DUAL BULLET   作:すももも

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20.系統

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「はい、お茶でも飲んでなよ。

 悪いけど、試合したばかりで汗かいてるから、アタイはシャワー浴びてくるわ。」

 

 

 お姉さんは、部屋に入るとそう言って、シャワーを浴びに行った。

 

 同じ200階クラスだけれど、俺やシドリアの部屋とは違い、インテリアもお金をかけているようで、全く違う部屋に見えた。

 高価な家具だが、色彩や家具の種類には統一感があって、決して悪趣味になることはなく、お姉さんのセンスの良さを感じさせる。

 

 俺は部屋の中央にあるソファーに座ると、お姉さんの淹れてくれたハーブティーを飲んだ。

 

 飲んだ途端に、俺の身体が温まる。

 いや、むしろ身体の芯から熱くなっていった――。

 

 

「――キャアア!」

 

 

 ふと、浴室の方から、悲鳴のような声が聞こえた。

 

 俺は首を傾げながら、浴室に近付いていく――。

 

 浴室周辺の通路の照明は消されていて、俺は浴室の明かりを頼りに歩いていった。

 

 

 

 

「どうかしたの?」

 

 

 俺は、浴室の外から声を掛けるが、返事はない。

 むしろ、誰の気配も感じず、俺は首を傾げていた。

 

 すると突然、背後からお姉さんが、もたれかかるように俺に抱きついてきた。

 絶で気配を消していたのか、抱きつかれるまで俺は全く気付かなかった。

 

 

 お姉さんの柔らかい身体の感触を背中で感じる。

 何故か、お姉さんは震えているようだった。 

 

 俺が混乱しながら動けずにいると、お姉さんが震えた声で言った。

 

 

 

「ゴメンよ。お前さんの友達、シドリア=ブライトは、アタイが殺したんだ。」

 

「ええ!?」

 

 

 そうか、どこかで見た人だと思ったら、お姉さんはシドリアとの試合で勝った人だったのか・・・。

 

 あれ?でも、シドリアって、姫の能力でギリギリ助かった筈じゃ――?

 

 

 しかし、お姉さんは、そんな俺の疑問を知る由もなく、背後から俺の服を脱がしていた。

 俺は振り向きながら叫ぶ。

 

 

「ちょっと!何して――?」

 

 

 俺の言葉は途中で詰まった。

 

 お姉さんは服を一切身に付けていなかった。

 

 

 僅かな明かりで照らされる、女性らしいカラダ、スタイルの良い裸体を見て、俺は目を逸らすことも、何か言うことも出来ずにいた・・・。

 

 

「アタイが死んでも、死んだ奴は戻ってこない。

 だから、アタイがお前さんに出来ることは、慰めることだけ――。」

 

 

 お姉さんはそう言って、艶やかな手の動きで俺の残りの服を全て脱がすと、俺の手を引いて、妖しい口調で言った。

 

 

「おいで――?」

 

 

 俺は、お姉さんに言われるまま、誘われるまま動いた――。

 

 

 

 

★△★△★△★△★△★△★△★

 

 

 

 

「――そういえば、お前さんの名前を聞いてなかったね。

 アタイの名前は、ウナだよ。」

 

 

 ウナはその軆を、妖艶な仕草でゆっくりと起こすと、同じベッドにいる少年に話し掛けた。

 

 少年は、未知の快感を経て、言葉を発せずにいる。

 ウナは少年の様子を見て、優しい笑顔で焦ることもなく、答えを待っていた。

 

 しばらくしてから、少年が答える。

 

 

「ガルナだよ。ガルナ=ポートネス。

 ウナさんは、格闘家なの?」

 

 

 少年、ガルナが名乗ってからそう聞くと、ウナは笑って答える。

 

 

「アタイは、アマチュアハンターだよ。

 大体二人組で活動するんだけど、最近は相棒(オトコ)がいなくてね――。」

 

「そっか!もしかして、それで仕事できないから、ここの選手になったの?」

 

 

 ガルナは、ウナの言葉の続きを察して、そう聞いた。

 

 

「そうだね・・・。

 あ、そうだ!お前さん、アタイの相棒(パートナー)になってくれないかい?」

 

 

「えっ!いやあ、でも、俺は修行中だし、それ終わったら人を探しに行きたいから――。」

 

 

 ウナの提案に対し、ガルナがそう答えた。

 

 それを聞いたウナは、目を輝かせて言った。

 

 

「それは、なおさら都合いいね!

 アタイは行方不明者(ロスト)ハンターだからね!

 単純な迷子から、夜逃げした人や、なかには誘拐されたりした人も見つけ出して回収する仕事さ。

 今までのノウハウがあるから、お前さんが組んでくれれば、探し人も見つかるかもね?」

 

 

 ウナは興奮してまくしたてるように、そう言った。

 

 

「んー。

 でも、俺はシドリアと一緒に行動してたし、ウナとシドリアって多分だけど、合わなそうだしね・・・。」

 

 

 ガルナがそう言うと、ウナは言葉が詰まり、何も言えずにいた。

 

 それを見たガルナは、慌てて弁解をする。

 

 

「いや、ちょっと言うタイミング逃してたんだけど、シドリアは死んでないよ。

 瀕死ではあったけど、仲間の念能力で完治したから――。」

 

 

 ガルナが言い終えると、ウナは突然、泣き出した。

 

 

「ほんとかい?

 良かった、ホントに良かったよ。

 アタイ、初めて人を殺したと思って――。」

 

 

 そう言っているウナに対し、ガルナは笑顔を向けていた。

 すると、ウナがハッと何かに気付いた様子で、ガルナに訊ねた。

 

 

「まさか、言い出しそびれたのって――?」

 

「いや、ウナさんの魅力的なカラダを見たら――違う、いやほら、あれだよ?」

 

 

 ガルナが、しどろもどろにそう言っていると、ウナは妖しい笑いを向けている。

 

 

「つまり、お前さんはエロガキってことだね?」

 

 

 ウナがそう言うと、ガルナは、うなだれた。

 

 その様子を見たウナは、ガルナに追い込みを掛けるように言った。

 

 

「じゃ、先払いってことで、相棒の件よろしくね。」

 

 

 ウナの一方的なその言葉に、ガルナは何も言えずにいた・・・。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ガルナは放出系だね。」

 

 

 オレンジ色に変わったグラスの水を見て、師匠はそう言った。

 その言葉に対して、俺は聞いた。

 

 

「放出系って何だっけ?」

 

 

 師匠は溜め息をつきながら、説明した。

 

 

「念の系統の説明は、さっきした筈なんだけど・・・。

 放出系は、オーラを身体から離したり、飛ばしたりが得意な系統だよ。」

 

 

 俺は、その説明を聞いて思わず叫ぶ。

 

 

「じゃあ、俺の発は拳銃がいい!」

 

 

 俺がそう言った瞬間、師匠は怪訝な顔で聞いた。

 

 

「拳銃って使い慣れた奴があったりするの?」

 

「ないよ。でも、念でつくれるんでしょ?なら、それで――。」

 

 

 瞬間、俺の脳天に師匠のチョップが入った。

 俺は、すかさず凝でガードする。

 

 

「痛い!なんで?」

 

 

 涙目になりがながら聞くと、師匠が言った。

 

 

「キミ程ボクの説明を聞かない奴を初めて見た。

 つーか、シドリアも、いい加減立ち直って欲しいんだけど?」

 

 

 シドリアは、念の系統が変化系と聞いてから、どんよりと体育座りをしている。

 姫が、何か言っているのに聞こえていないようだった・・・。

 

 それを見て、俺は尋ねた。

 

 

「そういえば、姫の念の系統は?」

 

 

 俺の質問に、師匠が答える。

 

 

「そりゃ、決まってるでしょ。姫の系統は――。」

 

 

「――強化系です!」

 

 

 師匠が言うより先に姫が、そう答えた。

 

 

 俺が、強化系が何かを思い出していると、師匠が目を丸くして言った。

 

 

「は?そんなわけないでしょ。

 誰に言われたの?」

 

 

 師匠がそう言うと、姫が答える。

 

 

「え?長老が、人の傷を治せるから強化系だろうって言ってたです。」

 

 

 師匠は首を傾げながら、姫に聞いた。

 

 

「シドリアやガルナがやった『水見式』はやったの?」

 

 

 師匠の問いに姫は首を横に振った。

 

 

 

 

 そうして、姫は水見式をやることになった。

 

 

「――あれ?何も起こらないです。」

 

 

 姫は、葉が浮かんだ水いっぱいのグラスに練をしたが、何も起こらず、残念そうな口調でそう言った。

 

 

 俺は首を傾げていると、師匠は頭を抱えて言った。

 

 

「それだけのオーラで何も起こらないわけないんだけどな。」

 

「――おそらく、こういうことだろう。」

 

 

 いつの間にかシドリアは復活していて、そう言ってから、姫のグラスの葉を千切って、また浮かべた。

 

 もう1度、姫は練をする。

 

 

 すると、見事に千切られた葉は1枚に戻った。

 

 

「なるほど、もともと傷ついていない葉には何も起こらないわけか――。」

 

 

 俺は、納得してそう言うと、師匠は言った。

 

 

「ほら、思ったとおり、姫は特質系だよ。」

 

 

 姫は、驚きながら言った。

 

 

「ずっと、ワタシは強化系だと思ってたです。」

 

 

「いや、むしろそんなんでよく能力開発できたね。」

 

 

 姫の言葉に、師匠が呆れるようにそう言った。

 

 

――ノウリョクカイハツ?

 俺が頭の中で、その意味を考えていると、シドリアが思い出したように言った。

 

 

「確か、ミコトの能力は、いつの間にか出来るようになっていたらしいが?」

 

 

 シドリアがそう言うと、師匠は言った。

 

 

 

「なるほどね。それはそうと、これからどうする?これで念についてボクが教えられることは全て教えたけれど――?」

 

 

 師匠がそう言うと、シドリアが答えた。

 

 

「まだ、里に恩返しもしていないしな。

 私は里に戻って何か仕事をさせてもらおうと思う。」

 

 

 俺はキョロキョロしながら、言った。

 

 

「いや、俺は――。」

 

 師匠や姫が怪訝な顔で、俺を見る。

 

 すぐにシドリアが言った。

 

 

「そうか、お前の兄探しがあったな。」

 

 

 俺は、ゆっくり頷くと、姫が言った。

 

 

「ガルナにお兄さんがいたなんて、初耳です!」

 

「ボクも初耳だよ。

 そっか、わざわざジャポンに来たのも、兄を探しに来たってことか――。」

 

 

 姫と師匠の言葉に、俺は頷いて言った。

 

 

「実は、行方不明者(ロスト)ハンターになろうと思ってるんだ。」

 

 

「ハンターか。ガルナにしてはいい線いってるな。しかし――。」

 

 

 シドリアはそう言った後、何かを考え込みながら、ブツブツと独り言を言っていた。

 

 俺はその様子を見て、思いきって宣言する。

 

 

「俺、もう相棒も見つけちゃったんだ。だから――。」

 

 

 俺は、その先を言えずにいた。

 しかし、シドリア本人は全く気にしない様子で言った。

 

 

「そうか、お前だけの知識で、ハンターになるという結論を出せるわけないな。

 あいつを見つけたら、私にも連絡してくれよ。」

 

 

 シドリアはそう言うと、俺の肩を力強く叩いた。

 

 

 俺は、何とも言えない気持ちになった・・・。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 ガルナは、その晩もウナの部屋に行った。

 あれから1ヶ月、ガルナは毎晩ウナの部屋に泊まっていた。

 

 

 

「おや、お前さんかい。おかえりなさい。」

 

 

 ガルナが部屋に入ると、ウナはそう言って、いつものハーブティーを淹れる。

 

「それ、いらないよ。」

 

 

 ガルナは小さな声でそう言うと、顔を俯いたまま言った。

 

 

「ゴメン、俺やっぱりウナの相棒には、なれない。」

 

 ガルナがそう言った途端、ウナは豹変した。

 

 

「急にどうしたっていうんだい?

 アタイのことが嫌いになったのかい?」

 

 

 ウナの言葉に、ガルナは首を横に振った。

 

 

「違うよ。ただ、ジョニーには、シドリアと一緒に会いたいから――。」

 

 

 ガルナはそう言うと、顔をウナの方に向けた。

 

 

 ウナは何も言わなかったが、オーラは禍々しく怒りの様相を示した。

 

 ガルナは、今すぐ逃げ出したい気持ちになったが、最後に言った。

 

 

「ホントにゴメン。」

 

 

 瞬間的に、ウナは自身の念能力を発動した。

 ウナの両手から2匹のウナギの形に変化させたオーラが伸びて、ガルナを拘束する。

 

 

「そんな勝手が、通用するわけないだろ?」

 

 

 ウナはそう言うと、ガルナを寝室に連れて行った・・・。

 

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 

 ミコトは、シドリアの部屋の前で落ち着かない様子でいた。

 

 

 ミコトは、約1年間、シドリア達の師匠と同じ宿で泊まっていた。

 

 ミコトの実力ならば、天空闘技場の選手にはなれた。

 

 しかし、シドリアと対戦してしまう可能性を考えて、ミコトは選手になることはしなかった。

 

 

 

 ある日、ミコトは師匠の読む本を勝手に読んだことがある。

 

 共通語の字で書いてあるその本は、不思議なストーリーで、よく分からないが男2人が裸で絡み合うシーンが頻繁にあった。

 

 

 その晩も、ミコトが熱心に読んでいると、背後から声がした。

 

 

「姫、あんまりそれ読むと、目腐るからやめた方がいいよ?」

 

 

 ミコトは、師匠にそう言われるまで、夢中で読んでいた。

 

 慌ててミコトは、本を閉じる。

 

 しばらくしてから、師匠が言った。

 

 

「――そういえば、シドリアって、意外に鈍感そうだから、姫の気持ちに気付いてないんじゃない?」

 

 

「どうすればいいです?」

 

 師匠は、ニヤリと笑ってから、ミコトに耳打ちをする。

 

 ミコトは思わず赤面して、叫んだ。

 

 

「そんなこと、できないです!」

 

 

 師匠は、ミコトの様子を笑ってみていたが、ふとミコトの読んでいた本に目をやる。

 

 

「そうだね。でも、早くしないと、その本みたいになっちゃうかもよ?」

 

 

 

 師匠の言葉から、ミコトは何かを想像したらしく、唖然とした表情をした。

 

 すぐに、ミコトはシドリアの部屋に走って向かっていった――。

 

 

 

 

 ミコトは、シドリアの部屋の扉を開けた。

 

 オートロックの部屋ではあるが、シドリアの習慣なのか、ドアに何かを挟んで完全に閉まらないようにしていた。

 

 

 ミコトは部屋に入ると、気配を伺うが、誰もいないように感じた。

 

 

(まさか、ガルナの部屋に――?)

 

 

 ミコトがそう考えていると、背後から声がした。

 

 

「ミコトか?」

 

 

 そう声を掛けたのはシドリアだった。

 シドリアはシャワーを浴びた直後だったのか、何も着ていない身体を拭きながら出てきた――。

 

 

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