DUAL BULLET   作:すももも

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 た、大変お待たせしました!(^o^;)

 言い訳じゃないですが、3回書き直した上に、やはり一番最初書いた話を投稿します!

 これは本来、私が書きたい話ですが、大衆向きではないのは重々承知してます

 でも、今後の話に繋げる為に必要なので、投稿しますm(__)m


 お気に入りが減っても、評価1つけられても気にせず作者の好きな展開にしていくことを覚悟して投稿します(。・ω・。)





第3章:新たなる旅立ち
36.携帯


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「え? グリードアイランド?」

 

 

 目の前に座っているシャルナークが怪訝な表情でそう聞き返した。

 シャルの言葉に俺が小さく頷くと、シャルは首を傾げながら携帯端末を操作して調べ始めた。

 

 俺は違和感を感じてシャルに尋ねる。

 

 

「ていうか、シャル、ケータイ変えたの?」

 

 

 シャルが使っていたのは、いつものケータイじゃなくて、最新型の機種だったのだ。

 俺がそう聞くと、シャルナークは吹き出すように笑って答えた。

 

 

「違う違う。前からオレ4台持ってるよ。

 いつもガルナが見てる古い型のオレの自作携帯は、念能力用であり仕事とかの通話用。

 これは、ただの電脳検索用。新しくなったら買い換えてるからあんまり思い入れはないかな?」

 

 

 笑いながらそう説明するシャルの言葉を聞いた俺が、残りの2台が何用なのかなと疑問に思っていると、シャルが突然軽い口笛を吹いて楽しげな口調で言った。

 

 

「あった。へー、ハンター専用ゲームか。

 こんなものがあったなんて、知らなかったなー。」

 

 

 俺がシャルの様子を見ていると、突然シャルが端末を懐にしまった。

 

 

「あれ?どうしたの?」

 

 

「うん。これ以上調べるのは金かかりそうだからやめた。」

 

 

 ニッコリと爽やかに笑いながらそう答えるシャルに俺はショックを受けて叫びだす。

 

 

「何それ!? 俺が入団したのってシャルにそう言われたから――。」

 

「は?」

 

 

 シャルは突然人が変わったように冷たく表情を変え、続けて言った。

 

 

「あんなのホンキにしてたの?」

 

 

 シャルの残酷な言葉に俺はギリギリで涙をこらえる。

 

 

「それよりも、ガルナは自分の置かれた状況にそろそろ気付いた方がいいと思うよ?」

 

 

「え? どういうこと?」

 

 

 俺はそう言ってからハッと気付いた。

 10日前の飛行機の爆発――。

 

 予め油圧や異常な状態で排気を塞がれたまま稼働するように仕組まれていた飛行機を、たまたまその場にいた俺がスロットルをフル回転させ、飛行機は爆発してしまった・・・。

 

 不具合を起こすように仕組んでいた犯人は別にいたのだ。

 

 奇術師ヒソカ――本名はジョニー=ロトス。

 

 小さい頃から親友だと思っていた彼が、本当は俺の実の兄だと知ったのは7年前。

 同時に「ジョニー」とは永遠の別れとなってしまったんだけど・・・。

 

 ジョニーは死んだ。

 俺が会わない間に何があったかは知らないけれど、今のあいつは俺の好きだった親友のジョニーとは全くの別人になってしまった。

 

 

 そういえば、俺は記憶を読まれたから、俺とヒソカの関係は旅団全員にバレてると考えた方がいいよな?

 聞かれた質問のどっちにも関わってるし・・・。

 

 

 俺が考え込んでいると、シャルが突然立ち上がって言った。

 

 

「あ、仕事が入ったみたいだから行くね。」

 

「え、じゃあ俺も――。」

 

「ガルナは必要ない。」

 

 

 シャルは切り捨てるようにそう言うと、スタスタとアジトから出ていった。

 

 

 アジトの中で取り残され、俺は沈黙を守った・・・。

 

 1人でいると、今まで放棄していたことを考え始めてしまう・・・。

 10日前、あの場にいた、もう1人の男――。

 

 薄暗いアジトの中で、思わず俺は呟く。

 

 

「なんでシドリアは、ヒソカなんかに協力してたんだ?」

 

 

 男の名は、シドリア――かつての俺のもう1人の親友で、俺の相棒だった男。

 

 1年前以上前に喧嘩して、俺はシドリアから逃げ出した。

 

 一体、シドリアは今、何をしているんだろうか?

 

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 

 溜め息をつく男がいた。

 

 男の手には携帯電話があった。

 今時珍しい折り畳み式の携帯で、男は何を考えてか手に持った携帯を無意味に開いたり閉じたりを繰り返している。

 

 

 着信を待っている訳でも、誰かに電話やメールをしようとしている訳でもない。

 

 

 男はただ迷っていた。

 

 

 男は、10日前にかつての相棒に再会した。

 

 1年程前から絶交していたその相棒は、久しぶりに会ってみると、悲惨な状況に陥っていた。

 

 

 最初は、金儲けの為に一時的に手を組み、失敗したのだろうと考えた。

 

 しかし、あの連日の一件を考えれば考える程に、別の可能性が強くなっていった。

 

 

「ガルナ・・・まさかお前、幻影旅団に入ったのか?」

 

 

 男は小さく呟く。

 男の手には携帯電話が――。

 

 男の名はシドリア――。

 

 かつてガルナとジョニーという名の2人の親友がいた男。

 

 

 あの時、シドリアの念能力の「影」越しではあるが、ガルナと目が合ったのにシドリアは気付いていた。

 

 そして、少なくともシドリアと同レベルの使い手であるガルナが、シドリアの念に気付かない筈はない。

 

 

 

 シドリアは頭を抱えた。

 

 10日経過しても連絡が来ない理由は――。

 

 

 シドリアは震える手で携帯を握りしめる。

 

 

 もし、電話が繋がらなかったらガルナは死んでいる可能性がある。

 その場合であったら、シドリアは深い罪悪感に苛まれるだろう。

 

 

 だが、仮に普通に電話に出た場合、状況は大きく変わる。

 

 シドリアは、祖国ノースタリア公国から直々にある命令を受けていた。

 

 祖国の兵士を惨殺した、幻影旅団の殲滅任務を――。

 

 

「そう、そのときは――。

 ガルナ、お前でも決して容赦はしない!」

 

 

 震える声でそう叫んだ後、シドリアは素早く携帯の電話帳からガルナの番号を表示させた。

 

 通話ボタンに指を触れる――。

 

 

――パタンッ

 

 

 ボタンを押さずにシドリアは携帯を閉じ、また溜め息をついた。

 

 

 10日間、彼はずっと同じようなことをしていた・・・。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 アタシは自分の体が嫌いだ。

 

 

 かつて、頭が狂った念能力者に文字通り、玩具にされた。

 

 アタシは当時、念に関しては素人同然だった。

 だけど、小さい頃からアタシはノブナガの念の修行を間近で見ていたから、オーラはボンヤリだけれど見えるし、纏の真似事みたいなのは出来た。

 

 おかげで酷い火傷や痣のような傷は負わなかったけれど、念の使い手であるその男にはバレバレで、誰にも見つからないように、アタシだけ別の部屋に連れていかれることがあった。

 

 別室では、吐き気がするような「手術」を受けた。

 ギリギリ死なない程度まで切り、素早く縫合する。

 そこには意味など何もない。

 

 もしかしたら、自分が神のように勘違いしていたのかもしれない――「破壊」と「創造」をすることで。

 

 男は手術に満足すると、まだ幼いアタシの身体を乱暴に犯した。

 ただ痛いだけの屈辱――。

 

 興奮した男の両目は、決まって赤くなる。

 アタシは何も考えないようにして、その赤い瞳をただ眺めていた。

 

 

 そこでアタシが得たのは何度も破壊され修復されたことによる人外の筋肉繊維と、外科手術の要領くらいだ。

 

 あいつは、傷を残さないように縫える技術を持ってる癖に、わざと縫い目が目立つように縫いやがった。

 

 だから、アタシは人に肌を見せたくない。

 

 傷跡を見る度に、アタシはあの地獄を思い出す。

 あの男、ザディルの思惑通りに――。

 

 

 そんな地獄に共に過ごした奴がいた。

 

 

 あの頃のアイツは、念をまるっきり知らない素人だった。

 一般人レベルの中でなら、多少はできる部類だろうけど、アタシよりも弱いことは見ただけで分かった。

 

 アタシなんかより弱いということは、当然ザディルに勝てる訳がない・・・。

 

 だからこそ奴は、アタシよりも深い絶望を味わっていた。

 

 男の割には綺麗だった奴の肌は見るも無惨に傷だらけになり、アタシとアイツは自然にお互いの傷を舐め合った。

 

 

 そんなある日、あの女がザディルと戦っていた。

 

 ノブナガと同年代の癖に、念の師匠とか言っていた女――。

 

 アタシは、あの女の名前を知らない。

 アタシと同じようにジャポン人と現地人の混血だったが、アタシとあの女はまるっきり違う。

 

 今まで関わってこなかった。それなのに――。

 

 

 あの女は、アタシを救いに来た。

 

 そして、アタシのモノだったアイツは、あの女に付いていってしまった。

 

 

 アタシはその後、本拠地へ戻り、本格的に念の修行を始める。

 

 二度とあんな屈辱は味わいたくない。だから誰よりも強くならなくちゃならない。

 アタシは文字通り死ぬ気で修行をした。

 

 あのときの地獄に比べれば、修行の過酷さは甘いとすら感じられた。

 

 

 アタシみたいに流星街から連れ去られた子供達が虐待を受けて殺されたことは、報告していた。

 ザディルは死んだけれど、幻影旅団や流星街がそれで黙っているはずがなかった。

 

 アタシの修行が完璧になった頃、団長がある計画を話した。

 

 その計画が実行されたのは、1994年のことだった――。

 

 

 

「マチ、お待たせ。」

 

 

 その声に振り向くと、シャルが笑いながら手をヒラヒラとさせていた。

 アタシはシャルに尋ねる。

 

 

「どう? 何か分かった?」

 

「んーちょっと面倒かもね。グリード――」

 

「それじゃない。」

 

 

 アタシはシャルの言葉を切り捨てるようにそう言った。

 

 アタシはあの後、ガルナの記憶を見せてもらって、「ミコト」とかいう女がグリードアイランドに閉じ込められたことを知っていた。

 

 ガルナもシドリアという男も、今ならばゲームさえあれば、同じ世界に行けることを予想していることだろう。

 

 

 でも、それはアタシが今知りたいことじゃない。

 

 

「え、でもそれ以外は、大したモノがなかったんだけど・・・。」

 

 

 シャルが戸惑いを隠せない様子でそう言った。

 

 シャルの様子を見たアタシは、溜め息をついて首を振ると、その場から歩き出した。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 その晩、ガルナは困惑しながら走っていた。

 

 力の限り、その肉体とオーラを全開で最速で走るが、目の前の大男に追いつくことはなく、むしろ両者の距離は離れていった。

 

 

「ちょっとウヴォーさん、待ってよ!」

 

「お前が遅すぎなんだよ! 気合い入れて走れ!」

 

 

 ウヴォーギンが走り、ガルナがその後を追い掛ける。

 

 月夜に照らされる夜の中、ウヴォーギンとガルナは尋常ではない速度で走っていた。

 

 ほんの一瞬、両者は気を緩めた為に、背後からくる死神に気付くのに遅れた。

 

 

「あ! やばい間合いに入――!」

 

 

 ガルナがそれを青ざめた顔で見た瞬間、死神の放つ念弾の嵐が降り注ぐ――。

 

 それは戦闘ヘリの造形をした具現化能力。

 飛ばす為に操作系の操縦士と放出系の銃撃手の2人を組み込まなければならない。

 

 その名は【三ツ首の死神(ケルベロス)

 

 3人による複合型念能力だった。

 

 

 シャルナークが去った後、しばらくしてから1人で放心していたガルナを誘い、ウヴォーギンが小型ヘリを盗みに来たのだ。

 

 しかし、その情報はガセだった。

 

 いや、確かにそれは存在した。

 強力な念能力としてだが――。

 

 

「ちっ、ガルナ! こっちに来い!」

 

 

 ウヴォーギンが舌打ちをしながら叫び、ガルナの方に駆ける。

 

 ガルナも必死にウヴォーギンの元に走り出すが、ヘリから連射された念弾は、機関銃の速度でガルナとウヴォーギンの身体に穴を開けんと螺旋の軌道を描いて向かってくる――。

 

 

 

――ギギギギンッ

 

 

 ガルナの身体に数えきれない数の念弾が命中するが、それは全て弾かれた。

 

 

 ガルナがふと見ると、ウヴォーギンはそのオーラをガルナに纏わせていた。

 

 

絶対防壁(ブラックホール・ウォール)

 

 

 これこそが、ウヴォーギンの真の能力。

 

 これを展開している時は、あらゆる打撃攻撃を無効化できる。

 

 そもそも、超破壊拳(ビッグバンインパクト)は、高威力の攻撃による衝撃で、自身の肉体を傷付けてしまう。

 それ故ウヴォーギンは普段、攻撃の際もこの能力によって防御していた。

 

 

「凄い、ちっとも痛くない。」

 

 

「この程度なら、あと3人くらいは壁をつくれるぜ!」

 

 

 ウヴォーギンは勇ましくそう言って、ヘリに向かって走り出す。

 

 

 操縦士かそれとも機体を具現化している術者か、理屈は分からないが、レーダーのような能力も有しているようで、街中のヘリが入れないような路地から建物に入って、屋上に出たにも関わらず、正確にその場所を特定して先回りされた。

 

 ならば、やることは1つ――。

 

 

「くらえ、超破壊拳(ビッグバンインパクト)!」

 

 

 ウヴォーギンが特大のオーラを纏った拳を振るが、ヘリはそれが当たる前に素早く飛翔し、ウヴォーギンの背後を狙って一方的に念弾機関銃を撃ち込んだ。

 

 

「グッ! ちくしょう舐めやがって!」

 

 

 ウヴォーギンは果敢に跳躍し、ヘリを殴ろうと飛び掛かる。

 しかし、圧倒的な速度差によって回り込まれ、戦闘ヘリは、一定距離をとりながら機関銃を放つ。

 

 

 強化系を極めたウヴォーギンが弄ばれる。

 その光景を見ていたガルナは困惑しながら、ウヴォーギンを狙って黒の弾丸を放つ。

 

 

1番目の弾丸(ファースト・ブリット)

 

 

 ウヴォーギンがガルナの近くに瞬間移動したのを見ると、ガルナが言った。

 

 

「ひとまず逃げよう!」

 

 

 2人は駆け出した。力の限り――。

 

 何発かの念弾がガルナに命中するが、ウヴォーギンのオーラのおかげで弾いていた。

 

 

 駆け出してから数分後、ガルナは目の前の状況に困って振り向きながら言った。

 

 

「ウヴォーさん! もう飛びうつれる建物がない――。」

 

 

 ガルナはそう言いかけて、驚く。

 

 先程まで遥かに早く走っていたウヴォーギンが、ガルナよりも大分遅れていた。

 

 問答無用に戦闘ヘリはウヴォーギンを狙い、さらにその速度は遅くなっている。

 

 

「なんで? あ、まさか――。」

 

 

 状況が違うのは、ウヴォーギンの念能力。

 【絶対防壁(ブラックホール・ウォール)】――。

 

「――俺の分も展開してるせいで、遅くなったのか?」

 

 

 全てを理解したガルナは、目の前が熱くなり、叫んだ。

 

 

1番目の弾丸(ファースト・ブリット)!」

 

 

 ウヴォーギンの姿が消えた。

 戦闘ヘリはこちらに向かってくる。

 

 だが、これでいい。

 ガルナを守る為に、ウヴォーギンはリスクのある能力を使ってくれたのだ。

 

 

 ガルナはビルから飛び降りた――。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「アイツ、どこに行ったの?」

 

 

 マチがアジトに行くと、フィンクスとシズクが黙って座っていた。

 

 

「ガルナのこと?

 なんかウヴォーと2人でどこか行ったと思う。」 

 

 シズクがそう答えると、からかうような口調でフィンクスが口を挟んだ。

 

 

「噂の新人のことか?

 どんだけ好きなんだよ。」

 

 

 素早く蹴りを繰り出すマチに、フィンクスはその指をゴキンと鳴らして、待ち構える。

 

 突然、両者の間に掃除機の筒先が現れると、シズクが言った。

 

 

「旅団同士のマジギレ厳禁。」

 

 

 2人が動きを止めると、ピリピリした空気のままマチは黙って立ち去った。

 フィンクスはマチの後ろ姿に声をかける。

 

 

「ウヴォーが一緒なら、新人がどんだけ弱くても死なねーだろ?」

 

 

 マチは一瞬足を止めると、振り返りもせずに歩き出した。

 それが肯定を意味するかのように――。

 

 

 アジトの外に出ると、マチは携帯を取り出して時計を見た。

 今は夜の9時、もうすぐで時間――。

 

 例え時間が過ぎたとしても、一声かけよう。

 

 マチはそう軽く考えるように努めるが、そこで気付いてしまった。

 

 

 自分が本当にしようとしていること。

 

 ガルナの過去を勝手に見て、予想外の人間関係を知ってしまった。

 

 かつて文字通り、自分と傷を舐め合ったあの男とガルナの関係――。

 

 ほとんど仕事に参加しない、旅団の4番だったあの女――。

 

 

 ガルナの過去を知った自分も同じようにガルナに見せるべきなのかもしれない――。

 

 

 マチは懐から何かを取り出すと、手の平の上で転がした。

 

 それは、パクノダの記憶弾(メモリーボム)だった。

 

 自分でも考えが整理ついていないときに、パクノダからもらった。

 これが何の役に立つか分からなかったが、今は分かる。

 

 これを額に打ち込めばいいと、パクノダに説明をされた。

 

 マチほどの使い手ならば、素手でも弾丸の速度で打ち込むことも可能だろう。

 

 問題は、覚悟と決意――。

 

 

 ガルナに過去を知られるのは、怖いと感じていた。

 

 これを打ち込むことで、2人の曖昧な生温い関係が終わるのは間違いない。 

 それでもマチは、これが自分があの男にできる最大の誠意だと感じていた。

 マチは携帯の電話張からガルナの番号を表示させる。

 

 

 マチは躊躇うことなく通話ボタンを押した。

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

 男が最初に抱いたのは怒りだった。

 

 突然景色が変わると、そこは先程戦闘ヘリに追い付かれた場所だった。

 

 

「ちくしょうガルナの野郎、いらんことしやがって!」

 

 

 その男、ウヴォーギンは獰猛な肉食獣のように、低く唸ると、力の限り走り出した。

 

 能力の制約で速度が落ちる。

 

 だが、ウヴォーギンの戦闘スタイルはそれで問題なかった。

 

 逆にスピードを重視したとしても、自身が速さを極められるとは到底思えなかったのだ。

 

 

 ウヴォーギンは自身に展開してる防御能力を一旦解除して走り出す。

 

 ガルナに展開してる能力はそのままだから、マックスのスピードは出せないが、それでもあの距離ならばすぐ辿り着く。

 

 

 数分後、戦闘ヘリが市街地を撃ちまくっている現場に出た。

 

 ウヴォーギンがガルナに展開している能力は、円の効果があるから、ここまで最短ルートでやってこれたのだ。

 

 

 素早くオーラを足に集中させ、短く息を吹き出すと同時にウヴォーギンは跳躍する。

 

狭い路地裏の家屋の間をジグザグに跳躍を繰り返し、短く刈り上げた金髪の男の前に着地した。

 

 

「わ! あ、ウヴォーさんか。ビックリし――。」

 

「何がビックリしただ! 勝手にオレを邪魔扱いしやがって!」

 

 

 ウヴォーギンは激しく叫び、ガルナを詰問する。

 

 だが、ウヴォーギンの本心は違った。

 

 正直、あの時の状況はジリ貧で、あのままガルナが逃げ、自分が犠牲になることも覚悟していた。

 

 それなのに――。

 

 

「ちっ! てめえが余計なことしたせいで、振り出しに戻っちまった!」

 

 

 ウヴォーギンは本心とは違う叫び声をあげ続けた。

 

 

「あー、しかし奴らズルいよな。チョコマカと動いて機関銃を撃ちまくる。

 男だったら拳で来いってんだ!」

 

 

 ウヴォーはそう言うと、再度2人は走り出した。

 体力的にはまだまだ問題はないが、少しでも気を緩めれば凶悪な念弾の嵐を撃ち込まれる。

 先程まで2人がいた場所は蜂の巣を越え、ほとんど原型を留めていない程に崩れていた。

 背後の光景に、ガルナが恐怖で青ざめていると、ウヴォーギンが呟く。

 

 

「こんな時、ノブナガがいればな・・・。」

 

「へ? ノブナガさんって強化系じゃないの?」

 

 

 ウヴォーギンの言葉に、ガルナが驚いて聞き返す。

 すると、ウヴォーギンが呆れた口調で言った。

 

 

「ノブナガのどこが強化系なんだよ?

 あいつのホラ話を信じるなんてお前バカか?」

 

 

 ウヴォーギンの言葉にガルナが打ちのめされていると、地面に大きな影が映った。

 

 

 反射的に2人は、上空から降り注ぐ念弾の嵐を回避する。

 

 

「また、回り込まれた!

 なんで俺達の場所が分かるんだ?」

 

「だ、か、ら! そういう能力なんだろうが!?

 一旦捕捉されたら永久に追いかけられるぜ!」

 

 

 ガルナの言葉にウヴォーギンが素早く突っ込みを入れる。

 それを聞いたガルナは言った。

 

 

「て、ことは倒さなきゃならないってことか。」

 

 

 ウヴォーギンは、先程の覚悟を返せと、今すぐガルナの首を絞めてやりたい衝動に一瞬だけ駆られたが、渋々ガルナの思考速度に合わせるように質問する。

 

 

「じゃあ、奴らを倒す方法があるのか?

 ブンブン騒がしい代わりに、空中を自在に飛べてオレやお前じゃ攻撃があたらねえ。」

 

 

 ウヴォーがそう言うと、ガルナは笑いながら、答えた。

 

 

「ちょっと前に似たような能力者に勝ってるから大丈夫!」

 

 

 ウヴォーギンは戸惑いながら、ガルナの好きにさせてみようと思った。

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 私は今度こそ覚悟を決めた。

 結果はどうであっても受け止める。

 

 それはガルナの仲間であり、親友である私の使命だ。

 

 ジャポン式の正座をして目の前の携帯に礼をすると、携帯のボタンを押す。

 

 

 コールが始まる。

 1コールが終わり2コール――。

 

 5コールした頃、私は恐怖で完全に震えていた。

 

 やはりガルナは、考えなしに非道な犯罪者と一時的に手を組み、切り捨てられてしまったのか!?

 

 

「――あ、マチ? 今、ちょっと手が離せなくて――わ! あ、ウヴォーさんか、ビックリ――ツーツー。」

 

 

 私は困惑していた。

 

 私の知らない名前が出てきて、しかも背後から銃撃のような音――。

 

 

 ガルナは、黒だ。それも、かなり真っ黒な部類の――。

 

 

「フフフ、ガルナめ。この私が直々に成敗してやる。ミコトの代わりにな!」

 

 

 私はニヤリと笑いながら呟く。

 

 それでも――。

 

 

 ガルナが生きてくれていたことに少し安心をしていた。

 

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 

 そこは駅前の広場だった。

 

 黒い金属質の戦闘ヘリは、街の光を反射させながら、堂々と2人の標的を上空から見下ろすように宙で静止し、機関銃が照準を開始する。

 

 戦闘ヘリの中は、死屍累々の有り様だった。

 

 かつてこれ程長時間の作戦はなかった。

 能力は軍隊由来のもので、兵士は所属科に応じて、強制的に3種類の中から1つの能力を習得させられる。

 

 今、戦闘ヘリの中には、オーラを使い果たした兵士が4名程横になっていた。

 

 今の操縦士と、機関銃兵が最後の攻撃兵であり、具現化を維持する兵士も時間的に限界に来ていた。

 

 2人の敵を追い詰め、3人の兵士は集中力を高める――。

 

 

 瞬間、1人の小柄な男が消えた。

 

 

「く、またか!

 目標ロスト! 目標ロスト!」

 

 

 操縦士が叫び声を上げると、リーダー格の具現化能力者が冷静に指示を出す。

 

 

「構わん、1人だけでも殺せ!」

 

「了解、念弾装填完了!」

 

「撃てえ!」

 

 

 戦闘ヘリが無数の念弾を撃ち込む。

 およそ5分間――数千もの念弾を撃ちきり、兵士達は驚く光景を目にした。

 

 

 巨漢の男が、衣服がボロボロになりながらしっかりと大地に立っていたのだ。

 

 

――痛え。

 

 

 巨漢の男が短くそう言ったのを、誰もが聞いたように感じた。

 

 

 その時、ガクンと機体が揺れ、きりもみ状態で落下し始めた。

 

 

「おい、しっかりと操縦しろ!」

 

 

 リーダー格の男がそう叫ぶが、操縦士はダラリと手を垂らしたままピクリとも動かない。

 

 操縦士は頭を撃たれて死んでいた。

 

 

「な、何が?」

 

 

 リーダー格の男が混乱していると、銃撃兵も突然仰け反り倒れた。

 

 リーダー格の男は、意味も分からないまま具現化したヘリごと墜落した。

 

 

 

 

「――おいガルナ、あんな能力あるなら最初から使えよ。」

 

「いや、さすがに動いてる敵には当てらんないし。」

「ま、結果オーライだからいいか。

 そういや、ガルナの能力、ちょっとノブナガに似てるな。」

 

「え、それって――?」

 

 

 爆炎に包まれる中、倒れていたリーダー格の男は、朦朧とした意識でその会話を聞いた後、永い眠りについた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ごめん、マチ! 1回電話出たけど途中で切っちゃったし――。」

 

 

「は? アタシ1回も電話でアンタと話してないんだけど?」

 

 

 やっぱり、めちゃくちゃ怒ってるな。

 電話出たこともなかったことにされてるし、ここはひたすら謝るしかないか。

 

 

「いや、だから本当に心から――。」

 

 

「どうでもいいけど、今日中に帰ってこれるの?」

 

 

 どういう質問だろう?

 ひとまず6番目の弾丸がまだ生きてるから大丈夫だとは思うんだけど・・・。

 ウヴォーさん次第ってとこか。

 

 でもウヴォーさんは、さっきあることに気付いてから、怪獣みたいに軍隊とやりあってるしな・・・。

 

 

 ウヴォーさんは、今ひたすら石を投げていた。

 ウヴォーさんレベルなら軽くアスファルトを殴れば、手頃な「弾丸」が手に入る。

 

 それに周をして投げる。ひたすら投げる。

 

 さっきの敵のヘリも、無意味に殴りかからずに、ウヴォーさんが念を込めた石をブレードにぶつければ即終わっていただろう。

 

 ウヴォーさんは、それに気付いた後、恥ずかしさからくる悲鳴のような獰猛な叫び声を上げて八つ当たりを繰り広げていた。

 

 

 いや、当たった敵は衝撃波か何かで原型留めてないし、八つ当たりで済むような破壊活動じゃないんだけれど・・・。

 

 

「――ウヴォーさんが暴れたりないみたいだから、今すぐ帰るのは無理かも?」

 

「そういう時のウヴォーは昼まで暴れるから、待つ必要はないわよ。」

 

 

 マチがそう言ってから、さらに威圧的な口調で言った。

 

 

 

 

「6秒以内に帰ってきな!」

 

 

――ツーツー。

 

 

 一方的に携帯が切られ、俺は焦りながらも能力を発動させる。

 

 

 

――【6番目の弾丸(シックスブリット)

 

 

 

 そこは、アジトだった。

 フィンクスさんとシズク、シャルが何をするわけでもなくただ瓦礫に座っている。

 

 携帯が鳴り、俺が電話をとると、マチが叫んだ。

 

 

「遅い!」

 

 

 携帯から聞こえる声に、俺は限界を越えるスピードで走り出した。

 

 

 数分後、マチが住んでる家に辿り着いた。

 

 おそらくマチが勝手に住みついてるであろうその部屋は、流星街にしてはかなり綺麗な部類だと感じた。

 

 

「マチ、ごめん遅くなって――。」

 

 

 俺がそう言って、部屋に入ると、俺は驚愕する。

 

 

 月夜に照らされる室内、マチは衣類を何も身に付けていなかった。

 

 普段、あれだけ部屋を暗くしたがるマチが、何故――?

 

 

「アンタの記憶、見たから。」

 

 

 マチは俺の心を読んだかのようにそう言った。

 だからって、それが何の意味が――?

 

 

 ハッと俺は気付いた。マチの腹部から大腿部の付け根まである縦に伸びる手術痕、それ以外にも上半身には無数の手術痕があった。

 

 俺はそれを知らないことはなかった。

 マチに触れる時は、必ず部屋は暗かったけれど、触って分かる程の手術痕だから――。

 

 でも、実際に見てみると、こんなに痛々しいとは思わなかった。

 自然に涙が込み上げる。

 

 

「アタシ用の弾丸で記憶を見せようか迷った。」

 

「記憶を――?」

 

 

 俺はマチの覚悟を察して言う。

 

 

「でも、それもアンタ次第。アンタが嫌なら別にいいし・・・。」

 

 

 マチの言葉に俺が何も言えずにいると、マチが小さな声で言った。

 

 

「記憶はともかく、1つだけアンタに言わなきゃならないことがある。」

 

 

――なんだろう?

 

 

 俺が首を傾げていると、マチが言った。

 

 

「おめでと。今日、アンタの誕生日でしょ?

 結局最後までアンタの欲しいモノが分からなかったんけど・・・。」

 

 

 俺自身が自分の誕生日なんて忘れていた。

 俺の誕生日を誰かに祝ってもらうなんて何時以来だろう?

 

 マチのその言葉に俺は驚き、感動してマチに触れようとした・・・。

 

 

 

「触らないで!」

 

 

 マチはそう言って、一歩下がると続けて言った。

 

 

「今すぐ言うことは別にある・・・。」

 

 

「どうしたの?」

 

 

 マチの震える声で言った言葉に俺が聞き返す。

 

 

 

「この身体は、手術の後遺症で、子供がつくれない。」

 

 

 マチはまるで他人事のように、あっさりとそう言った。

 

 

 俺は、マチの覚悟と壮絶な過去を察して、ひたすら涙を流すことしかできなかった・・・。

 

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