的大きな町にいた。先ほどとは打って変わって、周りにいるごく普通の一般人に溶け込むように歩いていた。そして、そびえたっている高層ビルを見上げている。それだけじゃない。ほかにも真新しいものがたくさんあった。人が乗っている自動車、鉄道、大量に立っている電柱。それは男にとっては初めて見るものであった。
男はそれらを見て回った。時々、女性が振り返って男に熱い視線を向けているが当然男はそれに気づいていない。しかし、そんな中、とても勇気ある女性がいた。
「あ、あの!そこの不思議な色の髪をした人!」
「ああ?」
男に声をかけた素晴らしく勇気のある女性は顔を真っ赤にしながら男に突撃していった。褐色の肌に銀髪という美少女だった。
「こ、これから私と、ででで、デートを!」
「あ?デート?なんだそりゃ?つか失せろ。テメーに構ってる暇ねぇんだよ」
このレベルの美少女にこういわれては男なら必ず二つ返事で首を縦に振るだろう。しかし、この男にはそんなものはなかった。即行でこの少女をぶった切ったのだ。この少女は自身があったのかは知らない。が、この男に斬られたことで意気消沈。周りもざわついている。このちょっとした騒動に男は何事もなかったかのようにすたすたと歩いて行った。
「世界を回って探るか―――――――――」
男は復活してから世界を回った。情報を集めるために。戦う相手を探すために。ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北アメリカ、南アメリカと渡り歩いてきた。気配を完全に押し殺して。男はその間にも魔力は回復していた。そして、ある極東の島国に来ていた時だ。ここで、この男は思いもしない運命に巻き込まれることになったのであった。
―――――〇●〇―――――
ザッ!
男はこの極東の島国のとあるところにいた。その男のもとにとある人物が現れた。
「・・・・・何の用だ?」
男の意識が現れた者に向いた。今までこの世界を回ってきた男は幾度となく人間を見てきた。しかし、今、ここに現れた人物は違った。明らかに恰好に加えて視線も殺気も違ったのだ。しかし、男はこれを見極められないわけではなかった。
「此処であったな、邪悪なる存在が!!勇者の末裔であるこの俺が!!貴様を滅ぼしてやる!!!」
この者は勇者の末裔と自身で名乗った。これ以降勇者ということにしよう。勇者はありきたりな言葉を言い放ち、腰に携えた剣を抜刀した。白を基調とした鎧を身にまとい、その手には剣。
「・・・・・勇者の末裔、か。その剣、ただの剣じゃねぇな」
男は勇者を冷めた目で見る。しかし、油断はしていないようだった。勇者が持っているのはただの剣ではないことも見抜いている。
「そうだ。邪悪なる存在を葬るために受け継いだ聖剣の錆になるがいい!!」
勇者は戦闘態勢に入っていない男に猛スピードで接近し、剣を男に振った。
ニヤリ
男はまるで余裕というばかりの笑みを見せ、それをゆうゆうと躱した。寝そべっていた体制からとは思えないようなスピードだった。
勇者も当然これでやれるとは思っていなかったらしく、涼しい顔をしていた。
「(まさか・・・・・こんな島国で勇者の末裔に遭遇するとはな・・・・・)」
男は勇者は聖剣を駆使して男に反撃の隙を与えないように攻撃を繰り出す。しかし、それは男には当たらない。男は勇者の剣戟を交し続けながら勇者を観察していた。おそらく勇者の力を見極めているのだろうか。聖剣は魔のものには無類の強さを誇る。この男が邪悪なるものならば、いくら格の低い聖剣でも多少の効果はある。しかし、男はそれ以外の力を見ようとしている。
「ちぃっ!素早いやつだ」
「はんっ!テメーが鈍いだけじゃねーのか?」
「言ってくれるじゃねぇかよぉ!!!」
男の挑発に激高した勇者。それに対してまるで狙い通りと言うかのような笑みを浮かべている男。相手を怒らせることに長けているのか。
勇者は剣を持っていない左手で何やら魔法陣のようなものを出現させていた。
「魔術か・・・・」
「ああ、そうさ。貴様をこの手で葬るためにな!!」
男は勇者のそれを魔術だとすぐに見破る。男はどうやら魔術、魔法の方面にも精通しているようだった。魔術と魔法は同一のものと考えるものがたくさんいるが、厳密には違いがいくつもある。かといって、まったく違うものかと言われたら素直にうなずけるものでもない。似通った面もある。
勇者はそうとうなレベルまでに磨き上げた剣術に加えて魔術による攻撃を織り交ぜてくる。
「なるほどな・・・・それなりには、修行を積んできたようだな。だが、お前レベルのやつを俺は幾度となく見てきたぜ?」
男はまるで見慣れているかのようにその攻撃を躱していく。炎、水、風といった魔術の攻撃に鋭い剣戟。それらをすべて完璧に避けている。勇者は攻撃を全く当てられないでいた。攻撃を当てられないことで、だんたんと焦りが見え始める。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、・・・・・・・・何故だ・・・・?何故なんだ!!俺が攻撃を、当てることすらできないだとっ!?」
勇者が目を血走らせながら叫びの声を上げた。それをあざ笑うかのような目で空中から見下している男。不気味な雰囲気を浮かべ、まだ余力を残しているようだ。この男の底が知れない。
「弱ぇなぁ。お前。ほんとに勇者の末裔なのかよ?俺が戦った勇者はそれはそれは強かったぜぇ?まあ、俺が人間の姿っていうのもあるがな。にしても、いいな。この姿。こちらのほうが動きやすい。」
「貴様ぁ!!!!」
勇者はさらに激高した。頭に血が上っているのは明確。そのおかげで、男はよく考えればとんでもないことを口にしていたが、頭に血が上った勇者はそれに気が付くことはない。
勇者は魔術を発動させ、男の動きをガッチリと止めた。
ザシュッ!!!!!
その隙を見逃さず、勇者は先ほどとは比べ物にならないスピードで接近し、その聖剣で男を切り裂いた。
ブシュッ!!!
男の体から鮮血が勢いよく噴出している。
「・・・・・・んだよ、やりゃあ少しはできんじゃねぇか」
斬られた男は勇者に称賛の声を上げる。しかし、斬られてもなお、まだまだ余裕といった表情を浮かべている。どこまでも相手を見下していた。
「まだだっ!!!」
勇者はすかさず、聖剣を男に叩き込んだ。
「ゴホッ!」
聖剣は男の胴体、心臓部分に突き刺さっていた。大量の血がドクドクと流れ、口から血の塊を吐き出した。
空中にいた男は刺されたことによって、空を飛ぶ力もなくなり、そのまま地に落ちる。
その様子を見た勇者は・・・・
「ハハ、ハハハ!!やったぞ!この邪悪なるものをついに倒した!!我が一族の念願をとうとう――――――――――――」
グサッ!!!!
勇者が喜んでいたのも束の間だった。勇者が言い終わる瞬間に鈍い音が勇者の体から聞こえた。
「え・・・・・・?グサッ・・・・・・?」
勇者はありえない音が聞こえたことに顔を青くして自分の体に目を向けた。
するとそこには、自分の体を貫いている一本の紫色の槍。血がとめどなく流れていた。
「ゴボッ!・・・・・・・な、なんで・・・・・」
勇者は倒れ伏した。何故、自分がこうなっているかもわからないまま。
「よお、勇者。どうだ?俺からのプレゼントだ。いい夢は見れたか?俺を倒す夢はどうだった?」
「な、なに・・・・・・?夢だと・・・・?」
そこには、傷一つない男が勇者を見下ろしていた。勇者は理解できなかった。確かに勇者は男に聖剣を突き刺して止めを刺したはずだった。しかし、男はそこでぴんぴんしている。勇者は残り少ない時間で思考を巡らせる。
「幻術だと・・・・・・?」
「そうだ。お前は幻術を見ていたのさ。良かったな。夢とはいえ、俺を倒すことができたんだからよぉ。まあ、いい運動にはなったぜ。勇者」
「ち、ちくしょぉ・・・・・・・」
男は勇者に止めを刺す。勇者は跡形もなくこの世から消え去っていった。勇者相手に幻術を掛け、それだけで倒してしまった男。この男が本気を出せば、とんでもない被害になりそうなことは言うまでもない。が、そうはならなかったのだ。
「あん?なんだよ。まだいたのか?」
勇者が男に敗れ去ったあと、すぐまた男に立ちふさがる者がいたのだ。この場を離れようとした男の意識が現れた者に向く。こんどは、その者が男を見下ろしていた。その者とは――――――
はい、いかがだったでしょうか?
まだこの段階ではわからないと思いますが、次回で何となくつかめるかと思います。