12.親友
パクノダさんに質問されて、俺は過去を振り返った――。
あの日は、雨が降っていた――。
「無様だな・・・。」
シドリアの声が聞こえた。
ボロボロにやられた俺は、動くことも、声を出すこともできなかった。
その言葉に俺は救われ、あの言葉がきっかけで、シドリアは俺の親友になったんだ。
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ニコラス=ポートネスは、その港町を牛耳る存在だった・・・。
ヨルビアン大陸のサヘルタ国北部に位置するシムズ市という港町だ。
ニコラスは、自分の祖父の代から続いた「ポートネス海運」をヨルビアン大陸にとどろかす程に大きくした。
先代までは、いくつかの小さな貨物船だけを運用する地元密着型の小さな商売だったらしい。
しかしながら、丁寧な仕事、厳重な倉庫管理、貨物を確実に届けるという評判で、同業者の中でも信頼されていたそうだ。
だが、ニコラスが継いでから、その規模を圧倒的に広げた。
代々続いた家業で蓄えた金のほとんどを投資に費やしたのだ。
ニコラスは野心家であるのと同時に、先見性があった。
実は、今でこそ当たり前のように運輸業に飛行船が使われているが、最初にそれを始めたのが、ニコラスだったそうだ。
ニコラスが35歳になる1980年には、「ポートネス海運」はピークを迎え、30隻の貨物船と4隻の貨物飛行船を所有しており、年商500億ジェニーを越えていた・・・。
その年の終わり、1980年12月12日にガルナ=ポートネス、つまり俺が生まれた。
裕福な家庭に生まれた俺は幸運だったと思う。
しかし、父は仕事の為に、ほとんど家に帰ってこないし、母は教育に厳しく、頭が悪く覚えが悪い俺は、家ではいつも泣いていた・・・。
俺が3歳くらいのある日、いつも遊んでいる公園で初めて彼に出会った。
俺がブランコをジッと見ていると、痩せてガリガリの身体の子が言った。
「あれに乗りたいの?」
無言で頷いた俺は、その子に背中を押してもらうつもりで、ブランコに乗った。
しかし、その子は押すフリをして、うまくブランコを漕げない俺をケラケラと笑って見ているだけだった・・・。
その子の名前は、ジョニー=ロトス、2歳年上の男の子だ。
ジョニーは会うたびに色々な方法で俺をからかい、楽しそうに俺をいじめた。
しかし、俺は、いじめられて泣きながらも、何故かジョニーについていく。
そうしていつの間にか、俺はジョニーと遊ぶようになっていた・・・。
ジョニーとの遊びは、兄弟もいない、両親も遊んでくれない俺には初めての連続だった。
ジョニーは、俺が知らない遊び方を色々知っていた。
いつも夜暗くなるまでジョニーと遊んで、泥だらけになって家に帰って母に怒られる日々・・・。
とても楽しかったし、幸せだった。
そんなある日、事件が起こった。
俺が5歳の7月頃、珍しく父が家に帰ってきた日があった。
その日の夜、久しぶりに家族揃って出掛けて、たまたま町に来ていたサーカスを見に行った。
俺は夢中になった。子供の俺にも分かる。鍛え抜かれた技、演技のどれも素晴らしく、感動した。
次の日にジョニーに会うと、早速サーカスのことを話した。
ジョニーは、興味を持ったらしく、俺とジョニーはその夜、一緒にサーカスに行くことを決めた。
夕食後、俺は母と使用人の目を盗んで外に出た。
5歳にしては、かなりの冒険のように感じた。
屋敷の外に出たとき、俺は余りの嬉しさに、思わず笑った。
――いつもの公園、そこにジョニーが待っている!
俺はそんな期待を胸に走り出した。
夜の公園は昼間とは大分違っていた。
街灯の灯りしかなく、人気もない。
その公園のベンチにジョニーがいた。
俺は小さく挨拶すると、ジョニーと一緒にサーカスに向かった。
俺は当時、「お金」の意味を知らなかった。
買い物は使用人任せだし、レストランでもカード払いで、紙幣を見たこともなかったからだ。
苦労知らずの子供だったと思う。
だから、ジョニーに連れられて、サーカスの裏口から入った意味が分からなかったのも無理はないだろう。
サーカスは何度見ても面白い。
俺達は夢中になって、歓声を上げていた。
ジョニーも夢中になり過ぎて、背後の黒服の男に気付かなかったらしい。
すぐに、俺達はサーカスのテントの外に摘まみ出された。
ジョニーは怯えた様子だったが、俺はキョトンとして、文句を言った。
「まだ途中なのに何するんだよ!?」
「おい、ガルナ――。」
ジョニーが止めようとしてきたが、俺はその言葉を気にせず、黒服の男を恐れもせず、サーカスを見ようと、俺はテントに向かって歩いていった――。
最後の記憶は、飛び飛びだった。
夜の星空、黒服の恐ろしい形相、ジョニーの青ざめた顔――。
俺は、空を飛んでいた。
俺が気付いたとき、病院だった。
最初は意味が分からなかった。
だが、隣のベッドにいる少年を見たとき、全てを察した俺は絶望した。
その少年の顔面は判別が難しい程に腫れて、赤毛の髪は半分ぐらいが抜け落ちている・・・。
その少年はジョニーだったのだ。
俺は、意識を失ったままの親友の姿を見て、涙した。
後で知ったが、あの黒服の男はサーカスの興行中に雇われていた警備員だったようだ。
俺はその警備員に蹴りをくらって、吹き飛ばされて気絶していたらしい。
そんな俺を、ジョニーは必死に俺を守ろうとしてくれたそうだ。
あのジョニーが、警備員に髪を引っ張られ、投げられ、蹴られ、殴られ、それでも俺の身体を覆うように守ったのだ。
ジョニーの怪我は、顔面打撲、全身打撲、あばら骨4本骨折、左腕骨折という、およそ7歳児の子供が負ってよいものではなかった・・・。
俺のこと、正確に言えばニコラス=ポートネスの子供のことを町で知らない人間はいない。
黒服の警備員は余所者なので、俺がただの子供だと思ったのだろう。
しかし弁解の余地などなく、あの警備員はまともな最期を迎えることはない・・・。
ガラガラ、という音と共にノックもせず病室に入ってきたのは、父のニコラスその人だった。
父は、溜め息をついた後、ジョニーを見て言った。
「ガルナ、お前はこの子の生まれを知っているのか?」
俺は、父の言葉が全く理解できずにいた。
「ジョニーの生まれ?」
俺が困惑しながら、そう言うと父が答えた。
「知らないか。この子はシムズ市内の西側にある貧民街の生まれだ。もしかしたら――。」
最後に何かを言い掛けた父は、コホンと咳をしてから話を続けた。
「ガルナ、お前はもう、この子と遊ぶな。今回のことも最初からこの子についていかなければ――。」
「いやだ!!」
俺は泣いてそう言った。 自分でも理由が分からなかったが、ひたすら泣いていた。
「そうか・・・。」
俺の目を見て、父は険しい表情でそう言うと、すぐに病室から出ていった・・・。
病室の外に控えていた部下に、父が何かを言っているのがちらりと見えた。
父は自分が決めたことを覆したことはない。
俺は絶望しながらジョニーを見て、ひたすら謝罪の言葉を繰り返していた・・・。
その後、俺がいつの間にか泣き疲れて寝てしまっていると、ジョニーに起こされた。
「やあ!ジョニー、起きたの?」
俺が寝ぼけながら、嬉しそうにそう答えるとジョニーが凄い剣幕で怒鳴った。
「ガルナ、何考えてるんだよ!?あんな強そうな大人に逆らうなんて――。」
「・・・ごめんなさい。」
俺が謝ると、ジョニーは笑って答えた。
「まあ、君の怪我が大したことなさそうで良かったよ。それより、ここは病院かな?俺、金ないからマズイんだよな・・・。」
俺は首を傾げながら聞いた。
「『カネ』って何?」
俺の言葉に、ジョニーは驚いた顔で答えた。
「金ってジェニーだよ。君、今までどうやって生きてきたの?」
俺が困惑していると、ジョニーが説明してくれた・・・。
世の中は全ての物やサービスに価値があり、その対価たるものが「お金」であり、ほとんどの国で使える共通通貨が「ジェニー」だそうだ。
俺が、そんなものを見たことがないという事実はジョニーを驚かせたようだった・・・。
さらに「貧民街」についても聞いた。
シムズ市は西側と東側で大きく貧富の差があるらしく、俺が住んでるのは東側の中でもかなりの富裕層が集まる町だということだった・・・。
説明し終わった後、ジョニーが言った。
「やっぱり金持ちは違うんだな。」
「俺の家って金持ちなのかな?」
ジョニーの言葉に俺はそう聞くと、ジョニーが笑い出した。
「いや、どう考えてもそうだろう。いつも良い服着てるし、屋敷も立派じゃないか。」
「そうなの?何でジョニーの家とそんなに違うんだろう。」
俺がそう言うと、ジョニーは悲しそうな顔をしたまま、何も言わなかった・・・。
ジョニーは入院費や治療費を気にしていたが、費用は全てポートネス家が支払っていた。
病院長からそう説明を受けると、ジョニーが泣いて喜んでくれた。
俺は微妙な笑顔で、それに応えることしかできなかったけれど・・・。
父はもう病院に来ることもないと、俺は子供心に理解していた。
それからの入院生活は素晴らしいものだった。
ジョニーといつも一緒に話をして、一緒にご飯を食べる。
病院食は、家の食事より質素だったが、いつもより美味しく感じた。
きっとジョニーと一緒に食べるからだろう・・・。
逆にジョニーは病院食に感激していた。
普段は、まともな物を食べることもできないらしい。
ジョニーの痩せてガリガリな身体もそのせいだったのだ。
そんなある日、ジョニーが何かを描いていた。
どうやらジョニーは絵を描くのが好きで、暇なときはいつも絵を描いているらしい。
「この間のサーカスの絵を描いているんだよ。」
ジョニーは、そう言うと俺に絵を見せてくれた。
「すごく上手いね!1回見ただけで描けるんだ?」
「まだまだ描き途中だけどね。頭の中の映像に近付けたいんだけど、なかなか上手くできなくて――。」
俺の言葉に照れながらそう言うジョニーを、俺は心から尊敬した。
「――なるほど、瞬間記憶か。君は絵を描く才能があるようだな。今度、道具を買って送ってあげよう。」
突然、会話を遮ったのは、いつの間にか病室にいた父のニコラスだった・・・。父の隣には母もいる。
「ポートネスさん!ありがとうございます!院長から聞きました。俺の治療費や入院費を全て受け持っていただいたようで本当に――。」
「いや、馬鹿な息子を助けてくれたのだから、そんな大したことじゃないよ。あのときの君の行動は立派なものだった。」
ジョニーの礼儀正しい挨拶を受けて、父は朗らかにそう言うと、表情を一変させ、俺の方を見て言った。
「ガルナ、お前は警備員の指示に従わなかったようだな・・・。」
父の言葉に、俺は無言のままだった。
すると、ジョニーがおずおずと口を挟んだ。
「ガルナ・・・。謝れよ。」
「う、うん・・・。お父さん、ごめんなさい。」
俺がジョニーに言われた通り、父に謝罪した。
それを聞いた父と母は、突然笑い出した。
俺とジョニーは互いに顔を見合わせて、首を傾げた。
その様子を見て、母が笑いすぎて涙を浮かべながら言った。
「初めてなのよ。ガルナが誰かに謝るなんて――。」
母はそう言うと、父がその言葉を補足して言った。
「私達夫婦は子宝に恵まれなくてね。年を取ってから生まれた子供だったからか知らないが、ガルナは親の言うことを全く聞かない子に育ってしまったんだ。」
父は、ジョニーに対して、優しく丁寧に説明していった。
「そ、そうなんですか・・・。」
ジョニーが曖昧な笑いでそう返事をすると、父が言った。
「息子の命を助けてくれてありがとう。これからは私が君の経済的な援助をしていこうじゃないか。
良き友人として、これからもガルナの面倒をよろしく頼むよ。」
ジョニーに父は力強い声でそう言った。
父が言った言葉に、ジョニーと俺は2人で喜んでいた・・・。
そのときの俺は、ジョニーに対する父の態度が突然変わったことに、何の疑問も抱いていなかった・・・。
それから、ジョニーは絵を描く道具を買い与えられて、熱中していたようだ。
一方の俺は、怪我が完治したので、半ば強制的に退院させられて、9月から始まる私立学校の入学準備をしていた。
俺の入学式の日、初めて会う教師達が妙にソワソワしていたのを覚えている。
その頃から、俺は理解し始めた。
何もしなくても、周りの大人が俺に気を遣い、俺がどんなイタズラをしても怒られることはない。
今までも、無意識にそのような概念はあったが、他の子供と比較できる環境の学校という場で、俺は理解した。
俺は「特別」だということを――。
数ヶ月後にジョニーが退院すると、ポートネス家の援助でジョニーも俺が通っている学校に通い始めた。
貧民街に住んでいる頃のジョニーは学校に通うことができなかったので、授業も大変ではないかと、両親は心配していた。
しかし、元来ジョニーは賢く、すぐに学校の成績もトップを取り続けたそうだ。
またジョニーはスポーツも得意で、サッカーをやれば一躍ヒーローになっていた・・・。
いつの間にか俺は、ジョニーと一緒に遊ぶことはなくなっていた。
ジョニーとは学年が違ったので、授業が終わる時間も違ったし、何よりその頃の俺はクラスの友達と遊ぶことが多かったから――。
いや、違うな。正確には、無意識にジョニーを避けていたのかもしれない。
もしかしたら、子供ながらの打算的な考えを持ったのか・・・。
自分が「特別」ではなくなる、そんな考えが――。
俺が7歳、3年生のある日、俺は500ジェニーを握りしめて雑貨屋に走った。
近所の雑貨屋で1個500ジェニーくらいの高い駄菓子があったのだ。
その時代の街の流行だったそれは、近所の子供達の間でも大人気だった。
あのお菓子をゲットできれば、クラスでヒーローになれる、そう考えて俺は走った。
お菓子を買い、誰かに見せようと走っていると、ジョニーに出会った。
約3年振りに会ったジョニーは、以前と違って見えた。
ジョニーの形容し難いその表情を見ると、嫌な予感しかしなかった―――。
俺は号泣しながら、家に帰った。
お菓子を渡すのを拒否すると、ジョニーに殴られ、お菓子を強奪されてしまったのだ・・・。
子供心にも、悔しくて、負けたくなくて、親には絶対に言わなかった。
次の日から、ジョニーとの戦いの日々が始まった。
第2回お菓子争奪戦、ジョニーは9歳だったが、身体は相変わらずガリガリに痩せていた。
しかし背は高くリーチが違いすぎた。
なす術もなく一方的に俺はやられてしまった。
それから、親にお願いして、ボクシングジムに通った。
第62回目の菓子争奪戦の頃は、フットワークを覚えたおかげで、初めてジョニーに1発のジャブを当てた。
しかし、ジョニーは、怯まずに反撃してきて、俺はまた負けた。
第192回の頃は、基本的なコンビネーションも駆使して戦った。
しかし、習ったわけでもないのに、ジョニーはフットワークで華麗にそれを回避し、俺はジョニーのフルスイングのパンチをくらって負けた。
第425回、俺はスウェー、ダッキング、フットワークを駆使してジョニーのパンチを全て回避した。
俺はジョニーの懐にうまく潜り込み、ワンツーフィニッシュを狙う―――。
だが、俺の右ストレートは届かず、ジョニーの強烈なカウンターアッパーで負けた。
―――ジョニーに勝ちたい!
そんな思いで2年間休まずにボクシングジムに通い、毎日お菓子を奪われ、泣き、鍛え、ジョニーに怯え、それでもトレーニングを続けた―――。
そうして、9歳のとき、俺はボクシングの15歳以下の大会で優勝した。
しかし、それでも当時11歳のジョニーには1回も勝てなかった・・・。
俺は泣きながら、疑問を口にする。
「なんで、俺はジョニーに勝てないの?」
「ガルナが強くなる度に、それを見た俺も強くなるからだね。」
俺の質問にジョニーは小さく、笑いながら答えた。
俺はよく分からないまま訊ねる。
「いつか俺はジョニーに勝てるかな?」
「さあね。」
ジョニーはそう小さく、優しく返事をした。
俺が10歳になってすぐに、俺のクラスに転入生が来た。
彼の名前は、シドリア=ブライト。
いつもの公園で、俺とジョニーは構えをとる。
第995回お菓子争奪戦が始まった。
その攻防はおそらく、常人には見ることすらできない速度で、フェイントも入れれば、手数は互いに数百は越えたはず。
そして、また俺は負けた・・・。
シドリアは、何故か当たり前のようにそこにいて、俺達の戦いを見ていた。
そのときシドリアは何かを納得したかのように頷いていた・・・。
第100回頃から、戦ってる最中にお菓子が潰れてしまうので、勝敗を決してから買いにいくことになっていた。
いつも通り、2人で雑貨屋まで競争していたら、シドリアも追従してきた――。
かなりの速度で走ってる筈なのに、シドリアは無言のまま楽々とついてきていた・・・。
次の日、いつもの公園に行くと、シドリアが準備体操をしていた。
俺とジョニーは顔を見合わせてから、シドリアに尋ねる。
「昨日は見ているだけだったのに、どうしたんだい?」
「俺は極端に眼がいいんだよ。多分、ジョニーよりも――。」
そう答えたシドリアの目は自信に満ち溢れていた。
―――その日、第1000回争奪戦でお菓子を食べたのはシドリアだった・・・。
次の日から、3人で三つ巴の戦闘を繰り広げた。
俺がジャブを打ち、シドリアはそれを回避し、さらに背後からのジョニーの蹴りを、シドリアは見ないまま回避した。
俺は、そのタイミングで右ストレートを放つが、シドリアは上体移動のみで回避しながら、カウンターを入れる。
咄嗟に俺はガードすると、絶妙なタイミングでジョニーがシドリアの背後から右ストレートを放った―――。
その日はジョニーが満足そうにお菓子を食べていた。
しばらくの間、ジョニーかシドリアのどちらかが勝つ、そんな日々が続いた。
1023回目に、奇跡が起こった。
俺が、お菓子争奪戦で優勝したのだ!
初めて食べた、あのお菓子の味――。
「うぇ、噛み切れないし、めちゃくちゃ不味いんだけど・・・。」
俺が思ったままそう言ったら、2人に殴られた・・・。
学校が終わると、いつも3人で戦った。
勝敗はまちまちだったけれど、1戦を経験する度に3人の体術は、めきめき上達していった。
3人で戦うようになってから1年近く経った。
ある日、お菓子を食べながらジョニーが言った。
「いつか、『ジャポン』に行ってみたいんだ・・・。」
ジョニーの話によれば、「ジャポン」という国は、1970年頃に革命が起こってから徐々に他国と交流をし始めた島国だそうだ。
水の上を走ったり、分身したりできる「ニンジャ」や刀で何でも斬ることのできる「サムライ」がいるらしい。
俺は聞いているだけで、心が踊った。
そして、いつか一緒に「ジャポン」に行こうと、3人で固い握手をした。
その話をした次の日、その日は雨が降っていた・・・。
ジョニーは俺を夜の公園に呼び出した。
「今まで俺が、ガルナに意地悪していた理由が分かるかい?」
「え?分からないよ・・・。」
いつもと違うジョニーの真剣な言葉に、俺は戸惑いながら答えた。
すると、ジョニーはニコリと笑って言った。
「最初に会ったときは、妬んだから。何故か君と俺は仲良くなったけれど。
3年前に会ったときは、憎かったから。君は関係ないけれど。
今日は、殺したいと思ったから。できないから、やらないけれど。」
「どういう・・・こと?」
ジョニーの、心から笑ってない嘘の笑いを見て、恐怖を感じながら俺は聞いた。
「ある男が貧民街の女と関係を持った。その女は子供を授かったんだ。その子供が俺――。」
ジョニーはそう答えると、笑うのをやめて、言った。
「父親は、ニコラス=ポートネス。今日、俺に刺客を向けた男だ。」
信じられなかった。
嘘じゃないのか、いつもの冗談じゃないのかと、俺は思った。
しかし、ジョニーが歩いて街灯の下に立った瞬間、分かった。
ジョニーの服は血に塗れていた・・・。
雨が降っていた・・・。
ジョニーは俯きながら、小さな声で言った。
「母が死んだ後、父親の顔を一目見たくてこの町に来たんだ。でも弟と遊ぶのが楽しくなっていた。
偶然弟の命を助けたら、感謝されて経済的援助をされた。でもあれは本当はそういう理由じゃなかった。
3年前、あいつに亡くなった母のことを話した。そのときの、あいつの反応で気付いた。
あいつ、知ってたんだ。あのお金は全て口止め料だったんだよ。
そして、今日俺は初めて人を殺した。ニコラスが雇った刺客さ。理由は知らないけれど、俺が邪魔になったのかもね・・・。
人殺しの俺は、もうこの国にいることもできない。
残念だけど、お別れだ。」
「いやだ!ジョニーが行くなら、俺も行く!」
俺の叫びに、ジョニーは応えてくれた。
拳で――。
雨が、降っていた・・・。
また、負けた。
負けちゃいけない戦いだったのに、俺は負けたんだ。
俺は倒れたまま、何も考えることができなかった。
「無様だな・・・。」
シドリアの声が聞こえた。
ボロボロにやられた俺は、動くことも、声を出すこともできなかった。
シドリアは続けて言った。
「俺達は、非力だ。たった1人の親友も、助けられなかった・・・。」
シドリアも傷だらけだった・・・。
歩くのもままならない程の傷を負っている。
雨が、降っていた。夜の闇を涙に変えた。
シドリアが、泣いていた。自分の非力への感情を涙に変えた。
俺が、泣いていた。ごちゃ混ぜの感情を涙に変えた。
「強くなりたい。強くなって、ジョニーに会いたい。」
俺は、俺達は心の底から願ってそう言った。
雨が降っていた――。
【後書き】
第2章の過去編が始まりました(´ω`)
ちなみに第2章はブリッツ解散までの予定です。
そういえば、最近知ったのですが、PC版だと前書きと本編と後書きがくっついちゃうんですねΣ( ̄□ ̄;)
逐次分かりやすい表記にします!(ノд<。)゜。
それから、ヒソカの語尾に関してですが、確認作業をしたところ、今までのPC環境依存文字が毎回違うネットカフェでやったせいで、OSが全てバラバラでした(汗)
Windows7のUNICODEで統一するように全話修正いたしました。
PC版で表示されない方は、IMEのツール→プロパティ→記号辞書を追加する等の変更をしてみてください。
(設定によっては、記号辞書が外れてることがあるみたいです(^o^;))
お手数ですが、よろしくお願いしますm(__)m
次回【13.手荷物】