▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
情報ハンターのチーム、ブリッツは、資産家ゴードン氏の屋敷で起こった失踪事件の調査で、その原因が念能力者専用のゲーム、グリードアイランドだということを突き止めた。
シドリアの嘘を交えた交渉により、無償でゲームを本体ごと入手することに成功する。
宿に戻った後、ミコトの部屋での作戦会議で、シドリアが説明を始めた。
「入手はできた。ただし、問題がいくつかある。」
調査中、車内での待機のみで退屈していた反動で、ミコトは興味津々な様子だ。
引き続きシドリアは説明を続ける。
「まずは、プレイ方法。
まだ、ハッキリとは分からないが、屋敷の使用人が触っても問題ないことから、これは触れた人間が念を使えるかどうかを、ゲームに施した念能力により判断しているんだと思う。
そして一番の問題が、時間制限だ。」
「時間制限です?」
思わずミコトが聞いた。
ミコトは、アタッシュケースを抱きかかえるようにしながら、ソファでゆったり座っている。
ミコトの隣にいたガルナが笑いながら言った。
「プロハンターのワルツさんが、ゲームに閉じ込められてから3日目で死体となって出てきたからだよ。」
ガルナの言葉を聞いた途端、ミコトのオーラが高まった。
「死体?どういうことです!?」
ミコトは許せなかった。
失踪した人を捜索する仕事で、その人が死んでしまったのに笑っているガルナが許せなかった。
そして間違いなく、シドリアが意図的にそれを隠していたことにも、ミコトは気付いていた。
ミコトの中で、2人の男に対する止めることのできない怒りが沸いてくる・・・。
「え?俺達に関係ない人だし、どうでもいいでしょ。」
ガルナが、あっけらかんとそう言った。
――何を言っているんだ、コイツは?
ミコトの心の中で、黒い暴風雨が吹き荒れていた。
その発想はまるで、極悪非道の犯罪者だ。
自分達に関係ない人間なら迷いなく殺してしまうのだろうか?
目の前で死にかけている人がいても、コイツならば見捨てるんだろう。
絶対に許しておけない、ミコトはそう考え、立ち上がりガルナの方を向く。
ミコトのオーラは全力まで高まっていた――。
その瞬間、ミコトの姿が消えた。
ミコトがいた空間には、先程までミコトが抱きかかえていたアタッシュケースが――。
ガルナは反射的にそれをキャッチしようとする。
「触るな!」
シドリアが鋭くそう言うと、ガルナは手を引っ込めた。
ゲーム機の入ったアタッシュケースは、床に落ち、カシャンという音を鳴らした――。
★★★★★★★★★★★★★★★
「なんで?姫が消えちゃ――?」
「ガルナ!貴様は、何てことを――!?」
シドリアは、ガルナに静かな殺意の込められたオーラを向け、怒鳴った。
怒鳴った後、シドリアの顔は青ざめ、フリーズしている様子だ。
こうなった原因も分からず、何をしていいかも分からないようだった。
それを傍目に、ガルナがアタッシュケースを開けると、オーラを纏うゲーム機が見えた。
「このゲーム機を壊せばいいんだろ!?」
ガルナはそう言って、オーラを込めたフルパワーの拳をゲーム機に打ち込んだ。
「ふざけるな!!」
間髪入れずに、シドリアがオーラを込めた蹴りをガルナの腹に繰り出した。
ガルナは拳にほとんどのオーラを込めていたので、念のガードがまともに出来ずに、その場でもがき苦しんでいた。
「ゲーム機は、無傷のようだな・・・。」
シドリアは、ほっとしたようにそう呟くと、頭を抱えて言った。
「まさか、直接ゲーム機に触れなくてもプレイできるなんて――。
すまない、ミコト。本当に私はバカだった・・・。」
弱々しくそう言いながら、シドリアはゲーム機の前で泣き崩れた。
しばらくして、ダメージから復活したガルナが呟く。
「やっぱり3日経過すると、姫も死んじゃうのかな?」
ガルナがそう言った瞬間、シドリアはガルナに飛び掛かった。
ガルナはそのまま勢いよく壁に押し付けられる。
「ぐ、苦しい。でも、そうでしょ?」
ガルナの言葉に、シドリアは突然、生気を失った様子でその場に座り込んだ。
それ以降、ガルナが何を言ってもシドリアは反応せず、仕方なくガルナは黙って自分の部屋へ戻った。
睡眠不足を解消するように、ガルナはその夜早々に眠りについた。
翌日の昼頃、ガルナは目を覚ますと、シドリアの部屋に向かった。
部屋に入ると、ガルナは絶句した。
シドリアは、パソコン5台と電話機3台を部屋に用意して器用に全てを操り、情報収集をしていた。
影のオーラを適宜の形、大きさに変えてパソコンモニターを確認し、電話機についても同時に3人と会話している。
その表情は、見たこともない程の形相で、ガルナは声を掛けられずにいた。
その日、シドリアは何も食べた様子もなく、情報収集に没頭した。
どれだけの成果があったかは、ガルナには分からない。
しかし、ゲームの中に入ってしまったミコトを取り戻すには、3日という期間は絶望するほど短いことは理解できた。
ガルナにも小さな罪悪感がある。
ガルナが余計なことを言ったせいで、ミコトは怒り、結果消えてしまった。
夜になるまで、ガルナはただシドリアの後ろ姿を見ることしかできなかった。
しかし、あることを思いついて、シドリアに声を掛ける。
「シドリア?俺、手伝うよ。
ご飯食べてないでしょ?つくろうか?」
ガルナはできるだけ明るくそう言うと、シドリアは無言のまま作業を続けていた。
夜間はさすがに電話をしないようだ。
数分経ってもシドリアが何も答えず、ガルナがどうしようかとオロオロ立ち尽くしていると、シドリアがかすれた声で言った。
「・・・必要ない。食べている時間など残されていない。」
「あ、そっか・・・。」
ガルナは小さく返事をし、ガッカリした気持ちで自分の部屋へ戻った。
次の日、同じようにガルナがシドリアの部屋に行くと、シドリアはガルナを認識していない様子で情報収集を続けていた。
3日目になって、ガルナがシドリアの部屋に行くと、シドリアの作業している姿は初日と大して変わらなかった。
しかし、明らかにシドリアの肉体は疲弊し、弱っている。
思わずガルナが呟いた。
「今日で3日目だね・・・。」
――ダン!!
シドリアは目の前のキーボードを叩いた。
ゆっくりとガルナの方を向くと、物凄い剣幕で怒鳴り始めた。
「そんなことはお前に言われなくても、分かっている!
邪魔をするなら出て行け!」
シドリアにそう言われ、ガルナは無言で外に飛び出した。
走りながら、ガルナは泣いた。
何故、シドリアはミコトのことばかりを気に掛けるのかが分からない。
シドリアはガルナのことをどうでもいいと思っているのだろう。
ふと、ガルナは考えた。
あのとき、ミコトではなく、ガルナがゲームの中に閉じ込められたら、どうなっていたのだろうか?
きっと、シドリアはあそこまで取り乱したりはしない。
いつものように、冷静に、3日目を迎えて、言うのだろう。
――「やはり、死んでしまったか。残念だ。」
その想像があまりにリアルで、ガルナは思わず身震いをした。
ふと気付くと、ガルナはいつの間にか町のショッピングモールにいた。
買い物客が多く、無闇に走ることはできない。
ガルナはしばらくショッピングモールを見て回った。
ブランド服屋を見ている内に、いつの間にかガルナはウィンドーショッピングを楽しんでいた。
数時間後、ガルナは、何気なく目の前の玩具屋を見た。
最新型のゲームソフトのデモ画面が店の外に映し出されている。
「10年後くらいにはジョイステ4とか出てるんだろうか?」
ガルナはどうでもいい独り言を呟いた。
現代のゲーム機の性能は向上し、いまや最新型のゲーム機は、ハードディスク内蔵型だという。
ガルナはそんなことをボーっと考えながら、ふと何か大事なことに気付いた。
しかし、意識を集中してしまった途端、その内容を忘れる。
「あれ、何だろ? ゲーム機関連の話だよね?」
ガルナは頭を抱えながら呟き、何か大事なことを忘れていないか考え始める・・・。
「そうか! メモリーカード――!」
そう叫ぶと、ガルナは店に入ってすぐ買い物を済ませ、人ごみも気にせず走り始めた。
ガルナは走った。
ひたすら走った。
ガルナが宿に着く頃には、夜になっていた。
まもなく、ミコトが消えてから72時間が経過することになる。
ガルナがシドリアの部屋に入ると、そこは悲惨な状況になっていた。
パソコンの本体やモニターはことごとく破壊され、部屋のありとあらゆる家具までもが壊されている。
部屋は暗闇の中に包まれていた。
ガルナは凝を使って、シドリアのオーラを探す。
すると、そこにシドリアがいた。
長身のシドリアが、小さく丸くなり何かを抱えている。
それはグリードアイランドが起動しているジョイステーション・・・。
「シドリア?」
ガルナが声を掛けると、シドリアは一瞬ビクッとして体を起こした。
「シドリア、何してるの?」
シドリアの手には鋭くオーラを纏ったナイフがあった。
シドリアの全身のオーラは疲弊し、弱々しいが、この刃物だけには何か怨念めいた強いオーラが込められている・・・。
シドリアは、唇を震えさせたまま喋り始めた。
「よく、分からない。いつの間にか、こうなっていた。
笑ってしまうよな。最終的にお前と同じように、私もミコトの入ったゲーム機を殴っていた。
それも何度も――。」
「だからって、自殺はダメだろ?」
シドリアの言葉に対して、ガルナが静かに言った。
それは、ガルナの直感だったが、そこに間違いはなく、シドリアは自らの命を絶つ選択をしようとしていた。
すると、シドリアは首を振って言った。
「そうじゃ、ない。そんな理由じゃないんだ。
私は、あの日の師匠の顔を思い出してしまった。
まるで寝ているような、それでいて全くオーラを感じない――。」
「だから?」
ガルナが短く突き放すような口調でそう聞くと、シドリアが言った。
「想像の中で、あの日の師匠の顔と、ミコトの顔がダブってしまったんだ。
私は、ミコトの死に顔を見たくない。」
シドリアがそう言い終わるか否か、ガルナはシドリアを殴った。
その拳には、ほとんどオーラを込めていない。シドリアの疲弊した肉体ならば本当に殺してしまうから――。
だが、シドリアにとって、どんな強力なオーラを込めた
「なんでだよ!?それって逃げてるだけだろ?」
ガルナがそう訴えるが、シドリアは無言のままだった。
しばらくしてから、ガルナは小さな声で言った。
「もし、仲間が死んでも、受け止めてくれよ。
逃げないで、その死を、刻んでくれよ。」
ガルナは泣いていた。
泣いたまま、心からそう訴えた。
シドリアは無言のまま、小さく、それでいて強く頷いた。
「それに、ミコトは死なないよ?」
ガルナは歩きながらそう言った。
シドリアが、ガルナの方を向くと、ガルナは部屋の照明をつけて言った。
「ほら、もう3日経過しちゃったけど、ミコトの死体は出てきてないしね。」
その後、シドリアとガルナは食事をとった。
お互い無言だったが、それでもそこには強い絆が生まれていた。
食事を終えると、疲弊して限界近かったシドリアも、いくらか生気を取り戻した。
シドリアは、久しぶりにコーヒーを美味しそうに飲みながら、呟く。
「しかし、分からないな。」
「ん?何が?」
「あのゲーム機のプレイ方法だよ。お前や私がオーラを込めて直接殴ってもどうにもならかったのに、何故ただ単に
シドリアの問いに、ガルナは腕を組んで少し考えると、答えた。
「多分、枠がないからじゃない?
ワルツさんの枠だったところに姫が入ったんだと思う。」
「枠?」
シドリアが聞き返すと、ガルナは思い出した風に買ってきたものを見せてシドリアに聞いた。
「これ、何か分かる?」
「何って、ジョイステーションだろう。さすがにもう分かるぞ。」
シドリアは、馬鹿にされて不満そうな顔でそう答えるが、ガルナは笑って言った。
「でもさ、そっちのG・Iが入ってるのと、何か違うと思わない?」
ガルナの言葉に、シドリアは器用に影を駆使して比べる。
写真のように情報を得られる影の方が、肉眼より整合作業をしやすいようだ。
「コレだな。買ってきた方には、コレがない。」
そう言って、シドリアは念で覆われたジョイステーションの一部を指さした。
「つまり、コレだね?」
ガルナは、買い物袋から小さなカードを取り出して見せて言った。
「これ、メモリーカードっていうんだ。
今のゲーム機はハード本体のHDDでセーブ情報を管理できるけど、昔のゲーム機ってセーブするのに別の媒体が必要だったんだよ。」
「なるほど記憶媒体か。しかし、ゲームに記憶媒体って何に使うんだ?」
ガルナは、一瞬表情を強張らせながら、努めて平静を装って言った。
「シドリア、ゲームしたことないから分からないだろうけど・・・。
例えば、ボードゲームのチェスを途中でやめたいときって、どうする?」
「公正を期す為に、何かに書いて保管するな。」
「そのメモ帳代わりだよ。
チェスのような単純なものと違って、ビデオゲームはデータ量も多いから、記録媒体は必須なんだ。」
「なるほど。」
シドリアは納得した様子で頷いていた。
すると、ガルナが言った。
「そのG・Iのメモリーカードなんだけど、何故かそれすらも念でガードされて抜けないよね?」
「そうか!
ガルナの言葉に、シドリアが叫びだす。
ガルナはシドリアの様子に、ニコリと笑って言った。
「うん、しかもG・Iには2枚のメモリーカードが差し込まれていて、どちらも抜けない――。」
「待て!!2枚だと?
ワルツ以外に過去8年間、死体となって出てきていないということは――?」
「そう、他にも――少なくとも1人が、8年間ゲームの中で生きているってことじゃない!?」
最後にガルナがそう言った。
シドリアは、小さく笑いながら言った。
「そうか・・・。間違いない。きっとそうだ。
しかし、ワルツだけ死んだというのは――?」
シドリアはそう言うと、途端に不安そうな表情をする。
すると、ガルナが言った。
「多分だけど、ワルツさんは、ハンターとして弱かっただけじゃないかな?」
「なら、ミコトも――。」
シドリアがそう言いかけると、ガルナはそれを遮るようにして言った。
「シドリアも分かってるでしょ?ミコトは強いよ!
俺は勿論、シドリアよりも――。」
そう言ってから、ガルナはニコリと笑い、自信を持った声で言った。
「だから、大丈夫!」
ガルナの力強い言葉を聞き、シドリアは笑って頷いた。
それから数日後、ワルツの件が地元警察で謎の事故死として解決した。
ゴードン氏は、ワルツに頼もうとしていた依頼を、ブリッツに依頼してきた。
出発の朝、ガルナはホテルの部屋に保管されているゲーム機の前に立って両手の手の平を合わせている。
シドリアがその様子を見て、ガルナに尋ねた。
「なんだ、それ?」
「ん?昔、師匠がやってたんだ。出掛ける前に必ず。
多分、ジャポンの習慣だと思うんだけど――。」
それは、故人への挨拶だということを、2人は知らない。
ガルナとシドリアは、ゲーム機の前で合掌し、元気良く言った。
「行ってきます!」
【あとがき】
変わらず自動更新中(´Д`)
作者中身いません(>_<)
これから長期間、更新停止しますが、今後もよろしくお願いしますm(__)m
読者様も体調にだけは、注意してくださいね(-ω-)
【以下ネタバレ】
これは、読者の方々に考えてもらって、気付いたら笑って欲しかったネタですが、補足します(^ε^)-☆Chu!!
グリードアイランドのプレイ方法は、原作通りです。
ガルナとシドリアは、現段階で物っ凄い勘違いをしてるんです(笑)
これ以上言うと、つまらなくなりそうなのでやめますね☆ヽ(▽⌒*)